3行まとめ
- 大事なのは時間の長さより、いつ・どこで・なにに使うかという「場面」。
- 禁止だけでは使い方を学ぶ機会が減る。一緒に決めて関わるほうが力が育つ。
- 睡眠と食事・対話の時間だけは守る。ルールは親子で作り、見直していく。
この記事でわかること
- 「全面禁止か放任か」の二択を抜ける考え方
- 「1日何時間まで」の公的な基準が見当たらないなかで、何を手がかりにするか
- 家庭で決める4つの軸と、納得して続けるためのコツ
「全面禁止」か「放任」かになっていませんか
スマホやタブレットの話になると、「持たせない」か「好きにさせる」かの両極で考えてしまいがちです。けれど、現実の生活は連絡・学習・調べもの・友だちづきあいと、デジタルと地続きです。大事なのは0か100かではなく、その間にある「ちょうどいい使い方」を家庭で決めることです。
つい禁止に傾いてしまうのは、心配だからこそ。トラブルのニュースを見れば不安になりますし、ルールを細かく考えるのは手間もかかります。どれも自然な気持ちです。ただ、子どもはこの先いやでもデジタルと付き合っていきます。だとすれば、目標は「触らせないこと」ではなく、いずれ自分で上手に付き合えるようになること。その練習の場を、家庭で少しずつ用意していく、という発想に立つと景色が変わります。
禁止だけでは、使い方が育ちにくい
「とにかく禁止」は一見安全に見えますが、副作用もあります。禁止だけだと、子どもはかくれて使うようになったり、いざ使うときに加減や危険の避け方を知らないままになりやすいのです。自分をコントロールする力(自己調整)は、使いながら少しずつ育つもの。最初から完璧にできないのは自然なことです。
総務省の「インターネットトラブル事例集」も、自分をコントロールできずスマホが手放せなくなると「日常生活に支障を来すだけでなく、学習面でも健康面でもマイナス」だとしたうえで、上手に使いこなす鍵は「利用のルールを考え、守りながら使う」という心がけだと書いています。同じ事例集は、子ども自身にも「マイルールを作ってみる」と呼びかけています。守らされる側でいるあいだは、この力は育ちません。少しずつ任せる範囲を広げ、見守りながら手綱を渡していくイメージです。
気になるデータもあります。こども家庭庁の令和7年度調査では、家庭のインターネット利用のルールを「決めている」と答えた割合は、小学生(10歳以上)では本人83.8%・保護者88.4%とほぼそろっているのに、高校生では本人44.3%・保護者58.3%と開きます。報告書は、学校種が上がるにつれて青少年と保護者の「ルールの有無に関する認識のギャップ」も拡大傾向だと書いています。親が「決めた」つもりでも、子どもの側はそう受け取っていないことがある——だからこそ、決めたら言葉にして確かめ合う手間が要ります。
時間より「中身・状況・その子」
先に正直に書いておきます。「小学生のスマホは1日何時間まで」という一律の基準は、日本の公的な資料には見当たりません。時間に触れている数少ない公的資料が、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」です。そのこども版には「小・中・高校生は1日当たり60分以上からだを動かし、スクリーンタイムは2時間以下にすることが推奨されています」と書かれていますが、これは同ガイドが参照した海外の研究に基づく記述で、日本に法令上の基準があるわけではありません。ひとつの目安として知っておく、くらいの距離感がちょうどよいでしょう。
では、時間の代わりに何を見るのか。ナタリア・クチルコバ、ソニア・リビングストン、ジェニー・ラデスキーは2023年の論説で、スクリーンタイムという物差しそのものの限界を指摘しています。保護者に「平日1日どれくらい見ていますか」と尋ねる従来の測り方は、いまの子どものデジタル体験を測るには力不足で、実用的な指針をつくるには中身(content)・状況(context)・その子の特性(children's characteristics)まで細かく見ることが欠かせない、という主張です。
たとえば同じ「30分」でも、家族のいるリビングで一緒に動画を見て感想を言い合う30分と、寝る直前に布団のなかで一人、知らない相手とやりとりする30分とでは、意味がまるで違います。「何分使ったか」より「どんな30分だったか」を見ると、家庭で気をつける所が具体的に見えてきます。時間制限はあくまで道具のひとつ、と捉えるとよいでしょう。
家庭で決める4つの軸
抽象的な方針を、家庭で決めやすい形にすると次の4つになります。紙に書き出して、親子で相談しながら埋めてみてください。すべてを厳密に決める必要はなく、わが家で気になる軸から1つずつ言葉にしていけば十分です。
