3行まとめ
- フィルタリングは子どもを疑うための監視ではなく、危険を見分けにくい時期を守る「初期設定」。18歳未満が使う端末への設定は、法律上、携帯電話会社側にも求められています。
- 公的調査では、スマホを使う子の保護者の約8割が何らかの管理をし、フィルタリングの利用は約4割半ば。一方でSNSの被害に遭った子どもの約9割はフィルタリングを使っていませんでした。
- 大切なのは、設定を入れて終わりにせず、「なぜ入れるのか」を子どもと話し、成長に合わせて調整していくこと。技術の守りと家庭の対話は、両輪で働きます。
この記事でわかること
- フィルタリングとペアレンタルコントロールが「何を守る仕組み」なのか
- 公的データが示す、家庭の管理の実態とフィルタリング未設定のリスク
- 監視ではなく守りとして設定を始める手順と、親子の約束のつくり方
「縛るようで気が引ける」という迷い
「習い事や塾の連絡のために、そろそろスマホを持たせようか」。そう考え始めたとき、多くの家庭で最初に立ち止まるのが、フィルタリングをどうするかという問題です。ショップで「設定しますか」と聞かれても、内容がよくわからないまま「とりあえずお願いします」と答えたり、逆に「うちの子は大丈夫だから」と外してしまったりする。あるいは、いったんは設定したものの、子どもに「なんで自分だけ制限されるの」と言われて、なんとなく気まずくなってしまう——こうした迷いは、とても自然なものです。
ためらいの根っこには、「フィルタリング=子どもを信用していない証拠」という受け止めがあります。行動を先回りして縛るようで、親子の信頼に水を差すのではないか。そんな心配です。けれど、見方を変えてみると、フィルタリングは信頼の問題というより、装備の問題に近いものです。自転車に乗り始めた子にヘルメットをかぶせるのは、その子を疑っているからではありません。まだ危険の予測や回避が十分にできない時期に、大きなけがから守るためです。インターネットも同じで、悪意のある大人や、年齢に合わない情報は、子どもの「気をつけよう」という気持ちだけでは避けきれないことがあります。
だからこそ、フィルタリングは「疑い」ではなく「守り」として、そして一度きりの設定ではなく、成長に合わせて緩めていく前提のものとして捉え直すことができます。次の章では、そもそもフィルタリングやペアレンタルコントロールが具体的に何を守る仕組みなのかを、公的な説明で確かめていきましょう。スマホのルールづくり全般については、小学生のスマホルールは、禁止より「使う場面」を決めるもあわせてご覧ください。
フィルタリングとは何を守る仕組みか
総務省は、フィルタリングを含む「ペアレンタルコントロール」を、次のように説明しています。こどもの安全のため保護者がネット利用環境を整えてあげることを「ペアレンタルコントロール」と言い、その代表が「フィルタリング」だという位置づけです。フィルタリングは、青少年を違法・有害な情報との不用意な接触から守り、安心して使う手助けをするサービスだと整理されています。「見えない危険」から身を守るマスクのようなもの、という比喩も使われています。
では、具体的に何ができるのでしょうか。総務省の説明をたどると、ペアレンタルコントロールでできることは、大きく次のように広がっています。第一に、出会い系や成人向けなど、年齢に合わない有害なサイトへのアクセスを制限すること。第二に、アプリ(またはカテゴリ)単位で、閲覧や使用の可否を個別に設定できること。第三に、スマホやアプリを使える時間の長さや時間帯を決められること。設定というと難しく聞こえますが、実際には「小学生モード」「中学生モード」といったわかりやすい推奨モードが用意されていて、まずはそれを選ぶだけでも土台ができるようになっています。
ここで押さえておきたいのは、フィルタリングは「一律に何もかも禁止する壁」ではない、ということです。有害なサイトはブロックしつつ、学習に使うアプリや連絡手段は使えるようにする。年齢が上がれば、モードを切り替えたり、個別に許可を足したりして、少しずつ自由を広げていく。そうやって、その子の発達に合わせて調整できるところに、この仕組みの本質があります。子どもの成長を止めるためではなく、安全に一歩ずつ世界を広げていくための「補助輪」だと考えると、腑に落ちやすいかもしれません。
もう一つ大事な背景として、18歳未満が使う端末へのフィルタリング設定は、家庭の任意の努力にとどまらず、法律に根拠のある取り組みだという点があります。青少年インターネット環境整備法(青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律・平成20年法律第79号)にもとづき、格安スマホ事業者を含む携帯電話会社やその販売代理店には、契約時に利用者が18歳未満かどうかを確認し、フィルタリングの設定・利用を促すことが求められています。つまり、フィルタリングを設定することは、社会全体で子どもを守るために整えられた仕組みの一部でもある、ということです。「うちだけが厳しくしている」わけではないと知ると、少し肩の力が抜けるのではないでしょうか。
