3行まとめ

  1. 学校が扱う内容と時期は決まっています。小学校4年で「体の発育・発達」(初経・精通・変声・発毛)、小学校5年で「心の発達」、中学校1年で「生殖に関わる機能の成熟」。いつ何を習うのかを知っておくだけで、切り出す口実ができます。
  2. 学習指導要領解説は「保護者の理解を得ることなどに配慮することが大切」と小・中どちらにも明記しています。同時に中学校では「妊娠の経過は取り扱わない」といった線も引かれており、学校が全部を引き受ける設計にはなっていません。
  3. 家庭にできることは特別な講義ではありません。比べる言葉を減らし、聞かれたら答えられる状態を用意し、答えられないことは一緒に公式情報で調べる。

この記事でわかること

  • 思春期のからだについて、学校が何年生で何を扱うことになっているのか
  • 解説が「保護者の理解」と「肯定的に受け止めること」に触れている箇所
  • 統計から見える、伸びる時期の男女差と同学年内の幅の大きさ
  • 「異性への関心」という言葉を、家庭でどう扱うと決めつけにならないか

「保健の授業、あったんでしょ」で止まる会話

「保健の授業、あったんでしょ。ちゃんと聞いてた?」で終わってしまうのには理由があります。親の側が、学校で何をどこまで習ったのかを知らないまま話しかけているからです。知らないので質問が確認になり、子どもが返せるのは「聞いた」か「聞いてない」しかない。扱った内容の見当がついていれば「初経のことも出てきた?」というように、中身に寄せた聞き方ができます。

公的情報の見方 ― 学校は、いつ何を扱っているか

小学校学習指導要領解説体育編によると、保健領域の「体の発育・発達」は第4学年で指導することになっています。解説は「思春期には、初経、精通、変声、発毛が起こり、また、異性への関心も芽生えることについて理解できるようにする」と書き、体つきについても「これらは、個人差があるものの、大人の体に近づく現象である」と続けます。小学校4年の段階で、初経も精通も名前としてはすでに授業に登場しています。

学校で思春期のからだについて扱う内容と学年の図。小学校3年は健康な生活で、1日の生活の仕方や体の清潔を学ぶ。小学校4年は体の発育・発達で、年齢に伴う変化と個人差、思春期の体の変化として初経・精通・変声・発毛と異性への関心を扱う。小学校5年は心の健康で、心の発達と不安や悩みへの対処を扱う。中学校1年は心身の機能の発達と心の健康で、内分泌の働きによる生殖に関わる機能の成熟、月経と射精、性衝動や異性への関心の高まりへの対処を扱う。という4段階の流れを示している。
図1:学校が扱う内容と時期。小学校は体育科の保健領域、中学校は保健体育科の保健分野(文部科学省 学習指導要領解説 体育編・保健体育編より作成)。

家庭に直接効いてくる記述が二つあります。一つは、その説明のすぐ後ろに置かれた「なお、指導に当たっては(中略)保護者の理解を得ることなどに配慮することが大切である」という一文で、同じ趣旨の文は中学校の解説にもそのまま置かれています。内容が分からなければ学校に聞いてよい、というのは制度上まったく自然な行動です。もう一つが「自分と他の人では発育・発達などに違いがあることに気付き、それらを肯定的に受け止めることが大切であることについて触れる」という一文。こちらは授業で一度触れて終わるものではなく、日常の言葉づかいのなかで積み重なるものです。

小学校5年では内容が「心の健康」に移ります。中学校では1年生で「心身の機能の発達と心の健康」を扱い、解説は、生殖機能が発達し妊娠が可能となること、そして性衝動が生じたり異性への関心が高まったりすることから異性の尊重、性情報への対処など性に関する適切な態度や行動の選択が必要となることを理解できるようにする、としています。あまり知られていない線引きもあり、中学校の内容の取扱いには「受精・妊娠を取り扱うものとし、妊娠の経過は取り扱わないものとする」と書かれています。授業の後に家で質問が出てくるのは想定内で、「学校で習ったでしょう」で返すとその疑問は行き場を失います。

