3行まとめ
- 結果や能力だけをほめるより、「過程・工夫」に触れるほうが伝わりやすい。
- 「すごい」を、見たことの描写に変えると、子どもが自分で価値に気づく。
- 自己肯定感はほめ言葉だけでは育たない。受容と「できた実感」が土台。
この記事でわかること
- 「ほめれば伸びる」の落とし穴
- 能力ほめ・過程ほめの違いと、描写するほめ方
- 自己肯定感を支える土台と、ごほうびとの付き合い方
「ほめれば伸びる」の落とし穴
ほめることは、子どもとの関係を温め、やる気を支える大切な関わりです。ただ、「とにかくたくさん、大げさにほめる」が、いつもプラスに働くとは限りません。たとえば「天才!」「100点えらい!」と結果や能力ばかりほめられると、子どもは「次もそうでなきゃ」と感じ、失敗しそうな難しいことを避けるようになることがあります。また、過剰なほめは、ほめられないと不安になる原因にもなり得ます。
国立教育政策研究所の資料も、「自尊感情」を高めようと大人が子どもを褒める機会を増やしても、必ずしも好ましい結果をもたらすとは言えない、と述べています。理由として挙げられているのは、実力以上に過大評価してしまったり、周りの子どもからの評価を得られずに元に戻ってしまったり、自他の評価のギャップにストレスを感じるようになったりすることがある、という点です。ほめは多ければよいのではなく、中身と伝わり方が大事だということです。ほめを「やる気のスイッチ」のように使うより、子どもの取り組みに自然に関心を向けることのほうが、結果的に効いてきます。
能力をほめるか、過程をほめるか
ほめる対象を「能力・結果」から「過程・工夫」へ移すのがポイントです。「頭がいいね」ではなく「いろいろなやり方を試したね」「最後まで続けたね」。国の資料も、褒めるときは結果だけではなく、頑張りを認めることや、今できていることに注目して褒めることが大切で、何が良いのかを具体的に褒めると子どもに伝わりやすい、としています。国立教育政策研究所の資料は、さらに踏み込んで、単に良かった・悪かったと評価するだけの「褒める」と、子ども自身に目標や工夫する点・努力する点を考えさせておき、その基準に沿ってどこまで達成できたのかを評価する「認める」とを区別しています。同じ資料は、「褒めて(自信を持たせて)育てる」という発想よりも、「認められて(自信を持って)育つ」という発想のほうが、子どもの自信が持続しやすいと述べています。ただし、ほめ方の効果には個人差があり、これが「絶対の正解」というわけではありません。一つの考え方として取り入れてください。コツは、結果を無視することではなく、結果に至るまでの「どうやって」に一言ふれること。100点なら「ここまで毎日コツコツやってきたもんね」と、見えていた過程を添えるだけで十分です。
「すごい」を描写に変える
もう一つのコツは、評価のことばを「描写」に変えること。「すごい!」「えらい!」という評価だけだと、何が良かったのか伝わりません。代わりに、見たこと・気づいたことをそのまま言葉にします。「色をたくさん使って、にぎやかな絵だね」「最後まで自分でやり切ったね」。描写されると、子どもは自分で「自分はやり切れたんだ」と価値に気づき、内側からの自信につながります。
描写のほめ方には、もう一つ良い点があります。評価は「上から判定する」響きを持ちますが、描写は「ちゃんと見ているよ」というメッセージになります。子どもは、評価されること以上に「見てもらえている」ことに安心するものです。国立教育政策研究所の資料も、ふりかえりに対して、ただ「頑張ったね」とだけ書くのではなく、その子が「こだわった」「見てほしかった」点に触れた記述を返すこと、そのためにも一人一人をきちんと見ることが大切だ、としています。国の別の資料も、日常生活の中で「靴をそろえて脱いでいるね」のように肯定的な注目を向けることが、その態度や行動が増えることにもつながる、と書いています。うまく言葉が見つからない時は、ただ「よく見ていたよ」と伝えるだけでも十分。無理にほめ言葉をひねり出すより、関心を向けた事実を伝えるほうが、自然で温かく響きます。
自己肯定感は、ほめ言葉だけでは育たない
