3行まとめ
- 気持ちが高ぶっている時は、正論や説明が届きにくい。
- 対応は①安全 → ②落ち着くまで寄り添う → ③落ち着いてから話すの順。
- 子どもは、そばにいる大人の落ち着きを借りて静まっていく。
この記事でわかること
- 泣き止ませようと焦るほどうまくいかない理由
- 泣いている時の「対応の順番」
- まず大人が落ち着くことの意味
高ぶっている時、正論は届かない
子どもが激しく泣いている時、頭の中では感情が大きく波打っています。この状態では、説明や言い聞かせを受け取る余裕がありません。だから「なぜ泣くの」「そんなことで泣かないの」という正論や説明は、ほとんど届きません。むしろ、責められたと感じて、さらに高ぶってしまうこともあります。これは「言うことを聞かない」のではなく、その瞬間は本当に受け取れない状態にある、と考えると見方が変わります。保育の国の解説にも、子どもは遊びのルールを分かっていても、興奮すると忘れてしまうことがある、と書かれています。分かっていることと、その場でできることは別——泣いている最中なら、なおさらです。なお、そのときの脳の働きについては、家庭向けに断定できる公的な資料を確認できなかったため、本記事では仕組みの説明はしていません。
これは大人でも同じです。強く動揺している時に正論を並べられても、頭に入ってきません。まず気持ちが落ち着くのを助けることが先で、話すのはその後——この順番を知っておくだけで、対応がぐっとラクになります。国の資料も、子どもの「言うことを聞かない」の理由の一つとして、言われていることを子どもが理解できていない場合があることを挙げ、伝えるときは大声で怒鳴るよりも、穏やかに、より近づいて、落ち着いた声で伝えるほうが伝わりやすい、としています。
大切なのは、泣くこと自体は「悪いこと」ではないと知っておくことです。涙は、心の中であふれた気持ちを外に出す自然な働き。とくに小さな子は、言葉でうまく表せない分、泣くことで気持ちを伝えています。無理に止めようとするより、安全な場所で出しきらせるほうが、結果的に早く落ち着くこともよくあります。保育の国の解説にも、子どもが泣いていると「泣き止ませなければならない」と考えてしまいがちだが、大切なのは泣かずにいられない子どもの思いを汲み取り、受け止めて、適切に応えていくことだ、とはっきり書かれています。「泣いてもいいよ」と心の中で思えるだけで、親の焦りもやわらぎます。
泣いている時の対応の順番
あわてず、順番で考えます。①安全を確保する、②落ち着くまで寄り添う、③落ち着いてから話す。「なぜ?」「どうするの?」「次は気をつけて」といった話は、すべて③に回します。泣いている最中に解決やお説教を始めても、伝わらないどころか、かえって長引かせてしまうことが多いものです。いまの目標は「泣き止ませること」ではなく、「安全に、落ち着くのを助けること」です。目標がずれていると、焦って逆効果の声かけをしがち。ゴールを「落ち着くのを助ける」に置き直すだけで、自然と関わり方が変わります。
まず大人が落ち着く
子どもは、自分一人ではまだうまく気持ちを鎮められません。だから、そばにいる大人の落ち着きを「借りて」静まっていきます。保育の国の解説にも、思い通りにいかなかったり言葉で十分に気持ちを伝えられなかったりして思わず手が出たり泣いてしまったりすることがあるとしたうえで、大人は子どもの気持ちを十分に受け止め、触れ合いや語りかけを多くし、情緒の安定を図ることが必要だ、と書かれています。別の箇所には、子どもがなかなか気持ちを立て直すことができそうにない場合には、大人が子どもの心の拠りどころとなり、適切な援助をする必要もある、とあります。逆に、親がイライラしたり大きな声を出したりすると、子どもの興奮はさらに高まります。飛行機の「酸素マスクは先に大人がつける」のと同じで、まず自分が落ち着くことが、結局いちばんの近道。一度深呼吸する、声のトーンを下げる、それだけでも空気が変わります。
とはいえ、親も人間です。忙しい時や疲れている時に、子どもの大泣きにつられてこちらまで気持ちが波立つのは、自然なことです。そんな時は、無理に完璧な対応をしようとせず、「いま自分も高ぶっているな」と気づくだけで十分。安全が確保できているなら、少しだけ距離を取って自分を整えてから戻るのも、立派な対応です。国の資料も、否定的な感情が生じたときは、まずはそういう気持ちに気付き、認めることが大切だとしたうえで、深呼吸して気持ちを落ち着けたり、ゆっくり5秒数えたりといった自分なりの工夫を挙げ、時には保護者自身が休むことも大切だ、としています。親が自分を責めて消耗してしまうと、落ち着きを分けてあげる余裕がなくなってしまいます。
言葉より「そばにいる」が効く
