3行まとめ
- 通知表そのものには法令上の規定も、国が示した様式の例示もありません。学校ごとに形が違うのが前提で、比べる相手は他校でも兄姉の頃でもなく、同じ子の前の学期です。
- 観点は「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つ。「態度」は挙手の回数やノートの取り方といった形式的な活動を評価するものではないと、国の報告がはっきり否定しています。
- 観点のA・B・Cを評定に総括する方法は、各学校があらかじめ決めておくものとされています。だから数字だけを見ず、その背後にある学習の姿を思い描くこと、そして分からなければ学校に聞くことが、制度上も想定されています。
この記事でわかること
- 通知表と指導要録は何が違い、どちらに法的な根拠があるのか
- 3つの観点がそれぞれ何を見ていて、テストの点とどうずれるのか
- 「主体的に学習に取り組む態度」が評価しているものと、していないもの
- 観点のA・B・Cが評定になるまでに、学校が何を決めているのか
- いま国で進んでいる、通知表の形そのものの見直しの議論
記号を数え終わったあと、何を言えばいいのか
通知表を受け取る日の家庭には、独特の緊張があります。子どもはランドセルから出すタイミングを計り、親は平静を装いながら、開いた瞬間にはもう記号を数え始めている。この「数える」という読み方は、悪気があってそうしているわけではありません。ほかに読み方を教わっていないから、数える以外にやりようがないのです。
数え終わったあとに続く言葉も、だいたい決まっています。増えていれば「がんばったね」、減っていれば「どうしたの」、変わらなければ「まあ、この調子で」。どれも子どもの学期を言い当ててはいません。子どもの側も、返す言葉を持っていないことが多い。「なんでこれがBなの」と聞かれて答えられる親は少なく、聞かれた子どもも「分からない」としか言えない。こうして通知表は、開いた日のうちに引き出しにしまわれます。
もうひとつよく起きるのが、記号どうしの食い違いに引っかかることです。テストはだいたい返ってきていて、点数も見ている。そう悪くなかったはずなのに、その教科の観点のどこかがBになっている。あるいは、家では黙々と宿題をやっているのに「主体的に学習に取り組む態度」がBで、「うちの子はまじめなのに」と釈然としない気持ちが残る。この食い違いは、通知表の読み方でつまずく典型的な場所です。そして多くの場合、これは学校の付け間違いではなく、その欄が見ているものが、親の想像とずれているために起きています。
ここから先は、その「ずれ」を一つずつほどいていきます。順番は、まず通知表という書類そのものの位置づけ、次に3つの観点が見ている中身、そして観点が評定になるまでの道すじです。制度の話が続きますが、どれも最後は「受け取った日に何を見て、何を聞けばいいか」に着地します。
通知表と指導要録は、別のものです
意外に知られていないところから始めます。学校が子どもの学習状況を記録する書類には、大きく二つあります。指導要録と、通知表です。この二つは、法的な位置づけがまったく違います。
指導要録には、はっきりした根拠があります。学校教育法施行規則第24条は「校長は、その学校に在学する児童等の指導要録(学校教育法施行令第三十一条に規定する児童等の学習及び健康の状況を記録した書類の原本をいう。)を作成しなければならない」と定めています。同条は続けて、児童等が進学した場合は指導要録の抄本又は写しを作成して進学先の校長に送付しなければならない、転学した場合も写しを作成して送付しなければならない、と規定しています。つまり指導要録は、作成が義務づけられ、進学・転学とともに引き継がれていく公式の記録です。
一方、通知表はどうか。文部科学省が中央教育審議会に提出した資料「学習評価に関する法令等の規定、資料等」は、通知表(通信簿)を「児童生徒の学習状況について保護者に対して伝えるもの」と説明したうえで、「法令上の規定や、様式に関して国として例示したものはない」と明記しています。作成の義務も、書式のひな形も、国の側には存在しないということです。
この整理は、平成31年3月29日に出された「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」(30文科初第1845号)の書きぶりとも合っています。この通知は学習評価の円滑な実施に向けた取組を述べるなかで「域内の学校が定めるいわゆる通知表」という言い方をし、その記載事項が指導要録の「指導に関する記録」に記載する事項をすべて満たす場合には、設置者の判断により指導要録の様式を通知表の様式と共通のものとすることが現行の制度上も可能である、としています。通知表は「域内の学校が定める」もの、というのが国の前提です。
