3行まとめ
- 公立高校の合否は、中学校が送る調査書と学力検査の成績などをもとに決まる。学力検査は都道府県などの教育委員会が行う。
- 調査書の何年生の評定を何倍で数えるか、学力検査との比率をどうするかは都道府県で違う。東京都と神奈川県でも数え方が異なる。
- 面接・作文・実技は学校ごとに違う。志望校の分は、教育委員会が秋に公表する選抜要項で確かめる。
この記事でわかること
- 公立高校の合否を決める資料と、それを定めた法令
- 調査書に書かれる項目と、全国での扱われ方
- 東京都と神奈川県の、調査書点の数え方の違い
- 面接・作文の実施状況と、定員に満たないときの扱い
三者面談の前の夜
中学3年の子が、塾でもらった資料を見ながら「内申が足りないかもしれない」とつぶやく。友だちは「当日の点で逆転できる」と言い、別の友だちは「内申で決まる」と言う。親が自分の受験のころの記憶で答えると、仕組みが違っていて話がかみ合わない。秋の三者面談の前に、こうした夜を過ごす家庭は少なくないでしょう。
話が混乱する理由の一つは、同じ「公立高校の入試」でも、住んでいる都道府県によって中身が違うことです。友だちや親戚の話、ネットの情報が別の地域のものだと、そのまま当てはめても答えは出ません。まず国の共通の決まりを押さえ、そのうえで自分の地域の選抜要項を読む、という順番で整理していきます。
公立高校の合否は、何で決まるのですか
調査書と学力検査の成績などを資料にした選抜で決まり、入学は校長が許可します。根拠は学校教育法施行規則第90条で、高校の入学は、中学校から送られた調査書その他必要な書類、選抜のための学力検査の成績などを資料として行う選抜に基づいて、校長が許可すると定めています。公立高校の学力検査は、その高校を設置する都道府県や市町村の教育委員会が行います。
調査書は、中学校の校長が進学先の校長に送る書類です(同規則第78条)。いわゆる「内申書」はこれにあたります。同じ第90条には、特別の事情があるときは学力検査を行わないこと、調査書を選抜の資料にしないこともできると書かれています。「調査書と学力検査が中心」という骨組みは全国共通で、その組み合わせ方を都道府県が決めていると考えるとわかりやすくなります。
調査書には、何が書かれるのか
文部科学省は毎年、都道府県ごとの入試の実施状況を調べています。令和7年度入試についての調査では、調査書に「各教科の学習の記録」(いわゆる評定)を記入するのは47都道府県すべてでした。ほかに、総合的な学習の時間の記録が43、特別活動の記録が42、行動の記録が34、観点別学習状況が33、スポーツ・文化・社会活動などの記録が28都道府県です。
評定がどの地域でも使われる一方、それ以外の項目は地域によって入ったり入らなかったりします。部活動や生徒会の記録がどこまで見られるかも、地域によって違うということです。通知表の評定がどう付けられているかは、通知表の読み方を整理した記事で詳しく扱っています。
数え方は、都道府県でこれだけ違う
調査書を点数にする方法は、都道府県ごとに大きく違います。来春(令和9年度)入試について東京都と神奈川県が公表している資料から、全日制の一般的な選抜の数え方を並べると次のようになります。
| 項目 | 東京都(第一次募集) | 神奈川県(共通選抜) |
|---|---|---|
| 評定の数え方 | 学力検査をする教科は1倍、しない実技4教科は2倍 | 中2の9教科の合計+中3の9教科の合計×2(135点満点) |
| 学力検査との比率 | 原則7:3(学力検査:調査書点) | 学校ごとに設定(それぞれ2以上、合計10) |
| そのほかに加わるもの | スピーキングテストの結果、学校によって面接・作文・実技 | 学校によって特色検査(実技・自己表現・面接) |
東京都では、5教科の学力検査をする場合、音楽・美術・保健体育・技術家庭の評定は2倍にして数えます。神奈川県では、中2の評定も入り、中3の評定は2倍です。同じ「内申」でも、どの学年のどの教科をどれだけ重く見るかがまったく違うので、他の地域の話はそのまま当てはまりません。
日程も地域ごとに違います。東京都の令和9年度入試では、全日制の第一次募集の学力検査が2027年2月21日、合格発表が3月1日と公表されています。私立高校との併願を考える家庭は、両方の日程を一つのカレンダーに書き出しておくと、出願の準備が重なっても慌てずにすみます。
面接・作文と、定員に満たないとき
文部科学省の同じ調査によると、一般入試で面接を「すべての学校・形態で実施」しているのは16都道府県、「一部の学校や形態のみ」が31都道府県でした。小論文・作文は27都道府県で一部の学校が実施し、20都道府県は実施していません。実技検査は40都道府県で一部の学校が実施しています。面接があるかどうかは、地域だけでなく志望校によっても変わります。
志願者が定員に満たない場合の扱いも地域で違います。令和7年度入試では、「原則として定員内不合格を出さないよう取り扱っている」と答えたのが26都道府県でした。一方で、全国で延べ1,806人が定員内で不合格となり、そうした不合格があった学校は562校ありました。定員割れだから必ず入れる、とは言い切れないので、心配なときは中学校の先生に聞いてみてください。
