3行まとめ

  1. 読書習慣は「読ませる」より、本と出会う回数で変わる。
  2. 置き場所・選ぶ自由・読む人——この3つの環境を整える。
  3. マンガや図鑑も立派な読書。入口は何でもいい。

この記事でわかること

  • 「読みなさい」が逆効果になりやすい理由
  • 本との出会いを増やす「3つの鍵」(置き場所・選ぶ自由・読む人)
  • 続けやすくする小さな工夫と、声かけの言い換え

「読みなさい」ほど、本から遠ざかる

読書は本来、楽しいから続くものです。ところが「読みなさい」と指示が増えるほど、読書は「やらされること」に変わり、楽しさがしぼんでしまいます。国立青少年教育振興機構の調査では、子どもの頃に「ジャンルを問わず読むこと」「同じ本を繰り返し読むこと」「地域の図書館で本を借りたこと」を多く経験した人ほど、小中高を通した読書量が多い傾向が見られました。逆に「学校や市の推薦図書を選ぶこと」「1日に読むページを決めて読むこと」を多く経験した人は、読書量が少ない傾向。報告書は、これらが「自由な読書をかえって妨げてしまう可能性もある」と書いています。

だから、親の役割は「読ませる」ことより、読みたくなる状況を整え、本と出会う回数を増やすこと。読書を勉強の延長にせず、生活の楽しみの一部として置いておく——そんなイメージが出発点になります。

もう一つ気になるのは、読書が好きな子が減っていることです。全国学力・学習状況調査で「読書は好きですか」に「当てはまる」と答えた小学生は、平成28年度の49.5%から令和8年度は33.0%へ。中学生も46.6%から28.7%へ下がっています。同じ調査では、読書が好きと答えた児童生徒のほうが教科の平均正答率が高い傾向も見られます(報告書自身が、相関であって因果ではないと断っています)。だからこそ、量や速さを競うのではなく、まず「楽しい」と感じる小さな経験を積むことが、長い目で見て効いてきます。スタート地点は子どもによって違って当たり前です。

読書は「出会う回数」で決まる

子どもが本を読むかどうかは、やる気や能力の前に、「すぐ手の届く所に、おもしろそうな本があるか」に大きく左右されます。全国学力・学習状況調査でも、家にある本の冊数が多い児童生徒ほど、教科の平均正答率が高い傾向が報告されています。これも相関であって、本を増やせば点が上がるという話ではありません。これは「たくさん買えば良い」という話ではなく、触れる回数を増やすという意味です。

人は、ほんの少しの手間で行動をやめます。本棚の奥にきれいにしまわれた本は、わざわざ取りに行く必要があり、手が伸びにくい。一方、リビングや通り道に数冊あるだけで、通りがかりに自然とページが開きます。置き場所を変えるだけで、出会いの回数は大きく変わるのです。お金をかけて買いそろえる必要はありません。図書館を使えば、定期的に新しい本が家にやってきて、返却日が次に借りるきっかけにもなります。家にある本を入れ替えるだけでも、新鮮さは保てます。

本の置き場所の比較図。本棚の奥にきれいに収納するとわざわざ取りに行くため手が伸びにくい。リビングや動線に数冊置くと通りがかりに自然と手が伸びる。
図1:奥にしまうより、動線に数冊。置き場所で手に取る回数が変わります。

本と出会う「3つの鍵」

環境づくりは、大きく3つの鍵に整理できます。全部やろうとせず、できそうなものから一つずつで大丈夫です。

読書習慣を支える3つの鍵の図。①置き場所(手の届く所・目に入る所)②選ぶ自由(ジャンルは問わず本人が選ぶ)③読む人がいる(親が読む姿・一緒に楽しむ)。
図2:「読ませる」より、本と出会う回数を増やすイメージで。

① 置き場所 ― 手の届く所・目に入る所に

リビングのテーブルの端、ソファのそば、トイレや玄関など、生活の動線に数冊だけ置いてみます。背表紙より、表紙が見えるように立てかけると、ぐっと手が伸びやすくなります。「全部きれいにしまう」より、少し出ていて、いつでも手に取れるくらいがちょうどいい、と考えてください。

② 選ぶ自由 ― ジャンルは問わず、本人が選ぶ

図書館や書店で子ども自身に選ばせてみてください。先ほどの調査で読書量の多さと関連していたのは、ジャンルを問わず読むこと、同じ本を繰り返し読むこと、そして地域の図書館で本を借りたことでした。親の「おすすめ」を押しつけず、選んだものを尊重しましょう。同じ本を何度読んでも、難しすぎず簡単な本ばかりでも問題ありません。

③ 読む人がいる ― 親が読む姿・一緒に楽しむ

子どもは、言われたことより見ている姿から学びます。親が短時間でも本や雑誌を読む姿、寝る前の読み聞かせ、読んだ本を「おもしろかったね」と話題にすること。読書が「家の中にある自然な風景」になると、習慣は根づきます。

