3行まとめ

  1. 高校の学費支援には大きく二つあります。授業料を支援する「高等学校等就学支援金」と、授業料以外の教育費を支援する返還不要の「高校生等奨学給付金」です。役割が違うので、両方を知っておくと安心です。
  2. 就学支援金は制度が改正され(令和8年3月31日成立・4月1日施行)、所得による制限が撤廃され、多くの生徒が授業料の支援を受けられるようになりました。いわゆる「高校無償化」は、正確には授業料を支援するこの制度を指します。
  3. いずれの支援も自動では始まらず、申請が必要です。金額や要件は年度・都道府県によって変わるため、入学時の案内をよく読み、最新の内容を公式で確認することが何より大切です。

この記事でわかること

  • 高校の学費を支える二つの公的支援の、それぞれの役割
  • 「就学支援金」と「奨学給付金」は何がどう違うのか
  • 支援を受けるための基本の流れと、家庭が気をつけたいこと

「うちは対象なの?」がわからない不安

教育費の話は、正確な情報にたどり着く前に漠然とした不安だけが先に立ちがちです。「無償化というけれど、うちも対象なんだろうか」「支援があると聞いても、手続きが難しそう」。制度の名前も「無償化」「支援金」「給付金」と似ていて、どれが何を指すのか整理がつかない——そんなもやもやを抱えたまま進路の話が進んでいく家庭は少なくありません。

難しく感じるのは、制度が複数あり、改正で内容が更新されるからです。まず押さえたいのは、高校の学費支援は「授業料」を支える仕組みと、「授業料以外」を支える仕組みに分かれているという骨組みです(高校進学に向けた話し合いは高校説明会のあとで、親子で話しておきたい5つの視点)。

高校の学費を支える二つの公的支援

文部科学省は、高校生等への修学支援について「全ての意志ある高校生が安心して勉学に打ち込める社会をつくるため、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図る」としたうえで、授業料の支援については「高等学校等就学支援金制度」を、授業料以外の支援については「高校生等奨学給付金」を確認するようにと、二つの柱を分けて案内しています。

一つめの高等学校等就学支援金は、高校生等の授業料を支援する制度です。文部科学省は、いわゆる「高校無償化」と表現されることが多いものの、的確な表現としては授業料を支援する「高等学校等就学支援金」であると説明しています。この制度は改正され、令和8年3月31日に改正法が成立し4月1日に施行されたことにより、所得による制限が撤廃されました。

二つめの高校生等奨学給付金は、就学支援金がカバーしない「授業料以外」の教育費を支える制度です。授業料以外にかかる教育費の負担を軽減するためのもので、生活保護世帯や住民税非課税世帯が中心ですが、令和8年度からは年収490万円程度までの世帯に対象が広がりました。重要なのは、これが返還不要の「給付金」であり、貸与型の奨学金のように後で返す必要がない点です。国の補助のもとで各都道府県が実施主体となるため、金額や細かい要件は都道府県によって異なります。

就学支援金と奨学給付金の違い

二つの制度は名前が似ていますが、支えている場所が違います。就学支援金は「授業料」といういちばん大きな費目を、奨学給付金は「授業料以外」の細々とした教育費を担当していると考えると整理しやすくなります。授業料が支援されても、教科書や制服、修学旅行、部活動にはお金がかかりますから、二つは補い合う関係にあります。

高校の学費を支える二つの公的支援(文部科学省「高校生等への修学支援」)
制度支援する費目性質と対象
高等学校等就学支援金授業料令和8年4月施行の改正で所得による制限が撤廃され、多くの生徒が対象
高校生等奨学給付金授業料以外の教育費(教科書費・教材費・学用品費・通学用品費・入学学用品費・教科外活動費・通信費など)返還不要の給付金。生活保護世帯・住民税非課税世帯に加え、令和8年度から年収490万円程度までに対象が拡充。都道府県が実施主体
二つの高校学費支援を対比した図。上は高等学校等就学支援金で、支援するのは授業料、性質は授業料に充てる支援、令和8年施行の改正で所得制限が撤廃され多くの生徒が対象。下は高校生等奨学給付金で、支援するのは授業料以外の教育費(教科書費・教材費・学用品費など)、性質は返還不要の給付金、所得に応じて対象が決まり都道府県が実施。
図1:二つの支援は「授業料」と「授業料以外」で役割が分かれ、補い合っています。