高ぶっている時は、たくさんの言葉はかえって刺激になります。必要なのは、立派な言葉より落ち着いた存在です。となりに座る、背中をさする、「ここにいるよ」と短く伝える、抱きしめる——どれが合うかは子どもによって違います。そっとしておいてほしい子もいれば、ぎゅっとしてほしい子もいるので、ふだんの様子から、その子に合う寄り添い方を見つけておくと安心です。気持ちに名前をつけて返す(「くやしかったね」)のも、落ち着きを助けます。このとき、原因や正しさをジャッジせず、ただ気持ちをそのまま受け止めるのがコツ。「そんなことくらいで」と感じても、本人にとっては大事件です。気持ちの大きさを否定しないことが、いちばんの安心になります。場所を移して刺激を減らす(人混みから離れる、静かな部屋に行く)のも有効です。
落ち着いてから、ふり返る
落ち着いた後に、はじめて話ができます。ここでも長いお説教は不要です。「さっきは何がいやだったの?」と短く気持ちを聞き、必要なら「次はこうしてみようか」と一緒に考えます。ここで初めて、正論や教えたいことが届くようになります。泣いたこと自体を責めず、落ち着けたことを認めると、子どもは「気持ちが高ぶっても、また戻ってこられる」と学んでいきます。これは、自分で感情を立て直す力(自己調整)の土台になります。
保育の国の解説には、いざこざなどの場面で、それぞれの子どもの主張や気持ちを十分に受け止め、納得して気持ちの立て直しができるようにするために援助が必要だ、と書かれています。そして、そうした体験を重ねるうちに、子どもは次第に自分の気持ちを調整することの必要性を理解していくようになる、とされています。大人に落ち着けてもらう経験の積み重ねが、やがて「自分で気持ちを鎮める力」へとつながっていく、という見立てです。つまり、いま寄り添うことは、その場をしのぐためだけでなく、将来、子どもが一人でも気持ちを立て直せるようになるための練習でもあります。すぐに効果が見えなくても、くり返しの中で少しずつ育つもの。長い目で見て大丈夫です。
全部を一度にやらなくて大丈夫です。合いそうなものを一つだけ選んでください。
家庭で試す3つの工夫
- ① まず自分が深呼吸:声をかける前に、ひと呼吸。親が落ち着くと、子どもも落ち着きやすくなります。
- ② 言葉を減らして、そばにいる:「ここにいるよ」と短く。説明や説得は、落ち着いてから。
- ③ その子に合う寄り添い方を知る:抱っこ/背中をさする/少し離れて待つ。合う方法をふだんから見つけておきます。
高ぶっている時の言葉は、短く・落ち着いて。気持ちを否定せず、そばにいると伝えるのがコツです。
声かけの言い換え例
「泣かないの! いいかげんにして」→ 気持ちの否定。さらに高ぶりやすい。
「びっくりしたね。ここにいるよ」→ 気持ちを受け止め、そばにいる安心を渡す。
「なんで泣いてるの? 理由を言いなさい」→ 高ぶっている時は、うまく答えられない。
「落ち着いたら、お話聞かせてね」→ 話すのは落ち着いた後、とやさしく伝える。
家庭の工夫だけで抱え込まないために
ここで紹介したのは「一つの考え方」で、年齢や気質によって合う関わりは変わります。長時間おさまらないパニックがくり返される、自分や人を傷つけてしまう、年齢に比べて切り替えの難しさが強く、生活に支障が出ているといった場合は、背景に特性や体調が関わっていることもあります。家庭だけで抱え込まず、園や学校、かかりつけ医のほか、お住まいの市区町村の子育て相談窓口や保健センター、児童相談所相談専用ダイヤル(0120-189-783、無料)、法務省「こどもの人権110番」(0120-007-110、平日8時30分〜17時15分、無料)に相談してください。本記事は発達や心身の状態に関する診断・治療を判断するものではありません。
よくある質問
- 泣いている最中に理由を聞いても、答えてくれません。どうすればいいですか。
- 気持ちが高ぶっている時は、説明や言い聞かせを受け取る余裕がなく、うまく答えられない状態です。対応の順番は、①安全を確保する、②落ち着くまで寄り添う、③落ち着いてから話す。「なぜ?」「どうするの?」「次は気をつけて」といった話は、すべて③に回します。その場では「落ち着いたら、お話聞かせてね」と伝えておく形があります。
- 泣かせたままにしておいて、いいのでしょうか。
- 泣くこと自体は「悪いこと」ではありません。涙は、心の中であふれた気持ちを外に出す自然な働きで、とくに小さな子は言葉でうまく表せない分、泣くことで気持ちを伝えています。保育の国の解説も、「泣き止ませなければならない」と考えてしまいがちだが、大切なのは泣かずにいられない子どもの思いを汲み取り、受け止めて、適切に応えていくことだ、としています。無理に止めようとするより、安全な場所で出しきらせるほうが、結果的に早く落ち着くこともあります。いまの目標は「泣き止ませること」ではなく、「安全に、落ち着くのを助けること」です。
