3行まとめ
- 動画が止まらないのは意志のせいではなく、終わりの合図が来ないから。
- 自動再生オフ・本数や時間を先に決める・終わりの合図で「出口」を作る。
- 見る前に「次に何をするか」まで決めておくと、切り替えがスムーズ。
この記事でわかること
- 動画を自分で止めにくい理由(仕組みの問題)
- 家庭でできる「終わりを作る」3つの設計
- 見る前の準備と、だらだら防止の工夫
「あと1本」が止まらない仕組み
動画を自分で止めるのは、実は大人でも難しいことです。多くの動画サービスでは、1本が終わると自動で次が始まり、好みに合わせたおすすめが次々に表示されます。テレビ番組のような「おしまい」がなく、終わりの合図が来ません。子どもがだらしないわけでも、親のしつけが足りないわけでもなく、区切りのない流れに乗ってしまっているだけです。動画を見ること自体は、いまの子どもにとって例外的な習慣ではありません。こども家庭庁の令和6年度の調査では、インターネットを利用する青少年の利用内容のうち「動画を見る」が93.1%で最も多く、0歳から9歳の低年齢層でも93.9%にのぼります。平日1日あたりの平均利用時間は青少年全体で約5時間2分、そのうち趣味・娯楽が約3時間1分でした。
止められないのは、子どもだけではありません。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、特段の理由がないのに本来の就寝時刻を過ぎて夜ふかししてしまう状態を「就寝時刻の先延ばし」と呼び、その行動として「テレビを延々と見続けてしまったり、ゲームが止められなかったり」といった余暇活動を挙げています。大人も含めた資料にそう書かれるくらい、区切りのない時間は切り上げにくいのです。だから、意志で止めさせようとするより、止まりやすい「出口」を家庭で用意するほうが現実的です。
この視点に立つと、「いつまで見てるの!」と叱る回数が、少し減らせるかもしれません。子どもは、わざと約束を破っているわけではなく、止まる合図のない流れに乗ってしまっているだけ。責める相手を「子ども」から「終わりのない仕組み」に置きかえると、親もイライラを抱え込まずに済み、対策も具体的になります。大人自身も同じ仕組みにはまることを思い出すと、「一緒に工夫しようね」という関わりに変わっていきます。
「終わり」を作る3つの設計
家庭でできるのは、来ない「終わり」を人の手で作ることです。次の3つが基本になります。①自動再生をオフにする、②見る本数や時間を見る前に決める、③終わりの合図を用意する。とくに自動再生オフは、設定一つでできて効果が大きい、いちばん手軽な工夫です。区切りは「3本まで」「30分」など、子どもにも分かりやすい形にします。
「時間」より「本数」のほうが、子どもには分かりやすいこともあります。「30分」は体感がつかみにくくても、「あと2本」なら自分で数えられるからです。年齢や好みに合わせて、数えやすい区切りを選びましょう。そして、決めた区切りは親子で一緒に決め、紙に書いて見えるところに貼っておくと守られやすくなります。一方的に「30分まで!」と宣言するより、「何本にする?」と一緒に決めたほうが、子どもも納得して終わりやすいものです。
見る前に「次にやること」を決める
止められない理由のひとつは、見終わった後に「することがない」こと。空白があると、つい次の1本に手が伸びます。そこで、見る前に「何本/いつまで/見たら次は何をするか」をセットで決めておきます。「3本見たら、お風呂ね」のように、終わりの先にある次の行動まで決めておくと、切り替えがスムーズになります。終わりは「取り上げられる」より「次へ進む」と感じられるほうが、すんなりいきます。
とくに効果的なのが、終わった後に少し楽しみなことを置いておくことです。おやつ、外遊び、好きな絵本、お風呂のあとのゲーム——なんでもかまいません。「動画の後にも、いいことがある」と分かっていると、子どもは未練を残さず切り替えやすくなります。逆に、終わった先が「勉強しなさい」だけだと、当然やめたくなくなります。終わりの先を、少しだけ魅力的にしておくのがコツです。
中身を一緒に選ぶ・見る
時間だけでなく、中身にも目を向けましょう。同じ動画視聴でも、何を見ているかで意味は変わります。ときどき一緒に見て、「それ何がおもしろいの?」と話題にすると、子どもが何に夢中なのかが見えてきます。見せたくない内容を遠ざけるには、子ども向けの設定や、見る前に親子で選ぶ習慣が役立ちます。一方的に取り上げるより、関心を共有するほうが、対話の入り口になります。子どもが好きなチャンネルや動画を、親が少しでも知っていると、いざ困ったことがあったときに相談してもらいやすくもなります。
だらだら見を防ぐ家庭の工夫
「なんとなく、ずっと」を防ぐには、見る場面を絞るのも有効です。食事中・寝る前・宿題前は見ない、見る時は決まった場所で——こうした家のルールを決めておくと、その都度もめる場面が減ります。厚生労働省の睡眠ガイドは、こども向けの推奨として「デジタル機器は寝室には持ち込まず、電源を切って、別の部屋に置いておきましょう」と書いています。また「小・中・高校生は1日当たり60分以上からだを動かし、スクリーンタイムは2時間以下にすることが推奨されています」とも記しています。数字がひとり歩きしないように補うと、これは動画だけの上限ではなく、テレビ視聴やゲーム・スマホ利用を合わせた、座りっぱなしの時間の目安です。同ガイドは、就寝時刻の先延ばしを防ぐ工夫として「家庭での電子機器使用に関するルールづくり」が有効な場合があるとも述べています。家で区切りを決めること自体には、公的資料の後押しがあるわけです。退屈しのぎの「とりあえずYouTube」が習慣化しないよう、ほかの遊びや過ごし方も用意しておけると理想的です。
