3行まとめ

  1. 期待と希望がずれるのは自然。どちらも愛情と本気から出ている。
  2. まず親の期待の「出どころ」に気づき、子どもの人生と切り分ける。
  3. 愛情を条件にせず、勝ち負けでなく「第三の道」を一緒に探す。

この記事でわかること

  • 期待と希望のずれを「対立」にしないための見方
  • 親の期待の出どころに気づき、子どもと切り分けるコツ
  • 勝ち負けにせず、第三の道を一緒に探す進め方

期待と希望は、ずれて当たり前

子どもに期待を持つのは、親として自然なことです。同じように、子どもが自分の希望を持つのも、健やかに育っている証です。だから、親の期待と子どもの希望がずれるのは、どちらかが間違っているからではありません。むしろ、子どもが自分の意志を持ち始めたサインでもあります。ずれを「対立」や「反抗」と受け取ると関係がこじれますが、「成長の表れ」と捉えると、見え方が変わってきます。

期待と希望はずれて当たり前の図。親子の想いという同じ出発点から、親の期待「安定した道を歩んでほしい」と子の希望「これをやってみたい」が分かれていく。どちらも愛情と本気から。ずれること自体は自然。
図1:どちらも愛情と本気から。ずれること自体は、自然なことです。

進路がすぐに定まらないのも、この時期にはよくあることです。国立教育政策研究所が令和7年度に行った調査では、将来就きたい職業や仕事が「まだ決まっていない」と答えた中学生が45.4%で最も多く、中学校卒業後の進路を決めた時期も「中学3年生になってから」が44.9%でした。迷いながら形にしていくのが、ふつうの過程だということです。親と違う希望を口にするのは、子どもが「自分の人生を生きよう」としているからこそ。ずれを無理にそろえようとするより、違いを認めたうえで、どう支えるかを考えるほうが、長い目で見て親子の信頼を育てます。まずは「うちの子は、自分の考えを持てるようになったんだ」と、一度受け止めてみましょう。

親の期待の「出どころ」に気づく

向き合う前に、いったん自分の側を見つめてみます。その期待は、本当に子どものためでしょうか。それとも、親自身の不安や願望でしょうか。「世間体が気になる」「自分が叶えられなかった夢を」「周りに後れを取りたくない」——こうした気持ちが、子どもへの期待に混じることは、誰にでもあります。これは責められることではなく、気づくだけで関わり方が変わります。

親が自分の願いを子どもに重ねてしまうことは、珍しくありません。周りと比べる気持ちも、期待を強める一因です。「これは私の不安かもしれない」と一度言葉にしておくだけで、子どもに押しつける力はやわらぎます。期待を持つこと自体は悪くありません。ただ、その期待が誰のものなのかを、自分で見分けておくことが大切です。

子どもの人生を、切り分ける

次の一歩は、子どもの人生と自分の人生を切り分けることです。親はどうしても、子どもの選択や結果を自分のことのように感じます。それは深い愛情ゆえですが、子どもの進路は、最終的には子ども自身が生きていく道です。親が代わりに歩むことはできません。この当たり前の事実を思い出すと、少し肩の力が抜けます。

切り分けるとは、突き放すことではありません。「あなたの人生はあなたのもの。でも、私はいつでも応援するし、力にもなる」——主役は本人、親は伴走者という立ち位置です。自己決定理論と呼ばれる考え方でも、自分で選んだと感じられること(自律性)が納得とやる気を支えるとされます。日本の中学生442人を調べた研究でも、自律的な動機づけが強く、やらされ感の弱い生徒がもっとも学業に適応していました。高校生を対象にした研究では、親のサポートのうち「励ましと期待」が、進路を自分で選べるという感覚と結びついていたことも報告されています。期待を伝えること自体が悪いのではありません。親が結果を抱え込みすぎると、子どもは「親のために選ぶ」ようになってしまいます。子どもが自分の足で立てるよう、決定の中心を本人に返していきましょう。

