3行まとめ
- 常用漢字表と文化庁の指針は、手書きの細部(とめ・はね・はらいなど)に違いがあっても、その字の骨組みが同じであれば誤りとはみなされないという考え方を示しています。一方で学校の書写指導には別のねらいがあり、両者は矛盾しません。
- 学習指導要領の解説は、漢字は書きの方が習得に時間がかかるとして、書きの指導に2学年間かける設計にしています。第6学年の配当漢字は中学校第2学年までの間で確実にする、とされています。
- 令和7年度の全国学力・学習状況調査で小学校の漢字の書き取りの誤答に多かったのは、同じ読みの別の字でした。家庭の練習は「字を何回書くか」より「文の中で使えるか」に寄せると噛み合います。
この記事でわかること
- とめ・はね・はらいの違いを、国はどこまで「誤り」としていないのか
- 学校が書写の時間に字形を扱う理由と、家庭の関わりとの切り分け方
- 漢字の書きが「2学年かけて」身に付ける設計になっていること
- 全国学力・学習状況調査が映す、実際の間違い方と練習の置き場所
「何回書いたら覚えるの」と言ってしまう夜
漢字の練習は、家庭学習のなかでもっとも回数の多い作業のひとつです。宿題の定番であり、成果が○×の形で目に見え、親にも中身がわかる。だからこそ、家庭で口出しが起きやすい領域でもあります。書き取りノートを開けば、どこが違うかはすぐに指摘できます。指摘できるので、つい指摘してしまう。そしてその指摘は、多くの場合「はねていない」「とめていない」「線が突き出ている」といった、字の細かい部分に向かいます。
ここで起きやすいのが、二種類のすれ違いです。ひとつは、子どもの側から見ると「合っているつもりの字」を否定されている、という感覚が積み重なること。骨組みとしては読める字を書いているのに、細部で×が付く。何度書き直しても違う場所を指摘される。こうなると、練習そのものが「正解を当てる作業」に変わり、書くこと自体を避けるようになります。もうひとつは、親の側の徒労感です。同じ字を10回書かせても、次の週にはまた同じところで間違える。「何回書いたら覚えるの」という言葉は、たいていこの徒労感から出てきます。
けれど、間違えた回数ではなく、間違え方をよく見てみると、状況が少し違って見えることがあります。骨組みは合っているが細部だけがちがう間違い。読みは合っているが、文脈に合わない別の字を書いてしまう間違い。そもそも字が思い出せていない間違い。この三つは、原因も対処もまったく違います。ところが家庭では、どれも同じ赤ペンで、同じ「書き直し10回」で処理されがちです。まずは、どこまでが本当に直すべき違いなのか、というところから見ていきます。
とめ・はねは、どこまでが「誤り」なのか
出発点になるのは、内閣告示として示されている常用漢字表です。平成22年内閣告示第2号として告示された常用漢字表には「(付)字体についての解説」という部分があり、その「第2 明朝体と筆写の楷書との関係について」の冒頭で、次のように述べられています。常用漢字表では個々の漢字の字体(文字の骨組み)を明朝体のうちの一種を例に用いて示したが、このことは、これによって筆写の楷書における書き方の習慣を改めようとするものではない。字体としては同じであっても、明朝体の字形と筆写の楷書の字形との間には、いろいろな点で違いがある。それらは、印刷文字と手書き文字におけるそれぞれの習慣の相違に基づく表現の差と見るべきものである、と。
そのうえで解説は、「2 筆写の楷書では、いろいろな書き方があるもの」として、具体的な字を分類して並べています。長短に関する例として「雨」「戸」「無」。方向に関する例として「風」「比」「仰」「主」「言」「年」。つけるか、はなすかに関する例として「又」「文」「月」「条」「保」。はらうか、とめるかに関する例として「奥」「公」「角」「骨」。はねるか、とめるかに関する例として「切」「改」「酒」「陸」「木」「来」「糸」「環」。さらに「その他」として「令」「外」「女」が挙げられています。つまり、これらの字については、手書きの楷書として複数の書き方があると国の文書が明示しているわけです。
