3行まとめ

  1. 令和7年(5〜9月)に熱中症で救急搬送された10万510人のうち、発生場所でいちばん多かったのは住居(38.1%)でした。家の中は「安全な場所」ではなく、備える場所です。
  2. こどもは体温調節の機能が発達の途中で、背が低いぶん地面の熱の影響も強く受けます。こども家庭庁は大人の顔の高さで32℃のとき、こどもの顔の高さでは35℃程度になると説明しています。
  3. 家庭でできるのは、エアコンの判断を子どもに背負わせない・飲みものを取りやすい場所に置く・具合が悪いときの連絡と初動を先に決めるの三つです。今日の朝の一言から変えられます。

この記事でわかること

  • 熱中症の救急搬送データが示す、いちばん危ない場所と時期
  • 暑さ指数(WBGT)と熱中症警戒アラートを、家庭の判断材料としてどう使うか
  • こどもが大人より暑さの影響を受けやすい理由と、水分・塩分のとり方の目安
  • 親が不在の日中を守る3つの決めごとと、具合が悪くなったときの初動

「暑かったらつけていいからね」と言って出た朝

夏休みのある平日の朝。予定より10分遅れて家を出ようとしながら、リビングでテレビを見ている子どもに向かって「暑かったらエアコンつけていいからね」と声をかけます。子どもは画面を見たまま「はーい」と返事をする。玄関の鍵をかけて、駅に向かって歩き出したところで、ふと不安がよぎります。あの子、本当につけるだろうか。前に「電気代がもったいないから」と言ったのを、覚えているんじゃないだろうか。

この不安には根拠があります。子どもにとって、エアコンをつけるかどうかは温度の判断であると同時に、家計についての遠慮でもあるからです。ふだんから「つけっぱなしはもったいない」という会話が家の中にあれば、子どもは「まだ我慢できる」と考えて、つけるタイミングを先送りします。しかも、暑さの中に長くいた体は、暑さそのものへの感覚が鈍くなっていきます。気づいたときには、部屋の温度も自分の体温も上がっている——そういう順番で起こります。

もう一つ、共働き家庭に特有の事情があります。それは「見えない」ということです。学校にいれば教職員の目があり、学童であれば指導員の方が水分をうながしてくれます。けれど、家に一人でいる時間には、様子を見て「顔が赤いね」「今日は無理しない方がいいよ」と声をかける大人がいません。文部科学省と環境省がまとめた学校向けの手引きは、集団活動における対策のポイントとして「体調不良を気軽に相談できる雰囲気を作りましょう」「お互いの体調に注意して、声を掛け合うように指導しましょう」と挙げています。学校では当たり前に用意されている仕組みが、日中の家庭にはありません。だからこそ、その代わりになる決めごとを、あらかじめ家庭側で作っておく必要があります。

留守番そのものをどう始めるか、何歳から任せるかという判断は留守番を始める前に親子で確認することで扱っています。この記事では、留守番をする日があるという前提のうえで、「夏の暑さ」という一点に絞って備え方を見ていきます。

データが示す、いちばん多い発生場所は「住居」

まず、実態を数字で確認しておきます。消防庁が公表した「令和7年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」(令和7年10月29日)によれば、令和7年の5月から9月までに全国で熱中症により救急搬送された人は10万510人でした。これは調査を開始した平成20年以降で最も多い搬送人員です。同じ資料は、令和7年について「気象庁による統計開始以降、多くの地方で最も早い梅雨明けとなったほか、夏の日本の平均気温が最も高くなりました。また、熱中症警戒アラートの発表回数が過去最多となる」と説明しています。

注目したいのは内訳です。発生場所別に見ると、住居が3万8,292人(38.1%)で最も多く、次いで道路1万9,773人(19.7%)、駅の屋外ホームなど不特定の人が出入りする屋外の場所1万2,175人(12.1%)、道路工事現場・工場・作業所等の仕事場1万559人(10.5%)と続きます。学校などの教育機関は3,553人(3.5%)でした。学校で起きる熱中症の報道に触れる機会が多いため、危険なのは校庭や部活動というイメージを持ちやすいのですが、実際にはその10倍以上が住居で起きています。

