3行まとめ
- きょうだいげんかは、交渉や仲直りを学ぶ練習でもある。
- 介入の線は「安全かどうか」。危険はすぐ止め、それ以外は見守ってコーチ。
- 「どっちが悪い」を裁くより、両方の気持ちを扱い、解決を子どもに返す。
この記事でわかること
- きょうだいげんかを「全部止めなくていい」理由
- すぐ介入する場面と、見守る場面の線引き
- 裁判官にならず、解決する力を育てる関わり方
けんかは「悪いこと」ばかりではない
きょうだいげんかは、どの家庭でも驚くほど頻繁に起こります。けれど、これは関係が悪い証拠ではありません。むしろ、自分の主張を伝える、相手の言い分を聞く、折り合いをつける、仲直りする——そうした力を毎日練習しているとも言えます。親が毎回すべてを解決してしまうと、子どもはこの大切な練習の機会を失ってしまいます。「全部のけんかを止めなくていい」と知るだけで、肩の力が少し抜けます。
保育の国の解説にも、自己主張のぶつかり合う場面は、子どもの自己発揮と自己抑制の調和のとれた発達の上で重要な意味をもつ、と書かれています。いざこざや葛藤の体験を重ね、それについて考えたり話し合ったりすることは、自他の気持ちや欲求は異なることに気付かせ、相手の視点からも考えることを促す——葛藤の体験は子どもにとって大切な学びの機会だ、というのが国の整理です。実際、けんかを通じて、相手にも言い分があること、自分の要求が通らないこともあること、それでも関係は続くことを、子どもは体で覚えていきます。大人がすべてを裁いてしまうと、この学びの代わりに「親に言いつければ解決する」という習慣が育ってしまうこともあります。もちろん、毎回ニコニコ見守れるわけではありません。「練習の場」と思えるのは、親に余裕があるときだけで十分です。
介入の境界線は「安全かどうか」
とはいえ、何でも放っておくわけにはいきません。線引きはシンプルです。けが・暴力・物がこわれるなど「安全」に関わるときは、すぐに止める。それ以外の言い合いや、おもちゃの取り合い、順番をめぐる衝突は、いきなり裁かず、まず見守ってコーチに回ります。「危ないかどうか」で線を引くと、毎回「介入すべきか」と迷わずに済みます。声の大きさや勢いに反応して飛んでいきたくなりますが、うるさいことと危ないことは別もの。まずひと呼吸おいて、危険がないかだけを確かめます。
止めることそのものは、まったく問題ありません。国の資料も、子どもを保護するための行為(道に飛び出しそうな子どもの手をつかむ等)や、第三者に被害を及ぼすような行為を制止する行為(他の子どもに暴力を振るうのを制止する等)は体罰に該当しない、としています。止めるべきときにしっかり止めることと、叩いて言うことをきかせることは、まったく別のことです。安全以外にもう一つ目安があります。保育の国の解説は、いざこざや言葉のやり取りが激しかったり、長い間続いたりしている場合には仲立ちをすることも大切だ、としています。長引いて二人とも消耗しているようなら、大人が間に入ってかまいません。
「裁判官」になると、こじれる
つい「どっちが先にやったの?」と原因をさばきたくなりますが、これは多くの場合うまくいきません。親が裁判官になると、負けた側に不満が残り、勝つために告げ口が増え、ときに「いつも自分ばかり叱られる」という不公平感を生みます。本当のところは、たいてい「どっちもどっち」。原因を特定するより、いま二人がどうしたいかに目を向けるほうが、ずっと前に進みます。
とくに気をつけたいのが、上の子への「お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだから」という言葉です。よかれと思って使いがちですが、上の子には「自分ばかり我慢させられる」という不公平感が積もりやすく、きょうだいへの反感につながることもあります。同じように、「いつもあなたが始める」といったレッテルも避けたいところ。どちらか一方を「悪い役」に固定しないことが、長い目で見たきょうだい関係を守ります。
これは、気の持ちようの話ではありません。国の資料は、子どもの心を傷つける行為の例として「やる気を出させるという口実で、きょうだいを引き合いにしてけなした」を挙げています。さらに、虐待の定義のうち心理的虐待の例には「他のきょうだいとは著しく差別的な扱いをする」ことが含まれています。日常の「お兄ちゃんなんだから」がただちにこれに当たるわけではありませんが、きょうだいを比べる言葉は、積み重なるとどこかで線を越えうる——知っておきたいところです。
