3行まとめ
- 総務省の教材は「フェイクニュース」という言葉を使わず、意図的なウソ=ニセ情報と、勘違いで広がる間違い=誤情報を分けて説明しています。子どもが広げてしまうのは、多くの場合あとの方です。
- 教材が最後に置くメッセージは、「だまされやすいのは『自分はだまされない』という自信を持っている人」。見抜く力を鍛えるより、確かめる手順を持つほうが現実的です。
- その手順が①情報源はある? ②その分野の専門家? ③他ではどう言われている? ④その画像は本物? の4つの問いと、「わからなければ広めない」という一線です。
この記事でわかること
- 「ニセ情報」と「誤情報」の違いと、それが家庭にとって何を意味するか
- なぜ大人でも気づけないのか ― 認知バイアス・フィルターバブル・生成AIの影響
- 総務省の教材が示す、確かめるための4つの問いと具体的な調べ方
- 家庭のルールがある子ほどリテラシーの結果がよいという調査データ
- 子どもが「広めてしまった側」になったときの受け止め方と相談先
「これ、本当なの?」に答えられない夜
夕食のあと、子どもがスマートフォンの画面をこちらに向けてきます。「ねえ、これ見て」。そこに映っているのは、災害の現場らしき映像だったり、有名人が何かを勧めている広告だったり、友達から回ってきたという注意喚起のメッセージだったりします。「みんな言ってるよ」と付け加えられると、なおさら判断がつきません。忙しい夕方に「うーん、どうかな」と流してしまい、その話が翌日には子どもの中で「本当のこと」になっている——そんな流れは、どの家庭でも起こりうるものです。
逆の場面もあります。親のほうが、家族のメッセージアプリで回ってきた健康の話や防災の注意を、よかれと思って子どもや親戚に転送してしまう。総務省の教材が引用している調査では、ニセ・誤情報を見た人がそれをどう広めたかを聞いた結果、最も多かったのは「友人・知人・家族に話した(直接)」でした。SNSでの拡散より先に、いちばん身近な会話の中で広がっているということです。つまりこれは、子どもだけの問題ではありません。
そして厄介なことに、身近さそのものが判断をゆるめます。同じ教材は、コミュニケーション量が多い家族や知人からの情報は信じてしまいがちだと注意を促し、「知り合いだからという理由だけで信じているのでは?」という問いを挙げています。「あのお母さんが言っていたから」「兄ちゃんが送ってきたから」は、内容の正しさとは何の関係もありません。けれど、私たちは日常的にそれを根拠にしてしまいます。
この記事が扱いたいのは、まさにこの中間の場面です。明白なデマを叱って終わりにするのではなく、「本当かもしれないし、違うかもしれない」というときに、家庭で何をするか。そこには、国が教材としてまとめている、かなり具体的な手順があります。
「フェイクニュース」と呼ばない理由
手がかりになるのは、総務省が公表している啓発教材「インターネットとの向き合い方~ニセ・誤情報にだまされないために~(第2版)」です。国際大学グローバル・コミュニケーション・センターが制作し、同センターの山口真一准教授らが監修したもので、講師用のガイドラインとあわせて公開されています。だれでも資料をダウンロードして講座を開ける形になっているため、内容が具体的で、家庭でもそのまま使えます。
この教材が冒頭で断っているのが、言葉の選び方です。一般的に使われている「フェイクニュース」という単語を、この教材では使わないとしています。理由は二つ挙げられています。現在この言葉がさまざまな意味で使われていること、そして、フェイクでないものを「フェイクニュースだ」と批判しているケースもあること。定義がまだ決まっていない曖昧な言葉なので、代わりに「ニセ・誤情報」という表現を使う、という説明です。似た意味を持つ単語として、嘘、デマ、陰謀論、プロパガンダ、誤情報、扇情的なゴシップ、ディープフェイクなどが並べられています。
そのうえで、ニセ・誤情報を二つに分けます。ひとつは「ニセ情報(ディスインフォメーション)」=意図的・意識的に作られたウソ、虚偽の情報。もうひとつは「誤情報(ミスインフォメーション)」=勘違いや誤解により拡散した間違い情報です。教材は誤情報の例として、2020年4月に「深く息を吸って10秒我慢できれば新型コロナに感染していない」という誤ったセルフチェックがメッセージアプリ経由で世界規模に広まり、WHOも代表的な誤情報のひとつとして注意喚起した事例を挙げています。