統計から見える、進み方の幅

文部科学省の学校保健統計(令和7年度)の年齢別身長の平均値から隣り合う年齢の差を計算すると、男子は11歳から12歳の7.7cmが最大、女子は9歳から10歳の7.1cmが最大でした(本記事による計算)。もっとも大きく伸びる時期が、男女でおよそ2年ずれているということです。小学校4年で授業を受ける段階では、女子はすでにその時期に入っている子が多く、男子の多くはまだ入っていない。同じ話を聞いていても、自分のこととして聞いている子と、まだ他人事として聞いている子が混在しています。

この2年のずれは、家庭の言葉づかいにそのまま関わります。「まだ小さいね」「もう大人みたいだね」——どちらもその子が今どの位置にいるかを外側から評価するものです。実装は単純で、比べる相手を、他の子ではなくその子自身の過去に置き換えること。同じ観察でも、後者は評価ではなく事実の共有になります。

「異性への関心」を、決めつけに変えないために

解説には小・中どちらにも「異性への関心」という言葉が出てきます。この言葉をそのまま家庭の会話に持ち込むと、思わぬ形で子どもを追い詰めることがあります。「異性を好きになるのが標準」という枠に自分が入らない子にとっては答えられない質問になるからです。文部科学省の教職員向けパンフレットは、性自認(性別に関する自己意識)と性的指向(恋愛対象が誰であるかを示す概念)は異なるものであり、対応に当たって混同しないことが必要であると整理しています。体つきの変化の話と、誰を好きになるかの話は、そもそも別のことです。

同じ資料は把握の仕方についても、「自ら明らかにする準備が整っていない児童生徒に対し、一方的な調査や確認が行われると、当該児童生徒は自分の尊厳が侵害されている印象をもつおそれもあります」とし、申出がない状況で具体的な調査を行う必要はないと述べています。詮索して確かめにいくのではなく、日頃から相談しやすい状態を整えておく。令和5年公布のLGBT理解増進法第10条第3項も、学校が「家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつ」教育や相談の機会の確保等に努めるとしています。

家庭で試す3つの工夫の図。1つ目は扉を開けておく。学校の予定表や保健だよりを手がかりに、答えを求めない一言をかけておく。2つ目は情報を置いておく。書籍や公的サイトを渡し、聞かれたら答え、分からないことは一緒に調べる。3つ目は比べる言葉を減らす。他の子ではなく、その子自身の過去と比べる言い方に置き換える。という3つのブロックを示している。
図2:家庭で試す3つの工夫。改まった説明ではなく、扉を開けたままにしておくことに重心を置いた形。

家庭で試す3つの工夫

  • ①学校の予定を手がかりに、答えを求めない一言をかけておく:「今日そういう授業だった?」ではなく、「体のことって、聞きたいことが出てくるよね。いつでも聞いていいからね」と一度だけ言っておく。返事はいりません。この一言の役割は、聞いてよい相手だと分かる状態にしておくことです。
  • ②答えの置き場所を先に決めておく:すべての質問に即答できる必要はありません。大切なのは、分からないときに「そんなこと聞かないの」で閉じないことです。家庭に本を一冊置く、公的な情報のページをブックマークしておく。そのうえで「分からないから一緒に調べよう」と言えるように。
  • ③比べる言葉を、その子自身の過去に置き換える:「〇〇ちゃんはもう…」を減らし、「去年より袖が短くなったね」と、その子の変化そのものを事実として言葉にします。評価をやめて観察に変えるだけで、からだの話題は安全な話題に近づきます。

声かけの言い換え例

「保健の授業、ちゃんと聞いてた?」→ 「聞いた」「聞いてない」しか返せない確認になり、そこで会話が閉じる。

「体つきが変わる時期って、人によって全然違うらしいよ。授業でもその話出た?」→ 中身に寄せた質問にすると、答えの幅が広がる。

「そろそろ好きな子いるでしょ?」→ 「異性を好きになるのが標準」という枠を前提にした問いで、そこに入らない子は答えられない。

「話したくなったら聞くよ。急がなくていいよ」→ 聞き出さずに扉だけ開けておく言い方。

一度試したあとに見返したいチェックリスト

  • 子どもの学年で、思春期のからだについて学校が何を扱うのかを、おおよそ把握している。
  • 答えを求めない一言(「いつでも聞いていいよ」)を、少なくとも一度は伝えてある。
  • 分からないことを聞かれたとき、「一緒に調べよう」と返せる置き場所がある。
  • この一週間、他の子と比べる言い方を使わずに済んだ場面が一度はあった。
  • 体調や発育で気になることが出たときの相談先を控えてある。