コーチの関わり方・3ステップ
裁くのではなく、解決を手伝う「コーチ」になります。流れはシンプルです。①両方の気持ちを言葉にする、②問題を中立に置き直す、③解決を子どもに返す。最後に「どうしたらいいと思う?」と問いを渡すのがポイント。答えを親が出さないことで、子どもは自分たちで解決する力を少しずつ身につけます。この流れは、保育の国の解説とほぼ重なります。そこには、互いの主張がぶつかって手が出たり泣いて訴えたりしている場合、それぞれの子どもの思いをしっかりと認め、受け止めた上で、相手が何を求めていたのか、何が嫌だったのかを言葉にして伝え、仲立ちをする、と書かれています。そして葛藤が生じた時に、まず事態を収めることを優先した関わりをするのではなく、双方の思いを大切にしながら納得のいく解決の方法を提案してみることが勧められています。
たとえば、おもちゃの取り合いなら——「取られていやだったね(兄)」「使いたかったんだね(弟)」と両方の気持ちを言葉にし、「1つのおもちゃを、2人が同時に使いたいんだね」と問題を中立に置き直し、「どうしたら2人とも納得できるかな?」と子どもに返す。すぐに名案が出なくても大丈夫。考える時間そのものが練習になります。
子どもから出てくる案は、大人から見ると不完全に思えるかもしれません。それでも、自分たちで決めた解決策は守られやすいものです。国の解説も、大人が一方的に順番を指示したり機械的にじゃんけんで決めたりする安易なやり方ではなく、自分の要求と相手の要求に折り合いを付ける必要があることを理解できるようにしていくことが大切だ、としています。「順番に使う」「タイマーで交代」「今日はこっち、明日はあっち」——多少ぎこちなくても、本人たちが納得していれば十分です。親の役割は、正解を出すことではなく、二人が話し合えるように場を整えること。うまくまとまったら、「自分たちで解決できたね」と、その事実を一緒に喜びましょう。
家庭で決める「けんかのルール」
けんか自体は止めなくても、「やってはいけないこと」だけは家族のルールとして決めておきます。たたかない・蹴らない、物を投げない・こわさない、相手を傷つける言葉(「死ね」「いらない」など)は使わない。感情はOK、でも危害はNGという線を共有しておくと、子どもは安心してぶつかり、安全の範囲内で解決を練習できます。落ち着いているときに、一緒にルールを決めておくのがおすすめです。けんかの最中ではなく、平和なときに「こういうときはどうする?」と話しておくと、いざという場面で思い出しやすくなります。ルールを破ったときは、その場で長く説教するより、「これはなしだったね」と短く確認して、落ち着いてからふり返るほうが伝わります。
全部を一度にやらなくて大丈夫です。合いそうなものを一つだけ選んでください。
家庭で試す3つの工夫
- ① まず「安全か」で判断する:危険なら止める、そうでなければ少し見守る。介入の前にひと呼吸おきます。
- ② 原因より気持ちを言葉に:「どっちが悪い?」ではなく「2人とも使いたかったんだね」と、両方の気持ちを受け止めます。
- ③ 解決を子どもに返す:「どうしたらいいと思う?」と問いかけ、答えを待ちます。出た案を尊重します。
裁く言葉を、気持ちを扱い、解決を促す言葉に変えてみましょう。
声かけの言い換え例
「どっちが先に手を出したの!」→ 犯人さがしになり、告げ口が増える。
「2人とも、これを使いたかったんだね」→ 両方の気持ちを中立に受け止める。
「お兄ちゃんなんだから我慢して」→ 上の子に不公平感が残りやすい。
「どうしたら2人とも納得できるかな?」→ 解決を子どもに返す。
家庭の工夫だけで抱え込まないために
ここで紹介したのは「一つの考え方」で、年齢差や人数、その子の特性によって最適な関わりは変わります。一方的で激しい攻撃が続く、けがをするほどの暴力がくり返される、どちらかが強くおびえているといった場合は、ふつうの「けんか」とは分けて考え、無理に当事者だけで解決させず、大人がしっかり守ってください。気になる状態が続くときは、学校やお住まいの市区町村の子育て相談窓口のほか、児童相談所相談専用ダイヤル(0120-189-783、無料)、法務省「こどもの人権110番」(0120-007-110、平日8時30分〜17時15分、無料)にも相談できます。本記事は発達や心身の状態に関する診断・治療を判断するものではありません。
よくある質問
