3行まとめ
- 小学校の英語は、3・4年の「外国語活動」と5・6年の教科としての「外国語科」で目標も扱う領域も違います。前半は聞く・話すの3領域、後半はそこに読む・書くを加えた5領域です。
- 2年間で扱う語は600〜700語程度とされていますが、解説は「これらの全てを覚えて使いこなさなければならない、ということではない」と明記しています。家庭で単語テストを課すことは、目標の側から要請されていません。
- 中学生の全国調査では、必要な情報を聞き取る問題が約8割できる一方、自分の考えとその理由をまとまりのある内容で話す問題は2割前後まで落ちます。家庭で効きやすいのは、まさにこの「理由を添えて話す」部分です。
この記事でわかること
- 3・4年の外国語活動と5・6年の外国語科は、何がどう違うのか
- 「600〜700語」という数字を、家庭がどう受け取ればいいのか
- 小学校の「書くこと」の目標が、つづりの暗記ではない理由
- 中学生の全国調査が示す、伸び悩みが集中している場所
- 英語を「好き」と答える割合が、小学校と中学校でどう違うのか
- 家庭で今日からできる3つのステップと、避けたい関わり方
英語だけ、何をさせればいいのか分からない
小学生の親が英語で困るとき、その困り方にはいくつか決まった形があります。ひとつは、学校で何をやっているのかが見えないという困り方です。国語や算数と違ってドリルが毎日出るわけではなく、テストの点数も頻繁には返ってこない。授業でカードを使ったとか、外国語指導助手の先生と話したとか、子どもの報告は断片的で、そこから進み具合を推し量ることができません。
もうひとつは、自分の受けた英語教育との落差です。多くの親にとって英語は、中学から始まり、単語を覚え、文法を習い、和訳と英訳で確かめる教科でした。その物差しで子どもの教科書を開くと、絵と会話ばかりで、覚えるべきものがどこにあるのか分からない。「これでいいのだろうか」という不安が、そのまま「うちで単語だけでもやらせようか」という発想につながります。
そして三つめが、周囲との比較です。同じクラスの子が英会話教室に通っている、動画で英語に触れている、家族に英語を話す人がいる。そういう話が耳に入るたびに、何もしていない我が家だけが遅れている気がしてくる。焦りが強くなると、家庭の関わり方は「確認」に寄っていきます。単語の意味を尋ねる、発音を直す、書けるかどうかを試す。どれも親の側からすれば愛情ですが、子どもの側からは「できないことを見つけられる時間」になりがちです。
この三つの困り方はどれも自然なもので、責められるものではありません。ただ、どれも「学校が何を目指しているか」を知らないまま生まれている不安でもあります。ここから先で見ていくように、小学校の英語には、家庭の想像とはかなり違う設計図があります。その設計図を知ると、やらなくていいことがまず減り、その分だけ、家庭でこそ効くことに手が回るようになります。
3・4年と5・6年で、学校の英語は別のものです
最初に押さえておきたいのは、小学校の英語がひとつづきの教科ではない、ということです。3・4年生で行われるのは「外国語活動」、5・6年生で行われるのは教科としての「外国語科」で、この二つは名前だけでなく中身が違います。
文部科学省の「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編」は、この設計の理由を、改訂前の状況の分析から説き起こしています。そこで課題として挙げられているのは、①音声中心で学んだことが、中学校の段階で音声から文字への学習に円滑に接続されていない、②日本語と英語の音声の違いや英語の発音と綴りの関係、文構造の学習において課題がある、③高学年は児童の抽象的な思考力が高まる段階であり、より体系的な学習が求められる、という三点です。
この課題に対する答えとして採られたのが、段階を分けるという方法でした。解説はこう述べています。今回の改訂では、小学校中学年から外国語活動を導入し、「聞くこと」「話すこと」を中心とした活動を通じて外国語に慣れ親しみ外国語学習への動機付けを高めた上で、高学年から発達の段階に応じて段階的に文字を「読むこと」「書くこと」を加えて総合的・系統的に扱う教科学習を行うとともに、中学校への接続を図ることを重視する、と。