愛情を「条件」にしない

期待と希望が食い違うとき、いちばん避けたいのが、愛情を期待への「ご褒美」にしてしまうことです。「親の望む道を選んだら認める、そうでなければがっかりする」——言葉にしなくても、態度から伝わるこの「条件付きの愛情」は、子どもの心に重くのしかかります。中学生383人と312人を対象にした日本の研究では、親の期待を「負担」として受け止めている子どもほど、不機嫌・怒り、抑うつ・不安、無気力、身体の不調といったストレス反応が強く、逆に期待を前向きに受け止めている子どもほど自己価値が高いことが示されました。同じ研究は、期待をどれくらい感じているかより、それをどう受け止めているかのほうが、心の状態をよく説明すると報告しています。つまり、期待の強さより「どう伝わっているか」が分かれ目です。

愛情を条件にしない図。期待に応えたら認める(条件付き)だと子は失敗を怖がり本音を隠す。どんなあなたも大切+期待は願いとして、という無条件の安心が土台にあると子は挑戦も相談もしやすい。愛情を成果の条件にしない。
図2:期待を持つのは自然。ただ、愛情を成果の条件にしないことが大切です。

期待を持つこと自体を、やめる必要はありません。大事なのは、「どんなあなたも大切」という土台を先に置き、期待は“願い”として軽く添えることです。「こうなってほしいと思っているよ。でも、それであなたへの気持ちが変わることはないよ」と伝わっていれば、子どもは安心して挑戦も相談もできます。無条件の安心があるからこそ、子どもは失敗を恐れずに自分の道を試せるのです。愛情と期待は、切り離して扱いましょう。

進路で意見がぶつかったら、どうすればいいですか

勝ち負けにせず、両方の願いの奥を満たす「第三の道」を一緒に探してください。期待と希望がぶつかると、つい「どちらの言い分を通すか」という勝ち負けになりがちです。でも、それでは一方に不満が残ります。代わりに、親の願いの奥にあるもの(安心・安定)と、子の願いの奥にあるもの(挑戦・好きなこと)を、両方満たす道はないかを一緒に探してみましょう。

第三の道を探す図。親の願い(安定・安心)と子の願い(挑戦・やりたい)の二つの円が重なり、その重なりが第三の道(両方を少しずつ満たす案)。どちらかが勝つのでなく重なりを一緒に探す。
図3:どちらかが勝つのでなく、重なりを一緒に探していきます。

実際、進学を希望する中学生に悩みを尋ねた同じ調査では、「保護者や先生と意見が合わないこと」を挙げた割合は4.7%にとどまっていました。正面からぶつかっている家庭は、思うほど多くないということです。たとえば「やりたいこと」を追いながら、安定への備えも組み込む。あるいは、期限を決めて挑戦し、節目で見直す。「どちらか」ではなく「どちらの願いも大切にする第三の道」は、よく話すと案外見つかるものです。すぐに答えが出なくても構いません。意見が違っても、対話を続けられること自体が大きな財産です。最後に立ち返りたいのは、進路の一致より、親子の関係のほうがずっと大切だということ。関係が保たれていれば、道は何度でも一緒に考え直せます。

全部を一度にやらなくて大丈夫です。合いそうなものを一つだけ選んでください。

家庭で試す3つの工夫

  • ① 「これは私の不安?」と一度問う:子どもに伝える前に、期待の出どころが自分の不安や願望でないかを見分けます。
  • ② 土台の一言を先に置く:「どんな道でも応援する」を伝えてから、期待は“願い”として軽く添えます。
  • ③ 「第三の道はない?」と一緒に探す:勝ち負けにせず、両方の願いの奥を満たす案がないか、一緒に考えます。

