3行まとめ
- 2023年10月1日から、広告であるにもかかわらず広告であることを隠すことが景品表示法違反になりました。国の説明は「見抜けない消費者が悪い」ではなく、事業者の側に「広告だと分かるように書く義務がある」という組み立てです。
- 家庭で育てたいのは、見抜く勘ではなく「広告表示を探す」という手順。運用基準は、末尾だけ・小さい文字・大量のハッシュタグに埋もれさせるといった書き方を不明瞭だとしています。探す場所が決まっている、ということでもあります。
- それでも見分けは完全にはなりません。国の調査自身が、ステマは隠して行われるため消費者は自分が受けたかどうかも分からないと述べています。最後の守りは「その場で買わない」「家の人に一度話す」という時間の置き方です。
この記事でわかること
- 2023年10月に始まったステルスマーケティング規制が、何を禁じ、誰を対象にしているのか
- 「広告だと分かること」がなぜ消費者にとって大事だと説明されているのか
- 運用基準が挙げる「明瞭でない書き方」と、そこから逆算した探し方
- 子どもと一緒に使える3ステップと、困ったときの相談先
「あの人がいいって言ってた」から始まる会話
この場面のややこしさは、真偽の話ではないところにあります。商品が良いか悪いかを親が判定する必要はありませんし、たいていは判定できません。問題は、その「いい」という言葉が誰の立場から出てきたものなのかが画面から読み取れないことです。友達が教室で言った「いい」と、企業からお金や商品を受け取った人が動画で言う「いい」は、同じ言葉でも重みが違います。子どもが特別に無防備なのではなく、そもそも見分けにくく作られている、という前提から始めたほうが、家庭の会話は楽になります。
公的情報の見方 ― 広告に「広告」と書かせる規制の中身
消費者庁は、景品表示法第5条第3号にもとづく告示として「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」を指定し、2023年10月1日から施行しました。広告であるにもかかわらず広告であることを隠すこと——いわゆるステルスマーケティング——が対象です。
なぜ隠すことが問題になるのか。消費者庁の説明はこうです。消費者は、企業による広告・宣伝であれば、ある程度の誇張・誇大が含まれているものと考えており、そのことを含めて商品・サービスを選んでいる。一方で広告だと分からないと、第三者の感想であると誤って認識してその内容をそのまま受けとってしまう、と。つまり広告だと分かっていれば人は自然に割り引いて聞くというのが制度の前提です。子どもには「宣伝を信じるな」ではなく「宣伝と分かって見れば、ちゃんと自分で判断できる。困るのは、宣伝だと分からないまま聞かされること」と説明できます。
誰が規制されるのかも押さえておきます。消費者庁は、規制の対象となるのは商品・サービスを供給する事業者(広告主)であり、依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は規制の対象とはならないと明記しています。広告だと分かるようにする責任は依頼した企業の側にあるという設計で、子どもが好きな配信者を悪者にせずに制度を説明できます。
では、どう書いてあれば明瞭なのか。運用基準は「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言による表示を例に挙げています。もっと実用的なのは逆方向の列挙で、不明瞭な方法として、部分的な表示しかしていない場合、動画で認識できないほど短い時間しか表示しない場合(中間や末尾にだけ表示する場合を含む)、視認しにくい末尾の位置に表示する場合、周囲の文字と比べて小さく表示した場合、薄い色で書いた場合、そして大量のハッシュタグを付けた文章の中に埋もれさせる場合が挙げられています。
この列挙は、家庭にとっては「探す場所のリスト」として読めます。動画なら冒頭と概要欄、投稿なら本文の末尾と小さな文字とハッシュタグの列。ただし、家庭にとって決定的に重要な一文もあります。消費者庁の検討会資料は、ステルスマーケティングは広告であることを隠して行われるため、消費者は自分がステルスマーケティングを受けたかどうかが分からず、実際に被害を受けたかを把握することが困難だと説明しています。すべてを見抜けるようになることを目標にすると、必ず失敗します。令和8年版消費者白書も、情報の真偽を見極める力だけでなく、違和感に「気づく力」、きっぱりと「断る力」、一人で抱え込まず「相談する力」が重要だとしています。
家庭サイズの3ステップ
ここまでを家庭の手順に落とします。「探す→割り引く→間を置く」の三つです。三つ目まで行けば、一つ目と二つ目が外れても大きな失敗にはなりません。
①探す。内容の是非を言う前に「広告って書いてあるところ、どこかにない?」と一緒に探します。探す場所は運用基準の裏返しです。大事なのは、見つからないことを「隠している証拠」にしないこと。探して見つからなかったときの正しい結論は「広告ではない」でも「隠された」でもなく、「この画面からは判断できない」です。
②割り引く。広告表示が見つかったら、良い点が並んでいる分だけ悪い点や条件のほうを別の場所で探します。初回だけの価格ではないか、続けて買う約束が付いていないか。白書が典型例として挙げているのも、無料トライアルを装った有料契約や解約しにくい定期購入です。③間を置く。いちばん効くのがこれです。その画面では買わない。一晩おいてからもう一度話す。翌日になっても欲しければ、それは広告に押された勢いではなく本人の希望として扱えます。「本日限り」「残りわずか」と急かす表示が付いているときほど、間を置く価値が上がります。