この考え方をより広く知ってもらうために出されたのが、文化審議会国語分科会が平成28年2月29日にまとめた「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」です。文部科学省が教育課程部会の国語ワーキンググループに参考資料として配布した概要によれば、この指針は、常用漢字表の「(付)字体についての解説」の内容をより分かりやすく周知し、現在社会で生じている問題を解決しようとするものだと位置づけられています。ここで言う「現在社会で生じている問題」として、概要は二つを挙げています。ひとつは、文字の細部に必要以上の注意が向けられ、本来であれば問題にならない違いによって漢字の正誤が決められる傾向が生じていること。その例として、手書きの楷書では本来「木」の縦画はとめてもはねてもよいのに、一方だけが正しいといった認識が広がっていることが示されています。もうひとつは、手書き文字と印刷文字との違いが理解されにくくなっていることです。
指針の要点として、概要は二つの文を掲げています。手書き文字と印刷文字の表し方には習慣の違いがあり、一方だけが正しいのではないこと。そして、字の細部に違いがあっても、その漢字の骨組みが同じであれば、誤っているとはみなされないということ。指針本体は常用漢字表2,136字すべてについて印刷文字と手書き文字のバリエーションを例示し、Q&Aの形で説明を加える構成になっています。概要に載っているQ42は、ある金融機関の窓口で「令」を小学校で習った形で書いたところ、明朝体と同じ形に書き直すよう言われた、という質問です。これに対する答えは「本来であれば、書き直す必要のないものです」で始まり、手書き文字の字形と印刷文字の字形は、それぞれの習慣に基づく字形の相違であって別の字ではないこと、本来、印刷文字の形のとおりに手書きする必要はなく、このことは社会全体で共有される必要があることが述べられています。
ここまでを家庭の言葉に翻訳すると、こうなります。家で子どものノートを見ていて、はねているかいないか、線が少し長いか短いか、点がくっついているか離れているかが気になったとき、その多くは、国の文書のうえでは「どちらでもよい」と整理されている範囲に入っている可能性がある、ということです。少なくとも、そこで×を付けて書き直しを命じる根拠は、常用漢字表そのものからは出てきません。
それでも学校が字形を見るのは、なぜか
ここで気になるのは、では学校のテストで細部に×が付くのはどういうことか、という点です。この疑問は指針が公表された当時にも大きく取り上げられ、国会でも質疑が行われました。文部科学省が国語ワーキンググループの参考資料としてまとめた、平成28年3月10日の参議院文教科学委員会の議事要旨(抄)には、そのやりとりが残っています。
質問に立った議員は、指針の公表によって教育現場が混乱し、保護者からも懸念の声が上がっていると指摘しました。これに対して当時の文部科学大臣は、今回報告された指針(案)は従前からの常用漢字表の考え方に沿って字形の例示の充実を図ったものであり、学校教育における漢字指導については常用漢字表およびこの指針において「別途の教育上の適切な措置に委ねる」とされている、と答えています。そのうえで、今回の指針によってこれまでの学校教育における漢字指導の考え方が変更されるものではなく、児童の学習に混乱が生じないよう、従来どおり、いわゆる教科書体を標準として指導を行うことを求めていくと述べました。
さらに答弁は、小学校段階では学習指導要領において書写の指導の際に「点画の長短や方向、接し方や交わり方などに注意して、筆順に従って文字を正しく書くこと」等とされており、漢字の読み書きの指導と書写の指導とが一体となって行われている実態があることも十分に踏まえる必要がある、と続きます。そして評価については、児童生徒の書く文字を評価する際には従来から常用漢字表の考え方を踏まえた柔軟な評価をするように促してきたとしたうえで、文字を一点一画、丁寧に書く指導が行われる場合など、指導の場面や状況に応じて、指導した字形に沿った評価が行われる場合もあることはもちろんである、と述べられています。