回数についても同じです。中央教育審議会の教育課程企画特別部会が令和7年9月25日にまとめた論点整理は、現在の仕組みを説明する箇所で「各学校では通知表等の形で学期区分ごと(年に2〜3回)に評定を示すのが慣例」であり、指導要録上は学年ごとに1つの評定欄がある、と整理しています。学期ごとに評定が出ること自体が、法令で決まった手続きではなく慣例だ、ということです。
ここまでを家庭の言葉に置き直すと、こうなります。通知表の様式・段階の数・言葉づかい・所見の量は、学校によって違って当たり前です。よその学校の通知表と比べても、上の子が同じ学年だった頃の通知表と比べても、そのまま比較は成り立ちません。読むべきなのは、目の前の一枚と、同じ学校が同じ様式で出した前の学期の一枚だけです。この一点を先に置いておくと、通知表をめぐる不要な比較がかなり減ります。
3つの観点は、それぞれ何を見ているのか
次に、教科ごとに並んでいる観点そのものを見ていきます。現在の3観点は、平成29年に改訂された学習指導要領と一組になっています。この改訂で、各教科等の目標と内容が「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」という資質・能力の三つの柱で再整理されました。これを受けて、先ほどの平成31年3月29日の通知が、観点別学習状況の評価の観点についても「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に整理して示し、設置者において適切な観点を設定することとしたのです。通知表に並ぶ3つの欄は、学習指導要領の目標の立て方そのものから降りてきています。
では、それぞれが何を見ているのか。文部科学省と国立教育政策研究所が令和元年6月に作成した「学習評価の在り方ハンドブック(小・中学校編)」は、3観点を次のように説明しています。
「知識・技能」は、各教科等における学習の過程を通した知識及び技能の習得状況について評価を行うとともに、それらを既有の知識及び技能と関連付けたり活用したりする中で、他の学習や生活の場面でも活用できる程度に概念等を理解したり、技能を習得したりしているかを評価します。単に覚えているかではなく、ほかの場面でも使える形で理解しているか、というところまでが射程に入っています。
「思考・判断・表現」は、各教科等の知識及び技能を活用して課題を解決する等のために必要な思考力、判断力、表現力等を身に付けているかどうかを評価します。ハンドブックは評価方法にも触れ、ペーパーテストのみならず、論述やレポートの作成、発表、グループや学級における話合い、作品の制作や表現等の多様な活動を取り入れたり、それらを集めたポートフォリオを活用したりするなど、評価方法を工夫することが考えられるとしています。
「主体的に学習に取り組む態度」は、知識及び技能を獲得したり、思考力、判断力、表現力等を身に付けたりするために、自らの学習状況を把握し、学習の進め方について試行錯誤するなど自らの学習を調整しながら学ぼうとしているかどうかという、意思的な側面を評価します。この観点については次の節でくわしく扱います。
この3つを並べてみると、家庭でよく起きる食い違いの正体が見えてきます。テストの点が良かったのに、その教科のどこかの観点がBだった。これは矛盾ではありません。ペーパーテストで測りやすいのは「知識・技能」に寄った部分が中心で、「思考・判断・表現」は論述やレポート、発表、話合い、作品といった別の場面でも見られているからです。テストの答案は、通知表に映っている学習のうちの一部でしかない。逆に言えば、テストの点だけで通知表を予想しようとすると、必ずどこかでずれます。
もうひとつ押さえておきたいのは、通知表に映らない部分があることです。ハンドブックによれば、「学びに向かう力、人間性等」には、①「主体的に学習に取り組む態度」として観点別評価を通じて見取ることができる部分と、②観点別評価や評定にはなじまず、こうした評価では示しきれないことから個人内評価を通じて見取る部分がある、とされています。②にあたるのが「感性や思いやり」など、一人ひとりのよい点や可能性、進歩の状況です。平成31年の通知は、この個人内評価の対象となるものについては、児童生徒が学習したことの意義や価値を実感できるよう、日々の教育活動等の中で児童生徒に伝えることが重要であり、特に「感性や思いやり」など一人一人のよい点や可能性、進歩の状況などを積極的に評価し児童生徒に伝えることが重要である、としています。記号の欄に出てこないからそれが評価されていない、ということではないわけです。
