3行まとめ
- 奨学金は大きく「給付型(返さなくてよい)」と「貸与型(あとで返す)」の2種類に分かれる。まずこの違いを親子で共有することが出発点になる。
- 返さなくてよい給付型と授業料等の減免は「高等教育の修学支援新制度」としてまとまっており、世帯の収入に応じて支援額が段階的に決まる。成績だけで判断されるものではない。
- 給付型・貸与型の多くは高校3年の春〜初夏に「予約採用」として学校を通じて申し込む。この時期を逃さないことが、進学の選択肢を守ることにつながる。
この記事でわかること
- 給付型・貸与型(第一種・第二種)という奨学金の全体像
- 「高等教育の修学支援新制度」とは何か、誰が対象になりうるか
- 高校3年での申込時期(予約採用)と、家庭で早めに準備しておくこと
「奨学金=借金」で止まってしまう場面
進路の話が進んでくると、どこかで「奨学金、どうする?」という会話になります。ところが、この言葉を出したとたん話が止まってしまう家庭は少なくありません。親は「借りたら何百万円も返すことになる」という記事を思い出して身構え、子どもは「うちはお金がないってことか」と受け取ってしまう。
この行き違いの多くは、「奨学金」という言葉が複数の別物をまとめて指していることに気づかないまま話し始めることから起きます。返さなくてよいお金と、あとで返していくお金を区別せずに一括りにすると、良い面も悪い面も混ざってしまい、判断のしようがありません。まずは全体像を「返す・返さない」という一本の軸で整理してみましょう(教育費そのものの考え方は教育費を家族で話すや大学進学費用を教育費全体の中でどう位置づけるか)。
奨学金の全体像を「返す・返さない」で分ける
日本で「奨学金」と言うとき、多くの家庭がまず思い浮かべるのが、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の奨学金です。これは国が実施している制度で、大きく「給付型(返還を要しない)」と「貸与型(あとで返還する)」の2本立てになっています。この二つは、名前は同じ「奨学金」でも、家計にとっての意味がまったく違います。
給付型奨学金は、原則として返す必要のないお金です。後で述べる授業料・入学金の減免とセットで「高等教育の修学支援新制度」として運用されており、世帯の収入などの要件を満たせば、返還不要の支援を受けられます。JASSOも「学ぶ意欲があれば、成績だけで判断せず支援する」という趣旨を明確にしています。「うちは成績がずば抜けているわけではないから」とあきらめてしまうのは、もったいない誤解です。
一方の貸与型奨学金は、進学後に受け取り、卒業後に返していくお金です。ここがさらに二つに分かれます。第一種は利子のつかない(無利子)タイプ、第二種は利子のつく(有利子)タイプです。無利子のほうが返す総額は少なくてすみますが、その分、選ばれるための基準は相対的に厳しくなります。有利子の第二種は、より幅広い世帯が対象になりますが、返すときには元本に利子が上乗せされます。いずれも「借りる」お金であり、返済は子ども自身が社会に出てから担うことになります。
整理すると、奨学金は「返さなくてよい給付型」と「あとで返す貸与型(無利子の第一種/有利子の第二種)」に分けられ、さらに大学や自治体、民間団体が独自に行う給付・貸与もあります。家庭でまず押さえたいのは、この「返す・返さない」の軸です。ここが分かれていれば、「返さなくてよいものは早めにきちんと申し込む」「借りるものは、返す立場に立って金額を考える」という、二つの異なる構えで準備できるようになります。
修学支援新制度と申込時期の見方
返さなくてよい支援の中心にあるのが、2020年度に始まった「高等教育の修学支援新制度」です。文部科学省の説明によれば、「授業料・入学金の減免」と「返還不要の給付型奨学金」という二つの支援を組み合わせたもので、大学・短期大学・高等専門学校・専門学校への進学が対象になります。
支援の額は、世帯の収入に応じて段階的に決まる設計です。文部科学省は、世帯収入の状況によって支援額がおおむね3段階に分かれると説明しており、「非課税世帯でなければ一切対象外」という単純なものではありません。さらに令和7年度(2025年度)からは、扶養する子どもが多い多子世帯について、所得の制限なく授業料等の減免の対象とする拡充も行われました。
最も見落とされやすいのが申込みの「時期」です。給付型・貸与型の多くは、進学してから申し込むのではなく、高校3年生の春から初夏(おおむね5〜6月ごろ)に、在学している高校を通じて申し込む「予約採用」という仕組みになっています。秋にも追加の募集はありますが、一次の受付は思っているより早い時期に始まります。