この二分法は、家庭にとって思いのほか大きな意味を持ちます。子どもが誤った情報を友達に伝えたり、グループチャットに流したりしたとき、大人はつい「なんでそんな嘘をつくの」と反応してしまいがちです。けれど教材の整理に従えば、そこで起きているのはたいてい「ウソをついた」ことではなく、誰かの役に立つと思って、勘違いを運んでしまったことです。動機は善意や正義感であることも多い。教材自身、ニセ・誤情報が作られる理由として、政治的動機や経済的動機と並べて、愉快犯・承認欲求・誤解・正義感・善意・知識の欠如を挙げています。
だとすれば、家庭での反応も変わってきます。責める対象は子どもの人格ではなく、確かめずに運んでしまった手順のほうです。「あなたが悪い」ではなく「ここで一回止まれたね」に話を持っていける。この切り替えができるかどうかが、次に子どもが困ったときに親へ言えるかどうかを決めます。
なぜ、大人でも気づけないのか
では、確かめさえすれば見抜けるのでしょうか。教材はそこにも釘を刺します。まず示されるのが、私たちの側の仕組みです。人は自分の願望や経験、思い込み、周囲の環境によって、無意識のうちに合理的ではないかたよった判断をすることがある——認知バイアスと呼ばれるこの現象を、教材は「人は信じたいものを信じる」という一文に言い換えています。
そこにニセ・誤情報の側の性質が重なります。教材によれば、ニセ・誤情報には「誰かに伝えたい要素」と「感情に訴える要素」があるため、共感され、拡散されやすい。具体的には、不安だ、怖い、許せない、意外だ、やっぱり正しい、誰かの役に立てそう、みんなに広めたい——といった気持ちを動かす形になっている、ということです。「こんなこと許せません」「同じ被害がないよう拡散してください」「これは出回っていない情報です、大切な人に共有してください」といった一文が付いていたら、それは偶然ではなく設計だ、と読むことができます。
数字も引かれています。教材が参照する Innovation Nippon 2024(山口真一ほか、令和6年4月)の調査によれば、ニセ・誤情報に気付かない人は85%、それを拡散する人は17%。さらに、2018年に科学誌 Science に掲載された研究(Vosoughi ほか)を引いて、ニセ・誤情報の拡散スピードは真実・事実の6倍だとしています。ここで大切なのは、この85%という数字が「一部の人」の話ではないという点です。教材が講演の最後に持ち帰ってほしいメッセージとして掲げているのは、まさにその裏返しでした。だまされやすいのは、「自分はだまされない」という自信を持っている人。
もうひとつ、自分では気づけない仕組みとしてフィルターバブルが挙げられます。ニュースサイトやSNS、検索サービスには、その人が欲しがりそうな情報を分析して同じような情報を表示する機能があり、その結果として知らぬ間にかたよった情報にばかり接することになる。教材はこれを「泡のように透明なので本人はそれに気が付けません」と表現し、心地よい情報ばかりを浴びていると、物事を極端にとらえ、狭い視野で考えるようになると警告しています。子どもが「みんな言ってる」と言うとき、その「みんな」がどこまでの範囲を指しているのかは、本人にも見えていない可能性がある、ということです。
そこに生成AIが加わりました。教材は、映像・音声を自由に作り出せるAIが普及した結果、誰でも簡単に精巧なニセ情報を作れるようになったとし、国内でも災害時に生成AIで作られたニセの災害映像がSNSに投稿され、本物だと勘違いした他のユーザーが拡散させた騒動を挙げています。保護者向けの教材はさらに具体的で、2024年の能登半島地震ではSNSに複数のニセの救助依頼が投稿され、それをもとに警察・消防が出動して混乱したと紹介しています。悪意のない「善意の拡散」が、助けを求めている人の命を危険にさらしうるということです。
