3行まとめ
- 学校の1人1台端末は、いまや子どもがネットにつながる2番目に多い機器です。家庭に持ち帰る前提で、使い方を決めておく必要があります。
- 文部科学省は保護者と共有したいポイントとして、①端末の扱いの約束②個人情報とネットの特性③健康への配慮④トラブル時の連絡の仕組みの4つを挙げています。
- 健康面は「目と画面は30cm以上」「30分に1回は20秒以上遠くを見る」「就寝1時間前から使わない」と具体的な目安が示されており、家庭でこそ守りやすい内容です。
この記事でわかること
- 学校の端末が、いまの子どもの生活でどれくらいの位置を占めているか
- 文部科学省が「保護者と共有したい」として示している4つのポイントの中身
- 目・姿勢・睡眠について、数字で示されている健康の目安と家庭での守り方
- 持ち帰りが始まった日に、家庭で決めておくとよい4つのこと
「充電しといてね」で終わっていないか
学校から配られた端末は、家庭で買い与えたスマートフォンとは性格が違います。学校の備品で、設定は学校や教育委員会が管理していて、親が自由に変えられるわけではない。かといって、家に置いてある以上、使う時間や場所は家庭の生活の中にあります。文部科学省の令和3年3月の通知は、学校設置者に対し家庭での端末の利用に関するルール作りを促進すること、丁寧な説明により保護者の十分な理解を得られるよう努めることを求めています。家庭での使い方のルールは、両者で共通理解をつくるものとして設計されています。
学校の端末は、もう「特別なもの」ではない
こども家庭庁の「令和6年度青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、10〜17歳の98.2%がインターネットを利用しており、使っている機器はスマートフォンが75.4%で最も多く、次いでGIGA端末が72.6%。ゲーム機(66.5%)やテレビ(64.2%)を上回ります。小学生75.9%、中学生74.7%で、小中学生では学校の端末はスマートフォンと肩を並べる「ネットへの入口」になっています。
GIGA端末での利用内容は「勉強をする」82.7%、「検索する」63.0%。学習用途が中心であることは数字にも表れていますが、裏を返せば残りの部分では学習以外の使い方も起きているということです。「たまに持ち帰る学校の備品」として扱うのは、実態に合っていません。
文部科学省が示す、保護者と共有したい4つのポイント
手がかりになるのが、文部科学省の「学校設置者・学校・保護者等との間で確認・共有しておくことが望ましい主なポイント」という資料です。冒頭には、保護者や児童生徒の意見・課題などを聞き取りながら対応を進めることが重要だと書かれています。学校に相談することは、想定外の行動ではなく期待されている行動です。
①端末を安全・安心に活用するために気を付けること。使用時間を守る、端末やID・パスワードを適切に扱う(第三者に貸さない、教えない)、アプリの追加や設定の変更は学校の指示に沿って行う、学習に関係のない目的では使わない。②端末・インターネットの特性と個人情報の扱い方。本人の許可を得ずに写真を撮ったり録音・録画したりしない、個人情報を不用意に書き込まない、人を傷つけることを書き込まない。③健康面への配慮は次の節で。④トラブルが起きた場合の連絡や問合せ方法等の情報共有の仕組み。故障・破損・紛失・盗難やネット上のトラブルが起きたときの対応手順や連絡先を、家庭と学校の間で共有しておくことが重要だとされています。
目・姿勢・睡眠 ― 数字で示されている健康の目安
家庭がいちばん具体的に関われるのが健康面です。文部科学省の「児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブック」には、よく引用される目安が二つあります。目と画面との距離を30cm以上離すこと。そして30分に1回は20秒以上、画面から目を離して、できるだけ遠くを見て目を休めること。背景として、学校の裸眼視力検査で0.3未満の子供が36年間に小学校で3.1倍に増加したことが紹介されています。
姿勢については「一つの正しい姿勢」というものはなく、無理な姿勢のままで長時間作業をし続けないことが重要だと書かれています。こまめに動くほうが理にかなっている、ということです。睡眠については、就寝前に強い光を浴びるとメラトニンの分泌が阻害されるため就寝1時間前からはICT機器の利用を控えることがすすめられるとされています。