年齢区分別では、高齢者(満65歳以上)が5万7,433人(57.1%)と最も多く、成人が3万4,096人(33.9%)、少年(満7歳以上満18歳未満)が8,447人(8.4%)、乳幼児が531人(0.5%)でした。子どもの割合は高齢者に比べれば小さいものの、少年だけで8千人を超えています。また、医療機関での初診時における傷病程度を見ると、軽症(外来診療)が63.1%である一方、入院が必要な中等症・重症が約36%を占めており、「たいしたことにはならない」と考えてよい病気ではないことがわかります。

「住居が最多」という事実は、高齢者の割合が大きいことの影響も受けています。ただし、屋内で熱中症が起こるのは高齢者に限った話ではありません。環境省・文部科学省の「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き」は、実際に起きた死亡事故の事例から得られる教訓として「屋内であっても熱中症は起こる!」を明記しています。あわせて「それほど気温が高くなくても湿度が高い日は注意!」という教訓も挙げられており、実際に気温27.2℃・湿度70%の日に起きた事故が紹介されています。気温の数字だけを見て「今日はそれほどでもない」と判断するのは、危うい読み方だということです。

公的情報の見方 ― 暑さ指数とアラートを家庭の物差しにする

では、何を見て「今日は暑い日だ」と判断すればよいのでしょうか。公的な資料が共通して使っているのが暑さ指数(WBGT)です。前掲の手引きによれば、暑さ指数は気温・気流・湿度・輻射熱を合わせた指標で、専用の計測器で測るほか、計測器がない場合は乾球温度(気温)や湿球温度を参考にすることもできます。気温だけでなく湿度と日差しの照り返しまで含めた数字なので、「気温は同じでも今日のほうが危ない」という感覚を裏づけてくれます。

この暑さ指数には、生活の場面ごとの目安が定められています。手引きに掲載された表によれば、暑さ指数が31℃以上のときは「すべての生活活動でおこる危険性」があり、日常生活における注意事項として「外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する」とされています。運動については「運動は原則中止/特別の場合以外は運動を中止する。特に子どもの場合は中止すべき」と書かれています。28〜31℃では「外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する」、25〜28℃では「運動や激しい作業をする際は定期的に十分に休息を取り入れる」となっています。家庭に引き寄せて読むなら、31℃以上の日は「外に出さない」だけでなく「涼しい室内をつくる」ところまでが目安に含まれている、ということです。

この暑さ指数をもとに、環境省と気象庁が発表しているのが熱中症警戒アラートです。環境省の説明によれば、熱中症警戒情報(熱中症警戒アラート)は、府県予報区等内のいずれかの暑さ指数情報提供地点で、翌日または当日の日最高暑さ指数が33(予測値)に達する場合に発表されます。さらに深刻な事態に備えるものとして、熱中症特別警戒情報(熱中症特別警戒アラート)があり、こちらは都道府県内のすべての情報提供地点で翌日の日最高暑さ指数が35(予測値)に達する場合等に発表されます。「広域的に過去に例のない危険な暑さ等となり、人の健康に係る重大な被害が生じるおそれがある」状況を指す情報です。

これらは気分の問題ではなく、法律に位置づけられた仕組みです。環境省によれば、気候変動適応法は令和5年5月12日に公布され、令和6年4月1日に全面施行されました。この改正で、熱中症対策実行計画の法定計画への格上げ、熱中症警戒情報の法定化および熱中症特別警戒情報の創設、市町村長による指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)および熱中症対策普及団体の指定の制度などが措置されています。アラートが発表されたときに求められる行動としては、屋内でエアコン等を適切に使用すること、高齢者やこども等への見守り・声かけを行うこと、管理者による運動・外出・イベント等の中止、延期、変更の判断が挙げられています。「こどもへの見守り・声かけ」は、公的な対策のなかに明示されている行動だということです。

クーリングシェルターにも触れておきます。これは気候変動適応法に基づき、適当な冷房設備を有するなどの要件を満たす施設を、誰もが利用できる暑さをしのげる施設として市町村長が指定したものです。環境省のサイトには全国の市区町村のウェブサイトへのリンク集が用意されており、同サイトによれば1,255市区町村(令和8年7月17日現在)がクーリングシェルターを指定済みとされています。家のエアコンが故障した日や、停電が起きた日の逃げ場として、住んでいる自治体にどこがあるのかを一度調べておくと、いざというときに探さずに済みます。