では技術で判定すればよいのでは、と考えたくなりますが、ここも簡単ではありません。総務省の令和6年版情報通信白書は、OpenAIが自主開発した判定ツールについて、生成AI製の文書を正しくAIによるものと判定する確率は26%で、人間が書いた文書を誤ってAIによると判定してしまう偽陽性の確率も9%あり、この程度の精度では有効な判定ツールとならないため提供が中止されたことを紹介しています。そのうえで、生成AIと判定ツールが互いに競い合う形で技術改良が進む可能性が高いため、そのような技術を使ってもフェイク情報を正確に判別するのは難しいと見られていると述べています。
この一連の流れが指し示すのは、ひとつの結論です。子どもに「見抜く力」を求めるのは、大人が85%の側にいることを考えれば酷ですし、ツールに任せることもできない。残るのは、わからないときに止まる手順を、あらかじめ家庭に置いておくことです。
確かめるための4つの問い
その手順として教材が示すのが、4つの基本チェックです。難しい知識は要りません。どれも「聞いてみる」だけで始められます。
①情報源はある? その情報はどこから、いつ発信されたものか。信用できるか。根拠となるものが今も存在しているか、消えていないか。情報源が海外のニュースや論文の場合、自分はその情報源を確認し、理解しているか——ここまでが教材の問いかけです。「元をたどれない話は、まだ確かめていない話」と考えるだけで、家庭での扱いは変わります。
②その分野の専門家? その情報は、専門知識や必要な資格を持った人が、責任を持って発信しているものか。その人は過去にニセ・誤情報を発信して批判されていないか。そして、その人は関連する情報や商品を売っていないか。最後の項目は、子どもが接する動画や広告を考えるうえでとくに効きます。有名人の画像を勝手に使い、お金が儲かるように見える画像を添える手口についても、教材は具体的に触れています。
③他ではどう言われている? その情報について、他の人や他のメディアはどう言っているか。反論している人はいないか。別の内容で報じているメディアや、誤りであることを指摘しているメディアはないか。ひとつの投稿だけを見て決めない、という単純な原則です。
④その画像は本物? 臨場感のある画像が添えられているというだけで「本当だ」と判断していないか。その画像は生成AIによって作成されたものではないか。勝手に盗用された、まったく無関係のものではないか。保護者向けの教材には、ここを調べる具体的な方法まで書かれています。スマホやタブレットなら画像を長押し、パソコンなら右クリックすると「画像を検索」ができ、その画像が使われている記事や出所を調べられるというものです。あわせて、投稿している人の所属などを調べてみること、引用している記事のリンク先を実際にクリックして読み、信頼できる新聞・ニュースサイトかどうかを確認することも挙げられています。
教材はさらに応用として4つの問いを足します。「知り合いだからという理由だけで信じているのでは?」、「表やグラフも疑ってみた?」、「その情報に動機はある?」——意図的なニセ情報には拡散させたい動機があるので、そのニセ情報で誰が得をするか、誰が損をするかという視点で冷静に見直すこと。そして「ファクトチェック結果は?」。ファクトチェックとは、情報・ニュースや言説が事実に基づいているかを調査し、公表する営みのことで、大手メディアやネットメディア、非営利組織などが実施しています。
そして教材は、これらをすべて行ってもなお、と続けます。「それでもだまされる。だから…」として並ぶのが、わからなければ拡散しない、誰かを傷つけるなら拡散しない、医療・健康情報は安易に拡散しない、転送前にひと呼吸、手を止めて「間違いでは?」と考える、異なる情報が出ていないかチェックする——という行動です。判定できることを前提にせず、判定できないときの身の処し方まで含めて教材になっている点が、この資料のいちばん実用的なところだと言えます。
学校はもう教えている ― 家庭が足すもの
ここまで読むと、家庭が一から教えなければならないように感じるかもしれませんが、学校側もすでに動いています。学習指導要領の総則は、児童生徒の発達の段階を考慮し、言語能力、情報活用能力(情報モラルを含む。)、問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力を育成できるよう、各教科等の特質を生かし、教科等横断的な視点から教育課程の編成を図るものとする、と定めています。情報活用能力は、言語能力と同じ「学習の基盤」に位置づけられているということです。小学校では令和2年度、中学校では令和3年度、高校では令和4年度から実施されています。