公的データで見る、管理の実態と未設定のリスク
実際、どのくらいの家庭がこうした管理をしているのでしょうか。こども家庭庁の「令和6年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」(令和7年3月公表)によれば、青少年の98.2%がインターネットを利用しており、利用機器ではスマートフォンが75.4%を占めています。ネット利用は小学生(10歳以上)で97.2%、中学生で98.1%、高校生で99.4%と、いまや学齢期の子どもにとってインターネットは前提の環境になっています。
そのうえで、子どもがスマートフォンでインターネットを利用している家庭の保護者に取組をたずねると、84.6%がいずれかの方法で子どものネット利用を管理していると回答しています。実施している取組の上位は、フィルタリング(45.8%)、対象年齢にあったサービスやアプリを使わせている(39.2%)、利用してよい時間や場所を決めて使わせている(37.2%)でした。多くの家庭が、フィルタリングとルールを組み合わせながら、それぞれのやり方で管理していることがわかります。裏を返せば、フィルタリング単独の利用は半数に届いておらず、「入れていない」家庭も相当数あるということです。
では、設定していないと何が起きうるのか。ここで警察庁のデータが一つの手がかりになります。警察庁のまとめによると、SNSをきっかけに面識のない相手と知り合い、被害に遭った子ども(SNSに起因する事犯の被害児童)について、フィルタリングの利用状況が判明している子のうち、約9割がフィルタリングを利用していませんでした(令和7年)。被害に遭った子の多くはスマートフォンからアクセスしていたことも報告されています。もちろん、フィルタリングを入れれば被害が完全になくなるわけではありません。それでも、被害に遭った子どもたちの多くが未設定だったという事実は、フィルタリングが「気休め」ではなく、実際に接触の入り口を減らす一定の守りとして働いていることを示唆しています。
一方で、公的機関のメッセージは「フィルタリングさえ入れれば安心」という単純なものではありません。警察庁は保護者への呼びかけとして、フィルタリングの設定、ペアレンタルコントロール機能の活用と並べて、「家庭内のルールをつくりましょう」を三本柱の一つに挙げています。こども家庭庁も、フィルタリングの設定方法とあわせて、チェックシートやルールの例を使って「我が家のオリジナルのルール」を親子で話し合ってつくることを勧めています。技術的な守りと、家庭での対話。この二つはどちらか一方では足りず、両輪で働くというのが、共通した考え方です。見守りの姿勢そのものについては、見守りアプリは監視ではなく対話の道具にするもあわせて参考になります。
監視ではなく守りとして始める4ステップ
考え方が整理できたら、あとは始めるだけです。難しく構える必要はなく、次の4つのステップで、無理なく土台をつくれます。完璧を目指すより、まず入れて、あとから調整していくのが現実的です。
①有効にする。これから契約するなら、申し込みのときにフィルタリングを一緒に設定するのが最もかんたんです。すでに持っている端末や、お下がりのスマホを使わせる場合は、端末のOS(iPhoneやAndroid)に用意された保護者向けの機能や、携帯会社・フィルタリングアプリの設定をオンにします。②モードを選ぶ。細かく決めようとすると手が止まるので、まずは「小学生モード」「中学生モード」といった年齢の推奨設定を選びます。これだけで、その年齢に合わせた守りのベースができます。③我が家に合わせる。推奨モードのままだと、学校や習い事で必要なアプリが使えないこともあります。必要なものは個別に許可し、使ってよい時間の長さや時間帯を、家庭の生活リズムに合わせて調整します。④約束を言葉にする。ここが、設定と同じくらい大切な最後のステップです。「危ないサイトや知らない人から守るために入れているんだよ」「困ったことがあったら、怒らないから必ず教えてね」と、なぜ設定するのかと、困ったときの逃げ道を、子どもの言葉に合わせて伝えます。
この4番目の「約束」を省くと、フィルタリングはただの制限になり、子どもは「勝手に縛られている」と感じてしまいます。反対に、理由を共有し、成長に合わせて一緒に見直していく前提を伝えておくと、同じ設定でも「自分を守るためのもの」として受け止めやすくなります。設定は年に一度など、進級のタイミングで子どもと一緒に見直すと決めておくのもよい方法です。ネットで困ったことを子どもが打ち明けやすい家庭のつくり方は、ネットで困ったとき、子どもが親に言える家庭のつくり方で詳しく扱っています。