「態度」はまじめさの点数ではない
3つの観点のうち、家庭でもっとも誤解されやすいのが「主体的に学習に取り組む態度」です。そして、この誤解は国の側もはっきり自覚しています。
中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会が平成31年1月21日にまとめた「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」は、学習評価について指摘されている課題を列挙するなかで、こう書いています。学校や教師の状況によっては、現行の「関心・意欲・態度」の観点について、挙手の回数や毎時間ノートを取っているかなど、性格や行動面の傾向が一時的に表出された場面を捉える評価であるような誤解が払拭し切れていない、と。同じ一文は、平成31年3月29日の通知にもそのまま引き継がれています。つまり、「態度」の欄を手の挙げ方やノートの取り方で決めるという理解は、国が課題として名指しした誤解のほうです。
報告はさらに踏み込んで、こう述べています。「主体的に学習に取り組む態度」の評価は、知識及び技能を習得させたり、思考力、判断力、表現力等を育成したりする場面に関わって行うものであり、この観点のみを取り出して、例えば挙手の回数など、その形式的態度を評価することは適当ではなく、他の観点に関わる児童生徒の学習状況と照らし合わせながら学習や指導の改善を図ることが重要である、と。「態度」だけを独立した性格評価として扱うことを、正面から否定しているわけです。
では何を見ているのか。報告は、この観点を二つの側面から評価することが求められるとしています。①知識及び技能を獲得したり、思考力、判断力、表現力等を身に付けたりすることに向けた粘り強い取組を行おうとする側面と、②①の粘り強い取組を行う中で、自らの学習を調整しようとする側面、の二つです。ハンドブックは、この二つは実際の学びの中では別々ではなく相互に関わり合いながら立ち現れるものであり、たとえば自らの学習を全く調整しようとせず粘り強く取り組み続ける姿や、粘り強さが全くない中で自らの学習を調整する姿は一般的ではない、と補足しています。
ここで大切な線引きがもう一つあります。報告は、評価の対象とする学習の調整に関する態度は、必ずしもその学習の調整が「適切に行われているか」を判断するものではない、としています。調整が知識及び技能の習得や思考力、判断力、表現力等の育成に結び付いていない場合には、児童生徒が適切に学習を調整できるよう、その実態に応じて教師が学習の進め方を適切に指導するなどの対応が求められる、と続きます。つまり、勉強のやり方がまだ上手でないことは、この観点でマイナスに数えるためのものではなく、教える側が手を入れる合図として位置づけられています。
もう一点、家庭がとても気にしがちな「態度だけが低い」という状態についても、報告は見通しを述べています。指導と評価の取組を重ねながら授業を展開することにより、単元末や学期末、学年末の結果として算出される3段階の観点別学習状況の評価については、観点ごとに大きな差は生じないものと考えられる、というのがそれです。単元の導入の段階ではばらつきが生じるとしても、学期末や学年末の段階では観点間の差は大きくならないはずだ、という設計になっている。だとすれば、「態度」だけが他の観点から極端に離れている状態は、それ自体が話題にする価値のある手がかりになります。責める材料としてではなく、質問の種としてです。
家庭の実感に引き寄せるなら、こう言い換えられます。「態度」の欄が示しているのは、まじめさでも従順さでもありません。自分がどこまで分かっていて、どこで詰まっているかをつかみ、やり方を変えながら続けようとしているか。家で黙々と宿題をこなしていても、間違えた問題をそのまま流していれば、ここは高く出にくい。逆に、授業中に静かで目立たなくても、分からないところに印を付けて後から質問しているなら、その姿はこの観点の中身そのものです。
A・B・Cが評定になるまでに、学校が決めていること
観点別の評価と、教科ごとの評定。この二つの関係も、家庭では混ざりやすいところです。