実際の変化も、調査に表れています。総務省は2012年度から毎年、高校1年生を対象にインターネット・リテラシーを測るテスト(ILAS)とアンケートを実施しており、2024年度は30校・5,314名が対象でした(令和7年6月27日公表)。全体の正答率は71.5%で前年度の71.4%とほぼ横ばいでしたが、アンケートでは、学校で教えられた注意点等として「偽・誤情報(フェイクニュース)」「ファクトチェック」「生成AI」の回答率が前年度より増加し、フェイクニュースに遭遇した際に情報源や他での言及をチェックしたなど適切な対応をとったという回答率も前年度より増えていました。ネットいじめや長時間利用といった従来の課題に加えて、新しい課題を学ぶ機会が増えているということです。
同じ調査には、家庭にとってもう少し直接的な数字もあります。SNS等のインターネット利用に関する家庭でのルールが「ある」と答えた高校1年生は53.4%で、前年度の33.5%から大きく増加しました。そして、「家庭でのルールあり」かつ「フィルタリング利用あり」の場合、ILASテストの正答率は74.9%と全体の71.5%より高いという結果が示されています。
この数字の読み方には注意が必要です。ルールを作れば正答率が上がる、という因果関係を示したものではありません。ネットの話題を家庭で扱っている家では、ルールもあり、子どもの知識も育ちやすい——そうした全体の傾向として読むのが妥当でしょう。それでも、家庭が関わることと子どものリテラシーが無関係ではない、という手がかりにはなります。家庭でのルールづくりについては、子どものスマホのフィルタリング、始め方と親子の約束でも扱っています。
なお、生成AIについては、同じ調査で40.1%が「使ったことはない」と回答しています。用途としては「文章の作成をするために使用したことがある」が最も多く35.6%、生成AIのイメージとしては「学習効率や効果があがる」が最も多く33.6%でした。使ったことがない層がまだ4割いる一方で、使っている層は学習の道具として捉えている。作る側の技術に触れたことがあるかどうかで、「作られた情報」への感覚は変わってきます。
学校が教えているなら家庭は何をするのか。上書きではなく、重ね書きだと考えるとよさそうです。学校は知識と枠組みを渡し、家庭は実際に情報が持ち込まれた瞬間に一緒に確かめる。授業で「情報源を確認しましょう」と習っていても、夕食の席で画面を見せられたときにそれを思い出せるかどうかは別の話です。総務省の保護者向け教材が「情報的健康」という考え方——さまざまな情報をバランスよく摂取し、自分が摂取する情報の真正性や安全性等について意識してニセ情報等への免疫を獲得することで、各人が望む幸福を追求できている状態——を紹介しているのも、これが一度きりの授業ではなく日々の習慣の話だからでしょう。
家庭で試す3つの工夫
ここまでの内容を、家庭でそのまま動かせる形にします。特別な道具は要りません。子どもが何かを見せてきた、その場でできることばかりです。
家庭で試す3つの工夫
- ① 「本当?」ではなく「どこで見たの?」と聞く:真偽をその場で判定しようとすると、親も答えを持っていないため会話が止まります。代わりに、情報源をたどる問いから入ります。「どこで見たの?」「その人はどんな人?」「元の記事、読める?」——教材の①と②をそのまま会話にしたものです。引用元のリンクを実際にクリックして読み、信頼できる新聞やニュースサイトかを一緒に確かめるところまでやれば、それだけで一回分の練習になります。答えが出なくてもかまいません。「たどれなかったね」という結果も、立派な結論です。
- ② 画像を長押しして検索する場面を、一度だけ一緒にやる:保護者向け教材が挙げている具体的な手技です。スマホやタブレットなら画像を長押し、パソコンなら右クリックで「画像を検索」ができ、その画像がどんな記事で使われているか、いつのものかを調べられます。災害の映像として流れてきた画像が、実は何年も前の別の国のものだった——という例は珍しくありません。子どもはこの操作を面白がることが多いので、説教として教えるより、一度並んでやってみせるほうが早く定着します。
