3行まとめ
- 令和7年度の全国学力・学習状況調査で、小学6年生の理科の平均正答率は57.3%。問題形式で見ると短答式69.8%に対し記述式は45.3%で、言葉を答えるより、考えを書いて説明するほうに差が出ていた。
- 児童への質問では「理科の授業で、答えがどうなるか自分で予想(仮説)を考えている」が85.7%。報告書は、これに否定的だったグループのほうが該当設問の正答率が低く、無解答率も高いと示している(相関であり、因果ではない)。
- 一方「自然の中や日常生活で理科に関する疑問を持ったり問題を見いだしたりしている」は69.1%と、授業の中を尋ねた項目より低い。家庭に開いているのは、この差のほうです。
この記事でわかること
- 最新の全国調査で、小学6年生の理科がどこまでできていたのか
- 覚えて答える問いと、説明して書く問いのどちらに差が出ていたか
- 「予想を考えている」という回答と正答率の関係を、どこまで読んでよいか
- 学習指導要領が、学年ごとに育てようとしている理科の力
- 家庭で「どうなると思う?」を使うときの手順
赤いシートの向こう側で起きていること
理科のテストが近づくと、家庭の勉強は用語を覚える作業になりがちです。めしべ、おしべ、受粉。乾電池、直列、並列。赤いシートで隠して、言えたら丸をつける。親も付き合いやすい形です。
ただ、返ってきた答案を見ると、用語は書けているのに点が伸びていないことがあります。「どうしてそうなると考えたのか、書きましょう」という問いで手が止まっている。覚える作業をどれだけ積んでも、その欄は埋まりません。
最新の調査が映す、小学6年生の理科
全国学力・学習状況調査は毎年行われますが、理科が加わるのは数年に一度です。令和8年度の調査に理科はなく、小学校理科の最新の結果は令和7年度のものになります。令和7年4月14日から17日にかけて、小学6年生と中学3年生のほぼ全員が受けました。
小学校理科の平均正答率は57.3%。17問中、平均で9.7問という結果でした。内容の領域では「地球」が66.9%と高く、「エネルギー」が46.8%で最も低い。目に見える現象を扱う単元と、電気のように仕組みが直接見えない単元とで、20ポイントの開きがあります。
もう一つ、問題の形式別の数字があります。短く答える短答式は69.8%、選択式は54.9%、そして記述式は45.3%でした。知っている言葉を答える問いより、考えを言葉にして説明する問いのほうが低い。答案の「書きましょう」で止まっていたのは、その家庭だけの話ではありませんでした。
「予想を考えている」と答えた子のほうが
同じ調査には、児童本人への質問もあります。令和7年度から加わった質問の一つが「理科の授業では、問題に対して答えがどのようになるのか、自分で予想(仮説)を考えていますか」でした。小学6年生の回答は、当てはまる49.6%、どちらかといえば当てはまる36.1%。肯定的な回答は合わせて85.7%です。
報告書は、この質問への回答と、実際の設問の正答状況をつき合わせています。取り上げられているのは、赤玉土の粒の大きさで水のしみ込み方がどう変わるかを、示された結果から予想して選ぶ問題でした。この問題自体は約93%の児童が正しい時間を選べています。そのうえで報告書は、先の質問に否定的に回答したグループのほうが、この設問の正答率が低く、無解答率も高いと示しています。
読み方には注意が要ります。これは相関であって、予想を考えさせれば点が上がるという因果ではありません。理科が分かっている子ほど予想も立てやすい、という逆向きの説明も同じデータで成り立ちます。それでも、覚える量とは別のところに、正答率と一緒に動いている習慣があるとは言えます。
この回で課題として挙げられたのは、電気が通る回路のつくり方を理解し、表現することでした。持ち手が電気を通さない素材だと回路が切れる、という部分でつまずいた児童が多かったと分析されています。用語ではなく、仕組みを説明するところです。
授業の中と、暮らしの中で開いている差
児童への質問を並べてみると、学校の中の様子はかなり良好です。「理科の授業では、観察や実験をよく行っていますか」は肯定的な回答が92.5%、「理科の授業の内容はよく分かりますか」は88.8%、「理科の勉強は好きですか」も80.1%ありました。
ところが、一つだけ低い項目があります。「自然の中や日常生活、理科の授業において、理科に関する疑問を持ったり問題を見いだしたりしていますか」は69.1%でした。授業の中の活動を尋ねた項目が9割前後で並ぶ中、暮らしまで含めて尋ねたこの項目だけが7割を切っています。前年度は83.2%で、報告書には前回より下がったことを示す矢印がついていますが、下がった理由までは書かれていません。
