3行まとめ
- 学習指導要領は「学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を、計画的に取り入れるように工夫すること」を求めており、解説は家庭での予習・復習もその場面として挙げています。計画は家庭が勝手に始めた課題ではありません。
- 令和8年度の全国調査で、小学6年生の「学習の計画の立て方や学び方が分かりますか」への肯定回答は79.3%。裏返すと約5人に1人は「分からない」側に答えています。分からないほうが少数派でも例外でもない、という前提から始められます。
- 評価の考え方を示した資料は、「自らの学習を調整しようとする側面」についてその調整が「適切に行われるか」を必ずしも判断するものではないと明記しています。家庭が見るのも、計画どおりかどうかではなく、直そうとしたかどうかです。
この記事でわかること
- 学習指導要領が「見通し」と「振り返り」をどこに位置づけているか
- 解説が、家庭学習と「学習計画の立て方」にどこまで言及しているか
- 全国調査で、計画の立て方が「分からない」子はどれくらいいるのか
- 「自らの学習を調整する」が、計画を守り切ることではない理由
- 計画表を作り直す前に、家庭でできる3つのステップ
- 振り返りを反省会にしないための、声かけの言い換え
計画表は、たいてい三日で白紙に戻る
計画が続かない場面には、いくつか決まった形があります。ひとつは、最初の一日が重すぎる形です。やる気のある日に作った計画は、その日の気分がそのまま量になります。国語のドリル、算数のプリント、漢字、読書、自由研究の下調べ。書いているときは一日でできそうに見えますが、実際に机に向かうと、最初の項目で予定の時間を使い切ります。二日目には昨日の残りが積み上がり、三日目には二日分の遅れになる。ここで計画表は、達成を助ける道具ではなく、遅れを毎日突きつけてくる道具に変わります。
もうひとつは、終わりが決まっていない形です。「算数」「国語」とだけ書かれた計画は、どこまでやれば終わりなのかを子どもに委ねています。大人にとっては当たり前の判断ですが、子どもにとっては「いつ立ち上がっていいのか分からない状態」で机に向かうことになります。終わりが見えない作業は、始めるのにも余計な力が要ります。取りかかりそのものが重くなっている場合は、子どもが勉強を始められない時に、親が整える3つの入口のほうが先に効くことがあります。
三つめは、振り返りが反省会になっている形です。一日の終わりに計画表を開き、できなかった欄に線を引き、「明日はちゃんとやろうね」で締める。この時間は、子どもの側から見ると、自分の一日を採点される時間です。採点される時間は、避けたくなります。避けたくなれば計画表を開かなくなり、開かなければ次の計画も立てられません。計画が続かない原因が本人の意志の弱さに見えるとき、実際には仕組みのほうが先に壊れていることが少なくありません。
そして四つめが、親が計画を持ってしまう形です。予定を決めるのも、進み具合を管理するのも、遅れを指摘するのも親。この配置では、子どもは自分の学習の当事者ではなく、指示を受ける側になります。うまく回っているあいだは効率がよいのですが、親が忙しくなった週に、まるごと止まります。ここから先で見るように、公的な資料が育てようとしているのは、計画を守れる子ではなく、計画を自分で立て直せる子のほうです。
学校は「計画の立て方」を家庭とセットで考えている
小学校学習指導要領(平成29年告示)の総則には、指導計画の作成にあたって配慮する事項として、次の一文が置かれています。「児童が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を、計画的に取り入れるように工夫すること」。短い規定ですが、見通しと振り返りが、授業の付属品ではなく、意図して時間を取るべき活動として位置づけられていることが分かります。
この規定の意味は、解説を読むとさらにはっきりします。解説 総則編は、本項が「児童が自主的に学ぶ態度を育み、学習意欲の向上に資する観点から」設けられたものだと説明したうえで、具体例として、授業の中で見通しを立てたり学習内容を振り返る機会を設けることに加えて、「児童が家庭において学習の見通しを立てて予習をしたり学習した内容を振り返って復習する機会を設けること」を挙げています。家庭学習は、この規定の射程の中にあります。