- ③ 「わからなければ広めない」を家の共通語にする:教材が示す最後の一線を、家族全員のルールとして共有します。真偽がわからないもの、誰かを傷つけるもの、医療や健康に関わるものは、確かめられるまで転送しない。これは子どもだけの約束にせず、親も同じ基準で動くことが大事です。家族のメッセージアプリで親が確かめずに転送していれば、子どもはその姿から学びます。「転送する前にひと呼吸」を、家の中でいちばん多く口にするのが親であるほうが、話は通りやすくなります。
声かけの言い換え
声かけの言い換え例
「そんなの嘘に決まってるでしょ」→ 判定を先に下すと、次から見せてくれなくなる。確かめる場面そのものが失われる。
「どこで見たの? 一緒に元をたどってみようか」→ 情報源をたどる問い。親が答えを知らなくても始められ、手順が残る。
「よくそんなの信じるね」→ 気づけなかったことを人格の問題にすると、打ち明けにくくなる。
「これ、うまく作ってあるね。私も最初は本当かと思った」→ 「気づかない側」に大人も立っていると示す。教材のメッセージそのもの。
「ネットは嘘ばかりだから見るな」→ 遮断は続かないうえ、確かめる練習の機会もなくなる。
「本当のことも嘘も同じ画面に並んでる。だから確かめ方を覚えよう」→ 情報を敵にせず、扱い方の話に変える。
「拡散したの? なんてことするの」→ 責めが先に立つと、報告そのものが遅れて被害が広がる。
「教えてくれてありがとう。まず消して、次にどうするか一緒に考えよう」→ 報告できたことを肯定し、対処の順番を示す。
家庭で確認するチェックリスト
ニセ・誤情報と向き合うチェックリスト
- 「ニセ情報」と「誤情報」の違いを子どもと共有し、勘違いで広めることは誰にでも起きると話している。
- 子どもが何かを見せてきたとき、真偽の判定より先に「どこで見たの?」と聞く習慣がある。
- 画像を長押し(またはパソコンなら右クリック)して検索する方法を、一緒に一度は試したことがある。
- 真偽がわからないもの・誰かを傷つけるものは転送しない、という基準を家族全員で共有している。
- 広めてしまったと子どもが打ち明けたとき、責める前に対処を一緒に考えると決めている。
気をつけたいこと・相談先
「正しいか間違いか」で割り切れない情報もある
4つの問いは万能ではありません。教材自身が指摘しているとおり、世の中の情報は「正しい」「間違い」の2種類だけではなく、情報の一部だけが誤っているもの、今はまだ真偽を判定できないものなど、曖昧なものがたくさんあります。ファクトチェックを行う団体は、それらを細かく分類して客観性を保つ取組みを行っており、レーティングの一例として、正確/ほぼ正確/ミスリード/不正確/根拠不明/誤り/虚偽/判定留保/検証対象外といった段階が示されています。家庭で「白か黒か」を出そうとすると、かえって無理が生じます。「いまはまだわからない」という結論を、正しい結論のひとつとして扱ってください。
もうひとつ見落とされやすいのが、事実と意見の混在です。教材は「〇〇選手は、オリンピックで金メダルを取った偉大なアスリートだ」という一文を例に、前半は客観的な事実、後半は個人的な意見が含まれていると説明しています。そして「今後議論を呼びそう」「不安の声が聞こえる」「反発は避けられない」「波紋が広がっている」「懸念される」といった表現は、すべて意見だと指摘しています。子どもと一緒に読むときは、どこまでが確かめられる事実で、どこからが書き手の見方なのかを分ける練習をしておくと、真偽の判定に頼らずに済む場面が増えます。
子どもが「広めてしまった側」になることも想定しておく必要があります。教材は、あおり運転に関する事件で、無関係にもかかわらず加害者の関係者であるという誤った情報がSNSで拡散され、中傷を受けた人物が投稿者や拡散者の特定を進め、裁判を通じて損害賠償を命ずる判決が下された例を挙げています。悪意がなくても責任を問われうる、ということです。ただしこれは、子どもを怖がらせるために使う話ではありません。だからこそ「わからなければ広めない」を先に決めておく、という順番で伝えるほうが実際に役立ちます。
