3行まとめ

  1. 子どもの睡眠時間には年齢ごとの目安があり、小学生ではおおむね9〜12時間とされる。睡眠不足は情緒・学び・健康に影響しうる。
  2. 共働き家庭は用事が夜に集中しやすい。「前から積む」のではなく起床時刻+推奨睡眠時間から必要な就寝時刻を先に固定し、そこから逆算すると、就寝の後ろ倒しを防ぎやすい。
  3. 就寝前のスマホ・タブレットの光は寝つきを妨げる。スクリーンオフの締切を決め、崩れた日は責めずに翌日で戻す前提にしておく。

この記事でわかること

  • 年齢別の推奨睡眠時間の目安と、睡眠が子どもに与える影響
  • 就寝時刻から一日を逆算して設計する考え方
  • 忙しい夜でも睡眠を守るための、締切の決め方と立て直し方

気づけば就寝時刻が後ろへずれていく

定時で上がれた日でも、家に着けば夜の家事が待っています。夕食をつくって食べさせ、お風呂に入れ、洗い物をして、明日の準備をして……。子どもがぐずったり、宿題に手間取ったりすれば、予定はさらに後ろへ。「あと少しで寝かせよう」と思っているうちに、寝室に向かうのが毎晩じりじり遅くなっていきます。翌朝は起こしても布団から出られず、機嫌も悪い——共働き家庭に、この悪循環は起こりがちです。

ここでつい「早く寝なさい」と子どもを急かしてしまいますが、問題は子どものやる気ではなく、一日の段取りそのものが遅い時刻に押し出されていることにあります。帰宅から寝るまでの用事を「できた順」にこなしていくと、終わる時刻はその日の忙しさ次第で毎晩変わり、いくらでも後ろにずれてしまいます。必要なのは、寝る時刻を「余ったところ」に置くのではなく、先に決めてしまうことです。

そのためにまず、子どもにどれくらいの眠りが必要なのかを、目安として押さえておきましょう。次の章で、公的な情報をもとに確認します。朝の側の段取りは、朝の準備が崩れる家庭のチェックリストもあわせてご覧ください。

どれくらい眠りが必要なのか

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、年代ごとの推奨睡眠時間の目安を示しています。それによると、おおよその目安として、3〜5歳で10〜13時間、小学生(6〜12歳ごろ)で9〜12時間、中学・高校生(13〜18歳ごろ)で8〜10時間とされています。これはあくまで幅のある「目安」で、必要な睡眠には個人差がありますが、わが家の子どもが今どのあたりを目標にすればよいかの、出発点になります。

なぜ睡眠がそれほど大切なのでしょうか。同ガイドは、子どもの睡眠が不足すると、肥満のリスク、抑うつなど情緒面の不調、学業成績の低下、生活の質(幸福感)の低下などが起こりやすいことを指摘しています。眠りは、単に体を休めるだけでなく、心の安定や日中の学びを支える土台です。「寝る時間を削って宿題や翌日の準備を」としたくなる夜こそ、その削った睡眠が、翌日の集中や機嫌に跳ね返ってくることを思い出したいところです。

もう一つ、生活リズム全体の効果を示すデータもあります。文部科学省が進める「早寝早起き朝ごはん」の取り組みや全国学力・学習状況調査では、毎日ほぼ決まった時刻に寝起きし、朝食をとる子どもほど、学力調査の平均正答率が高い傾向が示されています。睡眠・起床・朝食はつながった一つのリズムであり、就寝時刻を安定させることは、朝食や日中の調子にもよい影響を及ぼします。

年齢別の推奨睡眠時間の目安の図。3〜5歳は10〜13時間。小学生(6〜12歳ごろ)は9〜12時間。中学・高校生(13〜18歳ごろ)は8〜10時間。いずれも幅のある目安で個人差があると注記。厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド2023による。
図1:年齢別の推奨睡眠時間の目安。幅があり個人差もありますが、逆算の出発点になります。

就寝時刻から「逆算」して設計する

睡眠時間の目安がわかったら、いよいよ一日の組み立てです。ポイントは、順番を逆にすることです。多くの家庭は「帰宅→夕食→お風呂→…」と前から積み上げますが、それだと終わり(就寝)が毎日ぶれます。そうではなく、朝の起床時刻を決め、そこから必要な睡眠時間だけさかのぼって「必要な就寝時刻」を先に固定し、さらにそこから逆算して夕食・入浴・スクリーンオフの締切を置いていくのです。ゴールから引くこの発想を、逆算設計(バックキャスティング)と呼びます。

就寝時刻から逆算して一日を設計する4ステップの図。ステップ1は起床時刻を決める。朝に必要な起きる時刻を固定する。ステップ2は推奨睡眠時間を当てる。年齢の目安(小学生なら9〜12時間)を選ぶ。ステップ3は就寝時刻を出す。起床時刻から睡眠時間分さかのぼり、必要な就寝時刻を決める。ステップ4は締切を逆算する。就寝時刻から、スクリーンオフ・入浴・夕食の締切を順に置く。
図2:起床時刻→推奨睡眠→就寝時刻→各締切、とゴールから引いて一日を設計します。