家庭の工夫だけで抱え込まないために

ここで紹介したのは「一つの考え方」であり、すべての家庭にそのまま当てはまるものではありません。本記事は発育・発達の状態や心身の症状について診断したり、受診の要否を判断したりするものではありません。

発育の進み方や体調について気になることがあるときは、家庭内で評価せず、学校の養護教諭や健康診断の結果、かかりつけの医療機関に相談する経路をとってください。こども家庭庁の「性と健康の相談センター事業」は思春期の健康相談も対象で、全国の窓口は同庁のサイトから検索できます。

子どもから性暴力の被害を打ち明けられた場合は、家庭だけで抱えないでください。ワンストップ支援センターの全国共通番号は#8891です。文部科学省の「生命(いのち)の安全教育」指導の手引きは、聞き方として、安心して話せる場所で「誰に何をされたか」を聞き、最後に「話してくれてありがとう」と伝えること、詳細を無理に聞きすぎないこと、「なぜ」「どうして」は避けて「どういうことで」に言い換えることを挙げています。聞いた側が怒りや動揺を見せると、それ以上話ができなくなることにも注意が必要だとされています。

出典・参考

  • 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 体育編」
    https://www.mext.go.jp/content/20240918-mxt_kyoiku01-100002607.pdf(確認日 2026-08-14)。
    この出典で確認した記述
    保健領域の「体の発育・発達」を第4学年で指導すること(内容の取扱い(5))、思春期の体の変化として「初経、精通、変声、発毛が起こり、また、異性への関心も芽生えること」「男子はがっしりした体つきに、女子は丸みのある体つきになるなど、男女の特徴が現れる」「個人差があるものの、大人の体に近づく現象である」を理解できるようにすること、「なお、指導に当たっては、発達の段階を踏まえること、学校全体で共通理解を図ること、保護者の理解を得ることなどに配慮することが大切である」、内容の取扱い(7)「自分と他の人では発育・発達などに違いがあることに気付き、それらを肯定的に受け止めることが大切であることについて触れるものとする」、第5学年で心の発達及び不安や悩みへの対処を扱うことの根拠。
  • 文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 保健体育編」(令和6年12月 一部改訂)
    https://www.mext.go.jp/content/20250213-mxt_kyoiku01-100002608_2.pdf(確認日 2026-08-14)。
    この出典で確認した記述
    「心身の機能の発達と心の健康」を第1学年で取り扱うこと(内容の取扱い(1))、「思春期には下垂体から分泌される性腺刺激ホルモンの働きにより生殖器の発育とともに生殖機能が発達し、男子では射精、女子では月経が見られ、妊娠が可能となる」、「性衝動が生じたり、異性への関心などが高まったりすることなどから、異性の尊重、性情報への対処など性に関する適切な態度や行動の選択が必要となる」、「なお、指導に当たっては、発達の段階を踏まえること、学校全体で共通理解を図ること、保護者の理解を得ることなどに配慮することが大切である」、内容の取扱い(7)「妊娠や出産が可能となるような成熟が始まるという観点から、受精・妊娠を取り扱うものとし、妊娠の経過は取り扱わないものとする」、保健分野の授業時数を3学年間で48単位時間程度配当することの根拠。
  • 文部科学省「令和7年度学校保健統計(学校保健統計調査の結果)」(令和8年2月13日公表)
    https://www.mext.go.jp/content/20260213-mxt_chousa01-000046876_1.pdf(確認日 2026-08-14)。
    この出典で確認した記述
    学校保健安全法により実施される健康診断の結果に基づく調査であること、昭和23年度から毎年実施されていること、発育状態の抽出率が全幼児・児童・生徒の5.2%(647,623人)であること、令和7年度の年齢別の身長の平均値(男子9歳134.0cm・10歳139.5cm・11歳146.1cm・12歳153.8cm、女子8歳127.5cm・9歳133.8cm・10歳140.9cm・11歳147.4cm・12歳152.4cm・13歳155.0cm)、肥満傾向児・痩身傾向児の割合(11歳男子13.24%・3.70%、11歳女子10.16%・3.09%)の根拠。本文中の「隣り合う年齢の差」は、この公表値をもとに本記事で計算したもの。