噂ではなく、自分の地域の資料で話すために、家庭でできることを三つ挙げます。
家庭で試す3つの工夫
- 教育委員会の選抜要項を親子で一度開く:「〇〇県 公立高校 入学者選抜 選考基準」などで探せます。比率や数え方の表を見るだけでも、噂との違いがわかります。
- 志望校の検査の中身を書き出す:学力検査の教科、面接・作文・実技の有無、比率を1枚にまとめると、残りの時間に何を準備するかが見えてきます。
- 三者面談で聞くことを三つに絞る:調査書の扱い、志望校の検査、私立の併願と日程。メモにして持っていくと、聞き漏れを防げます。
声かけの言い換え例
- 「内申、何点なの?」→「志望校の入試で、内申がどう数えられるか一緒に見てみよう」
- 「当日で逆転すればいいでしょ」→「当日の点と内申の比率、うちの県ではどうなってるかな」
- 「友だちがそう言ってたんでしょ」→「その話、どの県の入試の話か確かめてみようか」
- 「面接なんて何とかなるよ」→「志望校に面接があるか、まず調べてみよう」
チェックリスト
- 住んでいる都道府県の、今年度の選抜要項を見つけた。
- 調査書が、どの学年の評定を何倍で数えるかを確かめた。
- 学力検査と調査書の比率を、志望校ごとに確かめた。
- 志望校に面接・作文・実技があるかを確かめた。
- 出願・検査・合格発表と、私立の併願の日程を書き出した。
家庭の工夫だけで抱え込まないために
この記事は、公立高校の入試の仕組みを公的な資料で整理したもので、特定の高校の合否を見通したり、志望校を勧めたりするものではありません。比率や日程は年度ごとに変わることがあります。必ず、住んでいる都道府県の教育委員会が公表する最新の選抜要項で確かめてください。
不登校の経験がある場合の配慮も、地域ごとに用意されています。文部科学省の調査では、本人が学校以外の場での学習状況などを自己申告書として出せるようにしている都道府県が全校実施で26、調査書に出欠の記録を求めない都道府県が全校実施で10ありました。障害などで受検上の配慮が必要な場合も含め、まず在籍する中学校の担任や進路指導の先生に相談してください。
選抜要項の読み方や出願の手続きでわからないことは、各教育委員会の高校入試の担当課や、志望する高校にも問い合わせることができます。
よくある質問
- 公立高校の入試は、内申点と当日の点のどちらが大事ですか。
- 都道府県と学校によって違います。学校教育法施行規則は、調査書と学力検査の成績などを資料に選抜すると定めていますが、比率は地域が決めます。たとえば東京都の全日制第一次募集は原則7:3、神奈川県の共通選抜は学校ごとに設定します。
- 調査書(内申書)には何が書かれますか。
- 各教科の学習の記録(評定)は、令和7年度入試では47都道府県すべてで記入されていました。総合的な学習の時間や特別活動、行動の記録、観点別学習状況、スポーツ・文化・社会活動などの記録を入れるかどうかは、都道府県によって違います。
- 中1・中2の成績も、公立高校の入試に関係しますか。
- 地域によります。神奈川県の共通選抜では、中2の9教科の評定の合計と、中3の9教科の合計を2倍したものを足して数えます。どの学年の評定を使うかは都道府県の選抜要項に書かれているので、住んでいる地域の資料で確かめてください。
- 定員割れの高校なら、必ず合格できますか。
- 必ずとは言えません。令和7年度入試では、原則として定員内不合格を出さないと答えた都道府県が26ある一方、全国で延べ1,806人が定員内で不合格となりました。扱いは地域で違うので、中学校の先生に確かめてください。
出典・参考
- 学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)第78条・第90条(e-Gov法令検索)
この出典で確認した記述
条文は e-Gov 法令API(laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/322M40000080011)で取得して確認した。第90条第1項「高等学校の入学は、第七十八条の規定により送付された調査書その他必要な書類、選抜のための学力検査(以下この条において「学力検査」という。)の成績等を資料として行う入学者の選抜に基づいて、校長が許可する。」第2項「学力検査は、特別の事情のあるときは、行わないことができる。」第3項「調査書は、特別の事情のあるときは、入学者の選抜のための資料としないことができる。」第5項「公立の高等学校(公立大学法人の設置する高等学校を除く。)に係る学力検査は、当該高等学校を設置する都道府県又は市町村の教育委員会が行う。」第78条「校長は、中学校卒業後、高等学校、高等専門学校その他の学校に進学しようとする生徒のある場合には、調査書その他必要な書類をその生徒の進学しようとする学校の校長に送付しなければならない。」本文「公立高校の合否は、何で決まるのですか」、3行まとめ1、よくある質問1の根拠。 - 文部科学省「令和7年度 高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査(公立高等学校)」(令和7年12月、令和8年2月17日更新版、PDF)
