3行まとめ
- 高専は中学卒業後に5年一貫で学ぶ高等教育機関で、全国に58校。工業系の学科が中心で、実験・実習を重視する。
- 令和6年度の卒業者は約6割が就職、約4割が専攻科や大学編入などへ進学した。
- 国立高専の学力検査は全国同じ日。推薦の条件や配点、5年間の費用と支援は、志望校の募集要項で確かめる。
この記事でわかること
- 高専と高校の、学び方と位置づけの違い
- 卒業後の就職・進学の割合と、専攻科・編入学
- 推薦選抜と学力選抜の時期と、配点の例
- 入学料・授業料と、学年で変わる支援制度
ロボコンを見たあとの「行きたい」
テレビで高専ロボコンを見ていた中学3年の子が、「こういうのを作る学校に行きたい」と言い出す。親は応援したい気持ちと同時に、「5年制って、大学には行けるの?」「途中で合わなかったらどうするの?」と、次々に疑問が浮かびます。周りに高専の出身者がいなければ、聞く相手も見つかりません。
秋は三者面談で受験校を絞り込む時期です。高専は高校とは入試の日程も仕組みも違うため、公立高校や私立高校と同じ感覚で考えていると、推薦の出願や事前の相談の期限を逃すことがあります。まず高専がどういう学校かを押さえ、そのうえで志望校の募集要項を読む順番で整理していきます。
高専は高校と何が違うのですか
高専は、高校と同じく中学卒業後に入学しますが、5年一貫で学ぶ高等教育機関です。文部科学省は、実践的・創造的技術者を養成することを目的とした学校と説明しています。全国に国公私立あわせて58校あり、令和7年度の在学者は53,305人、そのうち国立が51校・47,998人です。修業年限は5年(商船学科は5年6か月)です。
学科は、機械・電気・電子制御・情報・物質・建築・環境都市などの工業系が中心で、一部に船員を育てる商船学科があります。一般科目と専門科目を組み合わせた教育課程で、理論だけでなく実験・実習に重点が置かれ、最後に卒業研究に取り組みます。ロボットコンテストやプログラミングコンテストなどの全国大会があるのも高専の特色です。
高校との大きな違いは、入学の時点で、学ぶ専門分野をある程度選ぶことです。普通科の高校のように、3年間で進路を広く考えてから大学の学部を選ぶ流れとは順番が逆になります。
卒業後の進路と、15歳で分野を選ぶこと
文部科学省が学校基本調査をもとに示している数字では、令和6年度の高専の卒業者9,755人のうち、就職者は5,681人(58.2%)、進学者は3,778人(38.7%)でした。令和2年度からの5年間を見ても、就職が56〜58%台、進学が38〜40%台で推移しています。
進学先の一つは、多くの高専に置かれている専攻科です。本科を卒業したあと2年間さらに学び、大学改革支援・学位授与機構の審査を経ると、大学の学部と同じ学士の学位を得られます。大学への編入学の道もあります。「5年制だと大学に行けないのでは」という心配に対しては、進学という選択肢も開かれていると言えます。
一方で、15歳で工業系の分野に進むことになるのは事実です。子どもが「ロボットが好き」でも、学科ごとに学ぶ内容は大きく違います。学校説明会や公開されている授業の内容を見て、どの学科で何を学ぶのかを親子で具体的に確かめておくと、入学後の「思っていたのと違う」を減らせます。
推薦と学力検査の時期
国立高専の学力検査は、全国で同じ日に行われます。令和9年度入学者選抜の本試験は2027年2月14日、追試験は2月21日と公表されています。解答はマークシート方式で、国立高等専門学校機構は思考力・判断力・表現力を重視した問題を作っていると説明し、サンプル問題や過去問を公開しています。学力検査は、出願する高専に関係なく全国の国立高専などの会場で受けられる「最寄り地等受験制度」もありますが、会場の収容人数の都合があるため、事前に出願先へ相談する必要があります。
選抜の方法や配点は学校ごとに違います。例として長野工業高等専門学校の令和9年度募集要項を見ると、次のようになっています。
| 項目 | 推薦選抜 | 学力選抜 |
|---|---|---|
| 募集人員 | 6割程度 | 4割程度 |
| 出願の目安 | 中3の9教科の評定合計36以上、または34以上で数学・理科・英語の合計13以上。合格したら必ず入学する意思があること | 中学校を卒業見込みの人など |
| 選抜の資料 | 調査書と個人面接(1人15分程度) | 5教科の学力検査(800点。理科・英語・数学は各200点)と調査書(300点) |
