3行まとめ

  1. 不登校は過去最多で、決して特別なことではない。登校しぶりはその手前の大切なサインで、背景には学校・家庭・本人の要因が複雑に重なっていることが多い。
  2. 朝の初動では、「行きなさい」と押す前に、まず気持ちと体調を受けとめる。頭痛や腹痛などの体の訴えを「仮病」と決めつけない。
  3. 国の対策も「登校させること」だけを目標にはしていない。担任・スクールカウンセラー・相談窓口と早めにつながり、家庭で抱え込まないことが回復への近道になる。

この記事でわかること

  • 不登校・登校しぶりの現状と、背景を「3つの領域」で捉える見方
  • 朝「行きたくない」と言われたときの初動4ステップ
  • 無理に登校させる前に確かめたいことと、相談できる公的な窓口

朝、玄関で足が止まる場面

ランドセルは玄関に置いたまま、子どもはソファから動きません。「早くしないと遅刻するよ」と声をかけても、うつむいたまま「お腹が痛い」とつぶやく。熱を測っても平熱、けれど顔色はさえない。仕事に出る時間は刻一刻と迫り、こちらの焦りも限界に近づいて、つい「そんなことで休めません!」と強い声が出てしまう——。共働きでもそうでなくても、朝のこの数十分は、家庭の中でもっとも張り詰める時間のひとつです。

こういうとき、親の頭には相反する不安が同時に浮かびます。「無理にでも行かせないと、休み癖がついてしまうのでは」という不安と、「本当につらいのに、追い詰めてしまうのでは」という不安です。どちらも子どもを思うからこその迷いですが、迷いのまま強い言葉で押し切ると、子どもは「わかってもらえない」と口を閉ざし、翌朝はもっと言い出しにくくなります。

大切なのは、この「行きたくない」を、わがままや怠けではなく、何かがしんどくなっているサインとしてまず受け取ることです。登校しぶりは、多くの場合、突然ではなく少しずつ積み重なった疲れの表れです。次の章で見るように、その背景は一つではなく、いくつもの要因が重なっていることが、国の調査からも分かっています。

登校しぶりを「サイン」として読む

まず、登校しぶりや不登校がどれほど身近なことかを、データで確かめておきましょう。文部科学省が毎年実施している「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の令和6年度結果によれば、小・中学校における不登校の児童生徒数は約35万4千人にのぼり、過去最多を更新、12年連続で増加しています。高等学校でも約6万8千人が不登校とされています。登校しぶりはその手前の段階で、多くの家庭が通り得る、決して特別ではない状態だということです。「うちの子だけが」と孤立して感じる必要はありません。

次に知っておきたいのが、原因は一つに絞れないことです。文部科学省の調査では、不登校の背景を「学校に係る状況」「家庭に係る状況」「本人に係る状況」という3つの領域に分けて把握しています。実際には、これらが単独ではなく複雑に重なり合って登校しぶりに至るのが一般的です。同じ調査では、学校が把握した事実として、「学校生活に対してやる気が出ない」「生活リズムが不調である」「不安や抑うつを訴える」「学業の不振や宿題の未提出が見られる」「友人関係をめぐる悩みがある」といった状況が多く挙げられています。つまり、勉強・生活リズム・気持ち・人間関係といった複数の糸がからまっているのであり、親が「原因は何?」と一つに特定しようと焦るより、いくつも重なっているという前提で見るほうが実態に近いのです。

登校しぶりの背景を3つの領域で捉える図。1つ目は学校に係る状況で、友人関係の悩み、勉強のつまずき、先生との関係、行事への不安などが含まれる。2つ目は家庭に係る状況で、生活リズムの乱れ、家庭内の変化、睡眠や朝の不調などが含まれる。3つ目は本人に係る状況で、不安の強さ、気持ちの落ち込み、体の不調、環境の変化への敏感さなどが含まれる。これらは単独ではなく複雑に重なり合うと説明している。
図1:文部科学省の調査は不登校の背景を3つの領域で把握している。多くの場合、これらが重なり合って登校しぶりに表れる。