「たくさんほめれば自己肯定感が高まる」と思われがちですが、実はそう単純ではありません。自己肯定感の土台は、①どんな時も受け入れられているという「ありのままの受容」と、②自分の力でやれたという「できた実感」の両方です。ほめ言葉は、この実感を言葉にして後押しするもの。保育の国の解説にも、子どもは周囲の人からかけがえのない存在として受け止められ認められることで自己を十分に発揮でき、そのことによって周囲の人への信頼感とともに自己を肯定する気持ちが育まれる、と書かれています。逆に、国立教育政策研究所の資料は、子どもの実際の行動と向き合うことなく表面的にお世辞を言ったりちやほやしたりしても、自己有用感はおろか自尊感情すら高めない可能性が高い、としています。できなくても大切にされる経験こそが、揺るがない土台になります。
言いかえると、自己肯定感は「特別にすごい自分」への評価ではなく、「ふつうの自分でも受け入れられている」という安心から育ちます。だから、テストや習い事の結果と関係なく、何でもない日に「あなたがいてくれてうれしい」と伝わっていることが、いちばんの支えになります。ほめるのが上手かどうかより、ふだんの関わりの温度のほうが、ずっと大きく効いてくるのです。
ごほうびと、どう付き合うか
「できたらごほうび」は、家庭でも学校でもよく使われる方法です。外からのごほうびが内側のやる気にどう影響するかについては、確かめられた公的な整理を見つけられなかったため、ここでは「ごほうびを使うと、やる気が下がる」といった断定はしません。代わりに、確かめられている範囲で書きます。国立教育政策研究所の資料は、大人の基準で一定の水準に達したと評価するのが「褒める」という行為であり、水準に達しない場合は褒めることが稀になると指摘したうえで、「認められて(自信を持って)育つ」という発想のほうが子どもの自信が持続しやすい、としています。ごほうびも評価も、それ自体が悪いのではなく、子ども自身の基準が置き去りになったときに効きにくくなる、という読み方ができます。
そう考えると、ごほうびを使うかどうかより、その先に何を残すかのほうが大事だと分かります。保育の国の解説にも、やり遂げた達成感を子どもが十分に味わえるよう、共に喜び言葉にして伝えることが大切で、それが前向きな見通しをもちながら自信をもって取り組む姿につながっていく、と書かれています。シール表などを使う場合も、「シールがたまったね」で止めず「毎日続けられたね」と、ごほうびの先にある“できるようになった自分”に光を当てると、卒業の見通しが持ちやすくなります。
全部を一度にやらなくて大丈夫です。合いそうなものを一つだけ選んでください。
家庭で試す3つの工夫
- ① 過程・工夫に一言:結果だけでなく「ここを工夫したね」「最後まで続けたね」と、取り組み方に触れます。
- ② 「すごい」を描写に:「すごい!」の代わりに、見たことをそのまま「〜していたね」と伝えます。
- ③ ほめない時間も大切に:何かをした時だけでなく、ただ一緒にいる・受け止める時間を持ちます。
評価のことばを、過程に触れる・描写する言葉に変えてみましょう。
声かけの言い換え例
「天才! 頭いいね!」→ 能力ほめ。失敗を恐れやすくなる。
「いろんなやり方を試したね」→ 過程・工夫に目を向ける。
「すごい! えらい!」→ 何が良かったか伝わらない。
「最後まで自分でやり切ったね」→ 見たことを描写し、価値に気づかせる。
「ほめてはいけない」ではありません
ここで紹介したのは「一つの考え方」です。「能力をほめてはいけない」「すごいと言ってはいけない」という意味ではありません。うれしい時に自然と出る「すごいね!」は、温かい関わりそのもの。大切なのは、評価だけに偏らず、過程や描写、そしてありのままの受容をバランスよく持つことです。ほめ方の研究には個人差や議論もあるため、わが子の様子を見ながら、合うものを取り入れてください。
よくある質問
- たくさんほめたほうが、自信がつきますか。
- 多ければよい、というものではないとされています。「天才!」「100点えらい!」のように結果や能力ばかりほめられると、子どもは「次もそうでなきゃ」と感じ、失敗しそうな難しいことを避けるようになることがあります。国立教育政策研究所の資料も、褒める機会を増やしても必ずしも好ましい結果をもたらすとは言えないとして、実力以上に過大評価してしまう、周りの子どもからの評価を得られずに元に戻ってしまう、自他の評価のギャップにストレスを感じるようになる、といった例を挙げています。量より、中身と伝わり方のほうです。
