3行まとめ

  1. 「能力」より「過程・工夫」をほめるほうが、挑戦を続けやすい。
  2. 「すごい」を、見たことの描写に変えると、子どもが自分で価値に気づく。
  3. 自己肯定感はほめ言葉だけでは育たない。受容と「できた実感」が土台。

この記事でわかること

  • 「ほめれば伸びる」の落とし穴
  • 能力ほめ・過程ほめの違いと、描写するほめ方
  • 自己肯定感を支える土台と、ごほうびとの付き合い方

「ほめれば伸びる」の落とし穴

ほめることは、子どもとの関係を温め、やる気を支える大切な関わりです。ただ、「とにかくたくさん、大げさにほめる」が、いつもプラスに働くとは限りません。たとえば「天才!」「100点えらい!」と結果や能力ばかりほめられると、子どもは「次もそうでなきゃ」と感じ、失敗しそうな難しいことを避けるようになることがあります。また、過剰なほめは、ほめられないと不安になる原因にもなり得ます。

とくに、自信をなくしている子に「すごいね、天才だね」と大げさにほめると、かえって逆効果になることがある、という研究もあります。本人は「そんなにすごくない自分がバレたら」と感じ、難しいことから逃げてしまう——。ほめは多ければよいのではなく、中身と伝わり方が大事だということです。ほめを「やる気のスイッチ」のように使うより、子どもの取り組みに自然に関心を向けることのほうが、結果的に効いてきます。

能力をほめるか、過程をほめるか

ほめる対象を「能力・結果」から「過程・工夫」へ移すのがポイントです。「頭がいいね」ではなく「いろいろなやり方を試したね」「最後まで続けたね」。取り組み方や工夫に目を向けると、子どもは「努力すれば変えられる」と感じやすく、難しいことにも挑戦を続けやすくなる、と整理されています。ただし、この効果には個人差があり、研究でも議論が続いています。「絶対の正解」ではなく、一つの考え方として取り入れてください。コツは、結果を無視することではなく、結果に至るまでの「どうやって」に一言ふれること。100点なら「ここまで毎日コツコツやってきたもんね」と、見えていた過程を添えるだけで十分です。

能力・結果をほめると失敗を恐れ難しいことを避けやすく、過程・工夫をほめると挑戦や努力を続けやすい、という比較図。効果には個人差があり研究でも議論がある。
図1:能力より過程に目を向けると、挑戦を続けやすくなります(一つの考え方)。

「すごい」を描写に変える

もう一つのコツは、評価のことばを「描写」に変えること。「すごい!」「えらい!」という評価だけだと、何が良かったのか伝わりません。代わりに、見たこと・気づいたことをそのまま言葉にします。「色をたくさん使って、にぎやかな絵だね」「最後まで自分でやり切ったね」。描写されると、子どもは自分で「自分はやり切れたんだ」と価値に気づき、内側からの自信につながります。

描写のほめ方には、もう一つ良い点があります。評価は「上から判定する」響きを持ちますが、描写は「ちゃんと見ているよ」というメッセージになります。子どもは、評価されること以上に「見てもらえている」ことに安心するものです。うまく言葉が見つからない時は、ただ「よく見ていたよ」と伝えるだけでも十分。無理にほめ言葉をひねり出すより、関心を向けた事実を伝えるほうが、自然で温かく響きます。

評価のことば(すごい・えらい)を、描写のことば(自分で最後までやり切ったね)に変える図。見たことをそのまま伝えると子どもが自分で価値に気づく。
図2:見たことをそのまま伝えると、子どもが自分で価値に気づきます。

自己肯定感は、ほめ言葉だけでは育たない

「たくさんほめれば自己肯定感が高まる」と思われがちですが、実はそう単純ではありません。自己肯定感の土台は、①どんな時も受け入れられているという「ありのままの受容」と、②自分の力でやれたという「できた実感」の両方です。ほめ言葉は、この実感を言葉にして後押しするもの。逆に、中身のともなわない過剰なほめは、かえって「本当の自分はダメだ」という不安を強めることもあります。できなくても大切にされる経験こそが、揺るがない土台になります。