この整理は、家庭にとってとても実用的です。国の文書が示している「細部の違いは誤りではない」という考え方と、学校の授業のなかで「丁寧に書く」ことを指導し、その場面では指導した字形で評価することは、別のレイヤーの話であって、どちらかが間違っているわけではないのです。実際、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編の書写に関する部分を読むと、点画の始筆から送筆、さらに終筆(とめ、はね、はらい)までを確実に書き、筆順に従って点画を積み重ねながら文字の形を形成していく過程を意識して書くことが大切だと説明されています。さらに、点画相互の接し方や交わり方、長短や方向は文字の正誤に関わることから、漢字に関する事項の指導と関連を図りながら指導することが望ましいとも述べられています。例として挙げられているのは「川」で、仮に一画目が他の二画に比べて長すぎたり、その方向が縦ではなく横を向いていたりすると、その文字は「川」としては認識されにくい、というものです。
つまり学校が字形を扱うのは、細かさそのものが目的ではなく、読み手に伝わる字を書けるようにするためであり、その延長線上で丁寧に書く態度を育てようとしているわけです。だとすれば、家庭の役割は学校と同じ厳しさで細部を見張ることではありません。家庭で赤を入れる基準は「その字として読めるかどうか」に置き、細部の丁寧さは学校の書写の時間に委ねる。この分担にしておくと、夜の家庭学習から不要な摩擦がかなり減ります。もし学校で細部の指導方針が示されている場合は、その方針に沿って家庭でも声をかければ十分です。
漢字の書きは「2学年かけて」の設計になっている
もうひとつ、家庭の焦りを和らげてくれる事実があります。それは、小学校で学ぶ漢字の「書き」が、そもそも一度で身に付くことを前提にしていない、という点です。
小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編は、漢字の指導事項を説明する箇所で、こう述べています。漢字の読みと書きについては、書きの方が習得に時間がかかるという実態を考慮し、書きの指導は2学年間という時間をかけて、確実に書き、使えるようにすることとしている。読みについては当該学年に配当されている漢字の音読みや訓読みができるようにする、とされ、読みと書きで求める時期をずらす構成になっています。
この設計は、指導事項の書き方そのものに現れています。たとえば第5学年及び第6学年では、学年別漢字配当表の当該学年までに配当されている漢字を「読む」こと、当該学年の前の学年までに配当されている漢字を「書き、文や文章の中で使う」こと、そして当該学年に配当されている漢字を「漸次書き、文や文章の中で使う」ことが示されています。第3学年及び第4学年も同じ構造で、第1学年及び第2学年では、第1学年の漢字を読み、漸次書き、文や文章の中で使う、第2学年では第1学年の漢字を書いて使いながら、第2学年の漢字を漸次書いて使う、とされています。「漸次」という言葉が、一年のうちに少しずつ、という時間の幅を表しています。
さらに解説は、第6学年に配当された漢字の書きについて、当該学年において漸次書き、文や文章の中で使うとともに、中学校の第2学年までの間で確実に身に付け、使えるようにすることになる、と述べています。小学校の最後に習う漢字は、中学校2年生までを射程にした習得の計画になっているということです。
字数の全体像も押さえておくと、見通しが立てやすくなります。平成29年告示の学年別漢字配当表は、第1学年80字、第2学年160字、第3学年200字、第4学年202字、第5学年193字、第6学年191字の計1,026字です。平成20年告示の1,006字から20字増えていますが、これは都道府県名に用いる漢字20字を第4学年に加えたことによるものです。同時に、児童の学習負担に配慮して32字の配当学年が移されており、たとえばそれまで第4学年だった21字が第5学年へ、第5学年だった9字が第6学年へ移行しています。国の側でも、どの学年にどれだけ載せるかは学習負担を見ながら調整している、ということです。