家庭で試す3つの工夫
家庭で試す3つの工夫
- ① 「設定は一緒に画面を見ながら」進める:親がこっそり設定するのではなく、子どもと画面をのぞき込みながら「この時間は寝る準備にしようか」と相談して決めます。プロセスを共有すると、制限ではなく「二人で決めた約束」になり、納得感が生まれます。
- ② 「なんで制限されるの?」に答えを用意しておく:子どもは必ず理由を聞いてきます。「あなたを疑っているんじゃなくて、まだ見分けにくい危ないものから守るため」「大きくなったら一緒に緩めていくよ」と、あらかじめ答えを決めておくと、その場で気まずくなりません。
- ③ 進級・誕生日を「見直しの日」にする:設定は入れっぱなしにせず、学年が上がる春や誕生日など、区切りの日に親子で見直します。「一つできることを増やそう」と成長とセットにすると、フィルタリングが縛りではなく、自由を広げていく目安に変わります。
声かけの言い換え
声かけの言い換え例
「あなたは信用できないから制限するの」→ 不信を突きつけ、子どもが反発したり隠したりする動機になる。
「危ないものから守るために入れているんだよ」→ 目的が「守り」だと伝わり、設定を受け入れやすくなる。
「ルールなんだから黙って従いなさい」→ 一方的な命令になり、なぜ必要かが伝わらない。
「大きくなったら、一緒に少しずつ緩めていこうね」→ 成長に合わせて変わる前提を共有し、前向きな約束にできる。
設定と対話のチェックリスト
家庭で確認するチェックリスト
- 子どもが使う端末に、フィルタリングまたは保護者向けの管理機能を設定している。
- 年齢に合った推奨モードを選び、必要なアプリは個別に許可している。
- アプリの入手や課金を、保護者の承認が必要な設定にしている。
- 「なぜ設定しているのか」を、子どもに自分の言葉で説明できている。
- 進級など区切りの時期に、設定を子どもと一緒に見直すと決めている。
気をつけたいこと・相談先
フィルタリングだけに頼りきらない
ここで紹介したのは、フィルタリングとペアレンタルコントロールを家庭で始めるための一般的な考え方です。設定の名称や具体的な手順は、端末のOS・携帯会社・アプリによって異なり、年度やアップデートで変わることもあります。実際の設定方法は、お使いの機種・携帯会社・フィルタリングサービスの公式の案内で確認してください。また、どれだけ設定を整えても、リスクが完全にゼロになるわけではありません。子どもが友達の端末や学校の端末を使う場面もありますし、新しいサービスは次々と生まれます。だからこそ、公的機関も繰り返し伝えているように、技術的な守りと、困ったときに親に言える関係づくりの両方が欠かせません。フィルタリングは「入れたら安心して放っておけるもの」ではなく、対話を続けるための土台だと考えておくと安全です。
設定の仕方がわからないときは、契約している携帯電話会社の窓口や販売店、端末メーカーのサポートで相談できます。子どもがネット上のトラブルや、知らない人とのやりとりで困っているようなときは、抱え込まずに、警察相談専用電話「#9110」や、各都道府県警のサイバー犯罪相談窓口、消費生活の相談は消費者ホットライン「188」など、公的な相談先を頼ってください。本記事は、特定のサービス・端末・アプリの利用を推奨・否定するものではなく、被害の防止を保証するものでもありません。
出典・参考
- こども家庭庁「令和6年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 報告書」(令和7年3月公表)
- 総務省「知っていますか?『ペアレンタルコントロール』」(インターネットトラブル事例集 参考情報)
- 総務省「フィルタリング(有害サイトアクセス制限サービス)をご存じですか?」
- 警察庁 サイバー警察局「サイバー警察局便り 2026 Vol.7」
- こども家庭庁「青少年インターネット環境整備 普及啓発コンテンツ」
この記事について
本記事は、子どものスマートフォンのフィルタリング・ペアレンタルコントロールについて、公的機関が公表している一般的な情報を整理したものであり、特定のサービス・端末・アプリの利用を推奨・否定したり、被害の防止を保証したりするものではありません。設定方法や制度は、機種・OS・携帯会社・サービス・年度によって異なります。実際の設定や手続きは、各公式の最新情報でご確認ください。ネット上のトラブルで困ったときは、警察相談専用電話「#9110」や消費者ホットライン「188」、最寄りの相談窓口にご相談ください。