3行まとめ

  • 文部科学省の委託調査で、不登校の児童生徒の35.9%が「先生と合わなかった」ときつらさを感じたと答えた。不登校でない児童生徒は14.3%。
  • 同じ調査の教師回答では、「教職員とのトラブル・叱責等」は不登校と関連がみられなかった要因に分類されている。子どもに見えているものと、学校から見えているものがずれている。
  • 学校に行きづらいと感じ始めたとき、子どもが最も多く相談した相手は家族で61.7%。一方で31.5%は誰にも相談していない。

この記事でわかること

  • 「先生と合わない」が、わがままとは限らない理由
  • 子どもの回答と教師の回答がずれていた公的調査の数字
  • 最初の相談相手が家族になりやすいという事実
  • 担任一人に預けない「チーム学校」という前提
  • 学校に伝えるとき、事実と要望を分ける書き方

「先生、ぼくのときだけ言い方が違う」

夕食のあとや、寝る前の歯みがきのついでに、ぽつりと出てくることがあります。「今年の先生、合わない」。理由を聞いても「なんか」「べつに」で止まる。翌朝はふつうに登校していくので、こちらも深追いしないまま数日が過ぎます。

親の側には、二つの引っかかりがあります。うなずけば学校への不信をこちらから手渡すことになりはしないか。「そんなこと言わないの」と収めれば、次から言わなくなるのではないか。どちらの心配も当たっているので、返事に困ります。手がかりになるのは、その場で評価を決めないまま話だけを受け取っておく形です。

子どもに見えていて、大人に見えにくいもの

文部科学省の委託事業として行われた「不登校の要因分析に関する調査研究」の報告書があります。令和6年3月に公表されたもので、令和4年度に不登校として報告された児童生徒について、教師1,424名、児童生徒本人239名、保護者200名の回答を突き合わせています。

子どもへの質問は、「あなたが最初に学校に行きづらい、休みたいと感じ始めたとき、学校や家で、次のようなときに、つらいと感じたことはありましたか」というものでした。この問いに、不登校の児童生徒の35.9%が「先生と合わなかった」と答えています。不登校ではない児童生徒では14.3%です。「先生から厳しく怒られた・体罰」も16.7%と7.5%で開きがありました。報告書は、教師の態度や指導方法が不登校の要因になっている可能性がある、と述べています。

目を引くのは、同じ調査の教師側の回答です。教師には「以下のような事柄が事実としてあったか」を尋ねていますが、その集計では「教職員との反抗・反発」「教職員とのトラブル・叱責等」は、不登校と関連がみられなかった要因のほうに分類されました。同じ関係について、片方は強く感じ、片方はほとんど数え上げていないということになります。報告書の考察も、教師と保護者・児童生徒の回答にずれが少なくなかったとして、家庭と学校が情報を共有することが有益だと結んでいます。

これは、先生が悪いという結論を出すための数字ではありません。教室で三十人前後を同時に見ている大人にとって、一人ひとりが自分の言い方をどう受け取ったかは、そもそも観測しにくい情報だという話です。子どもが家で言う「合わない」は、学校の記録には残っていない可能性が高い。責める材料というより、まだ学校が持っていない情報として扱えます。

同じ調査での回答の違いを上下2枠で比べた図。上の枠は子ども本人の回答で、先生と合わなかったが35.9パーセント、不登校でない児童生徒は14.3パーセント、先生から厳しく怒られた・体罰が16.7パーセント、不登校でない児童生徒は7.5パーセント。下の枠は教師の回答で、教職員との反抗・反発、教職員とのトラブル・叱責等は、いずれも関連なしの側に分類されている。
図1:同じ「先生との関係」でも、誰に聞くかで結果が変わります。子どもの側で目立つ項目が、教師の集計では浮かんできませんでした。

3人に1人は、誰にも言っていない

同じ報告書には、子どもが誰に相談したかの集計もあります。行きづらいと感じ始めてから実際に休み始めるまでの間に相談した相手は、家族が61.7%で最も多く、学校の先生が28.2%、保健室の先生が20.2%と続きました。そして「誰にも相談しなかった」が31.5%。報告書は、3分の1近くの児童生徒が相談しにくいと感じている可能性がある、としています。