この節を家庭の実感に引き寄せると、こう言えます。習った週のうちにその学年の漢字を全部書けるようになっていなくても、それは設計から外れた状態ではありません。読める字が先に増え、書ける字があとから追いつく。その追いつく期間として、学校は2学年ぶんの時間を見込んでいます。一晩で覚えさせようとする練習計画は、そもそも学校の想定より急な坂を登らせていることになります。
調査が映す、実際の間違い方
では、子どもたちは実際にどう間違えているのでしょうか。ここで手がかりになるのが、文部科学省と国立教育政策研究所が毎年実施している全国学力・学習状況調査です。令和7年度の小学校国語は、対象学校数18,466校、対象児童数948,862人。14問の平均正答率は67.0%でした。
このなかに、漢字の書きを直接見る設問があります。大問2の設問四で、伝統工芸品を推薦するちらしを書くという場面のなかで、平仮名で書かれた下線部を漢字に書き直す、という出題です。出題の趣旨は「学年別漢字配当表に示されている漢字を文の中で正しく使うことができるかどうかをみる」とされています。単独で字を思い出せるかではなく、文の中で正しく使えるか、という設定になっている点がまず重要です。
結果は、下線部アの「このみ」を「好(み)」と書けた児童が81.8%、無解答が7.1%。下線部イの「あつい日」を「暑(い)」と書けた児童が72.3%、無解答が4.2%でした。報告書は、正答以外の解答について具体的に挙げています。アでは「興」「混」「実」「個」などと解答している児童が見られた。イでは、同じ読み方をする「熱」「厚」と解答している児童が見られたことから、同音異義語に注意して書くことに課題があると考えられる、また「温」と解答している児童も見られた、と整理されています。
この誤答の内訳は、家庭の練習を考えるうえで示唆的です。ここに並んでいるのは、字を思い出せなかった痕跡というより、読みは合っているのに、その文脈に合う字を選べなかった痕跡です。「あつい」という読みに対して「熱」も「厚」も「暑」も候補になり、そのなかから文に合うものを選ばなければならない。この選ぶ作業は、同じ字を10回書く練習では鍛えられません。書き取りの反復で増えるのは、字を再現する速さと正確さであって、候補から選ぶ力ではないからです。
報告書自身も、学習指導に当たっての留意点として、書く目的や意図に応じて自分の思いや考えを伝えるためにも適切に漢字を使い分ける力が身に付くようにすることが大切だとし、特に今後はICT端末を使って文章を書く機会が増えることも予想されるため、同音異義語から文章に合う漢字を選ぶ力を付けていくことも大切であると述べています。手書きの機会が減り、変換候補から選ぶ場面が増えるほど、「選ぶ」側の力の比重が上がっていく、という見立てです。実際、中学校国語では、手紙の下書きを見直して誤って書かれている漢字を見付けて修正する設問が出題され、変換した漢字として適切なものを選択する設問も置かれています。
あわせて、無解答率にも目を向けておきたいところです。アの無解答は7.1%、イは4.2%。つまり、書かずに出した子どもより、何かしら書いたうえで別の字になった子どものほうがずっと多い。書こうとはしている、という前提で見たほうが実態に近いということです。家庭で「やる気がない」と受け取ってしまうと、この事実を見落とします。
家庭の4ステップ
ここまでの三つ——細部の正誤の線引き、2学年かけるという時間設計、そして誤答が同じ読みの字に集まるという実態——を家庭の手順に落とすと、次の4ステップになります。所要時間は、ふだんの丸つけに数分足す程度です。
① まず「読めるかどうか」で仕分ける。ノートを見るとき、いきなり赤ペンを持たずに、書かれた字が読めるかどうかだけを先に見ます。読める字は、この段階でいったん○にします。常用漢字表の解説が「筆写の楷書ではいろいろな書き方がある」として並べている範囲——長短、方向、つけるかはなすか、はらうかとめるか、はねるかとめるか——は、ここで通過させて構いません。仕分けを一段はさむだけで、赤の量は目に見えて減ります。
