3行まとめ

  1. 子どもは、ネットで困っても「怒られる・取り上げられる」と思うと親に言わない。黙ることでトラブルが大きくなりやすい。
  2. 禁止や監視だけでは、隠す行動を強めることがある。公的情報も親子で話し合うルールづくりを勧めている。
  3. 打ち明けられた時にまず責めずに聴くことを続けると、「困ったら言える家庭」に近づく。相談できる公的窓口も知っておく。

この記事でわかること

  • 子どもがネットのトラブルを親に言いにくくなる理由
  • 監視より対話を勧める公的情報の考え方と、いまの利用実態
  • 「困ったら言える」関係を育てる具体的な関わり方と、相談できる窓口

子どもがネットのトラブルを言いにくい理由

ネットやゲームで困ったことが起きた時、子どもがすぐに親へ相談してくれるとは限りません。むしろ、多くの子は最初、黙っておこうとします。理由はシンプルで、打ち明けたら怒られる、スマホやゲームを取り上げられる、と予想しているからです。困っているのに、相談すること自体が新しい「こわいこと」になってしまうのです。

すると、知らない人とのやり取りや、いやなコメント、意図しない課金といったトラブルが、親の見えないところで少しずつ大きくなっていきます。本来なら早い段階で止められたはずのことが、「言えなかった」ために深刻になる——これは、ネットのトラブルでとても起こりやすい流れです。

だからこそ、家庭で用意したいのは「トラブルを完全に防ぐ仕組み」だけではありません。フィルタリングや時間制限はもちろん大切ですが、それだけでは防ぎきれない場面が必ず残ります。最後に子どもを守るのは、「何かあったら、まず親に言えばいい」と子どもが思えていることです。この記事では、その「言える関係」をどう育てるかに焦点を当てます。

いまのネット利用の実態を知る

こども家庭庁の「令和6年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、10〜17歳の青少年の98.7%がインターネットを利用し、利用時間は平均で1日あたり約5時間にのぼります。もはやネットは「使わせるかどうか」を選ぶ対象ではなく、生活の一部として日常的に使われている、というのが前提です。

同じ調査では、低年齢(0〜9歳)の子どもの保護者の8割以上が「家庭で利用のルールを決めている」と回答しています。多くの家庭がルールづくりに取り組んでいる一方で、ルールを「守らせる」ことに力が向きすぎると、子どもは失敗やトラブルを打ち明けにくくなります。ルールは必要ですが、それと同じくらい、ルールから外れてしまった時に相談できるかどうかが大切になります。

利用時間が長く、使う場面も広がっているということは、それだけトラブルに触れる機会も増えるということです。完全に避けることを目指すより、「触れてしまった時にどうするか」を家庭で準備しておくほうが現実的だと言えます。

監視より「親子で話し合う」を勧める公的情報

総務省は、フィルタリングや利用時間の管理といった「ペアレンタルコントロール」について、保護者が一方的に押し付けるのではなく、親子で話し合ってルールを決め、年齢とともに子ども自身が管理できるよう見守っていくことを勧めています。制限を「監視の道具」として使うのではなく、対話の前提として使う、という考え方です。

これは、当サイトの見守りアプリは監視ではなく対話の道具にするで紹介した見方とも重なります。こっそり監視して問題を見つけて叱る、という関わりを続けると、子どもは「見られている」と感じて隠す工夫をするようになり、いざという時に相談してくれなくなります。逆に、ルールもトラブル対応も一緒に考える姿勢でいると、子どもは困った時の相談先として親を選びやすくなります。

もちろん、年齢が低いうちや、危険がはっきりしている場面では、大人がしっかり管理する必要があります。大切なのは「管理か対話か」の二択にせず、管理の度合いを年齢と状況に応じて調整しながら、対話の窓口はいつも開けておくことです。

打ち明けにくくする反応・しやすくする反応

子どもが「言える」かどうかは、打ち明けた時に親がどう反応するかの積み重ねで決まっていきます。日ごろの小さな反応が、次に困った時に相談するかどうかを左右します。

打ち明けにくくする反応と、しやすくする反応を対比した図。上段(打ち明けにくい)は、だから言ったのにと責める・すぐ取り上げる・一方的に説教する。下段(打ち明けやすい)は、まず話してくれてありがとうと受け止める・一緒に対処を考える・次にどうするか一緒に決める。
図1:同じトラブルでも、最初の反応しだいで「次も言えるか」が変わっていきます。