| Web出願 | 2026年12月9日〜12月25日 | 2027年1月14日〜1月27日 |
| 検査日・結果 | 面接1月16日、内定通知1月21日 | 検査2月14日、発表2月18日 |
この学校では、推薦で合格内定とならなかった人も、出願時に学力選抜を希望していれば学力選抜を受けられます。調査書の評定は中3のもので、学力選抜では理科・英語・数学を2倍にして数えます。推薦の出願は12月、最寄り地での受験の相談は11月からと、公立高校より早い手続きがある点に注意が必要です。公立高校の仕組みは公立高校入試の仕組みを整理した記事で扱っています。
5年間の学費と支援制度
長野高専の募集要項では、入学料84,600円、授業料は年額234,600円です。ほかに教科書・教材・運動着類が約70,000円、学生会費などが約60,000円かかり、ノートパソコンを各自で用意する必要があります。教材や会費の額は、志望校の募集要項で確かめてください。
授業料の支援は、学年によって制度が変わります。1〜3年生は高校生と同じ高等学校等就学支援金の対象で、同じ募集要項には、令和8年度から所得制限が撤廃され、申請すれば授業料の全額が支援されると書かれています。4・5年生は、大学や専門学校と同じ高等教育の修学支援新制度の枠組みになり、授業料の減免と給付型奨学金を受けるには家計の基準を満たす必要があります。令和7年度からは、扶養する子どもが3人以上の多子世帯の学生は、所得制限なく国が定める一定額まで授業料などが減免されます。3年生までと同じ支援が5年生まで続くわけではないので、5年分の見通しを立てておくと安心です。
「行きたい」の気持ちを、具体的な確認につなげるための工夫を三つ挙げます。
家庭で試す3つの工夫
- 学科ごとに「何を作る・調べるのか」を書き出す:学校の案内を見ながら、気になる学科を二つ選び、5年間で学ぶ内容を親子で一行ずつまとめます。
- 入試のカレンダーを一枚にする:推薦の出願、学力検査、公立高校、私立高校の日程を同じ紙に書き、事前相談などの早い期限に印を付けます。
- 5年分の費用表を作る:入学料・授業料・教材費を学年ごとに並べ、1〜3年と4・5年で使える支援を書き添えます。
声かけの言い換え例
- 「高専って就職するところでしょ」→「卒業した人がどんな進路に進んでいるか、一緒に見てみよう」
- 「15歳で決めるのは早いよ」→「どの学科で何を学ぶのか、もう少し詳しく調べてみようか」
- 「推薦で行けばいいじゃない」→「推薦の条件と、だめだったときの流れを確かめておこう」
- 「お金のことは気にしなくていい」→「5年間でかかるお金を、一度一緒に並べてみよう」
チェックリスト
- 志望する高専の学科で、5年間に学ぶ内容を確かめた。
- 令和9年度の募集要項で、推薦の出願条件と学力選抜の配点を確かめた。
- 推薦の出願、学力検査、公立・私立高校の日程を一枚に書き出した。
- 入学料・授業料・教材費と、学年で変わる支援制度を確かめた。
- 三者面談で、高専の受験について先生に相談する準備をした。
家庭の工夫だけで抱え込まないために
この記事は、高専の仕組みを公的な資料で整理したもので、高専と高校のどちらがよいかを判断したり、特定の学校を勧めたりするものではありません。表の内容は長野高専の令和9年度の例で、推薦の条件、配点、出願期間、費用は学校ごとに違います。必ず志望する高専の最新の募集要項で確かめてください。
授業料の支援は申請が必要で、4・5年生の修学支援新制度には家計の基準があります。制度の内容は年度ごとに見直されることがあるため、文部科学省の案内や、入学後は在籍する高専の学生課で確かめてください。
障害などで受験上の配慮が必要な場合は、国立高等専門学校機構が入試での合理的配慮について案内しています。早めに在籍する中学校の先生と、志望する高専の入試担当の窓口に相談してください。
よくある質問
- 高専を卒業したあと、大学に進めますか。
- 進めます。高専の卒業後は、大学への編入学や、高専に置かれた専攻科(2年間)への進学の道があります。専攻科を修了し審査を経ると学士の学位を得られます。令和6年度の卒業者では38.7%が進学しました。
- 高専の入試はいつですか。