② ×は「骨組みがちがう字」に絞る。直す対象は、別の字になってしまっているもの、部首や構成要素が抜けているもの、そして文脈に合わない字を選んでいるものに限ります。学習指導要領の解説が挙げていた「川」の例のように、点画の長短や方向が原因でその字として読めなくなっている場合も、ここに入ります。逆に言えば、読めているのに細部が気になる字は、家庭では直さない。気になる場合は「学校ではここを丁寧にって言われた?」と一言たずねて、学校の指導に合わせるのが安全です。
③ 覚え直しは、字ではなく短い文で。間違えた字が出てきたら、その字だけを10回書かせるかわりに、その字を含む短い文を三つ書いてもらいます。とくに効くのが、同じ読みの字を並べる形です。「暑い日」「熱いお茶」「厚い本」を続けて書くと、読みが同じでも使い分けがあることが体感として入ります。調査の誤答が同音の字に集まっていたことを思い出してください。直したいのは字の記憶ではなく、選び方のほうです。
④ 週に一度、家の中で使う場面を作る。指導事項が繰り返し「文や文章の中で使う」と書いていることに合わせて、ドリル以外の場所で漢字を使う機会を作ります。買い物メモ、その週の予定表、祖父母への短い手紙、冷蔵庫に貼る「今日の当番」。習ったばかりの字をひとつ混ぜてもらうだけで構いません。書き取りノートの外に出た瞬間に、漢字は「覚えるもの」から「使うもの」に変わります。間違い直しとの向き合い方全般については答え合わせと間違い直しを、親子のバトルにしない、文章の形で書く場面については読書感想文や作文が進まない時、家庭でできる「書く前」の手伝いもあわせてご覧ください。
家庭で試す3つの工夫
家庭で試す3つの工夫
- ① 書く前に、読みを先に通す:ドリルに入る前に、その回の漢字を声に出して読むだけの時間を1〜2分取ります。学習指導要領が読みを当該学年、書きを2学年かけてと分けているのと同じ順序です。読める字が増えていると、書く時の負担が下がり、思い出せずに止まる回数も減ります。読みだけなら移動中や食卓でもできます。
- ② 間違えた字は「10回」ではなく「3つの文」:同じ字を並べて書く練習は、字形の再現には効きますが、選び方には届きません。間違えた字を使った短い文を三つ作ってもらう形に置き換えます。文が思いつかないときは、親が場面だけ渡す(「学校のことで一つ」「食べもので一つ」)と動きやすくなります。
- ③ 丸つけの印を2種類にする:赤ペン1色ですべてを直すのをやめ、「直す印」と「そのままでよい印」を分けます。骨組みがちがう字にだけ直す印を付け、細部が気になるだけの字には何も付けない。子どもの側に「どこを直せばいいか」が一目で伝わり、全部を否定された感覚が残りにくくなります。
声かけの言い換え
声かけの言い換え例
「何回書いたら覚えるの」→ 回数の問題として片づけてしまい、間違い方の中身が見えないまま終わる。
「この字、どこで使う言葉だっけ?」→ 文の中で使う場面に戻す問いになり、選び方の練習につながる。
「ここ、はねてないでしょ」→ 国の整理では「どちらでもよい」に入る違いのことがあり、直す根拠が弱い。
「読めるから大丈夫。こっちの字は形が変わってるね」→ 通す部分と直す部分が分かれ、子どもが直す場所を絞れる。
漢字練習のチェックリスト
家庭で確認するチェックリスト
- 赤ペンを持つ前に、その字が読めるかどうかで一度仕分けている。
- 直す対象を、別の字になっているものと文脈に合わない字に絞っている。
- 間違えた字を、同じ読みの字と並べて書き分ける機会を作っている。
- ドリル以外の場所(メモ・予定表・手紙)で漢字を使う場面がある。
- その学年の漢字が全部書けていないことを、遅れとして扱っていない。
気をつけたいこと・相談先
家庭の工夫だけで抱え込まないために