もう一つ、時期についての知識も役に立ちます。手引きは、熱中症事故が「急に暑くなったとき」に多く発生するとし、具体的には梅雨明け直後など急に暑くなった時(暑さ指数が31以上になる時、2ランク以上高くなった時)や合宿の初日に多い傾向があると説明しています。体が暑さに慣れていないためです。体が暑さに慣れることを暑熱順化といい、「やや暑い環境」で「ややきつい」と感じる強度で毎日30分程度の運動を続けることで獲得でき、運動開始数日後から起こり2週間程度で完成するとされています。夏休みに入って冷房の効いた室内で過ごす時間が続いたあと、久しぶりに外の活動が入る日——そういう日ほど注意が必要になる、という読み方ができます。

こどもの体は、大人と同じ暑さを感じていない

ここまでは環境の話でした。次に、子どもの体の側の事情を確認します。こども家庭庁は、こどもが熱中症になりやすい理由として、体温調節機能が未発達であることを挙げています。同庁の説明によれば、こどもは汗をかく能力が未発達なため、皮膚の血流量を増加させ、体の表面から周囲に熱を逃がすことで体温を調節しており、そのぶん外気温の影響を受けやすくなっています。大人と同じ環境にいても、体の中で起きていることは同じではない、ということです。

さらに見落としやすいのが身長の差です。こども家庭庁は、背が低いこどもは地表面から強い影響を受けるとしたうえで、「大人が暑いと感じているとき、こどもはさらに高温の環境下にいることになります。例えば大人の顔の高さで32℃の時、こどもの顔の高さでは35℃程度」だと説明しています。同じ道を並んで歩いていても、子どもは3℃ほど高い空気の中にいることになります。学童への行き帰り、習い事への移動、少しの買い物——「ちょっとそこまで」の距離だから大丈夫、という感覚が、子どもには当てはまらない場面があるということです。

あわせて、こども家庭庁は自家用車について「車の中にこどもだけを残すことはやめること」と明記しています。夏場の車内は短時間で高温になるため、こどもが残されていた場合は非常に危険だとされています。これは日中の留守番とは別の場面ですが、送り迎えの途中で「5分だけ」と車内に残す判断は避ける、という線をはっきり引いておきたいところです。

水分のとり方についても、押さえておきたい目安があります。手引きのコラムは「人間は、軽い脱水状態のときにはのどの渇きを感じません。そこで、のどが渇く前あるいは暑いところに出る前から水分を補給しておくことが大切です」と述べています。子どもに「のどが渇いたら飲んでね」と伝えるだけでは足りない理由が、ここにあります。渇きを感じる頃には、すでに軽い脱水が始まっているからです。

汗で失われるのは水分だけではありません。手引きは、汗からは水分と同時に塩分も失われるため、長時間の運動などで汗を多くかく場合には0.1〜0.2%程度の塩分(1リットルの水に1〜2グラムの食塩)を補給できる経口補水液やスポーツドリンクを利用するとよいとしています。また、運動中の水分補給には冷やした水がよいとされ、その理由として「冷たい水は深部体温を下げる効果がある」「胃にとどまる時間が短く、水を吸収する器官である小腸に速やかに移動する」ことが挙げられています。集団活動の対策としては「いつでも飲める冷たい飲料(5〜15℃)を準備しましょう」とも書かれています。家庭に置き換えれば、麦茶を冷蔵庫に冷やしておくこと、汗を多くかいた日には経口補水液やスポーツドリンクという選択肢も持っておくこと、が現実的な形になります。ただし、日常のすべての水分をスポーツドリンクに置き換える必要はありません。手引きが塩分補給を勧めているのは、あくまで長時間の運動などで汗をたくさんかく場合です。

服装についても短く触れられています。手引きは、暑い時は服装を軽装とし、吸湿性や通気性のよい素材のものが適切であること、直射日光は帽子で防ぐことを挙げています。家にいる日でも、ベランダや玄関先に出る用事があるなら、帽子をかぶる習慣は続けておいて損はありません。

親がいない日中を守る、3つの決めごと

ここまでの内容を、共働き家庭の日中に落とし込みます。ポイントは、子どもに判断を任せる範囲をできるだけ小さくすることです。暑さの中では大人でも判断が鈍りますし、子どもは家計への遠慮も抱えています。「気づいたら動く」ではなく「あらかじめ決まっている」状態にしておくほうが、確実に守れます。

