3行まとめ
- 実施要項は、大学入試を一般選抜・総合型選抜・学校推薦型選抜の3つに整理しています。違いは「難しさ」ではなく、誰の意志で出願するか・何を主な資料として評価するか・いつ動くかです。
- 総合型・学校推薦型でも、調査書などの出願書類だけで判定してはならないと定められています。学力検査、共通テスト、小論文・面接、資格・検定試験のうち少なくとも一つを活用することが要件です。
- 令和7年度に大学へ入学した648,430人のうち一般選抜は300,249人。国立では約8割が一般選抜、私立では推薦型と総合型で約6割と、設置者によって入り方の景色がかなり違います。
この記事でわかること
- 実施要項が定める3つの選抜方式の定義と、いちばん大きな違い
- 「推薦なら学力は見られない」という理解のどこがずれているか
- 公表されている数字から見える、国立・公立・私立の入り方の差
- 出願・発表・入学手続きの時期と、費用の情報がどこに書かれているか
「推薦にしたら?」の一言に、答えられない
分からないままでも日常は困りません。困るのは、子どもが迷って相談してきたときです。「どっちがいいと思う?」と聞かれて答えに詰まる。あるいは「推薦のほうが楽なんじゃないの」と口にしてしまい、子どもが「そんな簡単じゃない」と言い返して会話が終わる。制度の言葉を知らないことが、子どもの話を聞く力そのものを削ってしまう場面です。
実施要項が定める、3つの入り方
大学入試の枠組みは、各大学が勝手に決めているわけではありません。文部科学省が毎年度「大学入学者選抜実施要項」を各大学に示しており、その「第3 入試方法」に3つの方式の定義があります。一般選抜は、学力検査、小論文等を主な資料とし、調査書、面接、志願者本人の記載する資料等を組み合わせて評価・判定する方法です。
総合型選抜は、詳細な書類審査と時間をかけた丁寧な面接等を組み合わせて、能力・適性や学習に対する意欲、目的意識等を総合的に評価・判定する方法。志願者自らの意志で出願できる公募制という性格から、本人が記載する資料を必ず評価に活用し、面接による評価も必ず行うこととされています。
学校推薦型選抜は、出身高等学校長の推薦に基づき、調査書を主な資料としつつ評価・判定する方法です。実施要項は「本選抜については、入学志願者自らの意志のみで出願できるものではなく(中略)高等学校長が判断するもの」と述べています。総合型は本人の意志で出願でき、学校推薦型は校長の推薦がなければ出願できない。この一点が、家庭で最初に押さえておきたい区別です。
「推薦は学力を見ない」という理解のずれ
家庭の会話でいちばん誤解が起きやすいのがここです。「推薦や総合型は学力試験がないから楽」という言い方を耳にしますが、実施要項の定めはそうなっていません。総合型についても学校推薦型についても、出願書類だけではなく、①各大学が実施する学力検査②大学入学共通テスト③小論文・面接・実技検査等④資格・検定試験等の成績——のうち少なくともいずれか一つを必ず活用し、その旨を募集要項に記述すると定められています。
つまり、書類と推薦だけで合否が決まる仕組みにはなっていません。実施要項は、総合型・学校推薦型でも共通テストを利用できると明記しています。また学校推薦型選抜には募集人員の上限があり、学部等の募集単位ごとの入学定員の5割を超えない範囲とされています。方式の違いは「学力を見るか見ないか」ではなく、「何を主な材料にして、どの時期に、誰の判断を経て見るか」の違いです。
数字で見る、いまの入り方
文部科学省の「国公私立大学入学者選抜実施状況」令和7年度分によれば、この年に大学へ入学したのは648,430人。一般選抜300,249人(約46%)、学校推薦型選抜221,415人(約34%)、総合型選抜126,766人(約20%)で、すでに半数以上が一般選抜以外の入り方です。ただしこの数字を「近年こんなに増えた」と読むのは適切ではありません。同じ資料が、区分の整理を改めたため令和6年度の数値とは比較できないと明記しています。
設置者別に見ると景色は変わります。国立大学は一般選抜がおよそ8割、公立大学もおよそ7割。一方、私立大学は入学者512,232人のうち一般選抜196,386人、学校推薦型選抜198,977人、総合型選抜116,869人で、推薦型と総合型を合わせるとおよそ6割。志望校が国公立中心か私立中心かで、高校生活のどの時期に山場が来るかが変わります。
いつ、何が動くのか
実施要項は、試験期日や出願受付の期間についても全国共通の枠を定めています。まず押さえておきたいのは、その年度の入試方法が夏の時点ですでに出そろっているという事実です。各大学は実施教科・科目や評価方法を7月31日までに発表し、以後は受験者に不利益を与える恐れのある変更は行わないと定められています。
