3行まとめ

  1. 緊張はゼロにしなくていい。強すぎる不安が力を妨げる。
  2. 結果・比較・否定の言葉を避け、過程と次の行動に触れる。
  3. テストの後は点数より、気づきと次の一歩を一緒に見る。

この記事でわかること

  • 親のひと言がプレッシャーになりやすい理由
  • 避けたい言葉のパターンと、その言い換え
  • テスト前・テスト後に、子どもを支える関わり方

緊張は「適度」がいちばん力を出せる

緊張は、悪者ではありません。緊張と力の関係は、適度なところが山の頂上で、強すぎても弱すぎても下がるという逆U字の図で説明されることがあります。ただしこの図は100年以上前の動物実験をもとにした古い整理で、子どものテストにそのまま当てはまると確かめられたものではありません。確かめられているのは、山の「右側」——不安が強い側のほうです。小学生を対象にした研究では、不安が高い子ほど、見たものや聞いたことを一時的に覚えておく力(ワーキングメモリ)の成績が低い傾向が報告されています。覚えたことを保つ土台が細るのですから、本来の実力は出しにくくなります。

これは「本番に弱い」と言われる状態にも通じます。プレッシャーが強すぎると、覚えたはずのことが思い出せなくなったり、ケアレスミスが増えたりする——心当たりのある方は多いはずです。親にできるのは、緊張をゼロにすることではなく、子どもを山の右側へ押しやらないこと。安心できる言葉は、子どもを「力を出しやすい適度な緊張」のあたりにとどめてくれます。逆に、やる気がなさそうに見える時に必要なのは、叱咤よりも「あなたならできる」という小さな後押しのことが多いものです。いまわが子が山のどのあたりにいるかを想像して、言葉を選べるといいですね。

プレッシャーと出せる力の関係を示す逆U字のイメージグラフ。適度な緊張で力を出しやすく、プレッシャー過多になると力が出にくくなる。親の過度な言葉で右へ押しやらない。
図1:適度な緊張がいちばん。過度な言葉で「右側」へ押しやらないことが大切です。

親の言葉が、圧になりやすいのはなぜか

子どもにとって、親は特別な存在です。だからこそ、親の期待や不安は強く伝わります。「いい点を取りなさい」という言葉の裏に、「点が悪いとがっかりされる」という不安を感じ取ると、勉強そのものより「親をがっかりさせないこと」が目的になってしまいます。文部科学省「生徒指導提要」も、学校の指導について、身体を傷つける行為でなくても「いたずらに注意や過度な叱責を繰り返すこと」は子どものストレスや不安感を高め、自信や意欲を喪失させかねないと述べています。大人にとっては日常的な声かけでも、受け止め方は一人ひとり違う、とも書かれています。応援したい気持ちが、知らないうちに圧に変わっていないか——まずそこに気づくことが出発点です。

避けたい4つの言葉パターン

つい言ってしまいがちな言葉には、共通するパターンがあります。①結果のプレッシャー(いい点取りなさい)、②比較(お姉ちゃんはできたのに)、③過去の否定(ちゃんと勉強したの?)、④逆効果な励まし(緊張しないで)。どれも悪気はなく、むしろ「がんばってほしい」という愛情から出ています。けれど、子どもを不安にさせたり、自信を奪ったりしやすい言葉でもあります。「緊張しないで」も、実は緊張を意識させてしまうことがあります。

それぞれの言葉が、子どもに何を伝えてしまうかを考えてみましょう。結果のプレッシャーは「点が悪いと愛されない」という不安を、比較は「自分はあの子より劣っている」という劣等感を、過去の否定は「どうせ信じてもらえない」という反発を生みやすい。よかれと思った言葉ほど、本人には別の意味で届いてしまうことがあるのです。言葉そのものより、「子どもがどう受け取るか」で選ぶと、かける言葉が変わってきます。

「言い換え」で、応援を届ける

同じ気持ちでも、言葉を変えれば伝わり方が変わります。コツは、結果ではなく「ここまでの過程」に触れ、次の行動が見える言葉にすること。緊張も「準備してきた証」と意味づけ直す手があります。大学院入試(GRE)を控えた大人を対象にした実験では、「試験中のドキドキは成績を下げるものではなく、むしろ助けになりうる」と事前に伝えられたグループが、伝えられなかったグループより数学の得点が高くなりました。子どもで同じ結果が出るかまでは確かめられていませんが、同じ体の状態でも意味づけしだいで受け取り方が変わる、という見方は家庭でも使えます。下の対応を参考に、わが家の言葉に置き換えてみてください。