こども家庭庁の同じ調査では、小学生(10歳以上)の子がスマートフォンを使う家庭の保護者の95.6%が、いずれかの方法でネット利用を管理していると答えています。上位は「利用してもよい時間や場所を決めて使わせている」61.9%、「何を(内容)どれくらい(時間)使っているのか把握している」54.7%、「フィルタリングを使っている」53.6%。時間だけでなく、場所と中身をあわせて見ている家庭が、すでに多数派です。4つの軸は、その実践を言葉にしたものにすぎません。
睡眠と「だんらん」の時間は守る
あれこれ細かく決めるのが難しくても、「寝る前」と「食事・家族で話す時間」の2つだけは画面を置く——これを家のルールにするだけで、影響の大きい部分を守れます。睡眠ガイド2023のこども版は、「小学生は9〜12時間、中学・高校生は8〜10時間を参考に睡眠時間を確保する」ことを推奨事項として挙げています。実際、こども家庭庁の令和7年度調査で「インターネットにのめりこんで勉強に集中できなかったり、睡眠不足になったりしたことがある」と答えた割合は、小学生(10歳以上)14.5%、中学生24.5%、高校生26.2%と、学年が上がるほど増えていきます。
仕組みで守るのがコツです。睡眠ガイドも「デジタル機器は寝室には持ち込まず、電源を切って、別の部屋に置いておきましょう」と書いています。充電場所をリビングなど寝室の外に決めておくと、「寝る前に置く」が自然に実現します。同ガイドは、なんとなく夜ふかしをしてしまう「就寝時刻の先延ばし」を防ぐ工夫として、「家庭での電子機器使用に関するルールづくり」が有効な場合があるとも述べています。親のスマホも一緒に置くと、子どもも納得しやすく、家族みんなの睡眠を守れます。意志の力に頼らず、置き場所で解決するイメージです。
全部を一度にやらなくて大丈夫です。合いそうなものを一つだけ選んでください。
家庭で試す3つの工夫
- ① 「使わない時間・場所」を1つ決める:まずは「食事中は置く」「寝室に持ち込まない」など、守りやすい1つから。家族みんなで同じルールにすると続きます。
- ② 中身を一緒に見て、話題にする:「それ何のゲーム?」「どこがおもしろいの?」と関心を向けます。取り上げる前に、まず一緒に楽しむ・知ることが入り口になります。
- ③ ルールは紙に書いて、見直し日を決める:親子で決めて貼り出し、「1か月後に見直す」と添えます。状況に合わせて変えられる前提だと、納得して守りやすくなります。
禁止や叱責は反発を生みやすく、かくれた使用につながりがちです。対立ではなく、一緒に決める向きの言葉に変えてみましょう。
声かけの言い換え例
「いつまでやってるの、もうやめなさい!」→ 対立になり、かくれて使う動機になりやすい。
「あと何分にする? 終わりの時間、一緒に決めよう」→ 自分で決める形にして、終わりを見える化する。
「そんなのばっかり見て」→ 中身の否定。話してくれなくなる。
「それ、どんなところが好きなの?」→ 中身に関心を向け、対話の入り口にする。
すぐに完璧でなくて大丈夫です。次のサインが一つでも増えていれば、よい方向です。
家庭で確認するチェックリスト
- 「使わない時間・場所」が家庭で1つ決まっている。
- 寝る前は画面を置けている日が増えた。
- 子どもが見ている中身を、親が少し知っている。
- ルールを、頭ごなしでなく相談して決められた。
家庭だけで抱え込まないために
ここで紹介したのは「一つの考え方」で、すべての家庭・すべての子に当てはまる正解ではありません。生活や睡眠・学習に明らかな支障が続く、やめると激しく荒れる状態が長引く、見知らぬ相手との接触・課金・いじめなど安全に関わる問題がある場合は、家庭だけで抱え込まず、学校に相談してください。ネット上の問題については、こども家庭庁が「各種相談窓口」のページで、インターネット・ホットラインセンター、各都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口、全国の消費生活センター、法務省の人権相談、違法・有害情報相談センターなどを案内しています。フィルタリングや見守りの設定もあわせて確認しましょう。本記事は依存症などの診断・治療を判断するものではありません。
よくある質問
- 小学生のスマホは、1日何時間までにすればいいですか。
- 「小学生は1日何時間まで」という一律の基準は、日本の公的な資料には見当たりません。時間に触れている数少ない資料が厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」で、こども版に「小・中・高校生は1日当たり60分以上からだを動かし、スクリーンタイムは2時間以下にすることが推奨されています」とあります。ただしこれは同ガイドが参照した海外の研究に基づく記述で、日本の法令上の基準ではありません。ひとつの目安として置いたうえで、いつ・どこで・なにに使うかという「場面」を手がかりにしてみてください。