親が不在の日中の熱中症を防ぐ3つの決めごとを示した図。ステップ1は朝に暑さの見通しを一緒に見ることで、熱中症警戒アラートの発表と暑さ指数を確認し、31以上の日は外出を避けて涼しい室内で過ごすと決める。ステップ2はエアコンをつける判断を子どもに任せないことで、出かける前に親が設定して運転を開始し、切らないことを伝え、電気代の心配は親が引き受ける。ステップ3は飲みものと連絡の段取りを決めることで、冷やした麦茶や水筒を取りやすい場所に置き、決まった時刻に一報を入れる約束をして、具合が悪いときの連絡先を見える場所に貼る。
図1:「見通しを共有する → 判断を親が引き受ける → 段取りを決める」の順に整えると、日中に子どもが迷う場面を減らせます。

① 朝、暑さの見通しを一緒に見る。出かける前の1分でかまいません。天気アプリやテレビで、その日に熱中症警戒アラートが出ているかどうか、暑さ指数がどのくらいかを親子で一緒に確認します。大切なのは、親が一方的に伝えるのではなく、子どもが自分でも見られる形にしておくことです。「31以上の日は外に出ないで、涼しい部屋で過ごす」という基準を、公的な目安と結びつけて共有しておくと、「なんとなく暑いから」ではない根拠のある約束になります。前の晩に翌日の予想を見ておけば、朝の慌ただしさの中でも判断できます。

② エアコンをつける判断を、子どもに任せない。ここがいちばん実効性のある一手です。「暑かったらつけていいよ」は、判断と遠慮の両方を子どもに預ける言い方になっています。そうではなく、暑い日と分かっているなら、出かける前に親が設定して運転を始め、「切らないでね」と伝える形にします。設定温度やタイマーの扱いも、親が決めて紙に書いて貼っておけば、子どもが迷う場面がなくなります。電気代の心配は親が引き受けるものとして扱い、「今日はつけたままでいい」と明言してください。熱中症警戒アラートが発表されたときの行動として、屋内でエアコン等を適切に使用することは、環境省が示している対応そのものです。

③ 飲みものと連絡の段取りを決める。飲みものは「あるかどうか」より「取りやすいかどうか」で用意します。冷蔵庫の手前に冷やした麦茶を入れておく、水筒を出しておく、といった具合です。そのうえで、決まった時刻に一報を入れる約束をしておきます。「12時にメッセージを1通送る」だけで十分です。返事が来ないときに気づけますし、子どもの側にも「連絡していい」という許可がはっきり伝わります。急な体調不良に備えた連絡の考え方は急な発熱・欠席にどう備えるか ― 共働き家庭の初動フローでも扱っているので、あわせて整えると重複が減ります。夏休み全体の段取りは夏休みの学習・昼食・安全を1枚で管理するにまとめてあります。

具合が悪くなったときの、家庭の初動

予防を整えても、体調が崩れる日はあります。そのときにどう動くかを、あらかじめ言葉にしておきます。環境省・文部科学省の手引きは、具合が悪くなった場合の対応として、すぐに活動を中止し、風通しのよい日陰や、できればクーラーが効いている室内等に避難させること、水分を摂取できる状態であれば冷やした水分と塩分を補給すること(経口補水液やスポーツドリンクなどが最適)を挙げています。立ちくらみや筋肉のこむら返りなどの軽度の症状の場合は、涼しい場所へ移動し、衣服を緩め、安静にさせ、少しずつ水分の補給を行うとされています。

熱中症が疑われるときの家庭の初動を3段階で示した図。1つ目はすぐ涼しい場所へで、していたことをやめる、風通しのよい日陰かクーラーの効いた室内へ移る、衣服をゆるめて横になる。2つ目は水分がとれるならで、冷やした水分と塩分をとる、経口補水液やスポーツドリンクが適している、そばで様子を見続ける。3つ目はこの3つなら医療機関へで、水を飲むことができない、休んでも回復しない、応答が鈍い・言動がおかしい。
図2:判断の分かれ目は「水が飲めるか」「休んで回復するか」「受け答えがふだんどおりか」の3点です。