つい言いがちな言葉と言い換えの対応表。『今回こそいい点取りなさい』→『ここまでよく準備してきたね』、『お姉ちゃんはできたのに』→『あなたのペースでいこう』、『ちゃんと勉強したの?』→『どこを重点的にやった?』、『緊張しないでリラックス』→『緊張するのは本気の証だね』。
図2:結果や比較ではなく、過程と次の行動に触れる言葉へ。

テストの後にかけたい言葉

テストが返ってきた後の言葉も、次への向き合い方を左右します。点数だけを見て一喜一憂すると、子どもは「結果がすべて」と感じ、失敗を恐れるようになります。点数より、どこが分かるようになったか・次にどうするかを一緒に見ると、結果に関わらず前へ進めます。良かったときも、ほめ方に少しだけ気を配ってみてください。国立教育政策研究所の生徒指導リーフは、大人が「褒める」ときは大人の基準で褒めていることが多く、子どもが望んでいるのは自分がこだわった点を「認められる」ことだ、と整理しています。同じリーフは、大人が褒めて自信をつけさせても、実力以上の過大評価になったり、自他の評価のギャップにストレスを感じたりすることが起きうる、とも指摘します。「頭がいいね」より「ここをよく準備したね」と、本人が力を入れたところに触れるほうが、次につながりやすいわけです。

全国学力・学習状況調査でも、「課題が難しくなると、さらに努力している」と答えた児童生徒のほうが、教科の平均正答率が高い傾向が見られています。ただし報告書自身が、これは相関を見たものであって因果関係を示したものではない、と注意を促しています。点数の前に、粘れたところへ目を向ける意味は、そこにもあります。

もし思うような点が取れず、子どもが落ち込んでいるときは、すぐに解決策やお説教を始めないことです。まずは「くやしかったね」と気持ちを受け止める。気持ちが落ち着いてから、一緒に次の作戦を考えるほうが、子どもは前を向きやすくなります。親ががっかりした顔を見せないことも、地味なようでいて、子どもにとって大きな支えになります。

テストの後どこを見るかの図。点数だけを見ると次が不安になり自信を失いやすい。過程・気づき・次の一歩を見ると結果に関わらず次に向かいやすい。
図3:結果は変えられないが、次への向き合い方は言葉で変えられます。

全部を一度にやらなくて大丈夫です。合いそうなものを一つだけ選んでください。

家庭で試す3つの工夫

  • ① 結果より過程をねぎらう:「いい点取って」より「ここまでよく準備してきたね」。当日の朝は、安心できる一言を。
  • ② 緊張を肯定する:「緊張するのは本気の証」「いつもどおりで大丈夫」と、緊張を否定せず受け止めます。
  • ③ 後は点数の前に過程を聞く:「どこが分かるようになった?」「次はどこをやってみる?」と、次の一歩に目を向けます。

とっさに出る言葉ほど、ふだんの口ぐせが出ます。いくつか言い換えを用意しておくと、いざという時に、責めではなく支えになる言葉を選べます。

声かけの言い換え例

「今回こそいい点取りなさい」→ 結果の圧。実力を出しにくくする。

「ここまでよく準備してきたね」→ 過程を認め、安心を渡す。

「緊張しないで、落ち着いて」→ かえって緊張を意識させることも。

「緊張するのは、本気の証だね」→ 緊張を前向きに意味づけ直す。

家庭の工夫だけで抱え込まないために

ここで紹介したのは「一つの考え方」で、すべての子に当てはまる正解ではありません。言葉を整えても、テストのたびに強い不安や体調不良が出る、眠れない・食べられないが続く、自分を強く責める言葉が増えるといった場合は、無理に励ますより、学校の先生やスクールカウンセラー、必要に応じて医療・専門の相談窓口に相談してください。本記事は不安や心身の状態に関する診断・治療を判断するものではありません。