対象になる家庭の範囲も異なります。就学支援金は改正で所得制限が撤廃され、幅広い世帯が授業料の支援を受けられるようになりました。一方、奨学給付金は所得に応じて対象が決まる仕組みで、返還不要で支給されます。多くの家庭が関係しうる授業料支援と、対象を所得で絞ってより手厚く支える授業料以外の支援、という二段構えです。

もう一つ、これらは高校段階の支援であり、大学や専門学校などには「高等教育の修学支援新制度」という別の仕組みがあります。進学の段階が上がるたびに、その時点の制度を改めて確認する必要があります(奨学金の仕組みを、進学前に親子で整理する)。

支援は自動で受けられますか

受けられません。制度があっても黙っていてお金が振り込まれることはなく、高校の学費支援は基本的に「申請してはじめて受けられる」仕組みです。入学のタイミングで届く案内を、忙しくても必ず開いて確認することが大切です。

高校の学費支援を受けるまでの4ステップを示した図。ステップ1は制度を知るで、授業料は就学支援金、授業料以外は奨学給付金という全体像をつかむ。ステップ2は案内を確認するで、入学時に学校や都道府県から届く案内をよく読む。ステップ3は申請するで、就学支援金はオンライン申請システムなどで期限内に手続きする。ステップ4は毎年更新するで、継続には年度ごとの手続きや所得確認が必要なことを忘れない。
図2:「制度を知る → 案内を確認 → 申請 → 毎年更新」。申請主義であることを押さえておきます。

おおまかな流れはこうです。①制度を知る。授業料は就学支援金、授業料以外は奨学給付金、という全体像を頭に入れておきます。②案内を確認する。入学時に学校や都道府県から案内が配られ、対象や必要書類、期限が書かれています。③申請する。就学支援金はオンライン申請システム(e-Shien)などを通じて期限内に、奨学給付金は都道府県の窓口や学校を通じて申請します。④毎年更新する。継続には年度ごとの手続きや所得の確認が必要になることがあります。

申請には、所得を確認するための書類(マイナンバーの情報や課税に関する情報など)が必要になるのが一般的です。私立高校の場合の扱いや、家計が急変したときの支援など、個別の事情に応じた仕組みも用意されているため、わからない点は自己判断で決めつけず、学校や都道府県に確認するのが確実です(教育費と家族で話す ― お金の不安を子どもに渡さない)。

家庭で試す3つの工夫

  • ① 「学費フォルダ」を1つ作る:学校や都道府県から届く学費・支援の案内は、封筒のまま紛れてしまいがちです。紙でもスマホでも、支援関連の書類を1か所にまとめる場所を決めておくと、締切や必要書類を見落としにくくなります。
  • ② 締切をカレンダーに先に入れる:案内を読んだら、申請の締切をその場で家族の共有カレンダーに入れてしまいます。学費支援は申請主義なので、「あとでやろう」が最大のリスクです。締切の少し前に準備のリマインドも入れておくと安心です。
  • ③ 進級のたびに「今年はどうなる?」と確認する:制度は改正されることがあり、継続には毎年の手続きが必要な場合もあります。学年が上がる春に、その年の案内を家族で確認する時間を短くとると、更新のし忘れを防げます。