マンガも図鑑も、立派な読書

「読書」というと物語の本を思い浮かべがちですが、マンガ・図鑑・絵本・科学の本・雑誌も、立派な読書の入口です。とくに図鑑やマンガは、興味の扉を開き、関連する本へと広がっていくきっかけになります。「ちゃんとした本を読ませなきゃ」と力むより、まずは本人が夢中になれるものから。入口の自由度が高いほど、読書は続きます。

たとえば、電車が好きな子なら電車の図鑑から、ゲームが好きならその攻略本や関連の物語から。「好き」を入口にすると、文字を読むことへの抵抗が自然と下がります。図鑑で気になった言葉を別の本で見かける、マンガで知った歴史をもっと知りたくなる——こうした横のつながりで、子どもの世界は少しずつ広がっていきます。大人から見て「ためになる本」かどうかより、本人が前のめりになれるかどうかを大切にしてください。

これも立派な読書、という図。マンガ・図鑑・絵本・物語・科学や実用書・雑誌にチェックがついている。入口は何でも大丈夫。
図3:入口は何でもOK。「ちゃんとした本」にこだわらないほうが続きます。

全部を一度にやらなくて大丈夫です。合いそうなものを一つだけ選んでください。

家庭で試す3つの工夫

  • ① 動線に「数冊」置く:リビングや通り道に、表紙が見えるように数冊。多すぎず、入れ替えながら置くと新鮮さが続きます。
  • ② 図書館で本人に選ばせる:2週間に一度など、頻度を決めて通います。借りるのはすべて本人の好きなものでOK。返却日が次のきっかけにもなります。
  • ③ 「読みなさい」を言わない日を作る:代わりに、親が読む姿を見せたり、読んだ話を一言シェアしたり。読書を楽しい時間として置いておきます。

指示や評価は、読書を「課題」に変えてしまいます。興味と楽しさに寄り添う言葉に変えてみましょう。

声かけの言い換え例

「マンガばっかり読んで、本を読みなさい」→ 興味を否定。読書ごと遠ざける。

「それ、どんな話なの? おもしろい?」→ 興味に関心を向け、対話の入り口に。

「何ページ読んだの?」→ ノルマ化して楽しさを奪う。

「図書館で好きなの選んでいいよ」→ 選ぶ自由で動機を育てる。

すぐに毎日読まなくて大丈夫です。次のサインが一つでも増えていれば、よい方向です。

家庭で確認するチェックリスト

  • 手の届く所に、本が数冊置いてある。
  • 子どもが自分で本を選ぶ機会がある。
  • 「読みなさい」と言う回数が減った。
  • ジャンルを問わず、自分から手に取る場面があった。

家庭の工夫だけで抱え込まないために

ここで紹介したのは「一つの考え方」で、すべての子に当てはまる正解ではありません。読む量やスピードには個人差があり、ほかの子と比べる必要はありません。読み書きに強い困りごとが続く、音読や文字を読むことを極端にいやがるといった場合は、家庭だけで抱え込まず、担任の先生や学校、必要に応じて専門の相談窓口に相談してください。本記事は発達や学習に関する診断・治療を判断するものではありません。

よくある質問

マンガばかり読んでいます。これも読書のうちに入りますか。
マンガ・図鑑・絵本・科学の本・雑誌も、立派な読書の入口です。とくに図鑑やマンガは興味の扉を開き、関連する本へ広がるきっかけになります。図鑑で気になった言葉を別の本で見かける、マンガで知った歴史をもっと知りたくなる。そんな横のつながりで世界は広がっていきます。大人から見て「ためになる本」かどうかより、本人が前のめりになれるかどうかを大切にしてください。
「本を読みなさい」と言っても読みません。どうすればいいですか。
指示が増えるほど、読書は「やらされること」に変わりやすくなります。国立青少年教育振興機構の調査では、「1日に読むページを決めて読むこと」「学校や市の推薦図書を選ぶこと」を多く経験した人ほど読書量が少ない傾向が見られ、報告書はこれらが自由な読書をかえって妨げる可能性もあると書いています。親の役割は読ませることより、読みたくなる状況を整えて本と出会う回数を増やすこと。「読みなさい」を言わない日を作り、代わりに親が読む姿を見せる方法があります。
本をたくさん買わないと、読書習慣はつきませんか。
買いそろえる必要はありません。大事なのは冊数より触れる回数です。本棚の奥にしまわれた本はわざわざ取りに行く手間があるぶん手が伸びにくく、リビングや通り道に数冊あるだけで通りがかりにページが開きます。表紙が見えるように立てかけるのも一つ。図書館を使えば定期的に新しい本が家に来て、返却日が次に借りるきっかけにもなります。
同じ本や簡単な本ばかり読んでいます。やめさせたほうがいいですか。
同じ本を何度読んでも、難しすぎず簡単な本ばかりでも問題ありません。自分で選んだ本への愛着が読む動機になるので、親のおすすめを押しつけず、選んだものを尊重する形です。国立青少年教育振興機構の調査でも、同じ本を繰り返し読むこと、ジャンルを問わず読むことを多く経験した人ほど、小中高を通した読書量が多い傾向が見られました。量や速さを競うより、「楽しい」と感じる小さな経験を積むほうが、長い目で効いてきます。