さらに解説は、確かな学力の育成に関する項で、「家庭との連携を図りながら、児童の学習習慣が確立するよう配慮すること」の重要性を示し、その具体として「宿題や予習・復習など家庭での学習課題を適切に課したり、発達の段階に応じた学習計画の立て方や学び方を促したりするなど家庭学習も視野に入れた指導を行う必要がある」と述べています。「学習計画の立て方や学び方」は、子どもが自然に身につけるものではなく、発達の段階に応じて促されるものだと書かれているわけです。ここが、家庭にとって一番大事な確認かもしれません。計画が立てられないのは、教わっている途中だからです。
なお、この規定の背景として解説が挙げているのは、教育基本法第6条第2項と、学校教育法第30条第2項の「主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない」という条文です。今回の改訂でも学習意欲の向上は引き続き重視され、主体的な学びとの関係では「見通しをもって粘り強く取り組むこと」「自己の学習活動を振り返って次につなげること」が重要になるとされています。順序に注目すると、見通し・粘り強さ・振り返りは、成績を上げるための技法としてではなく、学ぶ意欲を支える条件として並べられています。
全国調査は「計画の立て方が分かるか」を聞いている
毎年4月に行われる全国学力・学習状況調査には、教科の問題とは別に、児童生徒への質問調査があります。令和8年度の調査結果は令和8年8月3日に公表され、その中に、まさにこの記事のテーマに重なる質問がありました。小学校6年生への質問32-1、「学習の計画の立て方や学び方が分かりますか」です。
回答は、「当てはまる」27.9%、「どちらかといえば、当てはまる」51.4%、「どちらかといえば、当てはまらない」17.1%、「当てはまらない」3.5%でした。肯定側が合わせて79.3%ですから、多数派は「分かる」と答えています。ただし否定側は20.6%。小学校の卒業を目前にした学年でも、5人に1人は計画の立て方が分からないと答えていることになります。家庭で「うちの子だけ計画が立てられない」と感じているとしたら、その前提は事実と少し違います。
中学校では、質問32-2として「自分が理解したか、何が分かっていないかを確認するために、学習したことを振り返っていますか」が聞かれています。中学3年生の回答は「当てはまる」17.8%、「どちらかといえば、当てはまる」46.8%、「どちらかといえば、当てはまらない」28.5%、「当てはまらない」6.7%。振り返りのほうは否定側が35.2%と、計画よりさらに多くなります。計画を立てるより、終わったあとに自分の理解を点検するほうが、定着しにくいということです。
報告書には、この回答と教科の平均正答率とのクロス集計も載っています。小学6年生の質問32-1では、「当てはまる」と答えた児童の平均正答率が国語67.9%・算数65.0%、以下、選択肢が否定に向かうにつれて国語61.2%・53.9%・45.8%、算数56.3%・48.0%・40.5%と下がっていきます。令和8年度の小学6年生の平均正答率は全国で国語61.1%・算数56.6%ですから、肯定側と否定側では平均を挟んで20ポイント前後の開きがあることになります。中学3年生の質問32-2でも同じ方向の傾向が見られ、英語3技能のIRTスコアは545・509・476・445と並んでいます。
ただし、この数字の読み方には報告書自身が注意書きを付けています。クロス集計は「相関関係がみられるかを分析したものであり、因果関係を示したものではない」とされ、データから読み取れる内容と実際の状況をよく照らし合わせて分析することが重要だと書かれています。計画の立て方が分かるようになれば点数が上がる、という読み方はできません。よくできている子だから見通しを持ちやすい、という向きの説明も同じくらい成り立ちます。家庭が受け取るべきなのは、点差の大きさではなく、計画と振り返りが学力と一定の関係を持つ領域として調査対象になっているという事実のほうでしょう。
「自らの学習を調整する」は、計画どおりにやることではない
通知表の観点のひとつに「主体的に学習に取り組む態度」があります。この観点は、二つの側面から評価することが求められています。ひとつめは、知識・技能を獲得したり思考力・判断力・表現力等を身に付けたりすることに向けた「粘り強い取組を行おうとする側面」。ふたつめは、その粘り強い取組を行う中で「自らの学習を調整しようとする側面」です。通知表の読み方全般については通知表をどう読むか ― 3つの観点と評定が示していることで扱っています。