ここは、学校が用意しにくく、家庭には転がっている部分です。洗濯物が今日は早く乾いた、月の形が先週と違う、冷えたコップが濡れている。授業の予想は先生が場面を用意してくれますが、暮らしの「なぜ」は、その場にいる人が拾わないと消えます。
学年ごとに、育てようとしている力が違う
小学校の理科が何を目指しているかは、学習指導要領に書かれています。教科の目標は「自然に親しみ、理科の見方・考え方を働かせ、見通しをもって観察、実験を行うことなどを通して、自然の事物・現象についての問題を科学的に解決するために必要な資質・能力」を育てること。知識や技能と並んで、「観察、実験などを行い、問題解決の力を養う」ことが柱に置かれています。
その問題解決の力は、学年ごとに割り振られています。解説には、第3学年は主に差異点や共通点を基に問題を見いだす力、第4学年は主に既習の内容や生活経験を基に根拠のある予想や仮説を発想する力、第5学年は主に予想や仮説を基に解決の方法を発想する力、第6学年は主により妥当な考えをつくりだす力、と示されています。
つまり4年生あたりから、「なんとなくそう思う」ではなく「前にこうだったから、たぶんこうなる」という言い方が求められ始めます。家庭で予想を聞くときに理由まで尋ねるのは、この流れに沿った関わり方です。なお解説は、これらの力は4年間を通して育てていくものだとも書き添えています。
家庭で試す3つの工夫
- 確かめる前に、一度だけ予想を聞く:宿題の実験の説明でも料理でも、結果が分かる前に「どうなると思う?」と一度だけ挟みます。当たりはずれは評価しません。予想を言葉にしてから結果を見ると、見る目的ができます。
- 理由まで聞いて、言い直しを手伝う:「なんとなく」と返ってきたら、「前に似たこと、なかった?」と足します。4年生からは、既習の内容や生活経験を基にした予想が求められ始めます。うまく言えなくても、探した時点で十分です。
- 暮らしの中の「なぜ」を、その日に閉じない:答えをすぐ教えず、「調べてみようか」と保留にします。日常の中で疑問を持つ項目は、授業の中の項目より低く出ていました。長い休みなら、自由研究を、親が抱え込まずに進める手伝い方の進め方につなげられます。
声かけの言い換え例
- 「ここ、テストに出るから覚えて」→覚える作業だけが勉強になり、説明を書く問いに向かいにくくなる。
- 「これ、どうなると思う?」→予想を言葉にする機会になり、結果を見る目的ができる。
- 「そんなわけないでしょ」→予想を出すこと自体をやめてしまう。
- 「どうしてそう思ったの?」→理由を言う練習になり、根拠のある予想に近づく。
家庭で確認するチェックリスト
- 結果を見る前に、予想を言葉にする場面が一度ある。
- 予想が外れたことを、間違いとして扱っていない。
- 「どうしてそう思ったの?」と理由を聞いている。
- 暮らしの中で出た「なぜ」を、その場で打ち切っていない。
- 用語を覚えるところで、理科の勉強を終わりにしていない。
家庭の工夫だけで抱え込まないために
ここで挙げた数字は、小学6年生を対象にした全国の集計です。他の学年にそのまま当てはまるものではなく、家庭ごとの目標値でもありません。学校からの案内と食い違う場合は、目の前の学校の説明が優先します。予想と正答率の関係も、報告書が示したのは相関であって、家庭で予想を聞く回数を増やせば点が上がると読める性質のものではありません。
家庭で確かめるときは、火や薬品、刃物を使う実験は避けてください。理科室で先生の指示のもとに行うことを、家庭でやり直す必要はありません。台所や窓辺で見える範囲までで足ります。
理科が苦手という状態が長く続く、授業で何をしたか話せない日が重なるといったときは、家庭の関わり方だけの問題ではないことがあります。担任の先生や学校に相談する選択肢があります。支援の仕組みは勉強のつまずきを家庭だけで抱えないために ― 学校の相談窓口と支援の仕組みで整理しています。
出典・参考
- 国立教育政策研究所「令和7年度 全国学力・学習状況調査 報告書 結果概要(教科調査抜粋版)」
この出典で確認した記述