平成31年の通知は、両者の役割をこう整理しています。各教科等の児童生徒の学習状況を観点別に捉え、各教科等における学習状況を分析的に把握することが可能なのが観点別学習状況の評価。各教科等の学習状況を総括的に捉え、教育課程全体における各教科等の学習状況を把握することが可能なのが評定。双方の特長を踏まえつつ、その後の指導の改善等を図ることが重要である、と。分析用のものさしと、全体を見渡すためのものさし、という関係です。
記号の意味も定まっています。観点別学習状況は、学習指導要領に示す各教科の目標に照らして、その実現状況を観点ごとに評価し、「十分満足できる」状況と判断されるものをA、「おおむね満足できる」状況と判断されるものをB、「努力を要する」状況と判断されるものをC、のように区別して記入するとされています。評定は、小学校では第3学年以上で3段階(3が「十分満足できる」、2が「おおむね満足できる」、1が「努力を要する」)、中学校では5段階(5が「十分満足できるもののうち、特に程度が高い」、4が「十分満足できる」、3が「おおむね満足できる」、2が「努力を要する」、1が「一層努力を要する」)です。小学校の低学年では評定は行いません。
問題は、観点のA・B・Cが、どうやって教科ひとつの数字になるのかという部分です。国立教育政策研究所が令和2年3月に公表した「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料」は、ここをかなり具体的に説明しています。観点別学習状況の評価の評定への総括は、各観点の評価結果をA・B・Cの組合せ、又は、A・B・Cを数値で表したものに基づいて総括し、その結果を小学校では3段階、中学校では5段階で表す、というのが基本です。
そのうえで、各観点とも同じ評価がそろう場合については、小学校では「BBB」であれば2を基本としつつ「AAA」であれば3、「CCC」であれば1とするのが適当であると考えられ、中学校では「BBB」であれば3を基本としつつ「AAA」であれば5又は4、「CCC」であれば2又は1とするのが適当であると考えられる、とされています。そして肝心なのはその次です。それ以外の場合は、各観点のA・B・Cの数の組合せから適切に評定することができるよう、あらかじめ各学校において決めておく必要がある、と書かれているのです。
観点ごとの記録を一つの記号にまとめる段階でも同じことが言われています。何回か行った評価結果のA・B・Cの数を基に総括する方法や、A=3、B=2、C=1のように数値に置き換えて合計したり平均したりする方法が例示されたうえで、同数の場合や三つの記号が混在する場合の総括の仕方をあらかじめ各学校において決めておく必要がある、とされています。つまり、「AAB」がAになるのかBになるのかといった線引きは、国が一律に決めているのではなく、学校ごとの取り決めなのです。
さらに参考資料は、記号から数字を出す作業そのものに釘を刺しています。観点別学習状況の評価結果に表された学習の実現状況には幅があるため、機械的に評定を算出することは適当ではない場合も予想される、というのがそれです。そして評定の数値について、こう述べています。この数値を児童生徒の学習状況について三つ(小学校)又は五つ(中学校)に分類したものとして捉えるのではなく、常にこの結果の背景にある児童生徒の具体的な学習の実現状況を思い描き、適切に捉えることが大切である、と。
この一文は、学校の先生に向けて書かれたものです。けれど、通知表を受け取る家庭にとっても、そのまま読み方の指針になります。数字を分類のラベルとして受け取らず、その背後にどんな学習の姿があったのかを思い描く。それが、この一枚の紙の正しい使い方だ、ということです。
そして参考資料は、この節の締めくくりに次のように書いています。各学校では観点別学習状況の評価の観点ごとの総括及び評定への総括の考え方や方法について、教師間で共通理解を図り、児童生徒及び保護者に十分説明し理解を得ることが大切である、と。保護者に説明することは、制度の側で最初から想定されている手順なのです。平成31年の通知も、学習評価の方針を事前に児童生徒と共有する場面を必要に応じて設けることは、学習評価の妥当性や信頼性を高めるとともに、児童生徒自身に学習の見通しをもたせる上で重要である、としています。