- きょうだいげんかは、毎回止めたほうがいいですか。
- 全部を止めなくて大丈夫だとされています。線引きはシンプルで、けが・暴力・物がこわれるなど「安全」に関わるときはすぐに止める、それ以外の言い合いやおもちゃの取り合い、順番をめぐる衝突は、いきなり裁かず、まず見守ってコーチに回る、という形です。声の大きさや勢いに反応して飛んでいきたくなりますが、うるさいことと危ないことは別ものなので、ひと呼吸おいて危険がないかだけを確かめます。
- 「どっちが先にやったの?」と聞くのは、よくないですか。
- 多くの場合うまくいかない、と整理されています。親が裁判官になると、負けた側に不満が残り、勝つために告げ口が増え、ときに「いつも自分ばかり叱られる」という不公平感を生みます。原因を特定するより、いま二人がどうしたいかに目を向けるほうが前に進みます。「2人とも、これを使いたかったんだね」と両方の気持ちを言葉にし、「どうしたら2人とも納得できるかな?」と解決を子どもに返す形があります。
- 上の子に「お兄ちゃんなんだから我慢して」と言ってしまいます。まずいですか。
- よかれと思って使いがちな言葉ですが、上の子には「自分ばかり我慢させられる」という不公平感が積もりやすく、きょうだいへの反感につながることもあります。「いつもあなたが始める」といったレッテルも同じです。どちらか一方を「悪い役」に固定しないことが、長い目で見たきょうだい関係を守ります。気づいたときに置きかえていく形で十分です。
- 子どもたちが出す解決案が、いいかげんに思えます。任せて大丈夫ですか。
- 自分たちで決めた解決策は守られやすいものです。「順番に使う」「タイマーで交代」「今日はこっち、明日はあっち」など、多少ぎこちなくても本人たちが納得していれば十分です。親の役割は正解を出すことではなく、二人が話し合えるように場を整えることで、まとまったら「自分たちで解決できたね」とその事実を一緒に喜ぶ形があります。ただし、たたかない・蹴らない、物を投げない・こわさない、相手を傷つける言葉は使わない、といった家族のルールは共有しておきます。
出典・参考
- こども家庭庁「保育所保育指針解説」(平成30年2月 厚生労働省)第2章 保育の内容 3・4(分割版[3])
この出典で確認した記述
本文218ページ(PDF31ページ)に「子どもの自己発揮と自己抑制の調和のとれた発達の上で、自己主張のぶつかり合う場面は重要な意味をもっていることを考慮して保育士等が関わることが必要である。例えば、いざこざの状況や子どもの様々な体験を捉えながら、それぞれの子どもの主張や気持ちを十分に受け止め、互いの思いが伝わるようにしたり、納得して気持ちの立て直しができるようにしたりするために、援助をすることが必要になる。」と記載されている。本文232ページ(PDF45ページ)に「特に、仲間と楽しく過ごす一方で、いざこざや葛藤の体験を重ね、それについて考えたり、保育士等や仲間と話し合ったりすることは、自他の気持ちや欲求は異なることに気付かせ、自分の視点からだけでなく相手の視点からも考えることを促して、他者への思いやりや善悪の捉え方を発達させる。葛藤の体験は子どもにとって大切な学びの機会であるが、いざこざや言葉のやり取りが激しかったり、長い間続いたりしている場合には仲立ちをすることも大切である。さらに、子どもがなかなか気持ちを立て直すことができそうにない場合には、保育士等が子どもの心の拠りどころとなり、適切な援助をする必要もある。」と記載されている。本文224ページ(PDF37ページ)に「しかし、そのような際も、その時々の状況や子どもの気持ちを無視して、保育士等が一方的に順番を指示したり機械的にじゃんけんなどで決めたりするような安易なやり方ではなく、自分たちの生活を豊かにしていくために、自分の要求と友達の要求に折り合いを付けたり、自分の要求を修正したりする必要があることを理解」できるようにしていく旨が記載されている。本文234ページ(PDF47ページ)に「こうした体験を通して、子どもは、次第に自分の気持ちを調整することの必要性を理解していくようになる。」と記載されている。本文「けんかは『悪いこと』ばかりではない」節、「介入の境界線は『安全かどうか』」節の後半、「コーチの関わり方・3ステップ」節、「家庭で決める『けんかのルール』」節、および図1・図3はこれによる。保育所での援助を示した資料であり、家庭にそのまま当てはめるものではない。 - こども家庭庁「保育所保育指針解説」(平成30年2月 厚生労働省)第2章 保育の内容 1・2(分割版[2])