問題は、この「調整」という言葉が家庭に届くときの姿です。計画を立てて、そのとおりに実行できることだと受け取られやすいのですが、国立教育政策研究所の「学習評価の在り方ハンドブック(小・中学校編)」は、まったく別の説明をしています。「自らの学習を調整しようとする側面」とは、自らの学習状況を把握し、学習の進め方について試行錯誤するなどの意思的な側面のことだ、と。試行錯誤、つまり、やってみてうまくいかず、やり方を変えてみることそのものが中身だという説明です。
同じ資料には、さらに踏み込んだ一文があります。ここでの評価は、その学習の調整が「適切に行われるか」を必ずしも判断するものではない。学習の調整が知識及び技能の習得などに結びついていない場合には、教師が学習の進め方を適切に指導することが求められる。つまり、調整がうまくいっていないことは、その子の評価を下げる理由ではなく、指導が入る場面だと位置づけられています。家庭に置き換えれば、計画がずれたことは叱る材料ではなく、一緒にやり方を考える合図になります。
この考え方のもとになった中央教育審議会の報告(平成31年1月)は、もう一段はっきりした書き方をしています。「主体的に学習に取り組む態度」については、挙手の回数やノートの取り方などの形式的な活動ではなく、子供たちが自ら学習の目標を持ち、進め方を見直しながら学習を進め、その過程を評価して新たな学習につなげるといった、学習に関する自己調整を行いながら学ぼうとしているかどうかという意思的な側面を捉えて評価することが求められる、と。単に継続的な行動や積極的な発言を行うなど、性格や行動面の傾向を評価するものではないとも明記されています。報告はあわせて、自己の感情や行動を統制する能力や、自らの思考の過程等を客観的に捉える力、いわゆるメタ認知が学問的に重視されていることにも留意すべきだとしています。
ハンドブックには、二つの側面の関係についての注記もあります。自らの学習を全く調整しようとせず粘り強く取り組み続ける姿や、粘り強さが全くない中で自らの学習を調整する姿は一般的ではない、というものです。粘り強さと調整は別々の力ではなく、絡み合って現れる。だとすれば家庭が支えるべきなのは、どちらか一方ではなく、続けられる分量に調整し直す経験を繰り返せる場のほうだ、ということになります。
家庭でできる3ステップ
ここまでを踏まえると、家庭でやることは「もっと詳しい計画表を作る」ではありません。一日の中に、見通し・実行・振り返りの三つが小さく収まるようにすることです。所要時間は合わせて数分で足ります。
ステップ1 始める前に、終わりを一言で決める。「今日は何をやるの?」ではなく、「今日はどこで終わりにする?」と尋ねます。範囲でも時間でもかまいませんが、子どもの口から言ってもらうことが大切です。学習指導要領が求めている見通しは、内容の一覧ではなく、これから何にどう取り組むかの見当を持つことでした。終わりが決まっている作業は、始めるときの負担が軽くなります。親が決めた終わりでは、この効果はほとんど出ません。
ステップ2 短く区切って実行し、途中では口を出さない。小学生であれば、一区切りは15分から20分ほどで十分です。途中で「その解き方でいいの?」と入ると、子どもの中では自分の進め方ではなくなります。ハンドブックが評価しようとしているのは、進め方について試行錯誤する姿でした。試行錯誤には、うまくいかない時間が含まれます。その時間を家庭が待てるかどうかが、実際にはいちばん難しいところです。
ステップ3 終わったあと、二つだけ振り返る。できたこと・できなかったことを全部数えるのではなく、「うまくいったのはどれ?」と「次に一つだけ変えるなら?」の二問に絞ります。中学3年生でも3人に1人が振り返っていないと答えている領域ですから、質問を二つに減らすのは手抜きではなく現実的な設計です。答えが「特にない」でも構いません。答え合わせと間違い直しを、親子のバトルにしないで扱った間違い直しは、この振り返りの最も具体的な形にあたります。
家庭で試す3つの工夫
家庭で試す3つの工夫
- ① 計画表の欄を、一日1行に減らす:細かい計画表ほど、守れなかった欄が目立ちます。書く欄を一日1行にすると、書けることは「今日の終わり」だけになります。逆説的ですが、情報量が減るほど計画表は使われ続けます。長期休みの計画表を作り直すときは、行を増やす方向ではなく減らす方向で試してみてください。学習リズムそのものが崩れている時期の立て直しは新学期・進級で学習リズムが崩れる家庭への立て直し方でも整理しています。