よくある質問

テスト前に「がんばって」と声をかけるのも、プレッシャーになりますか。
言葉そのものより、どこに目を向けさせるかで届き方が変わります。「今回こそいい点取りなさい」のように結果を指す言い方は、点が悪いとがっかりされるという不安につながりやすく、勉強そのものより「親をがっかりさせないこと」が目的になってしまうことがあります。「ここまでよく準備してきたね」と、これまでの過程に触れる言い方に置き換えると、同じ応援でも安心として届きやすくなります。
緊張している子に「緊張しないで」と言うのは、よくないですか。
かえって緊張を意識させてしまうことがあります。緊張そのものは悪者ではありません。ただ、不安が強い側では力が出にくくなり、小学生を対象にした研究でも、不安が高い子ほどワーキングメモリの成績が低い傾向が報告されています。親にできるのは緊張をゼロにすることではなく、不安の強い側へ押しやらないことです。「緊張するのは本気の証だね」「いつもどおりで大丈夫」と、緊張を否定せずに意味づけ直す言い方があります。
テストの点が悪くて落ち込んでいるとき、何と声をかければいいですか。
すぐに解決策やお説教を始めないことです。まずは「くやしかったね」と気持ちを受け止め、落ち着いてから一緒に次の作戦を考えるほうが、子どもは前を向きやすくなります。点数そのものより、どこが分かるようになったか、次にどこをやってみるかを一緒に見ると、結果に関わらず前へ進めます。親ががっかりした顔を見せないことも、地味なようで大きな支えになります。
良い点が取れたときは、思い切りほめてもいいですか。
ほめて構いませんが、どこをほめるかで届き方が変わります。国立教育政策研究所の生徒指導リーフは、大人は自分の基準で褒めがちで、子どもは自分がこだわった点を認めてほしいのだ、と整理しています。表面的にお世辞を言うだけでは自信は育ちにくい、とも書かれています。「頭がいいね」より「ここをよく準備したね」と、本人が力を入れたところに触れるほうが、思うようにいかなかった日も立て直しやすくなります。