- つい「すごいね」と言ってしまいます。言ってはいけないのですか。
- いけないわけではありません。うれしい時に自然と出る「すごいね!」は、温かい関わりそのものです。ただ、評価だけだと何が良かったのかが伝わりにくいので、そのあとに「どこが」を一言足す方法があります。「すごいね、最後まで自分でやったんだね」のように見たことをそのまま描写すると、子どもは自分で価値に気づきやすくなります。
- ごほうびで釣るのは、よくないことですか。
- 「ごほうびを使うとやる気が下がる」と断定できる公的な資料は確認できなかったため、本記事では良し悪しを決めつけていません。確かめられているのは、国立教育政策研究所の資料が「褒めて(自信を持たせて)育てる」より「認められて(自信を持って)育つ」という発想のほうが子どもの自信が持続しやすいとしていることです。ごほうびを使う場合も、「シールがたまったね」で止めず「毎日続けられたね」と、できるようになった本人に光を当てると、卒業の見通しが持ちやすくなります。
- ほめる場面が見つからない日は、どうすればいいですか。
- ほめない時間も大切だとされています。自己肯定感の土台は、どんな時も受け入れられているという「ありのままの受容」と、自分の力でやれたという「できた実感」の両方です。テストや習い事の結果と関係なく、何でもない日に「あなたがいてくれてうれしい」と伝わっていることが、いちばんの支えになります。言葉が見つからないときは、「よく見ていたよ」と伝えるだけでも十分です。
出典・参考
- 国立教育政策研究所 生徒指導・進路指導研究センター「生徒指導リーフ Leaf.18 『自尊感情』? それとも、『自己有用感』?」(平成27年3月 初版発行)
この出典で確認した記述
「社会性の基礎となる『自己有用感』」(PDF2ページ)に「「褒めて ( 自信を持たせて ) 育てる」 という発想よりも、「認められて ( 自信を持って ) 育つ」という発想の方が、子供の自信が持続しやすい。」と記載されている。同ページ「『自尊感情』とは」に「しかし、「自尊感情」を高めるべく大人が子供を褒める機会を増やしても、必ずしも好ましい結果をもたらすとは言えないのも事実です。」「また、大人が褒めることで自信を付けさせることができたとしても、実力以上に過大評価してしまったり、周りの子供からの評価を得られずに元に戻ってしまったり、自他の評価のギャップにストレスを感じるようになったり、ということが起きうるからです。」と記載されている。「★ワンポイント・アドバイス★ 『褒めること』と『認めること』の違いは?」(PDF4ページ)に「大人が子供を『褒める』ときは、一般に大人の基準や水準で『褒める』ことが多いように思われます。そして、大人の側の基準で一定の水準に達した、水準を超えたと評価するのが 「褒める」 という行為と言えます。反対に言えば、水準に達しない場合には 「頑張りなさい」 と叱咤激励することはあっても、褒めることは稀でしょう。」「子供の実際の行動と向き合うことなく、表面的にお世辞を言ったり、ちやほやしたりしても、子供の 「自己有用感」 はおろか、「自尊感情」 すら高めない可能性が高いのです。」「行事に取り組む、学習に取り組む際などに、子供自身に目標や工夫する点、努力する点などを考えさせておき、その基準に沿ってどこまで達成できたのかを評価することが 「認める」 という行為では重要になります。」「ただ 「頑張ったね」 とだけ書くのではなく、その児童生徒が 「こだわった」 「見てほしかった」 点に触れた記述を返しましょう。そのためにも、一人一人をきちんと見ることが大切です。」と記載されている。本文「『ほめれば伸びる』の落とし穴」節、「能力をほめるか、過程をほめるか」節、「『すごい』を描写に変える」節、「ごほうびと、どう付き合うか」節、およびよくある質問はこれによる。なお本資料は学校の生徒指導に向けた資料であり、家庭のほめ方を定めたものではない。 - こども家庭庁「体罰等によらない子育てのために ~みんなで育児を支える社会に~」(令和2年2月 厚生労働省「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」とりまとめ)