この出典で確認した記述
本文151ページ(PDF55ページ)に「例えば、友達に自己主張をする中で互いの主張がぶつかり、手が出てしまったり、泣いて訴えたりしているような場合、それぞれの子どもの思いをしっかりと認め、受け止めた上で、相手が何を求めていたのか、何が嫌だったのかといったことを言葉にして伝え、仲立ちをする。こうした関わりを丁寧に繰り返しながら、どうすればそれぞれの思いや願いが満たされて一緒に気持ちよく過ごせるのか考えてみるということに、子ども自身の気持ちが向くように援助していく。葛藤が生じた時に、保育士等がまず事態を収めることを優先した関わりをするのではなく、双方の思いを大切にしながら納得のいく解決の方法を提案してみるなど、状況に応じて具体的な対処の仕方を伝えていくことで、子ども自身はまだなかなか実行には移せなくても、自ら考えてみようとする気持ちを育んでいくことが大切である。」と記載されている。本文170ページ(PDF74ページ)に「自分の主張を受け止めてもらい、相手にも思いがあることを受け止める経験を丁寧に積み重ねていくことで、子どもの自我が育つ。」と記載されている。本文「コーチの関わり方・3ステップ」節と図2はこれによる。 - こども家庭庁「体罰等によらない子育てのために ~みんなで育児を支える社会に~」(令和2年2月 厚生労働省「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」とりまとめ)
この出典で確認した記述
PDF6ページに「ただし、罰を与えることを目的としない、子どもを保護するための行為(道に飛び出しそうな子どもの手をつかむ等)や、第三者に被害を及ぼすような行為を制止する行為(他の子どもに暴力を振るうのを制止する等)等は、体罰には該当しません。」と記載されている。同ページ「2 体罰以外の暴言等の子どもの心を傷つける行為」の「◎ こんなことしていませんか」に「やる気を出させるという口実で、きょうだいを引き合いにしてけなした → 子どもの心を傷つける行為です。」と記載されている。「参考:虐待の定義」(PDF7ページ)の「●心理的虐待」の例に「他のきょうだいとは著しく差別的な扱いをする。」が挙げられている(出典・参考として厚生労働省「子ども虐待対応の手引き」が示されている)。「3 子育てはいろいろな人の力と共に」(PDF15ページ)に「少しでも困ったことがあれば、まずは、お住まいの市区町村の子育て相談窓口や保健センター等にご連絡下さい。」と記載されている。本文「介入の境界線は『安全かどうか』」節、「『裁判官』になると、こじれる」節の後半、および「家庭の工夫だけで抱え込まないために」節はこれによる。なお、日常的な「お兄ちゃんなんだから」という声かけが、ただちに資料のいう「けなし」や「著しく差別的な扱い」に当たると述べているわけではない。 - 法務省「こどもの人権110番」
この出典で確認した記述
電話番号が0120-007-110であること、受付時間が平日の朝8時30分から夕方5時15分までであること、こどもだけでなく、こどもに関する悩みをもつ大人も利用できること、「相談は無料、秘密は厳守します」と記載されていることを確認した。あわせて、こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル『189』について」(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)に、虐待の通告以外のこどもの福祉に関する相談先として「児童相談所相談専用ダイヤル『0120-189-783(いちはやくおなやみを)』へご相談ください(令和3年7月から無料化)。」と案内されていることを確認した。本文「家庭の工夫だけで抱え込まないために」節の相談先はこれによる。
この記事について
本記事は家庭での関わりを整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や治療の判断に代わるものではありません。研究知見や公的資料は「一つの考え方」として紹介しており、家庭ごとに合う・合わないがあります。お子さんの状態が気になる場合は、専門機関や学校にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。