この並びを家庭の側から読み直すと、先生との関係の話が最初に届く場所は、たいてい学校ではなく家だということになります。しかも、どこにも届かないまま終わる子が3割いる。そう考えると、夕食のあとの「合わない」という一言は、こちらが思っているよりずっと細い線です。その場で正したり、笑って流したりすると、次はもう出てこないかもしれません。

報告書は、休んでいるときに何があれば学校に戻りやすかったかも聞いています。最も多かったのは「友だちからの声がけ」、次いで「家族からの声がけ」でした。家庭にできることは、子ども自身が挙げる上位に入っています。

担任一人に預けない、という学校側の前提

では、家庭で聞いた話を学校に伝えたいとき、誰に言えばよいのか。担任との関係が話題なのに担任へ持っていくのは、気が重いものです。手がかりになるのが、文部科学省が令和4年12月に改訂した「生徒指導提要」の考え方です。改訂の要点をまとめた同省児童生徒課の資料には、個別の事案について学級担任等の個人で対応するのではなく、チーム学校として学校組織全体で対応できる体制を構築することが重要だ、と書かれています。

これは学校の内部体制についての記述ですが、保護者の側からも読み替えられます。担任は窓口の一つであって、唯一の窓口ではないということです。学年主任、養護教諭、スクールカウンセラー、教頭や校長。学校によって呼び名も配置も違いますが、担任以外の入口がある前提で組まれています。先ほどの調査でも、保健室の先生に相談した子が20.2%いました。相談先を一つに絞らないほうが、子どもにも親にも逃げ道が残ります。

伝え方は、内容を三つに分けておくと落ち着きます。起きた事実、そのあとの子どもの様子、家庭からのお願い。「先生の指導が厳しすぎます」は評価ですが、「先週の火曜、宿題の出し忘れをみんなの前で読み上げられたと本人が話しています」は事実です。混ざっていない伝え方のほうが、受け取る側も確かめやすくなります。どこまで踏み込むかの迷いは、友達関係トラブルの相談を受けた時、親はどこまで踏み込むかでも扱っています。

「先生と合わない」と言われたときの家庭での順番を示した図。1、その場で評価を決めずに受け取る。そう感じたんだね、と一度返す。2、いつ、どの場面かを一つだけ聞く。人柄ではなく直近の一場面まで下ろす。3、学校に伝えるかを本人と決める。誰に何を言うかまで一緒に決める。4、伝えるときは事実、子どもの様子、お願いの三つに分ける。評価の言葉は混ぜない。
図2:聴く順番と、伝える順番。評価をいったん保留にして、場面を一つ取り出すところから始めます。

家庭で試す3つの工夫

  1. 「合わない」を、一つの場面まで下ろす:「どんなときにそう思った?」と、直近の一場面だけを聞きます。人柄についての質問には答えにくくても、火曜の朝の出来事なら話せることがあります。場面が一つ出てくれば、家庭でも学校でも扱える大きさになります。
  2. 味方の側に立ちつつ、先生を裁かない:「つらかったね」と感じ方は受け取り、「ひどい先生だね」という人物評は加えません。親が断定しても、翌日その教室に戻るのは子どものほうです。
  3. 学校に伝えるかを、本人と決める:「伝えてみようか。何を言っていいか、一緒に決めよう」と、内容と相手を本人と相談します。黙って連絡すると、話したこと自体を後悔させます。今は伝えないという選択も残しておきます。

声かけの言い換え例

  • 「先生にも事情があるんだよ」→正論で会話が閉じ、次から言わなくなる。
  • 「そう感じたんだね。どんなときにそう思った?」→評価を保留したまま、場面を一つ取り出せる。
  • 「そんな先生、おかしいよ」→一緒に断定すると、翌日の教室で子どもが動けなくなる。
  • 「学校に聞いてみようか。何をどう言うか、一緒に決めよう」→相談の主導権を本人に残せる。

家庭で確認するチェックリスト

  • 「合わない」を、いつ・どの場面かまで一つ聞けている。
  • その場で子どもの言い分を正したり、打ち消したりしていない。
  • 家庭の中で、先生を人物として断定する言葉を使っていない。
  • 学校に伝えるときに、事実と要望を分けて書いている。
  • 担任以外の相談先(学年主任・養護教諭・スクールカウンセラー)を知っている。