体のサインにも目を向けたいところです。登校しぶりの子どもは、朝になると頭痛・腹痛・気持ち悪さ・立ちくらみといった体の不調を訴えることが少なくありません。こうした症状は、心の負担が体に表れているもので、本人がわざと作り出しているわけではなく、実際につらさを感じています。「気のせい」「仮病でしょう」と決めつけると、子どもは「本当にしんどいのに信じてもらえない」と孤立を深めます。まずは体の訴えをそのまま受けとめ、平熱でも顔色や食欲、朝だけ調子が悪いといった様子を観察することが、初動では大切です。強い体調不良が続く場合は、後述のように小児科など専門機関への相談も選択肢になります。

国の対策の方向性も、あわせて知っておくと肩の力が抜けます。文部科学省は令和5年に「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」をまとめました。ここで重要なのは、「学校に登校する」という結果だけを目標にするのではなく、一人ひとりの学びと育ちを保障することに軸を置いている点です。こども家庭庁も、不登校は様々な事情が複雑に関係している場合があるとして、学校・教育委員会に加え医療・福祉などの関係機関とも連携し、地域全体で支えていく方針を示しています。つまり「とにかく明日から登校させる」ことをゴールに据えなくてよい、というのが国の考え方でもあるのです。この前提は、朝の初動で親が力みすぎないための、大きな支えになります。

初動の4ステップ

では、実際に「行きたくない」と言われた朝、どう動けばよいのでしょうか。ポイントは、いきなり「行く・行かない」の結論を急がず、順を追って気持ちと状況を受けとめることです。ここでは初動を4つのステップに整理します。

登校しぶりへの初動4ステップの図。ステップ1は受けとめる。行きたくない気持ちと体の訴えをまず認め、否定しない。ステップ2は聴く。責めずに、何がしんどいのかをゆっくり聴く。理由が言えなくてもよい。ステップ3は一緒に決める。今日の過ごし方を親子で相談し、休む・遅れて行く・保健室など幅を持たせる。ステップ4はつなぐ。担任やスクールカウンセラーに早めに共有し、家庭だけで抱え込まない。という流れを示している。
図2:初動の4ステップ。「受けとめる→聴く→一緒に決める→つなぐ」の順で、結論を急がないことがポイント。

ステップ1・受けとめる。まずは「行きたくないんだね」「お腹、痛いんだね」と、気持ちと体の訴えをそのまま言葉にして返します。ここで評価や説得を挟まないことが肝心です。受けとめてもらえたと感じて初めて、子どもは自分の状態を話す気持ちになれます。ステップ2・聴く。「どうして?」と問い詰めるのではなく、「昨日、学校で何かあった?」「朝がしんどい? 夜眠れてる?」と、責めない口調で少しずつ状況を尋ねます。理由がうまく言葉にできない子も多いので、「言えなくても大丈夫だよ」と伝え、沈黙も許します。

ステップ3・一緒に決める。今日の過ごし方を、親が一方的に決めず、子どもと相談して決めます。「休む」以外にも、「遅れて行く」「午前だけ行く」「保健室に寄ってみる」「今日は休んで明日の朝もう一度考える」など、白か黒かではない選択肢を一緒に探します。子どもが「決めるプロセスに参加できた」という感覚は、それ自体が回復の力になります。ステップ4・つなぐ。そして、登校しぶりが続きそうなときは、家庭だけで抱え込まず、早めに担任やスクールカウンセラーに状況を共有します。COCOLOプランでも、家庭と学校が小さな変化を共有し合うことが重視されています。相談は「大げさ」ではなく、むしろ早いほど選べる手立てが増えます。

家庭で試す3つの工夫

家庭で試す3つの工夫

  • ① 朝は「結論」より「一呼吸」:登校時刻ぎりぎりの数分で白黒つけようとすると、親子とも追い詰められます。可能なら「まず座って、少し話そう」と一呼吸置き、判断そのものを少しだけ後ろにずらします。時間的に難しい日は「今日はいったん休んで、夜にゆっくり話そう」と持ち越しても構いません。
  • ② 「休み方」を前もって家族で決めておく:しぶりが出てから慌てないよう、「休む日は何時までに学校へ連絡する」「休んでも生活リズムはできるだけ保つ」といった家庭の目安を、落ち着いたときに話し合っておきます。ルールで縛るためではなく、朝の消耗を減らすための備えです。
  • ③ 学校とのつながりを一本用意しておく:担任の連絡手段、スクールカウンセラーの相談日、自治体の教育相談窓口など、「困ったらここ」という連絡先を平時に一つ確認しておきます。いざというときに調べる労力が減り、早めの相談につながります。