ブルーライトカット眼鏡についても、令和3年に日本眼科学会など6団体が慎重意見を提言しており、ガイドブックはその趣旨として、エビデンスに乏しいこと、端末からのブルーライトは自然光より少なく網膜に障害を生じることはないレベルとされていること、そして眼鏡を買うよりも就寝1時間前から液晶画面を見ることを控えるほうが推奨されることを紹介しています。ほかに、夜は昼より画面の明るさを下げる、ヘッドフォンの音量を上げすぎない(概ね85デシベル以上の長時間使用で騒音性難聴を発病する可能性があり、いったん発病すると聴力は回復しない)も挙げられています。
持ち帰りが始まったら、家庭で決める4つのこと
ここまでを、持ち帰りが始まった最初の週末にでも決めておきたい4つにまとめます。
①使う時間と置き場所を決める。就寝1時間前からは使わないことを共有し、夜の充電場所を寝室ではなくリビングに。文部科学省の資料も、子供と話し合い、子供が自らの問題として捉えられるよう利用時間等を設定することが重要だとしています。②アカウントとパスワードは自分だけのもの、と確認する。「あなたのアカウントで誰かが書き込んだら、あなたが書いたことになる」と説明すると納得しやすい話です。③撮る前・書き込む前に、一呼吸おく約束をする。④困ったときの連絡先を、家の見える場所に置いておく。案内がない場合は「端末が壊れたときはどこに連絡すればいいですか」と聞いておくだけでも十分です。
家庭で試す3つの工夫
- ①「遠くを見る目標物」を家の中で決めておく:30分に1回・20秒以上遠くを見る、と言われても、子どもには何を見ればいいのかわかりません。窓の外の電柱、廊下の突き当たりの絵など「目を休める場所」を一緒に決めておくと、声かけが「休憩しなさい」ではなく「あの電柱、見てきた?」に変わります。
- ②端末を開く場所を1〜2か所に固定する:机と椅子の高さが合っている場所で使うほうが体への負担が少なく、ソファや布団の上での長時間利用を減らせます。見張るためではなく、体に無理のない場所を用意するという発想で。
- ③週に一度、「何に使った?」を短く聞く:問い詰めるのではなく「今週はどのアプリをいちばん使った?」と興味を持って聞きます。ふだんから話題にできていれば、困ったときにも打ち明けてもらいやすくなります。
声かけの言い換え例
「学校のものなんだから、勝手にいじらないで」→ 触れさせないだけでは、家での使い方は誰も見ないままになる。
「学校のものを預かっているから、一緒に使い方を決めよう」→ 家庭と学校で共通理解をつくる、という国の考え方に沿った入り方。
「そんなに近づけて見ないの!目が悪くなるよ」→ 叱るだけでは理由が伝わらず、その場しのぎで終わりやすい。
「画面と目を30cm離すのが目安だって。腕くらいの長さかな」→ 数字と体感を結びつけると、子どもが自分で調整できる。
持ち帰り端末のチェックリスト
- 学校からの案内を読み、家庭での使い方について決まっていることを把握している。
- 使う時間帯と夜の充電場所を決め、就寝1時間前からは使わないと共有している。
- IDやパスワードを人に教えない、端末を貸さないことを理由とセットで伝えている。
- 人を撮るときは許可をとる、個人情報や人を傷つけることは書かないと約束している。
- 故障・紛失・ネットのトラブルが起きたときの連絡先を、家の見える場所に置いている。
ルールは学校ごとに違う ― 最終的な基準は学校の案内
この記事で紹介したのは、文部科学省が全国共通の考え方として示している内容です。実際の端末の設定、持ち帰りの可否、家庭での使い方の細かなルールは学校や教育委員会によって異なります。学校から配られた案内が、そのご家庭にとっての最終的な基準です。端末の設定を保護者が独自に変更することは学校の管理と衝突する可能性があるため、必ず学校や教育委員会に確認してから行ってください。
健康面の目安も一般的な配慮事項であり、個々の子どもの状態を診断・評価するものではありません。目の疲れや頭痛、視力の低下、睡眠の乱れが続く場合は、自己判断で対処せず眼科などの医療機関を受診してください。
端末をめぐる子ども同士のトラブルも、家庭だけで抱えないでください。文部科学省の令和6年度の調査では「パソコンや携帯電話等を使ったいじめ」は27,365件で前年度から増えています。同じ調査では、いじめの発見のきっかけのうち「当該児童生徒(本人)の保護者からの訴え」が13.9%を占めています。迷う段階でも、学校に伝えてかまいません。