ここで紹介したのは、漢字の字形の扱いと家庭での練習についての一般的な考え方です。漢字の習得の速さには個人差が大きく、同じ学年でも進み方が違うのが自然です。テストの点数や、書ける字の数で子どもを評価したり、兄弟姉妹や友だちと比べたりすることは、書くこと自体から遠ざけてしまいます。今週は間違えた字を文の中で使えた、それで十分と考えるくらいの距離感が安全です。また、この記事は特定の教材や練習法を推奨するものではなく、成績の向上を保証するものでもありません。
とめ・はね・はらいの扱いについては、家庭と学校で前提がずれると子どもが板ばさみになります。この記事で紹介した国の整理は、学校の採点方針を否定するために使うものではありません。文部科学省の答弁が示していたとおり、指導の場面や状況に応じて、指導した字形に沿った評価が行われる場合もあります。テストの採点や直しの指示について気になることがあるときは、まず担任の先生に、どんなねらいで見ているのかをたずねてみるのが確実です。書写の時間のねらいを知ると、家庭で通してよい部分と合わせておきたい部分がはっきりします。
一方で、家庭の工夫を重ねても、文字を書くこと自体に強い負担が続く、字の形を思い出すことが極端に難しい、音読はできるのに書くとなると手が止まる、書く量が増えると疲れ方が大きいといった様子が長く続く場合は、一人で抱え込まないことも大切です。文部科学省が令和4年12月に公表した「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果」では、学級担任等の回答から「読む」又は「書く」に著しい困難を示すとされた児童生徒の割合は、小学校・中学校で3.5%(95%信頼区間3.2%〜3.7%)と推定されています。ただしこの調査は学級担任等による回答に基づくもので、専門家チームによる判断や医師による診断によるものではないと明記されており、この数値から個々の子どもの状態を判断することはできません。気になるときは、まず担任の先生に学校での様子をたずねるところから始められます。学校にはスクールカウンセラーが配置されている場合があり、校内委員会や通級による指導といった仕組みもあります。学校以外では、各自治体の教育相談窓口や教育センターに相談する選択肢もあります。家庭学習の土台づくり全般については、家庭学習の土台のほかの記事もあわせてご覧ください。調査結果や制度は年度により変わることがあるため、最新の情報は文部科学省・文化庁・国立教育政策研究所などの公式サイトでご確認ください。
出典・参考
- 文化庁「常用漢字表」(平成22年内閣告示第2号)「(付)字体についての解説」
- 文化審議会国語分科会「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」(平成28年2月29日・文化庁)
- 文部科学省 中央教育審議会 教育課程部会 国語ワーキンググループ 参考資料「学校教育における漢字指導の在り方について」(平成28年3月14日)
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編」
- 国立教育政策研究所「令和7年度 全国学力・学習状況調査 報告書【小学校】国語」
- 国立教育政策研究所「令和7年度全国学力・学習状況調査 小学校調査 問題別調査結果[国語]」
- 文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」(令和4年12月13日)
この記事について
本記事は、漢字の字形の扱いと家庭での漢字練習について、公的機関が公表している一般的な情報を整理したものであり、特定の教材や練習法を推奨したり、成績の向上を保証したりするものではありません。また、学校のテストの採点方針を評価したり、学習の困難について診断を行ったり、その必要性を判断したりするものでもありません。漢字の習得の進み方には個人差があります。文字を書くこと自体に強い負担が続くなど気になることがあるときは、学校の先生やスクールカウンセラー、自治体の教育相談窓口にご相談ください。学習指導要領や調査結果、告示の内容は改訂・年度により変わることがあるため、最新の情報は文部科学省・文化庁・国立教育政策研究所などの公式サイトでご確認ください。