にもかかわらず、実態としては共有が十分でないことも、国は把握しています。平成31年の報告が引いている平成29年度文部科学省委託調査「学習指導と学習評価に対する意識調査報告書」によれば、学習のねらいや評価の観点について事前に児童生徒や保護者に伝えていない教師の割合(どちらかと言えば伝えていないと回答した教師を含む)は、小学校で40.2%、中学校で20.9%、高等学校で43.9%でした。小学校では4割の教師が、事前には伝えていないと答えていたわけです。通知表の付け方を知らないまま受け取っているとしたら、それは親の勉強不足の話ではありません。聞いてよい、というより、聞くことが想定されている情報です。
通知表の形そのものが、いま見直しの議論の中にある
ここまで整理してきた仕組みは、令和2年度から順次実施されている現行の学習指導要領に対応したものです。ただ、この形がこの先も続くとは限りません。いま、次の学習指導要領に向けた検討が進んでおり、学習評価はその主要な論点のひとつになっています。
令和6年12月の文部科学大臣による諮問を受けて、中央教育審議会の教育課程企画特別部会が13回にわたる検討の結果を暫定的にまとめたのが、令和7年9月25日の論点整理です。その第六章は「豊かな学びに繋がる学習評価の在り方」にあてられています。
論点整理は、現行の仕組みの課題として、評価場面の精選が十分進まず、毎回の授業で複数の観点で「記録に残す評価」を行うなど、評価のために過度な労力が割かれ、学習や指導の改善に十分に注力できていない実態も見られること、また「思考・判断・表現」についてペーパーテスト以外の多面的・多角的な評価が十分広がっていないことなどを挙げています。そのうえで、「主体的に学習に取り組む態度」については、理解が難しく目指す資質・能力を適切に反映した評価となりにくい、負担が重いといった指摘もあるとしています。
示されている方向性は、観点別評価の評価観点としては存置しつつも、各教科ごとに目標に準拠した評価として行うのではなく、教育課程全体を通じた個人内評価として行う方法に改める、というものです。そうすることで、過度な評価材料集めを抑制しつつ、多様な子どもたち一人ひとりのよさや成長を自然な形で見取り、肯定的に評価できるようにすべきだ、とされています。これを前提とすると「感性・思いやり」と「主体的に学習に取り組む態度」を分ける必要がなくなるため、評価観点としては単に「学びに向かう力・人間性」とすることが考えられる、とも書かれています。あわせて、「思考・判断・表現」の観点別評価に、特に表出した要素があった場合に「○」を付記する方向で検討すべきとされ、評定への総括については、課程の修了認定を行う学年末にのみ行うことが可能であることを明確に示す方向が示されています。
ただし論点整理は、同じ箇所で強い注意書きも添えています。これらの方向性は「学びに向かう力、人間性等」の資質・能力が一層重要になることを踏まえ、その特質に応じた評価の在り方を改善するものであって、この評価を「しなくてもよくなる」「軽視してよい」といった誤った理解とならないよう、具体的な運用の設計と趣旨の周知・徹底を図るべきである、というものです。加えて、こうした方向性は、不登校の児童生徒に対して特に「主体的に学習に取り組む態度」の評価を付けづらく、評定もつけられないという実態の改善に寄与することも期待される、と述べられています。
この節の趣旨は、いま持っている通知表の読み方が近いうちに古くなる、と不安にさせることではありません。むしろ逆で、ここで整理した「観点は何を見ているのか」「数字の背後にある学習の姿を思い描く」という読み方は、観点の並びが変わっても残る部分です。変わりうるのは欄の名前や数のほうで、通知表が学習の様子を家庭に伝えるための書類だという役割は変わりません。ただし、具体的な観点名や段階の数、評定を出す時期については、今後数年のあいだに変更が入る可能性があります。最新の状況は文部科学省や国立教育政策研究所の公式サイトで、実際の運用は通っている学校で確認してください。
受け取った日の4ステップ
ここまでの内容を、通知表を受け取った日の手順に落とし込みます。かかる時間は、親子で10分ほどです。
① 数える前に、教科ごとに横に見る。Aがいくつ、Bがいくつという縦の数え方をやめて、教科ひとつずつを横に見ます。国語の3つの観点はどう並んでいるか。算数はどうか。国が想定しているのは、学期末の段階では観点ごとに大きな差は生じないという状態ですから、そろっている教科は「その教科は全体としてこのあたり」と読み、そろっていない教科だけを気に留めればよいことになります。この見方に切り替えるだけで、目に入る情報量がぐっと減ります。