とはいえ、共働きや忙しい時間帯に、動画に助けられる場面があるのも事実です。動画を「絶対悪」とみなして親が罪悪感を抱える必要はありません。大切なのは、ゼロにすることではなく、「だらだら続く時間」を「区切りのある時間」に変えること。家事の間に見せるなら、その分「終わりの合図」をセットしておく——そんなふうに、それぞれの家庭の現実に合わせて設計すれば、それで十分です。完璧を目指さなくて大丈夫です。
全部を一度にやらなくて大丈夫です。合いそうなものを一つだけ選んでください。
家庭で試す3つの工夫
- ① まず自動再生をオフ:設定で自動再生を切るだけで、「次が勝手に始まる」を止められます。
- ② 見る前に区切りを決める:「3本まで」「タイマーが鳴るまで」。終わりの合図を先にセットします。
- ③ 次の行動までセットに:「見たら◯◯ね」と、終わりの先の予定まで一緒に決めておきます。
取り上げる言葉より、終わりと次を示す言葉に変えてみましょう。
声かけの言い換え例
「いつまで見てるの! いいかげんやめなさい!」→ 対立になり、かくれ見の動機にも。
「あと何本にする? それで終わりにしよう」→ 終わりを自分で決める形に。
「もう消すよ!」(突然取り上げる)→ 心の準備ができず、反発を生む。
「この動画が終わったら、ごはんにしようね」→ 終わりと次を予告する。
家庭の工夫だけで抱え込まないために
ここで紹介したのは「一つの考え方」です。設計を整えても、動画をやめると激しく荒れる状態が長く続く、睡眠・食事・学校生活に明らかな支障が出ている、課金や不適切な内容・見知らぬ相手との接触といった心配がある場合は、家庭だけで抱え込まず、フィルタリングや視聴制限の設定を見直すとともに、学校や専門の相談窓口に相談してください。相談先が分からないときは、こども家庭庁が「各種相談窓口」として、各都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口や違法・有害情報相談センターなどの一覧を公開しています。本記事は依存などに関する診断・治療を判断するものではありません。
よくある質問
- 何度言っても動画をやめません。子どもの意志が弱いのでしょうか。
- 意志の問題というより、区切りが来ない作りの問題です。多くの動画サービスでは1本が終わると自動で次が始まり、好みに合わせたおすすめが次々に表示されます。テレビ番組のような「おしまい」がなく、終わりの合図が来ません。厚生労働省の睡眠ガイドも、本来の就寝時刻を過ぎてしまう行動として「テレビを延々と見続けてしまったり、ゲームが止められなかったり」を挙げています。責める相手を「子ども」から「区切りのない仕組み」に置きかえると、親もイライラを抱え込まずに済み、対策も具体的になります。
- まず何から手をつければいいですか。
- 自動再生をオフにすることです。設定一つでできて効果が大きい、いちばん手軽な工夫です。そのうえで、見る本数や時間を見る前に決め、終わりの合図を用意します。区切りは「3本まで」「30分」など、子どもにも分かりやすい形にします。決めた区切りは親子で一緒に決め、紙に書いて見えるところに貼っておくと守られやすくなります。
- 時間で決めるのと、本数で決めるのは、どちらがいいですか。
- 「時間」より「本数」のほうが、子どもには分かりやすいこともあります。「30分」は体感がつかみにくくても、「あと2本」なら自分で数えられるからです。年齢や好みに合わせて、数えやすい区切りを選んでみてください。一方的に「30分まで!」と宣言するより、「何本にする?」と一緒に決めたほうが、子どもも納得して終わりやすいものです。
- 家事の間に動画を見せてしまうことに、罪悪感があります。よくないことですか。
- 共働きや忙しい時間帯に、動画に助けられる場面があるのも事実です。動画を「絶対悪」とみなして、親が罪悪感を抱える必要はありません。大切なのは、ゼロにすることではなく、「だらだら続く時間」を「区切りのある時間」に変えることです。家事の間に見せるなら、その分「終わりの合図」をセットしておく。それぞれの家庭の現実に合わせて設計すれば十分で、完璧を目指さなくて大丈夫です。
出典・参考
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(令和6年2月策定、令和6年9月18日一部修正)
この出典で確認した記述