出願と発表の時期は方式によって明確に分かれています。総合型選抜は入学願書受付を9月1日以降、判定結果を11月1日以降に発表。学校推薦型選抜は受付を11月1日以降、結果を12月1日以降に発表。一般選抜の個別テストは2月1日から3月25日までの間です。共通テストは令和9年度の本試験が1月16日・17日、出願期間は9月15日から10月2日まで。8月半ばという時期は、総合型選抜の出願受付開始まで2週間あまり、共通テストの出願開始まで1か月ほど、という位置にあります。
お金の情報がどこに書かれているか
入試の段階で必要になるお金のうち、金額が全国一律で決まっているのが大学入学共通テストの検定料です。3教科以上を受験する場合は18,000円、2教科以下の場合は12,000円(地理歴史および公民は受験教科数を「1」として取り扱う)。大学ごとの入学検定料や入学後に必要な経費については、各大学が入学検定料その他入学に要する経費の種類・額やその納入手続・期限などを記述した募集要項を12月15日までに発表すると定められています。お金の情報を探すときに開くべきは、まとめサイトではなく大学が公表する募集要項です。
家庭で試す3つの工夫
- ①志望校のページで「入学者選抜要項」を一緒に開く:その年度の選抜方法をまとめた資料が7月末までに掲載されています。親が読んで説明する必要はなく、「これ、載ってるみたいだよ」と画面を開いて渡すところまでで十分です。宣伝の混ざらない情報を一次資料で見る習慣そのものが子どもに残ります。
- ②カレンダーに3つの日付だけ書き込む:総合型の出願受付が始まる9月1日、共通テストの出願期間、学校推薦型の出願受付が始まる11月1日。「そろそろだ」と気づける仕組みがあるだけで、締切直前の慌ただしさは減ります。
- ③方式の名前が出たら「どの資料で見るんだろうね」と返す:「受かりそう?」ではなく「何を出すんだろうね」と資料の話に返します。分かることと分からないことを分けて扱うだけで、会話が不安の押し付け合いになりにくくなります。
声かけの言い換え例
「推薦のほうが楽なんじゃないの」→ 方式の間に優劣があるという前提が伝わり、子どもが自分の選択を説明しづらくなる。
「その方式だと、何を出すことになるの?」→ 提出物や評価方法という調べられる話になり、一緒に募集要項を見る流れがつくれる。
「まだ夏なんだから、そんなに焦らなくても」→ 総合型の出願が9月1日以降であることと合わず、必要な準備の時間を削ってしまう。
「9月から出願が始まるところもあるみたいだね」→ 事実として時期を共有でき、子どもが自分でスケジュールを組み直しやすい。
家庭で確認するチェックリスト
- 総合型選抜と学校推薦型選抜の、出願のしかたの違いを家族で共有できている。
- 志望校が公表している、その年度の選抜方法の資料を一度は開いた。
- 総合型・共通テスト・学校推薦型の出願開始日をカレンダーに書き出している。
- 共通テストを受ける可能性があるかどうかを、子どもと確認した。
- 募集要項の発表時期と、そこに費用の記載があることを知っている。
家庭の工夫だけで抱え込まないために
この記事で紹介したのは、文部科学省と大学入試センターが公表している全国共通の枠組みです。実際の出願要件・試験科目・日程・費用は大学ごと、学部ごとに異なります。志望校の条件は、その大学が公表する募集要項で確認してください。本記事は特定の選抜方式を勧めるものではなく、合格の見込みを判定するものでもありません。
学校推薦型選抜は高等学校長の推薦が前提であるため、校内での手続きや評定の要件が関わり、家庭だけでは決められません。家庭で結論を出してから学校に伝えるのではなく、早い段階で情報を持ち寄るほうが、子どもの選択肢は広がります。制度は毎年見直されており、日程・金額・要件は必ず最新の公式情報でご確認ください。相談先としては、在学中の高校の進路指導担当、志望校の入試広報窓口、大学入試センターがあります。
出典・参考
- 文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項」(令和8年5月27日付け 8文科高第318号 文部科学省高等教育局長通知)
この出典で確認した記述
学力の三要素の定義(①基礎的・基本的な知識・技能、②知識・技能を活用して自ら課題を発見し解決に向けて探究し成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力、③主体性を持ち多様な人々と協働しつつ学習する態度)、第3の一般選抜・総合型選抜・学校推薦型選抜の定義、総合型選抜における公募制の性格と本人が記載する資料(活動報告書・大学入学希望理由書・学修計画書等)および面接(ディベート、集団討論、プレゼンテーション、口頭試問等を含みオンラインによる実施を含む)の必須要件、学校推薦型選抜が出身高等学校長の推薦に基づき調査書を主な資料とすることと推薦要件の明示義務、非公募型で入学を確約して受験するものについて面