準備の流れはこうです。高校2年の終わりから3年の春にかけて、制度の全体像とわが家が対象になりうるかを一度確認する。高校3年の春〜初夏に高校から配られる案内を必ず受け取り、募集要項と締切を確かめる。世帯の収入がわかる書類やマイナンバー関連の情報をそろえ、締切までに学校を通じて申し込む。採用候補者に決まったかどうかの通知は秋ごろに届きます。要点は、「案内が来てから慌てる」のではなく「来ることを知っていて待ち構える」ことです。
家庭で試す3つの工夫
- ① まず「返す・返さない」を紙に2列で書き出す:いきなり金額を調べる前に、「返さなくてよいもの(給付型・減免)」「あとで返すもの(第一種・第二種)」の2列に分けて書くだけで、頭の中が整理されます。子どもと一緒に書くと、制度への苦手意識が下がります。
- ② 「借りる分は誰が返すのか」を早い段階で言葉にする:貸与型は、返済を担うのは基本的に子ども自身です。だからこそ「これは将来あなたが返していくお金」という前提を、進学前の落ち着いた時期に共有しておくと、金額の感覚を持って進路を選べます。金額はあくまで説明のための一例として扱い、断定的な計画にしないことも大切です。
- ③ 「奨学金プリントは即・定位置へ」を家庭のルールにする:高校3年の春以降、奨学金の案内は他の配布物にまぎれがちです。「学校からのお金の紙は、この場所に必ず出す」と決めておくと、締切を逃しにくくなります。プリントの整理はプリント整理が崩れる家庭の3つの置き場所も参考になります。
声かけの言い換え例
「奨学金なんて借金だから、うちは無理しないでね」→ 給付型まで一緒に遠ざけてしまい、使える支援も検討できなくなる。
「奨学金には返さなくていいものもあるらしいよ。一緒に調べてみよう」→ 制度を分けて捉え、前向きに情報を集める姿勢を共有できる。
「合格してから奨学金のことは考えればいいよ」→ 高校3年の早い申込時期を逃し、選択肢が狭まる可能性がある。
「申し込みは春から始まるみたい。案内が来たらすぐ確認しようね」→ 時期を意識して、余裕をもって準備に入れる。
家庭で確認するチェックリスト
- 「給付型(返さない)」と「貸与型(返す)」の違いを、親子で言葉にできる。
- 第一種(無利子)と第二種(有利子)の違いを、ざっくり説明できる。
- 高校3年の春〜初夏に予約採用の申込みがあることを知っている。
- 高校からの奨学金の案内を、どこで受け取り・保管するか決めている。
- 貸与型を借りる場合、返すのは子ども自身であることを共有している。
制度は変わる。最後は必ず公式情報で確かめる
この記事は、奨学金の全体像をつかむための一般的な情報を整理したものです。支援の対象になる世帯収入の要件・支援額・申込みの締切・必要書類は、年度や制度改正によって変わります。ここで触れた金額の考え方や区分は、あくまで仕組みを理解するための説明であり、特定の家庭の受給の可否や金額を保証するものではありません。実際の可否や金額は、必ず日本学生支援機構(JASSO)と文部科学省の最新の公式情報、および在学している高校の案内で確認してください。
具体的な手続きや、わが家が対象になるかどうかは、まず在学している高校の奨学金担当(進路指導・事務室)に相談するのが確実です。進学先が決まっている場合は、その学校の学生支援窓口も相談先になります。家計と進路をあわせて考えたいときは、教育費を家族で話すもあわせてご覧ください。本記事は、特定の金融商品・ローン・学校・進路の選択を推奨したり、個別の家計・借入の判断を助言したりするものではありません。
出典・参考
- 文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
この出典で確認した記述
授業料・入学金の減免と返還不要の給付型奨学金の2本柱であること、対象校種、世帯収入に応じて支援額がおおむね3段階に分かれること、令和7年度から多子世帯は所得制限なく授業料等減免の対象となることの根拠。 - 日本学生支援機構(JASSO)「給付奨学金(返還不要)」
- 日本学生支援機構(JASSO)「進学前に申し込む(予約採用)」
この記事について
本記事は家庭での話し合いを整理した一般的な情報であり、特定の学校の合否・優劣・進学先を判断・推奨するものではありません。個別の家計・投資の助言や、特定の金融商品の推奨も行いません。費用・選抜・支援制度は年度や地域によって変わるため、公式情報をご確認ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。