家庭で試す3つの工夫
- ①週に一度、「広告さがし」を1本だけ一緒にやる:子どもがよく見ているチャンネルを一本だけ選んで、広告表示があるかを一緒に探します。親が選ばずに子どもに選ばせること、勝ち負けにしないことがポイント。判定の訓練というより、探す場所を体で覚えるための作業です。
- ②「感想」と「案件」を同じテーブルに並べて比べる:同じ商品について、広告表示のある紹介と無さそうな投稿の両方を見てみます。多くの場合、違いは内容ではなく、悪い点に触れているかどうかや値段の条件をどこまで書いているかに出ます。「何が省かれているか」に目を向ける練習になります。
- ③「買う前に一晩」を家のルールとして先に決めておく:ほしいものが出てきてから交渉すると、ルールではなく力関係の話になります。平常時に「ネットで見て急にほしくなったものは、その日は買わない」とだけ決めておきます。
声かけの言い換え例
「そんなの全部ステマだから」→ すべてを宣伝と決めつけると、逆にすべてを疑って情報を使えなくなる。国の説明も「広告は悪」ではなく「広告だと分かることが大事」という立て方をしている。
「広告って書いてあるか、一緒に探してみようか」→ 判定ではなく作業に変える。見つかっても見つからなくても会話が終わる形にしておくと、次も見せてくれる。
「そんな人の言うこと信じてどうするの」→ 子どもが好きな相手を否定すると、話題そのものが家庭から消える。
「その人が言ってるのは良いところだよね。悪いところと値段の条件はどこ?」→ 相手を否定せずに、省かれている情報のほうへ視線を移す。
一週間、試したあとに見返したいチェックリスト
- 子どもが見せてきた動画や投稿で、広告表示を一緒に探してみた場面が一度はあった。
- 探す場所(冒頭・概要欄・末尾・小さい文字・ハッシュタグの列)を子どもと共有できている。
- 広告表示が見つからなかったとき、「隠している」と決めつけずに終われた。
- 「ネットで見て急にほしくなったものは、その日は買わない」を家の決めごとにした。
- 消費者ホットライン「188」など、困ったときの相談先を家庭で控えてある。
家庭の工夫だけで抱え込まないために
この記事の見分け方は告示・運用基準・Q&Aの考え方を家庭向けに置き直した一般的な整理であり、個別の広告や投稿が法律に違反しているかどうかを判断するものではありません。
また、広告表示が見当たらないことを、その人が何かを隠している証拠として扱わないでください。Q&Aが説明しているとおり、自主的な意思で行う投稿には「広告」等の記載は必要とされていません。疑う対象は人ではなく、情報の出どころが書かれているかどうかだと、最初に線を引いておくことをおすすめします。小学校低学年のうちは細かい見分け方を教え込むより、見る場所や視聴時間の設計を大人の側で整えるほうが現実的です。
実際にお金のトラブルが起きたときは、家庭で抱えないでください。消費者ホットライン「188(いやや!)」に電話すると最寄りの消費生活センター等を案内してもらえ、契約の取消しや返金について相談できます。広告が「広告と分からない形で出ている」と感じた表示については、消費者庁が景品表示法違反被疑情報提供フォームを設けています。
出典・参考
- 消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」
この出典で確認した記述
広告であるにもかかわらず広告であることを隠すことがいわゆる「ステルスマーケティング」であること、「消費者は、企業による広告・宣伝であれば、ある程度の誇張・誇大が含まれているものと考えており、そのことを含めて商品・サービスを選んでいます」「広告・宣伝であることが分からないと、企業ではない第三者の感想であると誤って認識してしまい、その表示の内容をそのまま受けとってしまい、消費者が自主的かつ合理的に商品・サービスを選ぶことが出来なくなるかもしれません」、広告には企業がインフルエンサー等の第三者に依頼・指示するものも含まれること、インターネット上の表示だけでなくテレビ・新聞・ラジオ・雑誌等も対象であること、個人の感想等やテレビCM等の広告であることが分かるものは対象外であること、「規制の対象となるのは、商品・サービスを供給する事業者(広告主)です。企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は規制の対象とはなりません」の根拠。 - 消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年3月28日内閣府告示第19号)
この出典で確認した記述
景品表示法第5条第3号にもとづく指定であること、告示の本文(事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの)、令和5年10月1日から施行することの根拠。 - 消費者庁「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」(令和5年3月28日 消費者庁長官決定)
この出典で確認した記述