- 細かく決めるのが難しいのですが、最低限どこを守ればいいですか。
- 「寝る前」と「食事・家族で話す時間」の2つだけは画面を置く。これを家のルールにするだけで、影響の大きい部分を守れます。厚生労働省の睡眠ガイド2023は、小学生は9〜12時間の睡眠時間の確保を推奨し、「デジタル機器は寝室には持ち込まず、電源を切って、別の部屋に置いておきましょう」と書いています。仕組みで守るのがコツで、充電場所をリビングなど寝室の外に決めておくと「寝る前に置く」が自然に実現します。親のスマホも一緒に置くと、子どもも納得しやすくなります。
- やはり、持たせないほうが安全ではないですか。
- 禁止だけだと、子どもはかくれて使うようになったり、いざ使うときに加減や危険の避け方を知らないままになりやすい、という副作用もあります。総務省の「インターネットトラブル事例集」は、上手に使いこなす鍵は「利用のルールを考え、守りながら使う」ことだとし、子ども自身にも「マイルールを作ってみる」と呼びかけています。守らされる側でいるあいだは、この力は育ちません。少しずつ任せる範囲を広げ、見守りながら手綱を渡していくイメージで考えてみてください。
- 同じ30分でも、違いはあるのですか。
- クチルコバ、リビングストン、ラデスキーの2023年の論説は、保護者に利用時間を尋ねる従来の測り方ではいまの子どものデジタル体験を測れないとし、実用的な指針には中身(content)・状況(context)・その子の特性(children's characteristics)まで細かく見ることが欠かせないと指摘しています。家族のいるリビングで一緒に動画を見て感想を言い合う30分と、寝る直前に布団のなかで一人、知らない相手とやりとりする30分とでは、意味がまるで違います。「何分使ったか」より「どんな30分だったか」を見てみてください。
出典・参考
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(令和6年2月・健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会)
この出典で確認した記述
「こども版 推奨事項」(PDF17ページ、本文15ページ)の「RECOMMENDATION 2」に「小学生は9〜12時間、中学・高校生は8〜10時間を参考に睡眠時間を確保する。」「朝は太陽の光を浴びて、朝食をしっかり摂り、日中は運動をして、夜ふかしの習慣化を避ける。」と記載されている。PDF18ページ(本文16ページ)の「運動習慣の定着」に「座りっぱなしの時間、特にスクリーンタイム(テレビ視聴やゲーム・スマホ利用など)が長くなりすぎないようにしましょう。小・中・高校生は1日当たり60分以上からだを動かし、スクリーンタイムは2時間以下にすることが推奨されています」と記載され、同ページの「デジタル機器使用の回避」に「デジタル機器は寝室には持ち込まず、電源を切って、別の部屋に置いておきましょう」と記載されている。PDF19ページ(本文17ページ)のショートコラム「就寝時間の先延ばし」に「就寝時刻の先延ばしを予防するためには、睡眠スケジュールの目標を決め、実践できるかを日々モニタリングするといった工夫や、家庭での電子機器使用に関するルールづくりが有効な場合があります」と記載されている。本文「時間より『中身・状況・その子』」節の時間の目安、「睡眠と『だんらん』の時間は守る」節、およびFAQ第1問・第2問の根拠はこれによる。なお「スクリーンタイム2時間以下」は同ガイドが引用する海外文献(参考文献20)に基づく記述であり、日本の法令上の基準ではない。 - こども家庭庁「令和7年度青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(概要)」(令和8年3月)
この出典で確認した記述
「概要13 青少年のインターネット上の経験」(18ページ)の表に、「インターネットにのめりこんで勉強に集中できなかったり、睡眠不足になったりしたことがある」の令和7年度の割合として、小学生(10歳以上・847人)14.5%、中学生(1,199人)24.5%、高校生(972人)26.2%と記載されている。「概要14 インターネット利用に関する家庭のルールの有無」(19ページ)に「他方で、学校種が上がるにつれて、『ルールを決めていない』との回答が増え、青少年と青少年の保護者の『ルールの有無に関する認識のギャップ』も拡大傾向。」と記載され、図に「ルールを決めている」が小学生(10歳以上)青少年83.8%・保護者88.4%、高校生 青少年44.3%・保護者58.3%と示されている。