出典・参考

  • 国立教育政策研究所 生徒指導・進路指導研究センター「生徒指導リーフ Leaf.18 「自尊感情」? それとも、「自己有用感」?」(平成27年3月初版)
    https://www.nier.go.jp/shido/leaf/leaf18.pdf(確認日 2026-09-19)。
    この出典で確認した記述
    PDF2ページに「『自尊感情』を高めるべく大人が子供を褒める機会を増やしても、必ずしも好ましい結果をもたらすとは言えないのも事実です」「大人が褒めることで自信を付けさせることができたとしても、実力以上に過大評価してしまったり、周りの子供からの評価を得られずに元に戻ってしまったり、自他の評価のギャップにストレスを感じるようになったり、ということが起きうるからです」と記載され、同ページに「『褒めて(自信を持たせて)育てる』という発想よりも、『認められて(自信を持って)育つ』という発想の方が、子供の自信が持続しやすい」と記載されている。PDF4ページ「ワンポイント・アドバイス」に「大人が子供を『褒める』ときは、一般に大人の基準や水準で『褒める』ことが多いように思われます」「子供が『認めてもらいたい』ときというのは、一般に子供の基準や水準で『褒められたい』のではないでしょうか。子供なりのこだわりで努力したり工夫したりしたことを『認められたい』のです」「子供の実際の行動と向き合うことなく、表面的にお世辞を言ったり、ちやほやしたりしても、子供の『自己有用感』はおろか、『自尊感情』すら高めない可能性が高いのです」と記載されている。本文「テストの後にかけたい言葉」節のほめ方に関する記述と、FAQ「良い点が取れたときは、思い切りほめてもいいですか。」はこれによる。学校の生徒指導向けに書かれた資料である点に留意した。
  • 文部科学省「生徒指導提要」(令和4年12月)
    https://www.mext.go.jp/content/20230220-mxt_jidou01-000024699-201-1.pdf(確認日 2026-09-19)。
    この出典で確認した記述
    「3.6.2 体罰・不適切な指導等の防止と組織的対応」(PDF108ページ)に「たとえ身体的な侵害や、肉体的苦痛を与える行為でなくても、いたずらに注意や過度な叱責を繰り返すことは、児童生徒のストレスや不安感を高め、自信や意欲を喪失させるなど、児童生徒を精神的に追い詰めることにつながりかねません」と記載されている。続けて「教職員にとっては日常的な声掛けや指導であっても、児童生徒や個々の状況によって受け止めが異なることから、特定の児童生徒のみならず、全体への過度な叱責等に対しても、児童生徒が圧力と感じる場合もあることを考慮しなければなりません」と記載されている。同ページの〔不適切な指導と考えられ得る例〕には「大声で怒鳴る、ものを叩く・投げる等の威圧的、感情的な言動で指導する」「児童生徒の言い分を聞かず、事実確認が不十分なまま思い込みで指導する」が挙げられている。PDF17ページに「ありのままの自分を肯定的に捉える自己肯定感や、他者のために役立った、認められたという自己有用感を育むことも極めて重要です」と記載されている。本文「親の言葉が、圧になりやすいのはなぜか」節はこれによる。これは学校の教職員による指導について述べたものであり、家庭の声かけを直接の対象とした記述ではない。
  • Pickering HE, Parsons C, Crewther SG「The effect of anxiety on working memory and language abilities in elementary schoolchildren with and without Additional Health and Developmental Needs」Frontiers in Psychology, 13:1061212(2022)
    https://www.frontiersin.org/journals/psychology/articles/10.3389/fpsyg.2022.1061212/full(確認日 2026-09-19)。
    この出典で確認した記述
    DOI は 10.3389/fpsyg.2022.1061212。本文に「anxiety is thought to impair goal-directed attentional control within working memory」と記載され、結果として「High Anxiety children showed poorer parent-reported functional language skills, and lower visual and auditory-verbal working memory capacities」「parent-reported anxiety scores had a significant, small, negative correlation with visual working memory」、および高不安群は低不安群より「lower visual working memory span」(medium effect size, r = 0.37)であったと記載されている。本文「緊張は『適度』がいちばん力を出せる」節の、不安が強いとワーキングメモリの成績が下がりやすいという記述と、FAQ「緊張している子に『緊張しないで』と言うのは、よくないですか。」はこれによる。相関を含む横断的な研究であり、不安が成績低下を引き起こすと証明したものではない。なお「逆U字(ヤーキーズ・ドットソンの法則)」そのものについては、1908年の動物実験を出発点とする古い整理であることを本文に明記し、子どもの試験場面に当てはまるという主張はしていない。
  • Jamieson JP, Mendes WB, Blackstock E, Schmader T「Turning the knots in your stomach into bows: Reappraising arousal improves performance on the GRE」Journal of Experimental Social Psychology, 46(1):208–212(2010)
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2790291/(確認日 2026-09-19)。
    この出典で確認した記述
    DOI は 10.1016/j.jesp.2009.08.015。再評価群への教示として「People think that feeling anxious while taking a standardized test will make them do poorly on the test. However, recent research suggests that arousal doesn't hurt performance on these tests and can even help performance…people who feel anxious during a test might actually do better.」と記載されている。結果として、模擬試験の数学で「reappraisal participants performed significantly better (M = 738.57, SD = 66.43) than controls (M = 683.57, SD = 104.63) on the math section, F(1,26) = 4.35, p = .047, d = .82」、実際のGRE数学でも「reappraisal participants performed significantly better (M = 770.00, SD = 63.64) than controls on the math section (M = 705.71, SD = 93.37), F(1,26) = 6.85, p = .015, d = 1.03」と記載されている。本文「『言い換え』で、応援を届ける」節の、緊張を意味づけ直す話はこれによる。対象は大学院入試を控えた成人28名で、子どもを対象とした研究ではない。本文にもその旨を明記した。
  • 国立教育政策研究所「令和8年度 全国学力・学習状況調査 報告書 質問調査(2)質問と学力のクロス分析」
    https://www.nier.go.jp/26chousakekkahoukoku/report/data/26qn_03.pdf(確認日 2026-09-19)。
    この出典で確認した記述
    報告書112ページ(PDF2ページ)に「以下と回答している児童生徒の方が、教科の平均正答率・IRTスコアが高い傾向が見られる。・課題は終えるまでやり通している(18-1)・課題が難しくなると、さらに努力している(18-2)・問題の解決策を見つけることは好きである(19-3)」と記載されている。111ページ(PDF1ページ)の【クロス分析について】に「クロス集計については、相関関係がみられるかを分析したものであり、因果関係を示したものではないことや、質問調査の回答が特定の選択肢に偏っている項目の場合は正答率との相関関係が表れにくいことなどに留意する必要がある」と記載されている。本文「テストの後にかけたい言葉」節の、粘れたところに目を向ける意味に関する記述はこれによる。

この記事について

本記事は家庭での工夫を整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や治療の判断に代わるものではありません。研究知見や公的資料は「一つの考え方」として紹介しており、家庭ごとに合う・合わないがあります。お子さんの状態が気になる場合は、専門機関や学校にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。

筆者コメント