言いかえると、自己肯定感は「特別にすごい自分」への評価ではなく、「ふつうの自分でも受け入れられている」という安心から育ちます。だから、テストや習い事の結果と関係なく、何でもない日に「あなたがいてくれてうれしい」と伝わっていることが、いちばんの支えになります。ほめるのが上手かどうかより、ふだんの関わりの温度のほうが、ずっと大きく効いてくるのです。

自己肯定感を支える2つの土台の図。①ありのままの受容(できなくても大切な存在)と②できた実感(本物の努力・達成)。ほめ言葉だけでは土台にならない。
図3:受容と「できた実感」の両方が、自己肯定感を支えます。

ごほうびに頼りすぎない

「できたらごほうび」も、使いすぎには注意です。もともと楽しんでいたことでも、ごほうび目当てになると、ごほうびがないとやらなくなることが知られています(外からの報酬が、内側のやる気を弱めてしまう現象)。ごほうびは、やる気の出にくい最初のきっかけとして一時的に使い、慣れてきたら「できた実感」や「役に立てた喜び」に少しずつ移していくと、やる気が長続きします。

ごほうびを使うなら、物やお金より「一緒に喜ぶ」「できた過程を言葉にする」ほうが、内側のやる気を育てやすいと言われます。「シールがたまったね」より「毎日続けられたね、すごい習慣だね」と、ごほうびの先にある“できるようになった自分”に光を当てると、ごほうびがなくても続く力に変わっていきます。シール表などを使う場合も、卒業の見通しを持っておくと安心です。

家庭で試す3つの工夫

全部を一度にやらなくて大丈夫です。合いそうなものを一つだけ選んでください。

家庭で試す3つの工夫

  • ① 過程・工夫に一言:結果だけでなく「ここを工夫したね」「最後まで続けたね」と、取り組み方に触れます。
  • ② 「すごい」を描写に:「すごい!」の代わりに、見たことをそのまま「〜していたね」と伝えます。
  • ③ ほめない時間も大切に:何かをした時だけでなく、ただ一緒にいる・受け止める時間を持ちます。

声かけの言い換え

評価のことばを、過程に触れる・描写する言葉に変えてみましょう。

声かけの言い換え例

「天才! 頭いいね!」→ 能力ほめ。失敗を恐れやすくなる。

「いろんなやり方を試したね」→ 過程・工夫に目を向ける。

「すごい! えらい!」→ 何が良かったか伝わらない。

「最後まで自分でやり切ったね」→ 見たことを描写し、価値に気づかせる。

気をつけたいこと

「ほめてはいけない」ではありません

ここで紹介したのは「一つの考え方」です。「能力をほめてはいけない」「すごいと言ってはいけない」という意味ではありません。うれしい時に自然と出る「すごいね!」は、温かい関わりそのもの。大切なのは、評価だけに偏らず、過程や描写、そしてありのままの受容をバランスよく持つことです。ほめ方の研究には個人差や議論もあるため、わが子の様子を見ながら、合うものを取り入れてください。

出典・参考

  • Carol Dweck / Claudia Mueller「能力ほめと過程ほめ・マインドセットに関する研究」
    過程への称賛と挑戦の関係。近年は効果量の議論もあり「一つの考え方」として紹介。
  • Eddie Brummelman ほか「過剰なほめ(inflated praise)に関する研究」
    中身のないほめが逆効果になりうるという知見。
  • Edward Deci / Mark Lepper「内発的動機づけと報酬(overjustification)に関する研究」
    外的報酬が内側のやる気を弱めうるという整理。
  • 描写するほめ方・勇気づけ(encouragement)に関する一般的な知見

この記事について

本記事は家庭での関わりを整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や治療の判断に代わるものではありません。研究知見は「一つの考え方」として紹介しており、効果には個人差・議論があります。家庭ごとに合う・合わないがありますので、お子さんの様子を見ながら取り入れてください。

筆者コメント