具体的には、扱う「領域」が違います。中学年の外国語活動は、「聞くこと」「話すこと[やり取り]」「話すこと[発表]」の三つの領域を通して、伝え合う力の素地を養います。高学年の外国語科は、そこに「読むこと」「書くこと」を加えた五つの領域です。解説は、この違いについて「これは、児童が中学年で初めて外国語に触れることに配慮したものである」と説明しています。つまり3・4年生の段階で文字が中心に出てこないのは、指導が手を抜いているからではなく、意図された順番なのです。
時間の配分も解説に記されています。第3学年及び第4学年においては外国語活動として2年間で計70単位時間、第5学年及び第6学年においては教科として2年間で計140単位時間、合計210単位時間をかけて指導することとなる、とされています。中学年は年におよそ35時間、高学年は年におよそ70時間という配分です。国語や算数と比べれば、決して多い時間ではありません。この分量を知っておくと、「学校でやっているのだから相当進んでいるはず」という期待も、「学校だけでは足りないから家で詰め込まねば」という焦りも、どちらも少し落ち着きます。
評価のされ方にも違いがあります。文部科学省が平成31年3月29日に出した「児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」(30文科初第1845号)は、指導要録の改善点として、小学校における「外国語活動の記録」については、従来、観点別に設けていた文章記述欄を一本化した上で、評価の観点に即して、児童の学習状況に顕著な事項がある場合にその特徴を記入することとした、としています。つまり中学年の外国語活動については、記号や数値で段階を付ける欄ではなく、目立った様子があったときに文章で書く欄が用意されている、という位置づけです。手元の通知表がどういう形式かは学校ごとに異なりますので、その読み方については通知表をどう読むか ― 3つの観点と評定が示していることもあわせてご覧ください。
「600〜700語」は、全部覚える宿題ではない
小学校の英語について語られるとき、必ずと言っていいほど出てくるのが語数です。解説は、高学年の2学年間に指導する語について、第3学年及び第4学年において外国語活動を履修する際に取り扱った語を含む600〜700語程度の語、としています。この数字が家庭に伝わるとき、たいてい「小学校のうちに700語覚えなければならない」という形に変わってしまいます。
けれど解説は、その受け取り方を先回りして否定しています。この600〜700語というのは発信語彙と受容語彙の両方を含めた語彙サイズであり、これらの全てを覚えて使いこなさなければならない、ということではない、と書かれているのです。発信語彙とは自分で使える語、受容語彙とは聞いたり読んだりして分かる語のことです。両方を合わせた総量が600〜700語であって、そのすべてを書けて言えるようにする、という話ではありません。
数字の性格そのものについても補足があります。「600語」とは小学校の外国語活動及び外国語科で指導する語数の下限を、「700語」とは指導で取り扱う一定の目安となる語数を示したものであり、700語程度を上限とするという趣旨ではない、とされています。つまりこれは到達を測るテストの範囲ではなく、授業で扱う量のおおよその幅です。
この語がどういう位置にあるかも書かれています。その範囲は中学年の外国語活動で学習する語を含み、中学校の外国語科で学習する内容の基礎となり、かつ中学校に行ってからも繰り返し学ぶことが期待される中心的語彙を想定している、というのが解説の説明です。中学校で繰り返し出てくることが前提になっている語なのですから、小学校の段階で完璧に定着させておく必要はない、ということでもあります。
家庭にとって、この一節はかなり実用的です。子どもが単語を思い出せなくても、それは遅れではありません。授業で何度も耳にした語が、まだ「聞けば分かる」段階にあるというだけのことです。ここで単語テストを課すと、受容語彙のままでよかったものを無理に発信語彙に引き上げようとすることになり、子どもにとっては急に難しい課題に変わります。しかも、その難しさは学校の目標とは無関係に生まれたものです。もし家庭で語を扱いたいなら、覚えているかを試すのではなく、耳にする回数を増やすほうが設計に沿っています。
「書くこと」の目標は、つづりを覚えることではない
高学年になると「書くこと」が入ってくるため、ここで家庭の不安がもう一段高まります。ノートに英文が並び始めると、親としては「つづりを正確に覚えさせなければ」と考えたくなる。けれど、学習指導要領が高学年の「書くこと」に置いている目標は、想像よりずっと限定的です。