規制趣旨(事業者の表示であると認識すればある程度の誇張・誇大が含まれることはあり得ると考えるが、第三者の表示だと誤認するとそう考えなくなり、自主的かつ合理的な選択が阻害されるおそれ)、事業者の表示であることが明瞭な例(「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言/「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章。ただしこれらを使っても明瞭と認められない場合もあるとの注記)、不明瞭な例(部分的な表示しかしていない/冒頭と文中で矛盾する記載/動画で認識できないほど短い時間しか表示しない・長時間の動画で冒頭以外にのみ表示する/認識できない文言/視認しにくい末尾の位置/周囲より小さい表示/長文や薄い色で認識しにくい表示/大量のハッシュタグを付した文章の中に埋もれさせる)、事業者の表示とならない例(第三者の自主的な意思による表示、無償提供を受けても自主的な意思に基づく内容として表示する場合、街頭での試供品配布の結果としての投稿など)、第三者の投稿を恣意的に抽出したり内容に変更を加えたりしない引用の扱いの根拠。 - 消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」
この出典で確認した記述
Q1(規制対象は表示内容の決定に関与した事業者=広告主であり、依頼を受けて投稿するインフルエンサーやアフィリエイターは対象外。ただし広告主と共同して商品等を供給する例外的な場合は対象)、Q2(違反時は措置命令という行政処分。違反の事実が認められない場合でもおそれのある行為には指導)、Q11(「広告」等以外に文章による表示も可)、Q14(SNS投稿の本文ではなくツリー(リプライ)への記載は、通常、気付かないおそれがあり明瞭とはいえない場合が多い)、Q15(動画は冒頭の表示だけでは足りず、動画全体を通して明瞭となるようにすべき)、Q21(自主的な意思で行う投稿には「PR」等の記載は不要)の根拠。 - 消費者庁「ステルスマーケティングに関する実態調査」(ステルスマーケティングに関する検討会 事務局資料4)
この出典で確認した記述
現役のインフルエンサー300名へのアンケートで41%が広告主からステルスマーケティングを依頼された経験があると回答し、そのうち約45%が依頼を受けた経験があると回答したこと、広告代理店の証言(インフルエンサーの投稿を全て確認したところ100件のうち20件程度の割合でステルスマーケティングと思われる投稿が存在した/「広告」である旨を明示しない広告は少なくとも確実に20%程度売上が増加するという体感)、消費生活相談のデータベース上「ステルスマーケティング」に関する相談は過去5年で40件程度あるがステルスマーケティングを受けたという相談ではないこと、「ステルスマーケティングは広告であることを隠して行われるため、消費者は自分がステルスマーケティングを受けたかどうかが分からず、実際に被害を受けたかを把握することが困難」であることの根拠。 - 消費者庁「令和8年版消費者白書」(令和7年度 消費者政策の実施の状況/消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果の報告)
この出典で確認した記述
インターネット広告は検索結果やSNS投稿等に溶け込んで表示されるため広告とコンテンツの区別がつきにくくなっており、意図しない商品購入や契約につながる事例が多くみられること、クチコミやレビューを装ったステルスマーケティングや有名人のなりすまし詐欺が後を絶たないこと、無料トライアルを装った有料契約や解約しにくいサブスクリプション契約が典型例であること、「数量限定」「本日限り」といった販売方法が虚偽である場合も少なくないこと、違和感に「気づく力(批判的思考力)」・きっぱりと「断る力」・一人で抱え込まず「相談する力」が重要とされること(有識者ヒアリングに基づくコラム。2025年10月時点の情報)、および「インターネットゲーム」に関する相談が2025年に全年齢層で6,429件、うち20歳未満の割合が57.3%(3,683件)であることの根拠。 - こども家庭庁「令和7年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)」(令和8年2月)
この出典で確認した記述
青少年の99.0%がインターネットを利用していると回答したこと、学校種別で小学生(10歳以上)98.5%・中学生99.2%・高校生99.3%が利用していること、利用内容の上位が高校生で動画視聴95.3%・コミュニケーション92.7%・検索・調べもの90.6%、中学生で動画視聴92.0%・検索・調べもの88.8%・ゲーム87.1%、小学生(10歳以上)で動画視聴88.8%・ゲーム85.5%であることの根拠。 - 消費者庁 体験型教材「鍛えよう、消費者力 気づく・断る・相談する」/国民生活センター「消費者ホットライン188(いやや!)」
この出典で確認した記述
消費者庁が最新の消費者トラブル事例に基づく動画・テキスト教材を「気づく・断る・相談する」という柱で公開していること、および消費者ホットライン188が最寄りの消費生活センター等を案内する全国共通の3桁番号であることの根拠。
この記事について
本記事は家庭での工夫を整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や治療の判断に代わるものではありません。特定の機器・アプリ・設定・サービスを推奨するものでもありません。お子さんの状態が気になる場合は、専門機関や学校にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。