迷いやすいのは「様子を見るか、受診するか」の線引きです。手引きははっきりと書いています。水を飲むことができない、症状が重い、休んでも回復しない場合には、病院での治療が必要ですので、医療機関に搬送します。そして、応答が鈍い、言動がおかしいなど重症の熱中症が疑われるような症状がみられる場合には、直ちに医療機関に連絡します。それと同時に、現場でなるべく早く冷やし、体温を下げることが重要だとされ、「重症者を救命できるかどうかは、いかに早く体温を下げることができるかにかかっています」と説明されています。手引きは熱中症の重症度をⅠ度(現場の応急処置で対応できる)、Ⅱ度(病院への搬送が必要)、Ⅲ度(入院し集中治療が必要)に分類し、Ⅱ度以上の症状があった場合には直ちに病院へ搬送するとしています。重症の場合には救急車を呼び、現場ですぐに体を冷却する必要があるとも書かれています。

もう一点、手引きが軽度の症状について述べていることも大切です。症状が改善するかどうかは病院搬送を判断するためのポイントになるので、「必ず、誰かが付き添うようにします」とされています。日中の家庭では、この「付き添う人」がいないことが最大の弱点になります。だからこそ、子どもから「気持ちが悪い」という連絡が入った時点で、まず涼しい場所で休むよう伝えたうえで、近くにいる家族や祖父母、信頼できる近所の方に見に行ってもらえるか、あるいは自分が帰れるかを判断する——その順番を、あらかじめ決めておく価値があります。連絡できる相手を2人以上、電話番号つきで見える場所に貼っておくのが現実的です。

そして、子どもの側に伝えておきたいのは「我慢しなくていい」という一言です。学校向けの手引きでさえ、集団活動のポイントとして「体調不良を気軽に相談できる雰囲気を作りましょう」「体調不良は正直に申告するように指導しましょう」と書いています。日中の家庭は、親が忙しいことを子どもがよく知っている場所です。「仕事中に連絡したら迷惑かな」という遠慮が、報告を遅らせます。「気持ち悪かったら、我慢しないでその時点で連絡していい」「連絡してくれたほうが助かる」と、はっきり言葉にしておいてください。

家庭で試す3つの工夫

家庭で試す3つの工夫

  • ① エアコンは、出かける前に親が入れてから家を出る:「暑かったらつけていいよ」ではなく、暑い日と分かっている朝は、親が設定して運転を始めてから出かけます。設定温度と操作の手順を紙に書いてリモコンのそばに貼っておけば、子どもが迷いません。電気代の心配は親が引き受けるものとして扱い、「今日はつけたままでいい」とはっきり伝えます。判断をひとつ減らすだけで、日中の安全はかなり変わります。
  • ② 飲みものを「取りやすい場所」に前の晩から置く:冷やした麦茶や水を冷蔵庫の手前に、水筒なら食卓の上に。取り出すのに一手間かかるだけで、子どもは飲む回数を減らします。のどが渇いてからでは遅いので、「お昼を食べたら1杯」「おやつのときに1杯」のように時間と結びつけると回数が安定します。汗を多くかいた日には経口補水液やスポーツドリンクという選択肢もあることを伝えておきます。
  • ③ 昼の一報を、決まった時刻の1通にする:「何かあったら連絡して」ではなく、「12時にメッセージを1通送る」と決めます。内容は「元気」の二文字で十分です。子どもにとっては連絡していい合図になり、親にとっては返事がないことに気づける仕組みになります。返事がないときにどうするか(もう一度送る、誰に見に行ってもらうか)まで決めておくと、慌てずに済みます。

声かけの言い換え

声かけの言い換え例

「暑かったらエアコンつけていいからね」→ 判断と遠慮の両方を子どもに預けてしまう。「今日は暑いから朝からつけておくね。切らないでね」と、親が決めて伝える。

「家の中なんだから大丈夫でしょ」→ 救急搬送でいちばん多い発生場所は住居。「家の中でも起きるから、部屋を涼しくしておこう」に置き換える。

「ちゃんと水飲んだの?」→ 責める形になり、飲んでいなくても「飲んだ」と答えやすい。「今日は何回くらい飲んだ? 麦茶まだある?」と量を聞く。

「仕事中だから、我慢して待っててね」→ 連絡をためらわせる。「気持ち悪かったら、我慢しないでその時点で連絡していいよ」と先に伝えておく。

確認するチェックリスト

家庭で確認するチェックリスト

  • 暑い日の朝、エアコンを親が入れてから出かける段取りになっている(子どもの判断に任せていない)。
  • 冷やした飲みものが、子どもが自分で取れる場所に用意されている。
  • 熱中症警戒アラートや暑さ指数を、親子のどちらでも確認できる方法を決めてある。
  • 具合が悪くなったときの連絡先を2件以上、電話番号つきで見える場所に貼ってある。
  • 「水が飲めない・休んでも回復しない・受け答えがおかしい」ときは医療機関へ、という線引きを家族で共有している。