② 比べる相手を、前の学期の同じ通知表に限る。通知表には法令上の様式がなく、学校ごとに形が違います。よその学校の話も、上の子の頃の記憶も、比較の材料にはなりません。手元に前の学期の通知表があれば並べ、同じ教科の同じ観点がどう動いたかだけを見ます。動いていない項目は、そのまま維持できているということです。
③ 観点どうしのずれを、質問の種にする。①で見つけた、一つの観点だけが離れている教科について、子どもと一緒に心当たりを探します。ここで有効なのは、「なんでBなの」ではなく「この教科って、どんな課題があった?」という聞き方です。「思考・判断・表現」がレポートや発表や話合いでも見られていること、「主体的に学習に取り組む態度」が自分の学習の進め方を見直す姿を見ていることを思い出せば、聞くべきことは自然に決まります。子どもが答えられなければ、それは学校に持っていく質問です。
④ 分からない項目は、学校に聞くと決めておく。③で残った疑問は、次の面談や連絡帳で聞きます。「うちの子の評価が低いのはおかしい」ではなく、「この観点は、どんな場面を見て付けていますか」「学校では、観点から評定にどうまとめていますか」という形です。国立教育政策研究所の参考資料が、総括の考え方や方法について保護者に十分説明し理解を得ることが大切だと明記している以上、これは学校にとっても想定内の問いです。答えを聞けば、次の学期に家庭で見る場所も決まります。答え合わせと直しの時間の作り方については答え合わせと間違い直しを、親子のバトルにしない、教科ごとのつまずきの見つけ方については算数につまずいた時、家庭で「どこで止まったか」を見つけるもあわせてご覧ください。
家庭で試す3つの工夫
家庭で試す3つの工夫
- ① 通知表を「持ち帰った日」だけのものにしない:受け取った日に一度読んだら、引き出しにしまわず、次の学期が始まって1か月ほどしたころにもう一度開きます。前の学期に気になった観点について、今どうなっているかを子どもに聞くだけで十分です。評価は学期末の一点で決まるのではなく、日々の学習の積み重ねを単元や題材のまとまりごとに見ていくものだと国の通知も述べています。学期のなかばに一度戻ると、その積み重ねの途中に家庭が立ち会えます。
- ② 「態度」の欄は、勉強のやり方の話として扱う:この観点が見ているのは、自分の学習状況をつかみ、進め方を試行錯誤する姿です。だから家庭で扱うなら、性格ではなく方法の話にします。「間違えた問題、そのあとどうしてる?」「分からないところに印は付けてる?」「先生に聞いたことある?」。どれも答えが出れば、そのまま次の学期の行動になります。やり方がまだ上手でないことは、報告の言い方を借りれば、教える側が手を入れる合図です。
- ③ 所見欄を先に読む:記号の欄より先に、文章で書かれた所見を読みます。指導要録の文章記述欄は要点を箇条書きにするなど必要最小限にとどめる方向で簡素化されており、その一方で、日常の指導の場面でのフィードバックや、通知表や面談などの機会を通じた保護者との情報共有を充実させることが重要だと報告は述べています。所見の一文は、その学期に先生が一番伝えたかったことである可能性が高い。記号を数えたあとでは目に入らなくなるので、順番を先にします。
声かけの言い換え
声かけの言い換え例
「Aがいくつ増えた?」→ 数を競う枠組みになり、教科の中身にも学期の様子にも話が向かわない。
「この教科、どんな課題があった?」→ 観点が見ている場面(レポート・発表・話合い・作品)に話が戻り、子どもが答えやすい。
「態度がBって、授業でふざけてたんじゃないの?」→ この観点が評価していない「性格や行動面の傾向」に読み替えてしまっている。
「間違えた問題、そのあとどうしてた?」→ 自分の学習を調整する姿そのものを聞く問いになり、次の学期の行動につながる。
通知表を読むときのチェックリスト
家庭で確認するチェックリスト
- 記号の数を数える前に、教科ごとに3つの観点を横に見ている。
- 比べる相手を、同じ学校が出した前の学期の通知表に限っている。
- 「主体的に学習に取り組む態度」を、性格やまじめさの評価として読んでいない。
- テストの点と観点の評価がずれても、付け間違いとは考えていない。
- 分からない項目を、次の面談や連絡帳で聞くと決めている。
気をつけたいこと・相談先
家庭の工夫だけで抱え込まないために