- 国立高専の学力検査は全国共通の日で、令和9年度入学者選抜は2027年2月14日(追試験2月21日)です。推薦選抜は学校ごとに日程が違い、例えば長野高専では12月にWeb出願、1月16日に面接があります。
- 高専の授業料は無償になりますか。
- 1〜3年生は高等学校等就学支援金の対象で、長野高専の募集要項では、令和8年度から所得制限が撤廃され、申請すれば授業料の全額が支援されるとしています。4・5年生は修学支援新制度の対象で、家計の基準を満たす必要があります。
出典・参考
- 文部科学省「高等専門学校(高専)について」
この出典で確認した記述
「高等専門学校は実践的・創造的技術者を養成することを目的とした5年一貫の高等教育機関です。全国に国公私立合わせて58校あり、全体で約6万人の学生が学んでいます。」「入学後は5年一貫(商船学科は5年6ヶ月)で、一般科目と専門科目をバランスよく配置した教育課程」「理論だけではなく実験・実習に重点が置かれています。更に卒業研究を通して」「機械工学科、電気工学科、電子制御工学科、情報工学科、物質工学科、建築学科、環境都市工学科などの工業系の学科が中心に設置されています。一部の学校では、船員養成のための商船学科を設置しています。」「『ロボットコンテスト』『プログラミングコンテスト』『デザインコンペティション』『体育大会』などの大会が毎年開催されています。」「専攻科は5年間(商船学科は5年6ヶ月)の本科を卒業後、更に2年間より高度な技術教育を行います。専攻科を修了すると独立行政法人大学評価・学位授与機構の審査を経て学士の学位(大学学部と同じ)を得ることができます。専攻科への進学のほか、大学に編入学することもできます。」表「卒業者に対する就職、進学の割合」(注:学校基本調査報告書による)令和6年度「卒業者数(A)9,755人」「うち就職者数(B)5,681人」「就職者数の割合(B/A)58.2%」「うち進学者数(C)3,778人」「進学者数の割合(C/A)38.7%」。令和2〜5年度の就職割合は57.5%・56.0%・56.3%・57.5%、進学割合は39.2%・40.6%・40.4%・39.5%。表「設置者別学校数・入学定員・在学者数(令和7年度)」計「58校」「10,535人」「53,305人」、国立「51校」「9,420人」「47,998人」(在学生数は学校基本調査報告書による)。本文冒頭の「約6万人」ではなく、令和7年度の在学者数53,305人を本文に用いた。学位を審査する機関は現在の名称(大学改革支援・学位授与機構)で表記した。本文「高専は高校と何が違うのですか」「卒業後の進路と、15歳で分野を選ぶこと」、3行まとめ1・2、図1、よくある質問1の根拠。 - 国立高等専門学校機構「入試基本情報」
この出典で確認した記述
「国立高等専門学校入学者選抜学力検査日程 令和9年度入学者選抜 本試験:令和9年2月14日(日) 追試験:令和9年2月21日(日)」「国立高等専門学校では、現在の中学校学習指導要領に則り『思考力・判断力・表現力(以下「思考力等」という。)』をより重視した入学者選抜学力検査問題を作成しております。」「以下のサンプル問題では、過去の入学者選抜学力検査から問題を抽出し」「学力検査における解答用紙(マークシート)について」。本文「推薦と学力検査の時期」第1段落、3行まとめ3、よくある質問2の根拠。 - 国立高等専門学校機構「最寄り地等受験制度」
この出典で確認した記述
「『学力検査による選抜』において、出願する高専に関係なく、全国にある51の国立高等専門学校とその他設置している会場にて受験が可能な『最寄り地等受験制度』を導入しています。」「会場の収容人数等の都合で必ずしも希望に添えないこともありますので、希望する受験生は、出願する高専まで、必ず事前の相談をお願いします」。ページ本文は令和8年度入学者選抜の日付で書かれており、令和9年度の扱いは長野高専の募集要項(出典4)の記載で確認した。本文「推薦と学力検査の時期」第1段落の根拠。 - 長野工業高等専門学校「令和9年度 入学者募集要項」(PDF)
この出典で確認した記述