気をつけたいこと・相談先

家庭の工夫だけで抱え込まないために

ここで紹介したのは、公的機関が公表している一般的な予防と対応の考え方であり、症状の判断や診断、治療についての助言ではありません。熱中症の症状は、めまいや立ちくらみのような軽いものから、意識の障害を伴う重いものまで幅があり、持病や服用している薬、その日の体調によっても現れ方が変わります。「これくらいなら大丈夫」という判断を家庭だけで抱え込まないでください。水を飲むことができない、休んでも回復しない、応答が鈍い・言動がおかしいといった様子が見られるときは、ためらわずに医療機関に連絡し、重症が疑われる場合は救急車を呼びます。その間も、涼しい場所で体を冷やし続けることが大切だとされています。

受診するかどうか迷うときの相談先も、平常時に調べておくと安心です。多くの都道府県では、休日・夜間に子どもの急な病気について看護師などに相談できる「子ども医療電話相談(#8000)」が実施されています。地域によっては、救急車を呼ぶべきか迷ったときに相談できる「救急安心センター事業(#7119)」も利用できますが、実施状況は地域によって異なります。受付時間や対象は自治体ごとに違うため、お住まいの自治体の公式情報で確認し、番号を連絡先の紙に一緒に書いておいてください。

また、留守番そのものの可否は、この記事の範囲を超える判断です。年齢や本人の様子、住まいの環境によって適切さは大きく変わります。不安が残る年齢であれば、無理に一人にせず、学童や預け先、自治体が用意している夏の居場所、図書館や児童館などを選択肢に入れてください。エアコンの不調や停電で家が涼しく保てないときは、気候変動適応法に基づき市町村長が指定したクーリングシェルターを含め、涼める場所を確認しておくことも備えになります。仕事を抜けにくい事情がある場合は、勤務先で使える制度を子どもの用事で仕事を休むとき ― 共働き家庭が使える両立支援制度で確認してみてください。