- こちらまでイライラしてしまいます。どうすればいいですか。
- 「いま自分も高ぶっているな」と気づくだけで十分です。子どもは自分一人ではまだうまく気持ちを鎮められず、そばにいる大人の落ち着きを借りて静まっていきます。保育の国の解説も、大人が子どもの気持ちを十分に受け止め、触れ合いや語りかけを多くし、情緒の安定を図ることが必要だとしています。逆に親が大きな声を出すと、子どもの興奮はさらに高まります。安全が確保できているなら、少しだけ距離を取って自分を整えてから戻るのも、立派な対応です。一度深呼吸する、声のトーンを下げる、それだけでも空気が変わります。
- 抱きしめたほうがいいですか。それとも、そっとしておくべきですか。
- どちらが合うかは子どもによって違います。となりに座る、背中をさする、「ここにいるよ」と短く伝える、抱きしめる。そっとしておいてほしい子もいれば、ぎゅっとしてほしい子もいるので、ふだんの様子から、その子に合う寄り添い方を見つけておくと安心です。共通して言えるのは、高ぶっている時はたくさんの言葉がかえって刺激になるため、言葉を減らしてそばにいるほうが届きやすい、ということです。
出典・参考
- こども家庭庁「保育所保育指針解説」(平成30年2月 厚生労働省)第2章 保育の内容 1・2(分割版[2])
この出典で確認した記述
本文116ページ(PDF20ページ)に「まだ言葉で自分の思いや欲求を十分に表現することができない子どもにとって、泣くことは、自分の思いや欲求を保育士等に訴える手段である。子どもが泣いていると、『泣き止ませなければならない』と考えてしまいがちだが、大切なのは、泣かずにいられない子どもの思いを汲み取り、受け止めて、適切に応えていくことである。」と記載されている。同ページに「このように、子ども一人一人の思いや欲求、感情を受け止めながら、応答的に関わることが、子どもの生活をつくり、保育士等との信頼関係を築くことにもつながっていく。」と記載されている。本文186ページ(PDF90ページ)に「自我が育ってきて、自己主張をする場面が多くなってくるが、思い通りにいかなかったり、言葉で十分に自分の気持ちを相手に伝えることが難しいことも多く、思わず手が出てしまったり、泣いてしまったりすることがある。子どもにとって、保育所が安心して自分の気持ちを表すことができる場であることは重要である。保育士等は子どもの気持ちを十分に受け止め、触れ合いや語りかけを多くし、情緒の安定を図ることが必要である。」と記載されている。本文「高ぶっている時、正論は届かない」節、「泣いている時の対応の順番」節、「まず大人が落ち着く」節、図1・図2・図3、およびよくある質問はこれによる。保育所での援助を示した資料であり、家庭にそのまま当てはめるものではない。 - こども家庭庁「保育所保育指針解説」(平成30年2月 厚生労働省)第1章 総則(分割版[1])
この出典で確認した記述
「イ 情緒の安定」のねらい(本文38ページ/PDF43ページ)に「①一人一人の子どもが、安定感をもって過ごせるようにする。②一人一人の子どもが、自分の気持ちを安心して表すことができるようにする。③一人一人の子どもが、周囲から主体として受け止められ、主体として育ち、自分を肯定する気持ちが育まれていくようにする。④一人一人の子どもがくつろいで共に過ごし、心身の疲れが癒されるようにする。」と示されている。内容①(本文39ページ/PDF44ページ)に「一人一人の子どもの置かれている状態や発達過程などを的確に把握し、子どもの欲求を適切に満たしながら、応答的な触れ合いや言葉がけを行う。」、内容②(本文40ページ/PDF45ページ)に「一人一人の子どもの気持ちを受容し、共感しながら、子どもとの継続的な信頼関係を築いていく。」と示され、その解説に「子どもは、自分の気持ちに共感し、応えてくれる人がいることで、自身の気持ちを確認し、安心して表現し、行動する。」と記載されている。本文「言葉より『そばにいる』が効く」節と「家庭で試す3つの工夫」はこれによる。 - こども家庭庁「体罰等によらない子育てのために ~みんなで育児を支える社会に~」(令和2年2月 厚生労働省「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」とりまとめ)
この出典で確認した記述