接の要否を大学が判断できる例外、両選抜における「調査書等の出願書類だけではなく第6の1から4に掲げる評価方法のうち少なくともいずれか一つを必ず活用し募集要項に記述する」との規定、第6の2(3)の総合型選抜・学校推薦型選抜においても大学入学共通テストを利用できるとの記載、第4の試験期日(総合型選抜は入学願書受付を令和8年9月1日以降・判定結果発表を令和8年11月1日以降、学校推薦型選抜は入学願書受付を令和8年11月1日以降・判定結果発表を令和8年12月1日以降で一般選抜の試験期日の10日前まで、個別テストの試験期日は令和9年2月1日から3月25日まで、合格者の決定発表は令和9年3月31日まで、共通テスト本試験は令和9年1月16日・17日)、第7の入試方法等を令和8年5月27日から7月31日までに発表し発表後は受験者に不利益を与える恐れのある変更を行わないとの規定、第8の学校推薦型選抜の募集人員が入学定員の5割を超えない範囲であること、第10の募集要項に入学検定料その他入学に要する経費の種類・額や納入手続・期限を記述し令和8年12月15日までに発表すること、寄付金等の納入を条件とする入学許可を行わないよう求める規定の根拠。 - 文部科学省「令和7年度国公私立大学入学者選抜実施状況」(令和7年11月26日公表)
この出典で確認した記述
令和7年5月1日現在で集計され対象が778大学2,661学部・入学者総数648,430人(国立99,962人/公立36,236人/私立512,232人)であること、選抜区分別の入学者数(一般選抜300,249人=国立79,542人・公立24,321人・私立196,386人、総合型選抜126,766人=国立7,714人・公立2,183人・私立116,869人、学校推薦型選抜221,415人=国立12,706人・公立9,732人・私立198,977人)、総合型選抜の実施が728大学2,476学部・学校推薦型選抜が772大学2,516学部であること、注記9の「令和7年度大学入学者選抜実施要項より各選抜区分の選抜の実態との整合性を図る観点から従来の『一般選抜とそれ以外』という整理を改め『一般選抜』『総合型選抜』『学校推薦型選抜』に再整理したことから令和6年度入学者選抜の数値との比較はできない」との記載の根拠。本文中の割合(一般選抜が約46%、総合型選抜が約20%、学校推薦型選抜が約34%、国立の一般選抜が約8割、公立の一般選抜が約7割、私立の総合型・学校推薦型の合計が約6割)は、同資料の入学者数から編集部が算出。 - 文部科学省「令和7年度入学者選抜実施状況について」
この出典で確認した記述
令和7年度国公私立大学および公私立短期大学の入学者選抜実施状況が令和7年11月26日に公表され、資料が掲載されていることの確認に用いたページ。上記資料の所在確認に使用した。 - 独立行政法人大学入試センター「令和9年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト実施要項」
この出典で確認した記述
出願期間が令和8年9月15日(火)から10月2日(金)までであること、共通テスト出願サイトのマイページ作成期間が令和8年7月1日(水)から10月2日(金)までであること、受験案内が令和8年6月中旬までに大学入試センターのウェブサイト上で公表されること、検定料が3教科以上を受験する場合18,000円・2教科以下を受験する場合12,000円であり地理歴史および公民は受験する教科数にかかわらず受験教科数を「1」として取り扱うこと、検定料の支払期間が令和8年9月15日から10月2日まででクレジットカード・コンビニエンスストア・Pay-easy による支払いとし支払手数料は入学志願者が負担すること、出願内容の確認および訂正の期間が令和8年10月9日から10月16日までであること、受験票が令和8年12月上旬までに発行されマイページ上で取得すること、高等学校等を令和9年3月卒業見込みの者について在学する学校が所在する試験地区内の試験場が指定されることの根拠。 - 独立行政法人大学入試センター「令和9年度試験」
この出典で確認した記述
令和9年度大学入学共通テストの本試験が令和9年1月16日(土)・17日(日)、追試験・再試験が令和9年1月23日(土)・24日(日)であること、受験上の配慮申請期間が第1期は令和8年7月1日から8月28日まで・第2期は令和8年8月31日から10月2日までであることの根拠。
この記事について
本記事は家庭での話し合いを整理した一般的な情報であり、特定の学校の合否・優劣・進学先を判断・推奨するものではありません。個別の家計・投資の助言や、特定の金融商品の推奨も行いません。費用・選抜・支援制度は年度や地域によって変わるため、公式情報をご確認ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。