3行まとめ
- 習い事・塾の費用は家計の中で見えにくくなりがち。まず「何に・年いくら・家計の何割か」を数字にするところから見直しは始まる。
- 公的データを見ると、支出の重心は学年とともに習い事から学習塾へ自然に移っていく。見直しの節目は、この転換点を目安にできる。
- やめる・続けるは費用だけでも本人の気持ちだけでもなく、両方を並べて決める。「もったいない」で惰性を続けず、「高いから」で意欲を切らない。
この記事でわかること
- 学校外活動費(塾・習い事)の公的データが示す、費用の全体像と節目
- 「もったいない」で続けてしまう心理と、その手放し方
- 費用と本人の気持ちの二軸で、習い事・塾を見直す手順
「なんとなく続いている」習い事の重さ
「もう行きたくないなあ」と子どもがつぶやく。でも発表会が近い、友だちも通っている、月謝も払ってしまった——そう考えると、「もう少し様子を見よう」と判断を先送りにしてしまいます。気づけば、あまり乗り気でない習い事に、毎月の月謝と送り迎えの時間を使い続けている。しかもそれが二つ、三つと重なると、家計にも、家族の時間にも、じわじわと効いてきます。
見直しがむずかしいのには、理由があります。一つは、これまでかけてきたお金や時間を惜しむ気持ちです。「ここまで続けたのだから」という思いは自然ですが、それはすでに使い終わったもので、これから先の判断とは切り離して考えたほうが冷静になれます。もう一つは、習い事の費用がふだん「まとめて」見えていないことです。一つひとつの月謝は数千円でも、合計して年額にし、家計に占める割合で見ると、印象が変わることがあります。
だからこそ、感情の前に、まず事実を並べてみることが役に立ちます。次の章では、そもそも家庭は学校の外の活動にどのくらいお金をかけているのか、公的なデータで全体像を確かめておきましょう。教育費全体の中での位置づけは、教育費を家族で話す ― お金の不安を子どもに渡さないもあわせてご覧ください。
公的データで見る、費用の全体像と節目
文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」は、保護者が1年間に子ども一人あたりに使った学習費を、公私・学校種別に集計した公的な統計です。このうち、塾や習い事にあたるのが「学校外活動費」で、さらに「補助学習費(学習塾・家庭教師・通信教育など)」と「その他の学校外活動費(スポーツ・芸術文化などの習い事)」に分かれます。1年間の学校外活動費の平均額は、公立小学校で約25万6千円、私立小学校で約71万円、公立中学校で約35万6千円、私立中学校で約42万3千円となっています(いずれも調査による平均値の一例)。子ども一人あたりでこの規模ですから、家計に占める存在感は決して小さくありません。
このデータで見直しの参考になるのが、費用の「重心」が移っていく様子です。学年が低いうちは、スポーツや音楽などの習い事にかける費用のほうが多いのですが、学年が上がると学習塾などの補助学習費の割合が増え、公立ではおおむね小学校6年生以降、私立では小学校4年生以降で、塾の費用が習い事の費用を上回っていきます。また、学校外活動費が最も高くなるのは受験を控えた学年で、公立では中学校3年生、私立では小学校6年生あたりに山がきます。つまり、多くの家庭が自然と「習い事から塾へ」と支出を組み替えていく節目があるのです。この転換点は、わが家の習い事を見直す一つのタイミングの目安になります。
もう一つ知っておきたいのは、これらの金額は世帯の収入や住んでいる地域の人口規模によっても差があり、収入が多い世帯や大都市ほど高くなる傾向がある、ということです。だからこそ、平均額はあくまで全体像をつかむための一例であり、大事なのは「わが家では実際にいくらかけているか」を自分の数字で把握することです。ちなみに、子育てにかかる費用全体で見ると、ある公的研究機関の調査では第一子の0歳から18歳までの費用は2千万円を超えると推計されており、習い事・塾はその大きな一部を占めます。数字に強くなることは、我慢するためではなく、納得して選ぶためです。
費用と気持ち、二つのものさしで見直す
費用の全体像がつかめたら、いよいよ見直しです。ここで大切なのは、「お金」だけでも「本人の気持ち」だけでも決めないということです。費用だけで切ると、本当は伸びている習い事まで「高いから」とやめてしまうことがあります。逆に気持ちだけで続けると、惰性や親の期待だけで走り続けてしまいます。二つのものさしを並べて見るのが、後悔の少ない見直しにつながります。