同じ気持ちでも、言い方ひとつで伝わり方は変わります。関係を保ちながら願いを伝える言い方に置き換えてみましょう。

声かけの言い換え例

「普通はこっちの道でしょ」→ 親の価値観の押しつけになる。

「あなたはどうしたい? まず聞かせて」→ 本人の希望を中心に置く。

「期待を裏切らないでね」→ 愛情を条件にしてしまう。

「どんな道でも応援する。その上で相談させて」→ 安心を土台に対話する。

期待と希望が違うとき、次が一つでもできていれば十分です。

話す前・話すときに確認すること

  • ずれを「反抗」でなく「成長」として受け止められた。
  • 期待の出どころが、自分の不安でないかを点検した。
  • 「どんな道でも応援する」という土台を先に伝えた。
  • 勝ち負けにせず、第三の道を一緒に探そうとした。

一人で抱え込まないために

ここで紹介したのは「一つの考え方」で、合う向き合い方は家庭や子どもによって異なります。Parents.jp は、特定の進路・学校・職業を判断・推奨するものではありません。進路や入試の制度・費用などは、学校や公的機関の最新の公式情報で確認し、迷うときは学校の先生や進路相談の窓口にも相談してください。対立が深まり、子どもの心身に強い不安・不調が見られるときは、無理に話を進めず、スクールカウンセラーや専門の相談窓口の力も借りましょう。

よくある質問

親の期待と子どもの希望がずれるのは、よくないことですか。
ずれること自体は自然で、むしろ子どもが自分の意志を持ち始めたサインです。国立教育政策研究所の令和7年度の調査では、将来就きたい職業や仕事が「まだ決まっていない」と答えた中学生が45.4%で最も多く、進路を決めた時期も「中学3年生になってから」が44.9%でした。迷いながら形にしていくのがふつうの過程です。ずれを「対立」や「反抗」と受け取ると関係がこじれますが、「成長の表れ」と捉えると、無理にそろえるのではなく、どう支えるかを考えられるようになります。
自分の期待が押しつけになっていないか、どう見分けますか。
その期待の出どころを、一度自分で確かめてみてください。「世間体が気になる」「自分が叶えられなかった夢を」「周りに後れを取りたくない」といった気持ちが期待に混じることは、誰にでもあります。親が自分の願いを子どもに重ねてしまうことは珍しくありません。「これは私の不安かもしれない」と一度言葉にしておくだけで、押しつける力はやわらぎます。
子どもの選んだ進路に賛成できないとき、どう伝えればいいですか。
「どんなあなたも大切」という土台を先に置いてから、期待は願いとして軽く添えてください。中学生を対象にした日本の研究では、親の期待を「負担」として受け止めている子どもほど、不機嫌・怒り、抑うつ・不安、無気力、身体の不調といったストレス反応が強いことが示されています。期待をどれくらい感じているかより、それをどう受け止めているかのほうが、心の状態をよく説明するとも報告されています。「こうなってほしいと思っているよ。でも、それであなたへの気持ちが変わることはない」と伝わっていれば、子どもは安心して挑戦も相談もできます。
話し合っても結論が出ないときは、どうすればいいですか。
すぐに答えが出なくてかまいません。意見が違っても対話を続けられること自体が、大きな財産です。進路の一致より親子の関係のほうがずっと大切で、関係が保たれていれば道は何度でも一緒に考え直せます。対立が深まり、子どもの心身に強い不安や不調が見られるときは、無理に話を進めず、スクールカウンセラーや専門の相談窓口の力も借りてください。