出典・参考

  • 消防庁「令和7年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」(令和7年10月29日)
    令和7年5月から9月までの全国の熱中症による救急搬送人員の累計が10万510人で調査開始の平成20年以降で最多であること、令和7年は多くの地方で最も早い梅雨明けとなり夏の平均気温が最も高く熱中症警戒アラートの発表回数が過去最多となったこと、発生場所別では住居が3万8,292人(38.1%)で最も多く道路1万9,773人(19.7%)・公衆(屋外)1万2,175人(12.1%)・仕事場1万559人(10.5%)・教育機関3,553人(3.5%)と続くこと、年齢区分別では高齢者5万7,433人(57.1%)・成人3万4,096人(33.9%)・少年8,447人(8.4%)・乳幼児531人(0.5%)であること、初診時の傷病程度別では軽症63.1%に対し入院が必要な中等症・重症が約36%であることの根拠。https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/r7/heatstroke_nenpou_r7.pdf(確認日 2026-08-01)。
  • 環境省・文部科学省「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き」(令和3年5月)
    暑さ指数(WBGT)が気温・気流・湿度・輻射熱を合わせた指標であること、暑さ指数31℃以上では「外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する」「運動は原則中止/特に子どもの場合は中止すべき」、28〜31℃では「外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する」とされること、事故事例の教訓として「屋内であっても熱中症は起こる」「それほど気温が高くなくても湿度が高い日は注意」が挙げられていること、軽い脱水状態ではのどの渇きを感じないためのどが渇く前から水分を補給すること、汗で失われる塩分の補給には0.1〜0.2%程度の塩分(1リットルの水に1〜2グラムの食塩)を補給できる経口補水液やスポーツドリンクがよいこと、冷やした水が推奨される理由と「いつでも飲める冷たい飲料(5〜15℃)」、暑熱順化が運動開始数日後から起こり2週間程度で完成すること、具合が悪くなった場合はすぐに活動を中止し風通しのよい日陰やクーラーの効いた室内に避難させること、水を飲むことができない・症状が重い・休んでも回復しない場合は医療機関に搬送すること、応答が鈍い・言動がおかしいなど重症が疑われる場合は直ちに医療機関に連絡し現場でなるべく早く冷やすこと、重症度Ⅰ〜Ⅲ度の分類とⅡ度以上は直ちに病院へ搬送すること、軽度の症状では必ず誰かが付き添うこと、集団活動では体調不良を気軽に相談できる雰囲気を作ることの根拠。https://www.mext.go.jp/content/20240426-mxt_kyousei01-000015427_02.pdf(確認日 2026-08-01)。
  • こども家庭庁「みんなで見守り『こどもの熱中症』を防ぎましょう!」
    こどもは体温調節機能が未発達で、汗をかく能力が未発達なため皮膚の血流量を増加させ体の表面から周囲に熱を逃がすことで体温を調節しており外気温の影響を受けやすいこと、背が低いこどもは地表面から強い影響を受け「大人の顔の高さで32℃の時、こどもの顔の高さでは35℃程度」になること、夏場の車内は短時間で高温になるため車の中にこどもだけを残すことはやめること、周囲の大人がこどもの様子を十分に観察し顔色や汗の量などに気を配る必要があることの根拠。https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety-actions/cases/netchusho(確認日 2026-08-01)。
  • 環境省 熱中症予防情報サイト「熱中症警戒情報とは」
    熱中症警戒情報(熱中症警戒アラート)が、府県予報区等内のいずれかの暑さ指数情報提供地点における翌日・当日の日最高暑さ指数(WBGT)が33(予測値)に達する場合に発表されることの根拠。https://www.wbgt.env.go.jp/about_alert.php(確認日 2026-08-01)。
  • 環境省 熱中症予防情報サイト「熱中症特別警戒情報とは」
    熱中症特別警戒情報が「広域的に過去に例のない危険な暑さ等となり、人の健康に係る重大な被害が生じるおそれがある」状況を指し、都道府県内のすべての暑さ指数情報提供地点における翌日の日最高暑さ指数(WBGT)が35(予測値)に達する場合等に、気候変動適応法施行規則に基づいて発表されること、発表時に求められる行動として屋内でエアコン等を適切に使用すること・高齢者やこども等への見守りや声かけ・管理者による運動や外出、イベント等の中止、延期、変更の判断が挙げられていることの根拠。https://www.wbgt.env.go.jp/about_special_alert.php(確認日 2026-08-01)。
  • 環境省 熱中症予防情報サイト「改正気候変動適応法」/「指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)・リンク集」
    気候変動適応法が令和5年5月12日に公布され令和6年4月1日に全面施行されたこと、改正により熱中症対策実行計画の法定計画への格上げ・熱中症警戒情報の法定化・熱中症特別警戒情報の創設・市町村長による指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)および熱中症対策普及団体の指定の制度が措置されたこと、クーリングシェルターが気候変動適応法に基づく施設で全国の市区町村のリンク集が公開されており1,255市区町村(令和8年7月17日現在)が指定済みであることの根拠。https://www.wbgt.env.go.jp/doc_ccaa.phphttps://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_shelter.php(確認日 2026-08-01)。

この記事について

本記事は、共働き家庭で子どもだけが日中を過ごす場面を想定し、消防庁・環境省・こども家庭庁・文部科学省が公表している一般的な情報を家庭向けに整理したものです。医学的な診断・治療の判断や、個別の症状についての助言を行うものではありません。熱中症の現れ方は年齢・持病・服用中の薬・その日の体調によって異なります。体調に不安があるときは、自己判断で様子を見続けず、医療機関や自治体の相談窓口にご相談ください。記載内容は確認日時点で公表されていた資料に基づいています。暑さ指数やアラートの運用、クーリングシェルターの指定状況は年度ごとに更新されるため、最新の情報は環境省・消防庁・お住まいの自治体の公式サイトでご確認ください。留守番の可否や預け先の選択は、お子さんの年齢と様子、住まいの環境を踏まえてご家庭でご判断ください。

筆者コメント