「だから言ったのに」と責めたり、その場ですぐに端末を取り上げたり、一方的に説教したりすると、子どもは「相談すると損をする」と学習します。反対に、まず「話してくれてありがとう」と受け止め、一緒に対処を考え、次にどうするかを一緒に決めると、「困ったら相談したほうが早い」と感じるようになります。取り上げる・叱るは、必要な場面もありますが、打ち明けた直後の第一声だけは、責めから始めないことを意識すると、関係が閉じにくくなります。

打ち明けられた時の3ステップ

実際にトラブルを打ち明けられた時は、次の3ステップを意識すると落ち着いて対応しやすくなります。

ネットのトラブルを打ち明けられた時の3ステップを示す図。手順1はまず責めずに聴く(話してくれたことを受け止める)、手順2は一緒に状況を確かめる(いつ・誰と・何が起きたかを整理し画面を保存)、手順3は必要なら窓口に相談(学校・公的相談窓口・警察を一緒に検討)。
図2:聴く→確かめる→必要なら相談、の順番を家庭の型にしておくと慌てにくくなります。

まず、責めずに最後まで聴き、打ち明けてくれたこと自体を受け止めます。次に、いつ・誰と・何が起きたのかを一緒に整理し、必要ならやり取りの画面を消さずに記録(スクリーンショット)しておきます。そのうえで、深刻さに応じて、学校や後述の公的な相談窓口、場合によっては警察への相談を一緒に検討します。子どもを主語にして「あなたが悪い」と責めるのではなく、「この状況をどうするか」を親子で一緒に考える構えが、次のトラブルの時にも相談してもらえる土台になります。

家庭で試す3つの工夫

家庭で試す3つの工夫

  • ① 「困ったら言えば一緒に考える」と先に約束する:トラブルが起きる前に、「何かあっても、まず責めない。一緒に考える」と言葉にして伝えておきます。
  • ② 取り上げを罰にしない約束にする:「相談したら即・没収」ではなく、「危ない時は一緒に距離を取る」という位置づけにして、相談のハードルを下げます。
  • ③ ニュースを話のきっかけにする:ネットトラブルの報道を見た時に「これ、どう思う?」と軽く話しておくと、いざという時に切り出しやすくなります。

声かけの言い換え

声かけの言い換え例

「だから言ったのに。もう貸さない」→ 相談を後悔させ、次から隠すようになる。

「よく話してくれたね。どうなってるか一緒に見よう」→ 相談してよかったと感じられ、状況把握にも進める。

「そんなの見るあなたが悪い」→ 本人を責め、被害を打ち明けにくくする。

「それはいやだったね。いつ頃から続いてる?」→ 気持ちを受け止めつつ、事実の確認に移れる。

関わり方が整ってきたかのチェック

家庭で確認するチェックリスト

  • ルールだけでなく、「困った時に相談してよい」と言葉で伝えている。
  • 打ち明けられた時、第一声を「責め」から始めていない。
  • 端末の取り上げを、相談への罰として使っていない。
  • 家庭で対応しきれない時に相談できる窓口を知っている。

気をつけたいこと・相談できる窓口

家庭だけで抱え込まないために

ここで紹介したのは「一つの考え方」であり、すべての家庭・すべてのトラブルにそのまま当てはまるものではありません。いじめ、脅し、金銭被害、誹謗中傷、性的な被害が疑われる場合は、家庭内での対話だけで解決しようとせず、速やかに学校や下記の公的窓口、必要に応じて警察に相談してください。証拠となる画面は消さずに残しておくと相談がスムーズです。本記事は、個別のトラブルの法的対応や被害の判断を行うものではありません。

  • こたエール(東京こどもネット・ケータイヘルプデスク):子ども本人・保護者・学校関係者のネット/スマホトラブル相談を無料で受付。tokyohelpdesk.metro.tokyo.lg.jp
  • 違法・有害情報相談センター(総務省委託):誹謗中傷・プライバシー侵害・なりすまし等の削除依頼方法などを無料相談(全国対象)。ihaho.jp
  • 消費者ホットライン「188」:意図しない課金・オンライン決済のトラブルなど、消費生活の相談窓口につながる全国共通番号。

出典・参考

この記事について

本記事は家庭でのネット利用の関わり方を整理した一般的な情報であり、個別のトラブルの法的対応や被害の判断を行うものではありません。公的情報は「一つの考え方」として紹介しており、子どもの年齢や状況によって適切な対応は異なります。深刻な被害が疑われる場合は、学校や公的相談窓口、警察にご相談ください。

筆者コメント