「概要15 こどものインターネット利用に関する保護者の取組 -1(青少年の保護者)」(20ページ)の図に、小学生(10歳以上)の保護者(433人)について、管理している(計)95.6%、「利用してもよい時間や場所を決めて使わせている」61.9%、「何を(内容)どれくらい(時間)使っているのか把握している」54.7%、「フィルタリングを使っている」53.6%と記載されている。本文「禁止だけでは、使い方が育ちにくい」節の認識のギャップ、「家庭で決める4つの軸」節の家庭の実態、「睡眠と『だんらん』の時間は守る」節の割合はこれによる。 - 総務省「インターネットトラブル事例集」事例4「ついついスマホを使いすぎちゃって」
この出典で確認した記述
学習のポイントは「~画面を見ない“目の休憩時間”も大切 睡眠時間もしっかり取って上手に使おう~」。「もっと詳しく」に「自分をコントロールできずスマホが手放せなくなると、日常生活に支障を来すだけでなく、学習面でも健康面でもマイナスです。上手に使いこなすためには、利用のルールを考え、守りながら使うという心がけが鍵。学校行事や受験など「いざ!」というときに後悔しないよう、スマホ利用を自制する力を身につけましょう。」と記載されている。「考えてみよう」のCに「マイルールを作ってみる」「時間管理ツールを活用したり、ルールや目標を決めたりして、自分コントロールにチャレンジ!」と記載されている。本文「禁止だけでは、使い方が育ちにくい」節とFAQ第3問の根拠はこれによる。 - Natalia I. Kucirkova, Sonia Livingstone, Jenny S. Radesky「Faulty screen time measures hamper national policies: here is a way to address it」(Frontiers in Psychology, 2023)
この出典で確認した記述
本文冒頭に「current screen time debates obscure a central insight from research on children's digital media: namely that precise and detailed considerations of the content, context and children's characteristics - as well as the underlying design infrastructure of digital technologies that shape children's opportunities—are essential for operationally relevant and practical guidelines for the public.」と記載されている。「Traditional measures」節に「Traditional measures based on parent-reported duration of media use (e.g., "On a typical weekday, how much time does your child spend watching TV?") are ill-equipped to measure children's modern digital experiences.」と記載されている。本文「時間より『中身・状況・その子』」節とFAQ第4問の根拠はこれによる。Front Psychol 14:1243396、CC BY。 - こども家庭庁「各種相談窓口」(青少年の安全で安心な社会環境の整備)
この出典で確認した記述
同ページに「インターネット上で様々な問題や有害情報等に関しての通報はこちらの各サイトよりご相談いただけます。」と記載され、インターネット・ホットラインセンター、各都道府県警察サイバー犯罪相談窓口(警察庁)、全国の消費生活センター、人権相談(法務省)、違法・有害情報相談センター、消費者相談室(経済産業省)、電気通信消費者相談センター(総務省)などが相談先として掲載されていることを確認した。本文「家庭だけで抱え込まないために」節の相談先の案内はこれによる。
この記事について
本記事は家庭での工夫を整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や治療の判断に代わるものではありません。特定の機器・アプリ・設定・サービスを推奨するものでもありません。お子さんの状態が気になる場合は、専門機関や学校にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。