  • 文部科学省「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について(教職員向け)」(平成28年4月)
    https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/04/__icsFiles/afieldfile/2016/04/01/1369211_01.pdf(確認日 2026-08-14)。
    この出典で確認した記述
    「『性自認』と『性的指向』は異なるものであり、対応に当たって混同しないことが必要」「性的指向とは、恋愛対象が誰であるかを示す概念」、性別に関する違和感には強弱があり成長に従い減ずることも含め変容があり得ること、性自認と性的指向のいずれの違和感であるかを本人が明確に自覚していない場合があること、関係学会のガイドラインが特に15歳未満については診断に慎重な判断を必要としていること、「自ら明らかにする準備が整っていない児童生徒に対し、一方的な調査や確認が行われると、当該児童生徒は自分の尊厳が侵害されている印象をもつおそれもあります」「申出がない状況で具体的な調査を行う必要はないと考えられます」、教職員が相談を受けた際はまず悩みや不安を聞く姿勢を示すことが重要であることの根拠。
  • 文部科学省「『性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律』の公布について(通知)」(5文科教第592号・令和5年6月23日)
    https://www.mext.go.jp/content/20250428-mxt_kyousei02-000029040_1.pdf(確認日 2026-08-14)。
    この出典で確認した記述
    同法が令和5年法律第68号として令和5年6月23日に公布され公布の日から施行されたこと、第2条で「ジェンダーアイデンティティ」を定義していること、第6条第2項及び第10条において学校の設置者及びその設置する学校に対し、家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつ、児童生徒等の心身の発達段階に応じた教育又は啓発、教育環境の整備、相談の機会の確保等に努めることが規定されていること、別添として教職員向けパンフレット等がまとめられていることの根拠。
  • 文部科学省「生命(いのち)の安全教育 指導の手引き(改訂版)」
    https://www.mext.go.jp/content/20260326-mxt_kyousei02-000014005-001.pdf(確認日 2026-08-14)。
    この出典で確認した記述
    児童生徒から相談を受けた場合の対応のポイントとして、安心して話せる場所で最初の段階では「誰に何をされたか」を聞き取り最後に「話してくれてありがとう」と伝えること、詳細については無理に聞きすぎないこと、「『なぜ』『どうして』という圧力をかける言葉は避け、『どういうことで』に言い換える」こと、被害開示を受けた側が怒りや動揺を見せると被害児童生徒はそれ以上話ができなくなってしまうこと、保護者への対応として学校での指導のみに終始することなく日頃より家庭等でもフォローすることが望ましいとされていることの根拠。あわせて、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの全国共通番号#8891については、文部科学省「生命(いのち)の安全教育について~保護者のみなさんへ~」(https://www.mext.go.jp/content/20210805-mxt_kyousei02-000014005_2.pdf)を参照した。
  • こども家庭庁「性と健康の相談センター事業の概要」
    https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/seitokenkogaiyo(確認日 2026-08-14)。
    この出典で確認した記述
    思春期、妊娠、出産等の各ライフステージに応じた切れ目のない相談支援を実施していること、思春期の健康相談が対象に含まれること、実施主体が都道府県・指定都市・中核市等であること、全国の窓口を都道府県・相談対応内容・相談方法から検索できることの根拠。

この記事について

本記事は家庭での関わりを整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や治療の判断に代わるものではありません。研究知見や公的資料は「一つの考え方」として紹介しており、家庭ごとに合う・合わないがあります。お子さんの状態が気になる場合は、専門機関や学校にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。

筆者コメント