家庭の工夫だけで抱え込まないために

ここで紹介した数字には、読み方の制限があります。児童生徒本人の回答は239名分で、全国の子どもを代表する規模ではありません。報告書自身も、回答割合に差があることを示すものであって、そのような要因が不登校を引き起こす原因である訳ではない、と注意を促しています。目の前の子ども一人の状況を説明する数字ではありません。

相性の話とは別に、線を引いたほうがよい場面もあります。叩く、物を投げる、人格を否定する言葉を向ける。文部科学省は平成25年の通知で、体罰は学校教育法第11条において禁止されており、いかなる場合も行ってはならないと明示しています。家庭の工夫で受け止める話ではなく、学校や教育委員会に事実として伝える話です。

学校に言いにくいときの窓口もあります。文部科学省の「24時間子供SOSダイヤル」(0120-0-78310)は、悩んでいる子供や保護者等がいつでも相談できるよう設けられたもので、電話をかけた所在地の教育委員会の相談機関につながります。法務省の「子どもの人権110番」(0120-007-110、平日午前8時30分から午後5時15分)は、学校でのいじめ、体罰、暴言その他の不適切な指導も対象で、こどもだけでなく大人も利用できます。登校をしぶる日が続くときは、「学校に行きたくない」と言われたらも合わせて読んでみてください。