この出典で確認した記述
「⑦良いこと、できていることを具体的に褒めましょう」(PDF14ページ)に「子どもの良い態度や行動を褒めることは、子どもにとって嬉しいだけでなく、自己肯定感を育むことにもなります。日常生活の中でも、『靴をそろえて脱いでいるね』など、肯定的な注目を向けることで、その態度や行動が増えることにもつながります。結果だけではなく、頑張りを認めることや、今できていることに注目して褒めることも大切でしょう。」「さらに、子どもの態度や行動を褒めるときは、何が良いのかを具体的に褒めると、子どもにより伝わりやすくなります。また、すぐに褒めるのが一番効果的ですが、寝る前等の落ち着いたタイミングでも大丈夫です。」と記載されている。「①子どもの気持ちや考えに耳を傾けましょう」(PDF12ページ)に「相手に自分の気持ちや考えを受け止めてもらえたという体験によって、子どもは、気持ちが落ち着いたり、大切にされていると感じたりします。これは、子どもも大人と同じです。」と記載されている。本文「能力をほめるか、過程をほめるか」節、「『すごい』を描写に変える」節、および「家庭で試す3つの工夫」はこれによる。 - こども家庭庁「保育所保育指針解説」(平成30年2月 厚生労働省)第1章 総則(分割版[1])
この出典で確認した記述
「イ 情緒の安定」(本文39ページ/PDF44ページ)に「子どもは、保育士等をはじめ周囲の人からかけがえのない存在として受け止められ認められることで、自己を十分に発揮することができる。そのことによって、周囲の人への信頼感とともに、自己を肯定する気持ちが育まれる。」「このように、乳幼児期において、他者への信頼感と自己肯定感が周囲の人との相互的な関わりを通して育まれていくことは、極めて重要である。」と記載されている。本文41ページ(PDF46ページ)に「子どもの自分に対する自信や自己肯定感を育てていくことは、保育の大切なねらいの一つである。」と記載されている。本文21ページ(PDF26ページ)に「保育に当たっては、一人一人の子どもの主体性を尊重し、子どもの自己肯定感が育まれるよう対応していくことが重要である。」と記載されている。本文「自己肯定感は、ほめ言葉だけでは育たない」節と図3はこれによる。保育所での援助を示した資料であり、家庭にそのまま当てはめるものではない。 - こども家庭庁「保育所保育指針解説」(平成30年2月 厚生労働省)第2章 保育の内容 3・4(分割版[3])
この出典で確認した記述
本文228ページ(PDF41ページ)に「また、やり遂げた達成感を子どもが十分に味わえるよう、共に喜び言葉にして伝えるなどのことも大切である。これらのことが、子どもが前向きな見通しをもちながら、自信をもって取り組む姿へつながっていく。」と記載されている。同ページに、内容の取扱いとして「集団の生活の中で、子どもが自己を発揮し、保育士等や他の子どもに認められる体験をし、自分のよさや特徴に気付き、自信をもって行動できるようにすること。」と示されている。本文216ページ(PDF29ページ)に「保育士等は、子どものやり遂げたいという気持ちを大切にし、子どもが自分なりの満足感や達成感を感じることができるように援助をすること、やり遂げたことを共に喜ぶことが必要である。」と記載されている。本文「ごほうびと、どう付き合うか」節と「自己肯定感は、ほめ言葉だけでは育たない」節はこれによる。
この記事について
本記事は家庭での関わりを整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や治療の判断に代わるものではありません。研究知見や公的資料は「一つの考え方」として紹介しており、家庭ごとに合う・合わないがあります。お子さんの状態が気になる場合は、専門機関や学校にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。