目標はこう書かれています。ア、大文字、小文字を活字体で書くことができるようにする。また、語順を意識しながら音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を書き写すことができるようにする。イ、自分のことや身近で簡単な事柄について、例文を参考に、音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を用いて書くことができるようにする。
ここに二度出てくる「音声で十分に慣れ親しんだ」という限定が要です。書く対象になるのは、すでに耳と口で何度も通った語句だけです。そして動詞は「書き写す」と「例文を参考に書く」。何も見ずにつづりを再現することは、この段階の目標には入っていません。
「読むこと」も同じ考え方で組み立てられています。解説は「推測しながら読む」という表現について、こう説明します。中学年から単語の綴りが添えられた絵カードを見ながら何度も聞いたり話したりしてその音声に十分に慣れ親しんだ単語が文字のみで提示された場合、その単語の読み方を推測して読むこと、と。例も添えられていて、動物園の絵のそばに zoo という単語があれば、音声で十分慣れ親しんだ語を思い出して zoo が読めることも考えられる、あるいは book の b の発音を思い出して bed を推測しながら発音することも考えられる、とされています。
この二つを並べると、小学校高学年の文字学習の性格がはっきりします。目指されているのは、知らない単語をつづりから解読する力ではなく、すでに音として持っている語を文字と結び直す作業です。先ほど見た改訂の課題のうち、①音声から文字への接続と②発音と綴りの関係、はまさにここに対応しています。
だとすれば、家庭が「書けるかどうか」を試すのは、順番が一段先走っていることになります。テストのように書かせて間違いを指摘すると、子どもは「英語は間違いを見つけられる時間」だと学習してしまう。それよりも、音として持っている語の在庫を増やし、その語が文字で目の前に現れる機会を増やすほうが、目標の設計に沿っています。日本語の音読で音と文字を結び直す考え方については音読を「読ませる」から「聞く」に変えるだけで、家庭の空気は変わるでも触れています。漢字の練習で家庭がどこまで直すかという線引きは、「漢字が覚えられない」時、とめ・はねより先に家庭が見る場所と共通する考え方です。
その先で、子どもたちはどこで止まっているか
ここまでは学校が何を目指しているかの話でした。次に見たいのは、その先で実際に何が起きているかです。手がかりになるのが、国立教育政策研究所が実施している全国学力・学習状況調査です。英語は中学校3年生を対象に実施され、令和8年度の結果は令和8年7月16日に正答率等が、8月3日に報告書と調査結果資料が公表されました。調査は令和8年4月に行われ、「聞くこと・読むこと・書くこと」の3技能は約86万人、「話すこと」は当日実施校の約4万6千人が対象になっています。
結果を領域ごとに眺めると、できている場所とそうでない場所が、驚くほどきれいに分かれます。報告書は「比較的できている点」として、日常的な話題について、目的に応じて、必要な情報を聞き取ることはできている、自分の置かれた状況などから判断して必要な情報を聞き取ることはできている、読むことについても同様にできている、と挙げています。実際の数値を見ると、ショッピングセンターでのアナウンスを聞いて行くべき階を選ぶ問題は78.7%、学校見学の説明を聞いて行くべき場所を選ぶ問題は76.3%、誕生日パーティーのメールを読んで適切な時刻を選ぶ問題は72.8%です。情報を拾うことは、多くの生徒ができています。
ところが、そこから一段深くなると落ち込みます。職場体験の発表を聞いて体験した順に絵を並べる、つまり概要を捉える問題は44.4%。物語を読んで登場人物の気持ちの変化を捉える問題は49.2%。文章を読んで書き手が最も伝えたいことを選ぶ問題は48.1%。報告書はこれらを「課題のある点」として、話を聞き概要を捉えること、短い文章を読み要点を捉えることに課題がある、とまとめています。
そして、いちばん大きく落ちるのは、自分から出力する場面です。自分のまちを訪れるのにおすすめの季節を一つ取り上げてその理由を話す問題の正答率は21.5%、聞いたことについて考えとその理由を話す問題は25.8%。書くほうも同様で、学校で普段行うことについて説明を書く問題は28.5%、読んだことについて考えとその理由を書く問題は28.4%でした。無解答率も高く、これらの問題では13〜17%が手をつけられていません。