声かけの言い換え例

「お金がないから私立は無理」→ 選択肢を先に閉じてしまい、子どもに引け目を感じさせる。

「まず、どんな支援が使えるか一緒に調べてみよう」→ 事実を確かめる姿勢を見せ、進路の選択肢を早く狭めない。

「うちは支援の対象じゃないと思う」→ 思い込みで決めつけ、受けられる支援を逃すおそれがある。

「対象かどうかは案内で確認しよう。申請しないと始まらないからね」→ 公式で確かめ、必要な手続きを取る前向きな行動に変えられる。

家庭で確認するチェックリスト

  • 授業料は就学支援金、授業料以外は奨学給付金、という全体像を理解している。
  • 奨学給付金は返還不要の給付金で、貸与型の奨学金とは違うと知っている。
  • いずれの支援も、申請しなければ受けられないことを踏まえている。
  • 入学時や進級時の案内を保管し、締切と必要書類を確認している。
  • 金額や要件は年度・都道府県で変わるため、最新の内容を公式で確認している。

最新の内容は、必ず公式で確認する

制度の金額、所得や世帯の要件、申請の方法や締切は、年度の改正や、実施主体である都道府県によって異なり、変更されることもあります。本記事の内容は概要の理解にとどめ、実際に対象になるか・いくら支援されるか・どう申請するかは、必ず入学する学校や都道府県、文部科学省の最新の公式情報でご確認ください。とくに就学支援金は令和8年施行の改正で所得制限が撤廃されるなど、近年見直しが続いている分野です。

また、この記事は特定の学校や進路をすすめたり、各家庭にとっての有利・不利を判断したりするものではありません。制度の適用について具体的に知りたいときは、中学校・高校の先生や、都道府県の高校修学支援の担当窓口が相談先になります。経済的な事情で進学に不安があるときも、抱え込まずに学校や自治体に相談する選択肢があります。

よくある質問

「高校無償化」で、授業料はかからなくなるのですか。
文部科学省は、いわゆる「高校無償化」は的確には授業料を支援する「高等学校等就学支援金」を指すと説明しています。令和8年3月31日に改正法が成立し4月1日に施行されたことで、所得による制限が撤廃され、多くの生徒が授業料の支援を受けられるようになりました。ただし支援されるのは授業料で、教科書や制服、修学旅行などの費用は別に考える必要があります。
教科書代や学用品費も支援の対象になりますか。
授業料以外の教育費は「高校生等奨学給付金」が担当します。文部科学省の資料では、対象となる授業料以外の教育費として教科書費、教材費、学用品費、通学用品費、入学学用品費、教科外活動費、通信費などが挙げられており、返還不要の給付金です。対象は生活保護世帯・住民税非課税世帯に加え、令和8年度から年収490万円程度までの世帯に広がりました。国の補助のもと各都道府県が実施主体となるため、対象となる費目や金額、細かい要件は都道府県によって異なります。お住まいの都道府県または学校にご確認ください。
申請には、どんな書類が必要ですか。
所得を確認するための書類(マイナンバーの情報や課税に関する情報など)が必要になるのが一般的です。就学支援金はオンライン申請システム(e-Shien)などを通じて期限内に、奨学給付金は都道府県の窓口や学校を通じて申請します。私立高校の場合の扱いや、家計が急変したときの支援など個別の仕組みもあるため、迷う点は自己判断せず学校や都道府県に確認してください。
高校で受けた支援は、大学に進むときも続きますか。
続きません。就学支援金と奨学給付金はどちらも高校段階の支援で、大学・専門学校などには「高等教育の修学支援新制度」という別の仕組みが用意されています。進学の段階が上がるたびに、その時点の制度を改めて確認する必要があります。金額や要件は年度によって変わるため、最新の内容は文部科学省などの公式情報でご確認ください。