声かけの言い換え

声かけの言い換え例

「そんなことで休めません! 早く行きなさい」→ 気持ちも体の訴えも否定し、次から言い出せなくする。

「行きたくないんだね。お腹も痛いんだ。少し話そうか」→ 気持ちと体調をまず受けとめ、対話の入口をつくる。

「怠けてるだけでしょう。仮病はやめて」→ 心身の不調を否定し、「わかってもらえない」孤立を深める。

「今日は休んで、遅れて行くか一緒に考えよう」→ 白黒でなく選択肢を示し、決める過程に子どもを入れる。

初動のチェック

朝の初動で確認したいチェックリスト

  • 「行きたくない」を、わがままでなくサインとして受け取れている。
  • 頭痛・腹痛などの体の訴えを、頭ごなしに否定していない。
  • 理由を問い詰めず、責めない口調で状況を聴けている。
  • 「休む・遅れて行く」など、白黒でない選択肢を一緒に探せている。
  • 続きそうなときは、担任や相談窓口へつなぐ準備ができている。

気をつけたいこと・相談先

抱え込まず、早めに相談を

ここで紹介したのは、登校しぶりへの一般的な向き合い方であり、すべての子ども・すべての状況にそのまま当てはまるものではありません。とくに、頭痛・腹痛・強い倦怠感などの体調不良が続く、気持ちの落ち込みが強い、眠れない・食べられない、自分を責める言葉が増える、いじめが疑われる、といった様子がみられる場合は、家庭だけで様子を見続けず、早めに専門的な支援につながってください。体の症状が続くときは、まずかかりつけの小児科に相談すると安心です。心のつらさが背景にある場合もあり、専門家に見てもらうことで家庭での関わりのヒントが得られます。

相談先としては、まず学校の担任やスクールカウンセラー、自治体の教育相談窓口があります。夜間や休日を含めていつでも相談したいときは、文部科学省の「24時間子供SOSダイヤル」(0120-0-78310、通話料無料・年中無休)を、子ども本人も保護者も利用できます。国のCOCOLOプランやこども家庭庁の方針が示すように、不登校対策は学校・家庭・医療・福祉が連携して地域全体で支えるものです。相談することは決して特別なことでも、育て方の失敗を認めることでもありません。本記事は特定の子どもの状態を診断したり、医療・心理の専門的判断に代わったりするものではありません。

出典・参考

  • 文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知)」
    小・中学校の不登校児童生徒数が約35万4千人で過去最多・12年連続増加であること、高等学校で約6万8千人であること、背景を「学校・家庭・本人に係る状況」で把握し、やる気・生活リズム・不安抑うつ・学業・友人関係等の状況が多く挙げられていることの根拠。https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422178_00006.htm(確認日 2026-07-25)。
  • 文部科学省「不登校対策(COCOLOプラン等)について」
    「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」が、登校という結果だけを目標にせず、一人ひとりの学びの保障・多様な学びの場を軸にしていることの根拠。https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1397802_00005.htm(確認日 2026-07-25)。
  • こども家庭庁「こども家庭庁における不登校対策」
    不登校は様々な事情が複雑に関係している場合があり、学校・教育委員会に加え医療・福祉などの関係機関と連携し地域全体で支援する方針であること、相談窓口が案内されていることの根拠。https://www.cfa.go.jp/policies/futoko-taisaku(確認日 2026-07-25)。
  • 文部科学省「『24時間子供SOSダイヤル』について」
    いじめを含む子どものSOS全般について、子ども本人・保護者が夜間休日を含め24時間相談できる全国共通ダイヤル(0120-0-78310、通話料無料・年中無休)であることの根拠。https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1306988.htm(確認日 2026-07-25)。

この記事について

本記事は、登校しぶりへの家庭での向き合い方に関する一般的な情報を、文部科学省・こども家庭庁の公的資料をもとに整理したものであり、特定の子どもの状態を診断したり、医療・心理・教育の専門的判断に代わったりするものではありません。子どもの状況や背景は一人ひとり異なります。体調不良や気持ちの落ち込みが続く場合、生活に支障がある場合は、小児科や学校のスクールカウンセラー、自治体の教育相談窓口、専門機関にご相談ください。制度や相談窓口の内容は変わることがあるため、最新の情報は各公式サイトでご確認ください。

筆者コメント