ここで紹介したのは、国が示している学習評価の仕組みと、それを踏まえた通知表の一般的な読み方です。通知表には法令上の様式がなく、観点の表示のしかたも、段階の数も、所見の量も学校によって異なります。この記事の説明と目の前の一枚が食い違う場合は、目の前の一枚と学校の説明のほうが優先します。また、この記事は特定の学校の評価を検証したり、評価の妥当性を判定したりするものではありません。記号の並びから子どもの能力や将来を判断しないこと、きょうだいや友だちの通知表と比べないことが、いちばん大事な線引きです。
中学生の家庭では、通知表の評定が高校入試の調査書につながることから、話がどうしても入試の色を帯びます。ここで思い出しておきたいのが、平成31年の報告の一文です。中学校における学習評価は学習や指導の改善を目的として行われているものであり、高等学校入学者選抜に用いることを一義的な目的として行われるものではない、と明記されています。同じ報告は、高等学校入学者選抜において調査書が大きな比重を占めていることが中学校の学習評価や学習活動に大きな影響を与えていることにも触れ、中学生が入学時から常に「内申点をいかに上げるか」を意識した学校生活を送らざるを得なくなっている状況があり、本意でないまま授業中に挙手したりするなど、自由な議論や行動の抑制につながっている場合もある、と指摘しています。家庭が評定を入試の点数として扱うほど、この構図は強まります。入試に関わる具体的な扱いは都道府県や学校ごとに違うため、実際の選抜方法は各教育委員会や志望校の公表資料でご確認ください。進路の話の切り出し方については進路の話で子どもを追い込まない聞き方もあわせてご覧ください。
評価の内容に納得がいかないときや、記載の意味が分からないときは、まず担任の先生にたずねるのが確実です。国立教育政策研究所の参考資料も、総括の考え方や方法について保護者に十分説明し理解を得ることが大切だとしています。担任に聞きづらい事情があるときは、学年主任や教頭・校長といった管理職に相談する道もあり、学校とのやりとりだけでは行き詰まる場合には、市区町村や都道府県の教育委員会の相談窓口を利用する選択肢もあります。また、評価を受け取ったあとに子どもが強く落ち込んでいる、学校に行きたがらないといった様子が続く場合は、成績の話から離れて、スクールカウンセラーや自治体の教育相談窓口に相談することもできます。家庭学習の土台づくり全般については、家庭学習の土台のほかの記事もあわせてご覧ください。学習指導要領や評価の仕組みは改訂により変わることがあるため、最新の情報は文部科学省・国立教育政策研究所などの公式サイトでご確認ください。
出典・参考
- 文部科学省「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」(30文科初第1845号・平成31年3月29日)
- 中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」(平成31年1月21日・文部科学省)
- 文部科学省・国立教育政策研究所教育課程研究センター「学習評価の在り方ハンドブック(小・中学校編)」(令和元年6月)
- 国立教育政策研究所教育課程研究センター「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料【小学校 国語】」(令和2年3月)
- 中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会 教育課程企画特別部会「論点整理」(令和7年9月25日・文部科学省)
- 文部科学省 中央教育審議会 配付資料「学習評価に関する法令等の規定、資料等」
この記事について
本記事は、通知表と学習評価の仕組みについて公的機関が公表している一般的な情報を整理したものであり、特定の学校の評価内容を検証したり、その妥当性を判定したりするものではありません。また、成績の向上を保証したり、進学の可否を判断したりするものでもありません。通知表には法令上の様式がなく、観点の表示のしかたや段階の数、所見の書き方は学校によって異なります。実際の評価の付け方や記載の意味については、通っている学校の説明が優先します。評価の内容について気になることがあるときは、担任の先生や学校、自治体の教育相談窓口にご相談ください。学習指導要領や学習評価の仕組みは改訂により変わることがあり、次期学習指導要領に向けた検討も進んでいるため、最新の情報は文部科学省・国立教育政策研究所などの公式サイトでご確認ください。