出典・参考

  • 文部科学省「高校生等への修学支援」
    https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/index.htm(確認日 2026-07-24)。
    この出典で確認した記述
    「全ての意志ある高校生が安心して勉学に打ち込める社会をつくるため」経済的負担の軽減を図ること、授業料の支援は「高等学校等就学支援金制度」・授業料以外の支援は「高校生等奨学給付金」であること、「高校無償化」の的確な表現は授業料を支援する「就学支援金」であること、改正法が令和8年3月31日成立・4月1日施行で所得制限が撤廃され多くの生徒が支援を受けられるようになったことの根拠。
  • 文部科学省「高等学校等就学支援金・新制度の概要」(令和8年度)
    https://www.mext.go.jp/content/20260616-mxt_shuukyo03-100002595_7.pdf(確認日 2026-09-19)。
    この出典で確認した記述
    目的・目標に「高等学校等の授業料に充てるために高等学校等就学支援金を支給することで、家庭の教育費負担の軽減を図り」と示されていること、「いわゆる高校無償化については、…高校生等の授業料に充てる高等学校等就学支援金制度の拡充を図り、年収に関わらず、高等学校等に通う日本人等の生徒を対象に、高等学校等就学支援金を支給。」とされ、新制度の「所得制限:なし」と明記されていること、事業実施期間が「平成22年度~、【新制度】令和8年度~」であること、実施主体が公・私立高校等は都道府県、国立高校等は国であることの根拠(1ページ目)。
  • 文部科学省「高等学校等就学支援金オンライン申請システム e-Shien」
    https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/01753.html(確認日 2026-09-19)。
    この出典で確認した記述
    「高等学校等就学支援金は、オンラインによる申請が可能です。」「都道府県ごとに申請方法が異なりますので、学校からの案内に従って申請してください。」「学校によってはオンライン申請に対応していない(紙媒体での申請のみ受け付けている)場合がありますので、詳細は通っている学校に御連絡ください。」と示されていること、すなわち支援金が申請を前提とし、手続きの方法が都道府県・学校によって異なることの根拠。
  • 文部科学省「高校生等奨学給付金リーフレット」(令和8年度)
    https://www.mext.go.jp/content/20260616-mxt_shuukyo03-100002595_18.pdf(確認日 2026-09-19)。
    この出典で確認した記述
    「教科書費、教材費など、授業料以外の教育費を支援する返還不要の給付金です。」「お住まいの都道府県または学校への申し込みが必要です。」「※ 授業料支援の高等学校等就学支援金とは別々に申し込みが必要です。」「※ 都道府県によって実施状況が異なります。」と示されていること、対象世帯が「生活保護世帯」「住民税所得割が非課税の世帯」に加え、令和8年度から「年収270万円以上380万円未満の世帯」「年収380万円以上490万円未満の世帯」へ拡充されたこと、「家計急変支援について」として都道府県が定める家計急変事由が発生した場合に支援を受けられることの根拠(1〜2ページ目)。
  • 文部科学省「高校生等奨学給付金(奨学のための給付金)」令和8年度予算資料
    https://www.mext.go.jp/content/20260408-mxt_shuukyo03-100002595_4.pdf(確認日 2026-09-19)。
    この出典で確認した記述
    実施主体が「都道府県」、補助対象経費が「都道府県が行う高校生等奨学給付金事業に要する経費」と明記されていること、目的・目標が「高等学校等の授業料以外の教育費に充てるために、高校生等奨学給付金を支給することで、家庭の教育費負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与する。」であること、「※ 授業料以外の教育費とは、教科書費、教材費、学用品費、通学用品費、入学学用品費、教科外活動費、通信費など」と費目が示されていること、令和7年10月の三党合意を踏まえ「対象を中所得世帯(年収490万円程度)まで拡充するとともに、国の補助割合を1/3から1/2へ変更する。」とされていることの根拠(1ページ目)。
  • 文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
    https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/(確認日 2026-07-24)。
    この出典で確認した記述
    大学・専門学校等における返還不要の経済的支援は、高校段階の就学支援金・奨学給付金とは別に「高等教育の修学支援新制度」で用意されており、進学段階ごとに制度が分かれていることの根拠。

この記事について

本記事は家庭での話し合いを整理した一般的な情報であり、特定の学校の合否・優劣・進学先を判断・推奨するものではありません。個別の家計・投資の助言や、特定の金融商品の推奨も行いません。費用・選抜・支援制度は年度や地域によって変わるため、公式情報をご確認ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。

筆者コメント