- ② 「分かっていないところが見つかった日」を成功として扱う:中学校の質問32-2は、振り返りの目的を「自分が理解したか、何が分かっていないかを確認するために」と説明しています。目的が確認である以上、分からない箇所が出てくるのは失敗ではなく、振り返りが機能した証拠です。家庭でも「今日はどこが分からなかった?」と聞き、出てきたら「見つかったならよかった」と受け止める。この反応が続くと、子どもは分からない箇所を隠さなくなります。
- ③ 週に一度、計画そのものを直す5分を取る:ずれた計画を守らせ続けるより、計画のほうを現実に合わせて直します。日曜の夜などに5分だけ、「先週、無理があったのはどこ?」を一緒に見る時間を作る。ハンドブックの言う試行錯誤は、まさにこの作業のことです。計画は守る対象ではなく、直す対象なのだという扱いを、家庭が先に見せておくと、子どもも計画を捨てずに手直しできるようになります。
声かけの言い換え
声かけの言い換え例
「計画どおりにできてないじゃない」→ 計画が守れたかどうかの判定になる。公的な資料が見ているのは、調整が適切に行われたかどうかではなかった。
「この計画、どこが無理そうだった?」→ 直す対象を計画の側に置ける。子どもは自分を守らずに、進め方の話ができる。
「今日は何をやるの?」→ 内容の申告になり、終わりが決まらない。始めるときの重さが変わらない。
「今日はどこで終わりにする?」→ 終わりを子ども自身が決める。見通しを持つ、という活動の形にいちばん近い。
家庭で確認するチェックリスト
家庭で確認するチェックリスト
- 計画表に書く欄が、一日1〜2行に収まっている。
- 始める前に「どこで終わりにするか」を、子どもの口から言えている。
- 振り返りが、できた・できなかったの採点ではなく、次の一手を決める時間になっている。
- 計画がずれたとき、子どもを直すのではなく計画を直す選択肢が家庭にある。
- 「主体的に学習に取り組む態度」を、提出物の数や挙手の回数と同じものとして受け取っていない。
気をつけたいこと・相談先
家庭の工夫だけで抱え込まないために
ここで紹介したのは、学習指導要領の解説と全国調査、評価に関する公的資料から読み取れる一般的な考え方です。実際に家庭へ求められることは、学校や自治体、学年によって違います。学校からの案内や担任の先生の説明と食い違う場合は、目の前の学校の説明が優先します。また、引用した全国調査の質問32-1・32-2はランダム方式の質問項目で、児童生徒はその中から1項目に回答する形で実施されています。全員が同じ質問に答えた結果ではない点も、数字を受け取るときの前提になります。
そして、計画が立てられない・振り返りが続かないという様子は、意欲だけの問題とは限りません。見通しを持つことや段取りを組むことに強い困りごとがあり、家庭の工夫だけでは動かない場合もあります。同じ働きかけを何か月も続けて変化がない、宿題の時間に強い不安や体調の変化が出る、学校でも同じ様子が続いていると聞いている。そうしたときは、家庭で抱え込まずに、担任の先生や学校、自治体の教育相談窓口に相談するという選択肢があります。この記事は、学習の困難や発達の特性を判定するものではありません。
出典・参考
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総則編」(平成29年7月)
- 国立教育政策研究所「令和8年度 全国学力・学習状況調査 報告書【質問調査】」(令和8年8月3日公表)
- 国立教育政策研究所「学習評価の在り方ハンドブック(小・中学校編)」(令和元年6月)
- 中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」(平成31年1月21日)
- 国立教育政策研究所「令和8年度 全国学力・学習状況調査 小学校調査 実施概況」(令和8年7月16日公表)
この記事について
本記事は、学習の計画と振り返りについて公的機関が公表している一般的な情報を整理したものであり、特定の学習方法・教材・学習サービスを評価したり推奨したりするものではありません。また、学力の向上を保証するものでも、学習の遅れや発達の特性を判定するものでもありません。家庭に依頼される事項や指導の進め方は学校・自治体によって異なるため、実際の運用については通っている学校の説明が優先します。学習の様子で気になることが続く場合は、担任の先生や学校、自治体の教育相談窓口にご相談ください。学習指導要領や各種調査の結果、評価の考え方は改訂・更新により変わることがあるため、最新の情報は文部科学省・国立教育政策研究所などの公式サイトでご確認ください。