出典・参考

  • 渡部雪子・新井邦二郎・濱口佳和「中学生における親の期待の受け止め方と適応との関連」教育心理学研究 60巻1号 15-27頁(2012年、日本教育心理学会)
    https://doi.org/10.5926/jjep.60.15(確認日 2026-09-19)。
    この出典で確認した記述
    抄録に「本研究は, 親からの期待の受け止め方を測定する尺度を作成し, 期待を感じる程度を統制した上で期待の受け止め方と内的適応との関連を検討することであった。研究1において, 積極的受け止め, 負担的受け止め, 失望回避的受け止めを含む3因子構造から構成される親の期待に対する子どもの受け止め方尺度(受け止め方尺度)が作成された。中学生383名のデータを分析したところ, 一定の信頼性と妥当性が確認された。研究2では, 中学生312名を対象として質問紙を実施し, 期待を感じる程度および交互作用を統制した上で親の期待の受け止め方と適応の関連を階層的重回帰分析を用いて検討した。本研究の結果から, 期待を感じる程度よりも期待の受け止め方が内的適応に対する説明力が大きいことが示唆された。積極的受け止めは, 自己価値といった適応を促進することが示され, 負担的受け止めは, 不機嫌・怒り, 抑うつ・不安, 無気力, 身体反応を含むすべてのストレス反応を促進する事が示された。」と記載されている。本文「愛情を「条件」にしない」節と FAQ「子どもの選んだ進路に賛成できないとき、どう伝えればいいですか」の根拠。
  • 国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センター「令和7年度キャリア教育に関する総合的研究 第一次報告書」(令和8年1月)
    https://www.nier.go.jp/_uploads/2026/01/zentai.pdf(確認日 2026-09-19)。
    この出典で確認した記述
    「調査結果(中学校 生徒調査)」の本文172ページ(PDF176ページ)に「将来就きたい職業や仕事が決まっているかを尋ねたところ、「まだ決まっていない」が45.4%と最も高く、「おおよそ決まっている」が39.8%となっていた」と記載されている。本文171ページ(PDF175ページ)に「中学校卒業後の進路はいつ頃決めましたか」への回答として「「中学3年生になってから」が44.9%と最も高く、「中学2年生の頃」が33.5%となっていた」、および「将来の生き方や進路について保護者とどの程度話し合っているかを尋ねたところ、「ときどき話し合っている」が58.9%と最も高く、「よく話し合っている」が26.1%となっていた」と記載されている。本文168ページ(PDF172ページ)の図表 III-6-6「進学希望者の困りごと・悩み」(n=2,469)では、「学習意欲がわかないこと 46.6」「勉強の仕方がよくわからないこと 51.0」に続く項目として「保護者や先生と意見が合わないこと 4.7」が示されている。本文「期待と希望は、ずれて当たり前」節と「進路で意見がぶつかったら、どうすればいいですか」節の根拠。
  • 成田絵吏・森田美弥子「高校生の進路選択における親のサポートについて―進路選択に関する自己効力と行動との関連から―」キャリア教育研究 33巻2号 47-54頁(2015年、日本キャリア教育学会)
    https://doi.org/10.20757/jssce.33.2_47(確認日 2026-09-19)。
    この出典で確認した記述
    抄録に「For the Career-Related Parent Support Scale, factor analysis yielded 2 subscales: encouragement and expectation, provision of information on occupational experience of the parent.」「The results showed that ... a direct relationship of encouragement and expectation and career decision-making self-efficacy. But a direct relationship of all supports and career decision-making behavior did not show.」と記載されている。本文「子どもの人生を、切り分ける」節の、期待を伝えること自体が悪いのではないという記述の根拠。
  • 西村多久磨・櫻井茂男「中学生における自律的学習動機づけと学業適応との関連」心理学研究 84巻4号 365-375頁(2013年、日本心理学会)
    https://doi.org/10.4992/jjpsy.84.365(確認日 2026-09-19)。
    この出典で確認した記述
    抄録に「This study investigated the relationship between autonomous motivation and academic adjustment based on the perspective of self-determination theory.」「Data were collected from 442 junior high school students」「Correlation analyses generally supported the basic hypothesis of self-determination theory that a more autonomous regulation style was strongly related to academic adjustment.」「The results also showed that persons with a high autonomous regulation and a low controlled regulation style were the most adaptive.」と記載されている。本文「子どもの人生を、切り分ける」節の、自律性に関する記述の根拠。

この記事について

本記事は家庭での話し合いを整理した一般的な情報であり、特定の学校の合否・優劣・進学先を判断・推奨するものではありません。個別の家計・投資の助言や、特定の金融商品の推奨も行いません。費用・選抜・支援制度は年度や地域によって変わるため、公式情報をご確認ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。

筆者コメント