また、被害の形も変わってきています。総務省は令和8年4月15日に「インターネットトラブル事例集」を2026年版に更新し、青少年が生成AIによって自身の顔写真を性的な画像に加工される被害に遭うケースが散見されることを受けて、ディープフェイクに関する注意喚起を目的とした新規特集を作成したと発表しています。被害に遭うことだけでなく、逆に加害者になってしまうことがないよう、という両面からの注意喚起です。令和6年版情報通信白書も、SNS等で共有された一般的な写真画像をAIで不適切な内容に変換して被害者を脅迫する事例について、米国連邦捜査局(FBI)が被害者には未成年の子どもも含まれると警告していることを紹介しています。顔写真をネットに載せることの意味は、数年前とは変わったと考えたほうがよさそうです。
困ったときは、家庭だけで抱え込まないでください。総務省の2026年版事例集は、ワークショップに参加した中高生から「実際にネットのトラブルに遭ったときの対処法がもっと詳しく知りたい」という声があったことを受けて、トラブルに遭ったときの初動対応のポイントや相談窓口の利用について解説する特集ページを新たに掲載しています。自分の権利を侵害する情報がネット上にある場合、本人または代理人(未成年者であれば親などの保護者、弁護士)からサイトの管理者等に削除を依頼することができ、その方法がわからないときは総務省支援事業の違法・有害情報相談センター(https://www.ihaho.jp/・Webフォームからの相談)に相談できます。法令上禁じられている情報を見つけた場合はインターネット・ホットラインセンターへの通報や、緊急を要する場合は警察への通報という窓口もあります。人権に関わる相談は法務省人権擁護局でも受け付けています。学校生活に関わることであれば担任や学校へ、子ども自身の気持ちがつらいときは24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)も利用できます。
出典・参考
- 総務省「インターネットとの向き合い方~ニセ・誤情報にだまされないために~(第2版)」(2025年2月改訂・啓発教育教材/制作 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター、監修 山口真一・小木曽健・古田大輔)
- 総務省「5つの分野のICTリテラシーを学ぼう~つくろう!守ろう!安心できる情報社会~(保護者向け)」(令和7年3月19日公表)
- 総務省「2024年度 青少年のインターネット・リテラシー指標等に係る調査結果の公表」(令和7年6月27日)
- 総務省「『インターネットトラブル事例集』の更新 ―ディープフェイクによる性的被害の注意喚起等を新たに掲載―」(令和8年4月15日・2026年版)
- 総務省「令和6年版 情報通信白書」第1部第4章「偽・誤情報の流通・拡散等の課題及び対策」
- 文部科学省「新学習指導要領のポイント(情報活用能力の育成・ICT活用)」
- 総務省「インターネット上の違法・有害情報に関してお困りの方へ」
この記事について
本記事は、インターネット上のニセ・誤情報と家庭での向き合い方について、公的機関が公表している啓発教材・調査・白書の内容を整理したものであり、特定の情報・発信者・サービスの真偽を判定するものではありません。ここで紹介したチェック項目は、情報の正誤を確実に見分けることを保証するものではなく、真偽の判定が困難な情報が存在することは出典元の教材にも明記されています。調査の数値や教材の内容、相談窓口の受付方法は改訂により変わることがありますので、最新の情報は各公式サイトでご確認ください。ネット上の権利侵害や削除依頼、法的な責任に関わる具体的な対応については、違法・有害情報相談センターや弁護士などの専門家にご相談ください。学校生活に関わる困りごとは学校へ、子ども自身がつらさを抱えているときは24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)などの公的な窓口もご利用いただけます。