「RECOMMENDATION2 こども版」の推奨事項(PDF17ページ、資料15ページ)に「小学生は9〜12時間、中学・高校生は8〜10時間を参考に睡眠時間を確保する。」「朝は太陽の光を浴びて、朝食をしっかり摂り、日中は運動をして、夜ふかしの習慣化を避ける。」と記載されている。PDF18ページ(資料16ページ)の「運動習慣の定着」に「座りっぱなしの時間、特にスクリーンタイム(テレビ視聴やゲーム・スマホ利用など)が長くなりすぎないようにしましょう。小・中・高校生は1日当たり60分以上からだを動かし、スクリーンタイムは2時間以下にすることが推奨されています」と記載され、同ページの「デジタル機器使用の回避」に「デジタル機器は寝室には持ち込まず、電源を切って、別の部屋に置いておきましょう」と記載されている。PDF19ページ(資料17ページ)のショートコラム「就寝時間の先延ばし」に「就寝時刻の先延ばし行動としては、テレビを延々と見続けてしまったり、ゲームが止められなかったり、あるいはSNSで交流したり等、本来の就寝時刻を過ぎても、様々な余暇活動を行うことが多いようです」「就寝時刻の先延ばしを予防するためには、睡眠スケジュールの目標を決め、実践できるかを日々モニタリングするといった工夫や、家庭での電子機器使用に関するルールづくりが有効な場合があります」と記載されている。本文「「あと1本」が止まらない仕組み」節と「だらだら見を防ぐ家庭の工夫」節、および「よくある質問」はこれによる。なおスクリーンタイム2時間以下は同ガイドが引用する文献(参考文献20)に基づく推奨であり、日本の法令上の基準ではない。 - こども家庭庁「令和6年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(概要)」(令和7年3月)
この出典で確認した記述
「概要7 青少年のインターネットの利用状況 -3(利用内容)」(PDF13ページ、資料12ページ)に、いずれかの機器での利用内容の総数として「動画を見る」93.1%、「ゲームをする」84.9%と記載されている。「概要8 低年齢層の子供のインターネットの利用状況 -3(利用内容)」(PDF14ページ、資料13ページ)に「動画を見る(93.9%)、ゲームをする(63.2%)、勉強をする(42.7%)が上位」と記載されている。「概要10 青少年のインターネットの利用状況 ‐4(利用時間)」(PDF16ページ、資料15ページ)に「インターネットを利用すると回答した青少年の平均利用時間は、前年度と比べ約5分増加し、約5時間2分。高校生は、約6時間19分。中学生は、約5時間2分。小学生(10歳以上)は、約3時間44分。」「目的ごとの平均利用時間は趣味・娯楽が最も多く、約3時間1分。」と記載されている。「概要14 子供のインターネット利用に関する保護者の取組 -1(青少年の保護者)」(PDF20ページ、資料19ページ)に、スマートフォンを利用する青少年の保護者の取組として「利用してもよい時間や場所を決めて使わせている(37.2%)」と記載されている。本文「「あと1本」が止まらない仕組み」節の割合と利用時間はこれによる。調査は満10歳から満17歳の青少年3,129人、その保護者3,174人、0歳から満9歳の子供の保護者1,964人からの回収による。 - 警察庁・文部科学省・こども家庭庁「オンラインゲーム上には、こどもに迫る犯罪者がいます!!」(啓発リーフレット)
この出典で確認した記述
表面に「「フィルタリング」や「ペアレンタルコントロール」を活用しましょう!【保護者等向け】」と記載されている。裏面は「オンラインゲームについて家族等と話し合いましょう!」と題され、「家族等で決めたルールを書いておきましょう!」という記入欄に「ペアレンタルコントロール(家族等による管理機能)の設定レベルを決める。」「家族等に相談せずに、ゲーム内で知り合った人と連絡先を交換したり、実際に会ったりしない。」「少しでも不安を感じたら家族等に相談する。」などの項目が並ぶ。その下に「ルールを守れなかった場合は、改めてルールについて話し合いましょう」と記載され、例として「「ペアレンタルコントロールの設定レベルを上げる」、「家族等に相談せずに連絡先を交換した相手とは連絡をとらない」など」が挙げられている。最下段に「おかしいと思うことがあれば、ためらわず警察に相談して下さい!! 警察相談専用電話 #9110」と記載されている。本文「家庭で試す3つの工夫」節の、区切りを家族で決めて書き残すという進め方と、「気をつけたいこと」節の相談先はこれによる。 - こども家庭庁「各種相談窓口」(青少年の安全で安心な社会環境の整備)
この出典で確認した記述
同ページに、インターネット・ホットラインセンター(https://www.internethotline.jp/)、各都道府県警察サイバー犯罪相談窓口(https://www.npa.go.jp/cyber/soudan.html)、全国の消費生活センター(https://www.kokusen.go.jp/map/)、法務省の人権相談(https://www.moj.go.jp/JINKEN/index_soudan.html)、違法・有害情報相談センター(https://ihaho.jp/)、総務省の電気通信消費者相談センターなどが相談窓口として掲載されていることを確認した。本文「気をつけたいこと」節の相談先の案内はこれによる。
この記事について
本記事は家庭での工夫を整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や治療の判断に代わるものではありません。特定の機器・アプリ・設定・サービスを推奨するものでもありません。お子さんの状態が気になる場合は、専門機関や学校にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。