出典・参考

  • 国立青少年教育振興機構 青少年教育研究センター「子どもの頃の読書活動の効果に関する調査研究」(令和3年8月11日 プレスリリース)
    https://www.niye.go.jp/pdf/210811.pdf(確認日 2026-09-19)。
    この出典で確認した記述
    PDF1ページに「全国の20〜60代の男女5,000名(各年代男女500名ずつ)を対象にインターネット調査を実施しました」と記載されている。「結果② 興味・関心にあわせた読書経験が多い人ほど、小中高を通した読書量が多い傾向にある。」(PDF3ページ、本報告書p.33)に「『本を持ち歩いて読むこと』『地域の図書館で本を借りたこと』『ジャンルを問わず読むこと』『同じ本を繰り返し読むこと』『目次、前書き、解説など本文以外の部分も読むこと』『図書委員、子ども図書、読書コンシェルジュの活動をしたこと』『絵本を読んだこと』を多く経験することは、小中高を通した読書量の多さと関連していた」と記載されている。続けて「『1日に読むページを決めて読むこと』『著者がどのような人か理解してから読むこと』『学校や市の推薦図書を選ぶこと』を多く経験することは、小中高を通した読書量の少なさと関連していた」「これらの項目は、自由な読書をかえって妨げてしまう可能性もあると考えられる」と記載されている。本文「『読みなさい』ほど、本から遠ざかる」節、「② 選ぶ自由」節、FAQ2問目・4問目はこれによる。大人が子どもの頃を振り返って答えた調査であり、関連を見たもので因果関係を示したものではない。
  • 国立教育政策研究所「令和6年度 全国学力・学習状況調査 報告書 質問紙調査(2)質問と学力のクロス分析」
    https://www.nier.go.jp/24chousakekkahoukoku/report/data/24qn_03.pdf(確認日 2026-09-19)。
    この出典で確認した記述
    報告書91ページ(PDF3ページ)に「家にある本の冊数が多い児童生徒ほど、教科の平均正答率が高い傾向が見られる。(23)」と記載されている。93ページ(PDF5ページ)に質問23「あなたの家には、およそどれくらいの本がありますか(雑誌、新聞、教科書は除く)」の選択肢として「0〜10冊」「11〜25冊」「26〜100冊」「101〜200冊」「201〜500冊」「501冊以上」が示されている。89ページ(PDF1ページ)の【クロス分析について】に「クロス集計については、相関関係がみられるかを分析したものであり、因果関係を示したものではない」と記載されている。本文「読書は『出会う回数』で決まる」節はこれによる。相関であることは本文にも明記した。
  • 国立教育政策研究所「令和8年度 全国学力・学習状況調査 報告書 質問調査(1)質問の経年変化」
    https://www.nier.go.jp/26chousakekkahoukoku/report/data/26qn_02.pdf(確認日 2026-09-19)。
    この出典で確認した記述
    報告書29ページ(PDF19ページ)の質問31-1「読書は好きですか」で、「当てはまる」と答えた割合は小学校が令和8年度33.0%、7年度36.6%、5年度39.6%、4年度42.1%、31年度44.4%、29年度49.1%、28年度49.5%、中学校が令和8年度28.7%、7年度30.4%、5年度35.3%、4年度38.0%、31年度39.1%、29年度46.2%、28年度46.6%と記載されている。最大9回前との比較では小・中とも減少を示す「↘」の記号が付されている。本文「『読みなさい』ほど、本から遠ざかる」節の数値はこれによる。
  • 国立教育政策研究所「令和8年度 全国学力・学習状況調査 報告書 質問調査(2)質問と学力のクロス分析」
    https://www.nier.go.jp/26chousakekkahoukoku/report/data/26qn_03.pdf(確認日 2026-09-19)。
    この出典で確認した記述
    報告書114ページ(PDF4ページ)に「以下と回答している児童生徒の方が、教科の平均正答率・IRTスコアが高い傾向が見られる。…・読書は好きである(31-1)・読書は役に立つと思う(31-2)」と記載されている。116ページ(PDF6ページ)には質問31-1「読書は好きですか」の令和8年度の回答分布(小学校「当てはまる」33.2%、「どちらかといえば、当てはまる」32.3%、中学校28.6%、31.7%)と、回答別の教科の平均正答率のグラフが掲載されている。111ページ(PDF1ページ)の【クロス分析について】に「相関関係がみられるかを分析したものであり、因果関係を示したものではない」と記載されている。本文「『読みなさい』ほど、本から遠ざかる」節はこれによる。

この記事について

本記事は家庭での工夫を整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や治療の判断に代わるものではありません。研究知見や公的資料は「一つの考え方」として紹介しており、家庭ごとに合う・合わないがあります。お子さんの状態が気になる場合は、専門機関や学校にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。

筆者コメント