たとえば朝7時に起きるとして、小学校中学年の子に10時間ほどの睡眠を確保したいなら、就寝は21時が目安になります。すると、その少し前を「スクリーンオフの締切」、さらにその前を「入浴の締切」「夕食の締切」と置いていけます。とくに就寝前のスマホやタブレットの光は要注意です。睡眠ガイドでも、夜間の画面から出る光(ブルーライト)は眠りを促すホルモンの分泌を抑え、寝つきを悪くするとされています。就寝の一定時間前を「画面を消す締切」に決めておくと、寝つきが守られます。反対に、朝や日中に光を浴びることは寝つきを助けるので、朝はカーテンを開けて光を入れるのも効果的です。段取りを子どもと共有する形は、帰宅後ルーティンを親子げんかにしない作り方も参考になります。

もちろん、共働きの現実として、逆算どおりにいかない日は必ずあります。残業、外食、子どもの用事——締切を守れない夜は出てきます。そこで大切なのが、「崩れる前提」で立て直しのルールを持っておくことです。遅くなった日は入浴を短くする、翌朝にまわす、といった代替案を決めておき、崩れても翌日には元の締切に戻す。完璧な毎日を目指すのではなく、「ずれても戻せる」形にしておくことが、長く続けるコツです。

家庭で試す3つの工夫

家庭で試す3つの工夫

  • ① まず「就寝時刻」だけを固定点にする:あれもこれもと決めず、まず寝る時刻の一点を家族の約束にします。そこが動かなければ、他の用事は自然とその手前に収まっていきます。
  • ② 「スクリーンオフの締切」を先に決める:就寝の一定時間前を、テレビ・タブレット・ゲームを消す時刻にします。光を落とし、静かな活動(読み聞かせなど)に切り替えると、寝つきが整いやすくなります。
  • ③ 崩れた日の「戻し方」を先に決めておく:遅くなった夜は「入浴は明日の朝シャワー」「準備は最低限だけ」など、締切を守るための省略案を用意します。崩れても翌日に戻せれば、リズムは保てます。

声かけの言い換え

声かけの言い換え例

「もう遅いんだから、早く寝なさい!」→ 遅くなった原因は段取りにあるのに、子どもを急かすだけになる。

「9時に寝られるように、8時半で画面はおしまいにしよう」→ 就寝時刻とスクリーンオフの締切を先に共有できる。

「まだ宿題残ってるの? 寝るの遅れるでしょ」→ 睡眠を「余ったところ」に置き、後ろ倒しを許してしまう。

「今日は遅くなったから、お風呂は朝にして先に寝よう」→ 崩れた日も就寝時刻を守るため、省略案で立て直す。

睡眠リズムのチェック

家庭で確認するチェックリスト

  • 年齢の推奨睡眠時間の目安を把握している。
  • 起床時刻から逆算して、必要な就寝時刻を決めている。
  • 就寝時刻を「余ったところ」でなく固定点にしている。
  • 就寝前のスクリーンオフの締切を決めている。
  • 崩れた日の「戻し方(省略案)」を用意している。

気をつけたいこと・相談先

目安は目安。眠りの悩みが続くときは相談を

ここで紹介した睡眠時間は、公的なガイドが示す「目安(推奨の幅)」であり、必要な睡眠には個人差があります。時間の数字だけにとらわれ、「◯時間眠らせなければ」と親子ともに追い詰められては本末転倒です。生活の状況によって、逆算どおりにいかない日があるのも当然です。大切なのは、完璧な達成ではなく、無理のない範囲でリズムのぶれを小さく保つことです。

いびきや睡眠中の呼吸が気になる、日中に強い眠気が続く、工夫しても極端に寝つけない・夜中に何度も目を覚ますなど、生活の見直しでは解消しない睡眠の問題が続く場合は、かかりつけの小児科や睡眠の専門医に相談してください。本記事は、生活習慣に関する一般的な情報であり、特定の症状の診断や医療的判断に代わるものではありません。

出典・参考

  • 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
    年代別の推奨睡眠時間の目安(3〜5歳10〜13時間/小学生9〜12時間/中高生8〜10時間)、睡眠不足の影響、就寝前の光(ブルーライト)による寝つきへの影響、日中の光の効果の根拠。https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37017.html(確認日 2026-07-18)。
  • 文部科学省「早寝早起き朝ごはん」国民運動
    睡眠を中心とした規則正しい生活習慣づくりが子どもの成長・自立に重要であること、生活リズムと学びの関連の根拠。https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/asagohan/(確認日 2026-07-18)。
  • 公益社団法人 日本小児保健協会「『健康づくりのための睡眠ガイド2023』について」
    小児保健の専門団体が睡眠ガイドを周知・解説し、子どもの睡眠確保の重要性を専門家の立場から支持していることの根拠。https://www.jschild.or.jp/archives/5614/(確認日 2026-07-18)。

この記事について

本記事は、子どもの睡眠リズムを守るための一般的な情報を整理したものであり、特定の睡眠時間や生活スケジュールを保証・推奨するものではありません。推奨睡眠時間は公的ガイドが示す目安で、必要な睡眠には個人差があります。眠りの問題が続く場合や気になる症状がある場合は、小児科など専門機関にご相談ください。

筆者コメント