この出典で確認した記述
表紙「公立高等学校(市町村立高等学校及び組合立高等学校も含む)の令和7年度入学者選抜について令和7年8月~9月に調査を実施」。印刷ページ=PDFページ−3。印刷10ページ「Ⅱ.選抜方法 1.調査書・その他の学習評価等、入学者選抜方法等の実施状況 (1)記入事項①」の計欄「各教科の学習の記録 47」「観点別学習状況 33」「特別活動の記録 42」「総合的な学習の時間の記録 43」「行動の記録 34」「スポーツ・文化・社会活動に関する記録 28」。印刷24ページ「(6)一般入試における面接、小論文・作文、実技検査等」(ア:全ての学校・形態の選抜で実施している/イ:一部の学校や、一部の形態の選抜のみで実施している/ウ:実施していない)の計欄「①面接 ア16・イ31・ウ0」「②小論文・作文(国語の問題の一部の場合を除く)ア0・イ27・ウ20」「③実技検査 ア0・イ40・ウ7」。印刷26ページ「2.志願者数が定員に満たない場合の対応等 (1)志願者数が定員に満たない場合の合否の決定に関する方針(アとイについては複数回答可)」計欄「ア 文書、口頭、申し合わせ等により、原則として定員内不合格を出さないよう取り扱っている 26」「イ 定員内不合格を出す場合、教育委員会との協議を要することとしている 18」「ウ 各校長の判断に委ねられている 17」。印刷29ページ「(3)令和7年度高等学校入学者選抜における定員内不合格となった者の数(延べ数)」計「1806」、「(6)令和7年度高等学校入学者選抜における定員内不合格があった学校数(実数)」計「562」。印刷30ページ「3.不登校経験のある生徒に対する配慮 (1)調査書等の提出①」計欄「ウ 本人から、学校以外の場(家庭を含む)における学習状況等を自己申告書として提出を求めている(提出できることとしている)全校で実施 26」「エ 調査書に出欠の記録を求めない 全校で実施 10」。なお文部科学省は令和8年2月10日付で定員内不合格の項目の正誤表を出しており、本記事の数値は訂正を反映した2月17日更新版による。本文「調査書には、何が書かれるのか」「面接・作文と、定員に満たないとき」、気をつけたいこと第2段落、よくある質問2・4の根拠。 - 東京都教育委員会「令和9年度東京都立高等学校に入学を希望する皆さんへ」(日本語版、PDF)
この出典で確認した記述
印刷ページ=PDFページ−4。印刷51ページ「学力検査に基づく入試」の「●学力検査の得点と調査書点の比率」「全日制課程の第一次募集では、原則として、『7:3』、第二次募集では、原則として、『6:4』になります(ただし、芸術及び体育に関する学科については、学力検査が3教科となることから、どちらの募集も『6:4』となります。)」、「●選考」「学力検査の得点、調査書点及び点数化したスピーキングテスト結果のほか、面接、小論文又は作文、実技検査を実施する学校ではこれらの点数を総合した成績で行います」、「学力検査を5教科で実施する場合に、学力検査を実施しない実技4教科について、評定の合計を2倍にして、点数化します」。印刷56ページ「(2)学力検査に基づく入試(第一次募集・第二次募集・分割募集)における調査書点について」「学力検査を実施する教科の評定を1倍、学力検査を実施しない教科の評定を2倍して、算出します」、表「5教科(国・数・英・社・理)の場合 1倍する教科 国・数・英・社・理 2倍する教科 音・美・保体・技家 評定の満点 65点」。PDF4ページ「令和9年度入試の日程」に全日制第一次募集「学力検査 2月21日(日)」「合格発表 3月1日(月)」。本文の表・図1、3行まとめ2、よくある質問1の根拠。 - 神奈川県教育委員会「選考の方法と選考基準の見方」(令和9年度神奈川県公立高等学校入学者選抜選考基準、PDF)
この出典で確認した記述
掲載ページ「令和9年度神奈川県公立高等学校入学者選抜選考基準及び特色検査の概要」(https://www.pref.kanagawa.jp/docs/dc4/nyusen/nyusen/senko_kijun.html、更新日2026年6月5日)からリンクされたPDF。「学習の記録(評定):第2学年の9教科の評定合計+第3学年の9教科の評定合計の2倍(135 点満点)を100 点満点に換算します。(a)」「学力検査:実施した検査の合計点を100 点満点に換算します。(b)」「【第1次選考】募集人員の90%までを選考します」「S1=(a×f)+(b×g)[+(d×i)]特色検査を実施した場合に加算します。f、g、i は学校ごとに設定します。(f、g はそれぞれ2以上で合計10 となる整数、i は1以上5以下の整数)」「特色検査は、『実技検査』、『自己表現検査』または『面接』を実施します」「全日制では、原則5教科(英国数理社)を1教科50 分、100 点満点で実施しますが、特色検査を実施する場合、3教科にまで教科数を減らす学校があります」。本文の表・図1、よくある質問1・3の根拠。
この記事について
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