費用のものさしでは、年額と家計に占める割合、受験期に向けてこれからどう増えていきそうか、内容の重なった習い事がないか、を見ます。本人のものさしでは、本人が続けたい気持ちを持っているか、少しでも伸びや手応えを感じているか、そして生活や睡眠を圧迫していないか、を見ます。この二つを並べると、判断が整理されます。費用も負担で本人も乗り気でないなら「やめる・休む」、費用は負担でも本人が強く望むなら「他を削って続ける」、費用に余裕があっても本人が疲れきっているなら「量を減らす」——というように、単純な○×ではない選択肢が見えてきます。手放す判断そのものは、次の手順で進めます。
見直しは、①書き出す(今通っている習い事・塾を全部並べる)、②数字にする(それぞれ年額と家計に占める割合を出す)、③気持ちを聞く(本人に、続けたいか・惰性か・負担かを聞く)、④決める(続ける・いったん休む・組み替える、を本人と一緒に決める)、という順に進めます。ここで「やめる」を、失敗や挫折ではなく「選び直し」として扱うことが大切です。一度休んでみて、また戻ってきてもいい。子ども自身が選択に関わることで、続ける習い事にも、より前向きに取り組めるようになります。子どもの気持ちを圧をかけずに聞く姿勢は、進路の話で子どもを追い込まない聞き方も参考になります。
家庭で試す3つの工夫
家庭で試す3つの工夫
- ① 習い事・塾を「年額」でひとまとめに書き出す:月謝だけでなく、教材費・道具・送迎の負担も含めて、1枚に並べます。合計を年額にすると、ふだん見えない全体像が見え、話し合いの土台ができます。
- ② 「もったいない」を「これから」に切り替える:これまでかけたお金や時間は、続ける理由にはなりません。「今から1年、これを続ける価値があるか?」と、未来だけを見て考えると、判断が軽くなります。
- ③ 「やめる」ではなく「いったん休む」の選択肢を持つ:きっぱりやめる以外に、数か月休む・回数を減らす・季節で切り替える、という中間の道もあります。ゼロか百かにしないことで、本人も親も決めやすくなります。
声かけの言い換え
声かけの言い換え例
「ここまで続けたんだから、今やめたらもったいないでしょ」→ 過去の投資で判断を縛り、惰性を続けさせてしまう。
「この習い事、今のあなたにとってどう? 続けたい気持ちある?」→ 本人の今の気持ちを、判断の中心に置ける。
「お金かかってるんだから、ちゃんとやりなさい」→ 費用を圧力に変え、意欲より罪悪感を植えつける。
「一回お休みして、また入りたくなったら戻る手もあるよ」→ やめることを失敗にせず、選び直しとして扱える。
見直しのチェック
家庭で確認するチェックリスト
- 今の習い事・塾を、年額でひとまとめに把握できている。
- 費用が家計に占める割合を、だいたいつかんでいる。
- 「もったいない」という過去の理由で続けていないか確認した。
- 本人に、続けたいか・惰性か・負担かを聞けている。
- やめる以外に「休む・減らす・組み替える」の選択肢を持っている。
気をつけたいこと・相談先
数字は「我慢」のためでなく「納得」のために
ここで紹介したのは、習い事・塾を見直すための一般的な考え方であり、特定の習い事や塾、教材・サービスをやめること・続けることをすすめるものではありません。引用した金額は、公的な調査による平均値の「一例」であり、家庭の状況・地域・年度によって実際の費用は大きく異なります。見直しの目的は支出を削ること自体ではなく、限られたお金と時間を、家族が納得できる形に配分し直すことです。費用の話が、子どもへの「あなたにお金がかかっている」というプレッシャーにならないよう気をつけてください。
家計全体のやりくりに不安が大きい場合は、お住まいの自治体の家計・生活の相談窓口や、消費生活センターなどで相談できます。就学に関わる経済的な支援(就学援助など)については、自治体や学校の案内も確認してみてください。本記事は、特定の金融商品・サービスの利用や、個別の家計判断を助言・推奨するものではありません。
出典・参考
- 文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」結果のポイント
- 総務省統計局「家計調査」(教育費関連の解説)
- 国立成育医療研究センター「子育て費用に関する調査」(2025年公表)
この記事について
本記事は、習い事・塾の費用を見直すための一般的な情報を整理したものであり、特定の習い事・塾・教材・サービスの利用や解約、特定の金融商品を判断・推奨するものではありません。引用した金額は公的調査による平均値の一例で、家庭・地域・年度により実際は異なります。教育費や制度は変わるため、支援制度などは自治体・学校の最新の公式情報でご確認ください。