この落差は、単語を知らないから生じているのではありません。同じ調査で、情報を聞き取る問題は8割近くができているのです。足りていないのは、自分の中にある考えを、理由をつけて、まとまりのある形に組み立てて出すという部分です。報告書の「指導改善のポイント」も、そこを名指ししています。話すこと[発表]について、聞き手に伝わるように一つのテーマに沿った発表をしたり、内容に一貫性があるスピーチをしたりするなどまとまりのある内容を話すことが重要である、とされ、具体的な進め方として、メモを活用せずに簡単な発表の活動を繰り返し行い、徐々に発話する量を増やしていくことが大切であり、4文、5文と話す内容が増えてくると話す内容や構成を整理する必要が出てくるため、その段階でキーワードなどをメモに書かせることが考えられる、と述べられています。
話すこと[やり取り]の項では、「即興で伝え合う」という言葉の定義も示されています。話すための原稿を事前に用意してその内容を覚えたり、話せるように練習したりするなどの準備時間を取ることなく、不適切な間を置かずに相手と事実や意見、気持ちなどを伝え合うことである、と。原稿なしでその場で応じる力が求められているわけです。
ここで家庭の話に戻ります。単語の意味を尋ねたり、つづりを確かめたりする関わり方は、調査で「できている」と出ている側を、さらに念入りに確かめる作業です。一方、落ち込んでいるのは「自分の考えを理由とともに、いくつかの文にまとめて言う」という部分でした。そして、この力の土台にあたる部分は、英語でなくても育てられます。理由を一つ添えて話すという習慣そのものは、日本語の食卓でも作れるからです。文章の要点をつかむ力の育て方については読解力を家庭で育てる ― 読み取って、自分の言葉で説明するまでもあわせてご覧ください。
「好き」が下がるのは、小学校から中学校のあいだ
もうひとつ、同じ調査の質問紙から見ておきたい数字があります。令和8年度の調査で「英語の勉強は好きですか」と尋ねたところ、小学校6年生では「当てはまる」37.8%、「どちらかといえば、当てはまる」28.8%で、肯定的な回答が合わせて66.6%でした。この割合は令和6年度69.3%、令和5年度69.2%、令和3年度68.3%と、ここ数年ほぼ横ばいで推移しています。小学生の多くは、英語を嫌ってはいません。
ところが中学校3年生では、「当てはまる」24.8%、「どちらかといえば、当てはまる」26.7%で、肯定的な回答は51.5%にとどまります。小6の66.6%から、およそ15ポイント下がる計算です。しかも中学生の数値は経年でも下がっており、平成31年度は56.3%、令和3年度は56.9%、令和5年度は52.3%でした。
この落ち方をどう読むかには慎重さが要ります。小6と中3は別の集団ですし、教科の難易度も、評価の重みも、部活動や他教科との競合も、中学ではまったく違います。「小学校のやり方が悪いから中学で嫌いになる」といった単純な因果には結びつきません。ただ、家庭にとって意味があるのは、小学生の時点では英語への気持ちが比較的良好だという事実のほうです。いま手元にあるのは、まだ好意的な状態です。それを守ることには価値があります。
関連して、もう一つの質問も参考になります。「これまで、学校の授業以外で、英語を使う機会がありましたか」という問いに対し、小学校6年生の肯定的な回答は46.4%でした。半数弱です。ただし、この設問が例示しているのは英会話教室だけではありません。地域の人や外国にいる人と英語で話す、英語で手紙や電子メールを書く、英語のテレビや動画、ホームページを見る、情報端末を利用して他者と英語で交流する、英会話教室に通うなど、と幅広く並べられています。授業以外で英語に触れる機会というのは、必ずしも費用のかかる習い事を意味しない、ということです。
なお、中学生の英語力そのものは長期的には上向いています。文部科学省の令和6年度「英語教育実施状況調査」によれば、CEFR A1レベル(英検3級)相当以上の英語力を有する中学校3年生の割合は52.4%で、令和5年度の50.0%、平成25年度の32.2%から増加してきました。第4期教育振興基本計画では、この割合を6割以上とすることが目標とされています。同調査は、生徒の英語力には英語による言語活動、教師の英語使用・英語力、外国語指導助手との授業外活動等が影響していることも示しています。伸びているのは、使う機会のあるところなのです。