出典・参考

  • 文部科学省委託事業「不登校の要因分析に関する調査研究 報告書」(公益社団法人 子どもの発達科学研究所/浜松医科大学 子どものこころの発達研究センター、令和6年3月公表)
    https://www.mext.go.jp/content/20251120-mxt_jidou02-100002768_1.pdf(確認日 2026-09-08)。
    この出典で確認した記述
    表紙に「文部科学省委託事業 不登校の要因分析に関する調査研究 報告書 令和6年3月公表 公益社団法人 子どもの発達科学研究所 浜松医科大学 子どものこころの発達研究センター」と記載されている。「4.(1)教師・児童生徒・保護者の回答の比較」(10ページ)に、「対象者は、令和4年度問題行動等調査において不登校として報告された児童生徒で、教師回答は 1,424 名、うち児童生徒回答は 239 名、保護者回答は 200 名である」と記載されている。同ページに、児童生徒への質問文が「あなたが最初に学校に行きづらい、休みたいと感じ始めたとき、学校や家で、次のようなときに、つらいと感じたことはありましたか。」であること、教師には「以下のような事柄が事実としてあったか」を質問していることが記載されている。「4.(4)③ 教師の行動、学校風土の改善」(18ページ)に、「R4 不登校の児童生徒は『先生から厳しく怒られた・体罰』と回答したものが 16.7%(不登校でない児童生徒は 7.5%、オッズ比:2.45)、『先生と合わなかった』が 35.9%(不登校でない児童生徒は 14.3%、オッズ比:3.35)となっており、教師の態度や指導方法が不登校の要因になっている可能性がある」と記載されている。「4.(2)教師回答からわかる不登校の関連要因」(13〜14ページ)のまとめ表では、教師回答における「不登校と関連がみられなかった要因」の側に「いじめ被害、友人関係トラブル、教職員との反抗・反発、教職員とのトラブル・叱責等、外国籍等」が挙げられている。同(2)の本文に「回答割合に差があることを示すものであり、そのような要因があることが不登校を引き起こす原因である訳ではなく、また不登校児童生徒すべてにそのような要因がある訳ではないことに注意する必要がある」と記載されている。「4.(5)考察」(21ページ)に「教師と保護者・児童生徒の回答にずれが生じているものが少なくなかった。このことは、不登校の防止・改善のために教師と家庭の連携をより強め、効果的な情報の共有を行うことが有益であることを示唆しているように思われる」と記載されている。「7.(1)② 相談に関する児童生徒の回答」(33ページ)に、「児童生徒が最も多く相談するのは家族であり、61.7%を占めている。次いで多かったのが学校の先生(28.2%)で、保健室の先生(20.2%)と続いている。一方、『誰にも相談しなかった』児童生徒は 31.5%にのぼり、学校に行きづらいことについて、3 分の 1 近くの児童生徒が相談しにくいと感じている可能性がある」と記載されている。同③に、学校に戻りやすかったと思うこととして「『友だちからの声がけ』が最も多く、ついて『家族からの声がけ』、『個別に勉強を教えてもらえること』となっている」と記載されている。本文「子どもに見えていて、大人に見えにくいもの」「3人に1人は、誰にも言っていない」節と図1はこれによる。
  • 文部科学省 児童生徒課「生徒指導提要の改訂」(説明資料)
    https://www.mext.go.jp/content/20221107-mxt_syoto02-000025840_9.pdf(確認日 2026-09-08)。
    この出典で確認した記述
    冒頭に、生徒指導提要は「生徒指導の実践に際し、教職員の共通理解を図り、組織的・体系的な生徒指導の取組を進めることができるよう、生徒指導に関する基本書として」まとめたものであること、生徒指導提要の作成が平成22年で、それから10年以上が経過したことを踏まえて改訂されたことが記載されている。「2.主な内容(2)個別の課題に関する主な記載」の「組織的対応・関係機関等との連携(第3章)」に、「個別の事案について、学級担任等の個人で対応するのではなく、チーム学校として学校組織全体で対応できる体制を構築することが重要。」「学校のみで対応が困難な課題については、警察や医療機関、福祉部局等の関係機関との連携が必要。」と記載されている。「(1)生徒指導の基本的な考え方」に、生徒指導の定義(「生徒指導とは、社会の中で自分らしく生きることができる存在へと児童生徒が、自発的・主体的に成長や発達する過程を支える教育活動のことである」)と、生徒指導にあたって留意する視点として「① 自己存在感の感受 ② 自己決定の場の提供 ③ 共感的な人間関係の育成 ④ 安全・安心な風土の育成」の四つが記載されている。改訂版の公表が令和4年12月であることは文部科学省「生徒指導提要(改訂版)」ページ(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1404008_00001.htm)で確認した。本文「担任一人に預けない、という学校側の前提」節はこれによる。なお同資料は学校・教職員向けの基本書についての説明資料であり、家庭向けの指針ではない。
  • 文部科学省「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について(通知)」(平成25年3月13日)
    https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1331907.htm(確認日 2026-09-08)。
    この出典で確認した記述
    平成25年3月13日付、文部科学省初等中等教育局長・スポーツ・青少年局長の連名による通知であることが記載されている。本文に「体罰は、学校教育法第11条において禁止されており、校長及び教員(以下「教員等」という。)は、児童生徒への指導に当たり、いかなる場合も体罰を行ってはならない」と記載され、体罰は学校教育法で禁止されている決して許されない行為であることが明記されている。あわせて、学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例が別紙として示されている。本文「気をつけたいこと」節の体罰に関する記述はこれによる。
  • 文部科学省「24時間子供SOSダイヤルについて」
    https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1306988.htm(確認日 2026-09-08)。
    この出典で確認した記述
    「24時間子供SOSダイヤル」の電話番号が0120-0-78310(なやみいおう)であること、夜間・休日を含めていつでも受け付けること、「悩んでいる子供や保護者等がいつでも相談できるよう」設けられていること、電話をかけた所在地の教育委員会の相談機関に接続されることが記載されている。文部科学省の子供向け相談窓口一覧ページ(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112216.html)にも同じ番号と24時間受付の記載がある。本文「気をつけたいこと」節の相談先はこれによる。
  • 法務省「子どもの人権110番」
    https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken112.html(確認日 2026-09-08)。
    この出典で確認した記述
    電話番号が0120-007-110であること、受付時間が平日の午前8時30分から午後5時15分までであること、こどもだけでなく、こどもに関する悩みを持つ大人も利用できることが記載されている。対象となる相談として、学校におけるいじめ、体罰、児童生徒に対する暴言その他の不適切な指導や、家庭内における虐待など、こどもをめぐる人権問題が挙げられている。本文「気をつけたいこと」節の相談先はこれによる。

この記事について

本記事は家庭での関わりを整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や治療の判断に代わるものではありません。研究知見や公的資料は「一つの考え方」として紹介しており、家庭ごとに合う・合わないがあります。お子さんの状態が気になる場合は、専門機関や学校にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。

筆者コメント