「1 体罰等をしてしまう背景」(PDF11ページ)に、保護者が抱える悩みの例として「一生懸命子どもに向き合っているのにいつまでも泣き止まない」が挙げられ、「子どもに腹が立ったり、イライラしたりすることは、子育て中の保護者の多くが経験するものです。」と記載されている。「②『言うことを聞かない』にもいろいろあります」(PDF12ページ)に「保護者の気をひきたい、子どもなりに考えがある、言われていることを子どもが理解できていない、体調が悪いなど、様々です。」、「①子どもの気持ちや考えに耳を傾けましょう」(同ページ)に「相手に自分の気持ちや考えを受け止めてもらえたという体験によって、子どもは、気持ちが落ち着いたり、大切にされていると感じたりします。」と記載されている。「⑤注意の方向を変えたり、子どものやる気に働きかけてみましょう」(PDF13ページ)に「子どもはすぐに気持ちを切り替えるのが難しいこともあります。時間的に可能なら、待つことで子どもの気持ちや行動が変化するかもしれません。難しければ、場面を切り替えること(家から出て散歩をする等)で注意の方向を変えてみてもよいでしょう。」、「⑥肯定文でわかりやすく、時には一緒に、お手本に」(同ページ)に「大声で怒鳴るよりも、『ここでは歩いてね』など、肯定文で何をすべきかを具体的に、また、穏やかに、より近づいて、落ち着いた声で伝えると、子どもに伝わりやすくなります。」と記載されている。「(2)保護者自身の工夫」(PDF14ページ)に「否定的な感情が生じたときは、まずはそういう気持ちに気付き、認めることが大切です。」「深呼吸して気持ちを落ち着けたり、ゆっくり5秒数えたり、窓を開けて風にあたって気分転換するなど、少しでもストレスの解消につながりそうな自分なりの工夫を見つけられるとよいでしょう。時には保護者自身が休むことも、大切です。」と記載されている。「3 子育てはいろいろな人の力と共に」(PDF15ページ)に「少しでも困ったことがあれば、まずは、お住まいの市区町村の子育て相談窓口や保健センター等にご連絡下さい。」と記載されている。本文「高ぶっている時、正論は届かない」節、「まず大人が落ち着く」節、「言葉より『そばにいる』が効く」節、および「家庭の工夫だけで抱え込まないために」節はこれによる。 - こども家庭庁「保育所保育指針解説」(平成30年2月 厚生労働省)第2章 保育の内容 3・4(分割版[3])
この出典で確認した記述
本文218ページ(PDF31ページ)に「例えば、いざこざの状況や子どもの様々な体験を捉えながら、それぞれの子どもの主張や気持ちを十分に受け止め、互いの思いが伝わるようにしたり、納得して気持ちの立て直しができるようにしたりするために、援助をすることが必要になる。」と記載されている。本文232ページ(PDF45ページ)に「さらに、子どもがなかなか気持ちを立て直すことができそうにない場合には、保育士等が子どもの心の拠りどころとなり、適切な援助をする必要もある。」と記載されている。本文234ページ(PDF47ページ)に「例えば、遊びのルールを分かっていても、興奮すると忘れてしまったり、時間がかかると嫌になってしまい守らなかったりすることがある。」「こうした体験を通して、子どもは、次第に自分の気持ちを調整することの必要性を理解していくようになる。」と記載されている。本文「まず大人が落ち着く」節と「落ち着いてから、ふり返る」節はこれによる。 - 法務省「こどもの人権110番」
この出典で確認した記述
電話番号が0120-007-110であること、受付時間が平日の朝8時30分から夕方5時15分までであること、こどもだけでなく、こどもに関する悩みをもつ大人も利用できること、「相談は無料、秘密は厳守します」と記載されていることを確認した。あわせて、こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル『189』について」(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)に、虐待の通告以外のこどもの福祉に関する相談先として「児童相談所相談専用ダイヤル『0120-189-783(いちはやくおなやみを)』へご相談ください(令和3年7月から無料化)。」と案内されていることを確認した。本文「家庭の工夫だけで抱え込まないために」節の相談先はこれによる。
この記事について
本記事は家庭での関わりを整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や治療の判断に代わるものではありません。研究知見や公的資料は「一つの考え方」として紹介しており、家庭ごとに合う・合わないがあります。お子さんの状態が気になる場合は、専門機関や学校にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。