家庭でできる3ステップ
ここまでの内容を、家庭の行動に落とし込みます。順番には意味があります。学校が音声から始めて文字へ進み、その先で「理由を添えて話す」ところに課題が集中しているという流れに合わせています。
ステップ1 音に触れる回数を増やし、意味を尋ねない。小学校の英語は、聞くことと話すことから始まります。家庭でできるのは、その回数を少し増やすことです。教科書に付いている音声、学校が使っている学習用端末の教材、英語の歌やアニメ。どれでもかまいません。大事なのは、聞いたあとに「今の何て言ってた?」と確認しないことです。確認が入った瞬間、聞き流せる時間はテストの時間に変わります。解説が求めているのは、音声に十分慣れ親しむこと、つまり同じ表現に何度も出会うことでした。回数が目的なのだと割り切ると、家庭の関わりはずっと気楽になります。学習用端末を家に持ち帰ったときの扱い方は学校のタブレットを家に持ち帰ったら ― 家庭で決めておく4つのことで整理しています。
ステップ2 音と文字が出会う場面を作り、書かせて試さない。高学年になったら、すでに音として知っている語が、文字の形で目に入る機会を増やします。教科書を一緒に眺めて「これ、聞いたことある形だね」と指さす程度で十分です。解説が例に挙げていたのは、絵の横に添えられた zoo を、音の記憶から読んでみるという場面でした。家の中でも、食品のパッケージやゲームの画面、街の看板など、英語が現れる場所は意外にあります。ここでも、書かせて正誤を確かめることはしません。高学年の目標は「書き写す」「例文を参考に書く」であって、白紙から再現することではないからです。
ステップ3 理由を一つ添える習慣を、日本語で作る。全国調査でいちばん落ち込んでいたのは、自分の考えとその理由を、まとまりのある内容で話す場面でした。この形式は、英語以前に「そもそも普段やっているか」という問題でもあります。だから家庭では、日本語で構いません。「今日の給食で一番よかったのは?」と聞いて答えが返ってきたら、「どうして?」ともう一手だけ足す。好きなキャラクターを一人挙げてもらい、理由を一つ言ってもらう。報告書が助言していたのは、メモなしで短い発表を繰り返し、少しずつ文の数を増やしていくというやり方でした。家庭版は、一文の答えに理由の一文を足す、それだけです。慣れてきたら、英語の授業で習った表現でやってみる日を作ってもいい。順番としては、日本語で言えるようになるのが先です。
家庭で試す3つの工夫
家庭で試す3つの工夫
- ① 「意味を聞く」を「一緒に真似する」に置き換える:子どもが英語の表現を口にしたとき、つい「どういう意味?」と尋ねてしまいますが、これは確認であって練習ではありません。代わりに、同じ言い方を親も真似してみます。発音が正確である必要はまったくありません。むしろ親が下手に真似するほうが、子どもは自分の口を動かしやすくなります。小学校の目標は音声に慣れ親しむことですから、親子で声に出すこと自体が目標に沿った時間です。
- ② 「授業以外で英語に触れた」の中身を広く数える:全国調査の設問が例示しているのは、英会話教室だけではなく、外国にいる人と話す、英語で手紙やメールを書く、英語のテレビや動画、ホームページを見る、端末で他者と英語で交流する、といった幅広い活動です。家で英語の動画を見た日も、パッケージの英語を読んでみた日も、この「機会」に入ります。家庭で数え方を広く取っておくと、習い事に通っていないことを引け目に感じにくくなります。
- ③ 中学入学の前に、音のまま持ち越してよいと伝える:改訂の課題として最初に挙げられていたのは、音声中心で学んだことが中学校の段階で音声から文字への学習に円滑に接続されていない、という点でした。裏を返せば、この接続は多くの子どもにとって難所だということです。小学校で扱った語は中学校でも繰り返し学ぶことが期待されている中心的語彙だとされていますから、「小学校のうちに完璧にしておく」必要はありません。書けない語があっても、聞けば分かるならそれは持ち越してよい財産だと、家庭が先に言っておくと、中学の最初のつまずきが「自分は英語ができない」という結論に直結しにくくなります。
声かけの言い換え
声かけの言い換え例