出典・参考
- 文部科学省「GIGAスクール構想の下で整備された1人1台端末の積極的な利活用等について(通知)」(2文科初第1962号・令和3年3月12日)
この出典で確認した記述
端末を持ち帰り自宅等での学習にICTを活用することは有効であるとしたうえで、学校で整備されたものを含む家庭での端末の利用に関するルール作りを促進すること、丁寧な説明により保護者や地域の十分な理解を得られるよう努めることを求めていること、別添3として保護者等との確認・共有のポイントが作成されたことの根拠。 - 文部科学省「学校設置者・学校・保護者等との間で確認・共有しておくことが望ましい主なポイント」(「1人1台端末等のICT環境の活用に関する方針・チェックリストについて」令和4年3月3日 別添3)
この出典で確認した記述
保護者と共有したい4つの柱(①端末を安全・安心に活用するために気を付けること ②端末・インターネットの特性と個人情報の扱い方 ③健康面への配慮 ④トラブルが起きた場合の連絡や問合せ方法等の情報共有の仕組み)と、その各項目例(使用時間、ID・パスワードの取扱い、アプリの追加・設定変更は学校の指示に沿うこと、許可なく撮影・録音録画しないこと、目と画面の距離30cm以上、30分に1回20秒以上遠くを見ること、就寝1時間前からの利用を控えること、夜間は画面の輝度を下げること、故障・破損・紛失・盗難やネット上のトラブルの連絡先を共有すること)、および保護者や児童生徒の意見を聞き取りながら見直し・工夫することが重要であることの根拠。 - 文部科学省「児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブック(令和4年3月改訂版)」
この出典で確認した記述
目と端末の距離30cm以上・30分に1回20秒以上遠方を見ること、厚生労働省の情報機器作業ガイドラインで連続作業時間を1時間以内とされていること、「一つの正しい姿勢」はなく無理な姿勢で長時間続けないことが重要で家庭での姿勢指導も大切であること、就寝1時間前からの利用を控えること(メラトニン分泌の阻害)、家庭学習を睡眠直前に実施しない等の学習計画、ドライアイとまばたき、ヘッドフォンの大音量(概ね85デシベル以上)による騒音性難聴、日本の近視人口が8割から9割で裸眼視力0.3未満の小学生が36年間で3.1倍に増加したこと、1日2時間・週14時間の屋外活動と近視の関係、6団体による「小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見」の根拠。 - こども家庭庁「令和6年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」(調査結果の概要・令和7年3月)
この出典で確認した記述
青少年の98.2%がインターネットを利用していること、利用機器はスマートフォン75.4%に次いで学校から配布・指定されたパソコンやタブレット等(GIGA端末)が72.6%であること、GIGA端末の利用が小学生75.9%・中学生74.7%・高校生67.7%、低年齢層の小学生で59.8%であること、GIGA端末の利用内容が「勉強をする」82.7%・「検索する」63.0%であることの根拠。 - 文部科学省「令和6年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)【確定値】」(調査基準日 令和7年3月1日)
- 文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」
この出典で確認した記述
いじめの態様のうち「パソコンや携帯電話等を使ったいじめ」が27,365件(前年度24,678件)で総認知件数に占める割合が3.6%(前年度3.4%)であること、いじめの発見のきっかけのうち「当該児童生徒(本人)の保護者からの訴え」が13.9%であることの根拠。
この記事について
本記事は家庭での工夫を整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や治療の判断に代わるものではありません。特定の機器・アプリ・設定・サービスを推奨するものでもありません。お子さんの状態が気になる場合は、専門機関や学校にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。