印刷ページ=PDFページ−4。PDF1ページ(表紙)の日程表:推薦選抜「Web出願受付期間 令和8年12月9日(水)~令和8年12月25日(金)」「検査日 令和9年1月16日(土)」「合格内定通知 令和9年1月21日(木)」、学力選抜「Web出願受付期間 令和9年1月14日(木)~令和9年1月27日(水)」「検査日 令和9年2月14日(日)」「合格発表 令和9年2月18日(木)」。印刷2ページ「工学科:200名」「『推薦選抜』の募集人員は、6割程度とします。」「『学力選抜』の募集人員は、4割程度とします。」。印刷3ページ「(2)…必ず推薦選抜を受験し、合格したときは必ず入学する意思のある者」「①9教科の成績が5段階評価の評定で合計36以上 ②9教科の成績が5段階評価の評定で合計34以上であり、かつ数学・理科・英語の成績が5段階評価の評定で合計13以上」。印刷4ページ「調査書及び面接を総合して行います。面接は個人面接とし、1人15分程度で行います。」。印刷5ページ「『推薦選抜』の結果、合格内定とならなかった者は、出願時に『学力選抜』を希望してある場合に限り、『学力選抜』を受験することができます。」。印刷7ページ「学力検査の成績(800点満点)」「調査書(300点満点)」「理科 100点×2」「英語 100点×2」「数学 100点×2」「国語 100点」「社会 100点」、調査書「理科、英語、数学 各教科5点×5×2」「国語、社会、音楽、美術、保健体育、技術・家庭 各教科5点×5」「調査書の成績評定は、中学校第3学年…の成績評定(5段階評定)」「マークシート方式による解答です」。印刷8ページ(最寄り地等受験制度)「相談期間:推薦選抜に出願する場合 令和8年11月3日(火)~12月8日(火) 学力選抜に出願する場合 令和8年11月3日(火)~令和9年1月13日(水)」「※『推薦選抜』、『帰国生徒特別選抜』は、本制度の対象外です。」。印刷14ページ「6.納入経費(1)入学料 84,600円」「(2)授業料前期分 年額234,600円」「※1~3年次においては、高等学校等就学支援金制度の対象です。令和8年度より所得制限が撤廃され、申請を行うことで授業料全額が支援されます。」「(3)教科書・教材・運動着類代金 約70,000円」「(4)その他(学生会費、同窓会費、後援会費) 約60,000円」「BYOD を導入しており、上記とは別にノートパソコンを各自でご準備いただいています。」。本文の表、「推薦と学力検査の時期」第3段落、「5年間の学費と支援制度」、図1・図2、よくある質問2・3の根拠。 - 旭川工業高等専門学校「令和8年度からの授業料の取扱いについて」(PDF)
この出典で確認した記述
「…全ての1~3年生が支給対象となります。支給額は授業料相当額の全額となります。(国の令和8年度予算成立をもって確定します。)」「※『高等教育の修学支援新制度』により、高専(4~5年生)については、授業料が減免され、給付型の奨学金を受給することができます(修学支援新制度の対象となるためには、一定の家計状況を満たす必要があります)。なお、多子世帯の学生に対する授業料無償化も含まれます(こちらは家計状況の制限はありませんが、多子世帯の条件を満たす必要があります)。」。本文「5年間の学費と支援制度」第2段落(4・5年生の扱い)、図1、よくある質問3の根拠。 - 文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
この出典で確認した記述
「『高等教育の修学支援新制度』は、大学、短期大学、高等専門学校、専門学校の授業料・入学金の免除または減額と、返還を要しない給付型奨学金により、意欲ある子供たちの進学を支援するための制度として令和2年4月に開始しました。」「令和6年度からは、多子世帯(扶養する子供が3人以上いる世帯)や私立の理工農系の学部等に通う学生の中間層への支援を拡大しています。」「令和7年度から多子世帯の学生については、所得制限なく、大学等の授業料・入学金を国が定める一定額まで減免することとしております。」。本文「5年間の学費と支援制度」第2段落(多子世帯)、気をつけたいこと第2段落の根拠。 - 国立高等専門学校機構「入学試験における合理的配慮」
この出典で確認した記述
「国立高等専門学校入学者選抜では、障害等による支援ニーズのある学生が受験する場合に合理的配慮の申請を行うことができます。」「合理的配慮を希望する場合は、ご自身が出願する高専にお問い合わせください。」「出願前の可能な限り早い段階で『事前相談』を受けられることをお勧めします。」。気をつけたいこと第3段落の根拠。
この記事について
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