「この単語、書ける?」→ 高学年の目標は「書き写す」「例文を参考に書く」まで。白紙からの再現を求めると、目標より一段難しい課題になる。
「これ、教科書のどこに出てきた?」→ すでに音で知っている語を文字と結び直す作業になり、学校の設計と同じ向きに働く。
「発音が違うよ、もう一回」→ 声に出すこと自体をためらわせる。慣れ親しむ段階で回数が減るのは、いちばん避けたい。
「へえ、そう言うんだ。お母さんも言ってみる」→ 親が真似すると、子どもがもう一度口を動かす。回数が増えることが、この段階の目的にかなう。
家庭で確認するチェックリスト
家庭で確認するチェックリスト
- 3・4年と5・6年で学校の英語の中身が違うことを知っている。
- 「600〜700語」を、全部覚えるべき課題として受け取っていない。
- 英語に触れた時間のあとに、意味の確認を挟んでいない。
- 書けるかどうかを試すより、音で出会う回数を優先している。
- 「どうしてそう思ったの?」と理由を尋ねる場面が、日本語の会話の中にある。
気をつけたいこと・相談先
家庭の工夫だけで抱え込まないために
ここで紹介したのは、学習指導要領の解説と全国調査から読み取れる一般的な考え方です。実際の授業の進め方や扱う教材、家庭に求められることは、学校や自治体によって違います。学校からの案内や担任の先生の説明と食い違う場合は、目の前の学校の説明が優先します。また、この記事は特定の教材や学習サービスをすすめるものではありませんし、英語力の伸びを保証するものでもありません。ほかの子と比べて進んでいるか遅れているかを判定する材料としては使わないでください。
英語の学習でつまずきが目立つとき、その背景に読み書きそのものの難しさが関わっている場合があります。文字と音を結びつける作業に強い困難がある、日本語の読み書きでも同じような様子が見られる、練習の量に対して定着が極端に進まない、といったことが続くようであれば、家庭の工夫だけで解決しようとせず、担任の先生や特別支援教育コーディネーターに相談する選択肢があります。学校を通じて、自治体の教育相談窓口や教育支援センターにつながる道もあります。ここで大切なのは、家庭で判断や診断をしないことです。気になる様子を、いつどんな場面で見られたかという事実の形で伝えるだけで十分です。
家庭の言語環境が日本語だけではない場合や、保護者自身が英語に苦手意識を持っている場合も、それが子どもの学習の妨げになるわけではありません。この記事で挙げた関わり方は、親が英語を話せることを前提にしていません。むしろ、親が上手でないほうが子どもは気楽に声を出せる場面もあります。学習の進め方に迷うときは、まず学校に、授業でいまどのあたりを扱っているかを尋ねるところから始めるのが確実です。家庭学習の土台づくり全般については、家庭学習の土台のほかの記事もあわせてご覧ください。学習指導要領や調査結果は改訂・更新により変わることがあるため、最新の情報は文部科学省・国立教育政策研究所などの公式サイトでご確認ください。
出典・参考
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編」(平成29年7月)
- 国立教育政策研究所「令和8年度 全国学力・学習状況調査 報告書【中学校/英語】」(令和8年8月3日公表)
- 国立教育政策研究所「令和8年度 全国学力・学習状況調査 報告書【質問調査】」(令和8年8月3日公表)
- 文部科学省「令和6年度『英語教育実施状況調査』の結果について」(調査基準日 令和6年12月1日)
- 文部科学省「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」(30文科初第1845号・平成31年3月29日)
この記事について
本記事は、小学校の外国語活動・外国語科について公的機関が公表している一般的な情報を整理したものであり、特定の学校の指導内容や特定の教材・学習サービスを評価したり推奨したりするものではありません。また、英語力の向上を保証するものでも、学習の遅れや困難を判定するものでもありません。授業で扱う内容や進度、家庭に依頼される事項は学校や自治体によって異なるため、実際の運用については通っている学校の説明が優先します。読み書きの困難など気になる様子が続く場合は、担任の先生や学校、自治体の教育相談窓口にご相談ください。学習指導要領や各種調査の結果は改訂・更新により変わることがあるため、最新の情報は文部科学省・国立教育政策研究所などの公式サイトでご確認ください。