「(5) 小学校理科」の頁に、平均正答率57.3%、平均正答数9.7問/17問、中央値10.0問、標準偏差3.8問、最頻値12問と示されていること。分類・区分領域別集計結果として「エネルギー」を柱とする領域46.8%(4問)、「粒子」を柱とする領域51.5%(6問)、「生命」を柱とする領域52.2%(4問)、「地球」を柱とする領域66.9%(6問)、評価の観点別に知識・技能55.5%(8問)、思考・判断・表現58.9%(9問)、問題形式別に選択式54.9%(11問)、短答式69.8%(4問)、記述式45.3%(2問)と示されていること。結果のポイントに「赤玉土の粒の大きさによる水のしみ込み方の違いについて、【結果】や【問題に対するまとめ】を基に、他の条件での結果を予想して、表現することができていた」「電気が通る回路のつくり方について理解し、表現することに課題がある」と記されていること。続く頁の大問1(3)の分析に「約93%の児童が2を選ぶことはできている」とあり、児童質問調査〔68〕「理科の授業では、問題に対して答えがどのようになるのか、自分で予想(仮説)を考えていますか」とのクロス集計について「この質問に否定的に回答したグループの方が、大問1(3)の正答率が低く、無解答率も高い」(相関係数0.164)と記されていること。大問2(2)の分析に、電気を通さない持ち手が回路の一部に含まれることで回路の一部が切れて電気が通らないということを理解し、表現することができていない児童がいたと考えられる旨が記されていること。本記事の平均正答率・領域別・問題形式別の数値、電気の回路の課題、予想に関するクロス集計の記述は、いずれもこの資料に基づく。 - 国立教育政策研究所「令和7年度 全国学力・学習状況調査 報告書 質問調査」(令和7年8月)
この出典で確認した記述
「10 学習に対する興味・関心や授業の理解度等(理科)」の節(報告書の頁番号 -45- から -47-)に、小学校の令和7年度の回答として次の数値が示されていること。質問61「理科の勉強は好きですか」当てはまる51.8%/どちらかといえば、当てはまる28.3%/どちらかといえば、当てはまらない12.4%/当てはまらない7.4%(肯定的な回答の合計80.1%。令和6年度は53.2%と30.4%で合計83.6%)。質問62「理科の授業の内容はよく分かりますか」52.4%/36.4%/8.3%/2.8%(合計88.8%)。質問66「自然の中や日常生活、理科の授業において、理科に関する疑問を持ったり問題を見いだしたりしていますか」31.9%/37.2%/22.1%/8.7%(合計69.1%。令和6年度は49.3%と33.9%で合計83.2%。前回との比較欄に下向きの矢印)。質問67「理科の授業では、観察や実験をよく行っていますか」(新規)59.8%/32.7%/5.4%/2.0%(合計92.5%)。質問68「理科の授業では、問題に対して答えがどのようになるのか、自分で予想(仮説)を考えていますか」(新規)49.6%/36.1%/10.8%/3.4%(合計85.7%)。本記事の児童質問に関する割合はこの資料に基づき、肯定的な回答の合計は上位2つの選択肢の割合を足したもの。質問66が前年度から下がった理由についての説明は、同資料には記載がない。 - 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編」(平成29年7月)
この出典で確認した記述
付録に収められた小学校学習指導要領第2章第4節理科の「第1 目 標」に「自然に親しみ,理科の見方・考え方を働かせ,見通しをもって観察,実験を行うことなどを通して,自然の事物・現象についての問題を科学的に解決するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す」とあり、(1) 理解と観察、実験などに関する基本的な技能、(2)「観察,実験などを行い,問題解決の力を養う」、(3) 自然を愛する心情や主体的に問題解決しようとする態度、の3つが示されていること。本文に「児童が自然の事物・現象に親しむ中で興味・関心をもち,そこから問題を見いだし,予想や仮説を基に観察,実験などを行い,結果を整理し,その結果を基に結論を導きだすといった問題解決の過程の中で,問題解決の力が育成される」とあること。第4章「(2) 問題解決の力の育成」に「小学校理科では,第3学年では,主に差異点や共通点を基に,問題を見いだす力が,第4学年では,主に既習の内容や生活経験を基に,根拠のある予想や仮説を発想する力が,第5学年では,主に予想や仮説を基に,解決の方法を発想する力が,第6学年では,主により妥当な考えをつくりだす力が問題解決の力として示されている」「これらの問題解決の力は,その学年で中心的に育成するものであるが,該当学年で示した問題解決の力を該当学年のみで育成を目指すものではなく,4年間を通して,これらの問題解決の力を意図的・計画的に育成することを目指すものである」と記されていること。本記事の教科の目標と、学年ごとの問題解決の力についての記述は、この資料に基づく。 - 文部科学省「令和7年度全国学力・学習状況調査の報告書・集計結果について」
この出典で確認した記述
令和7年度全国学力・学習状況調査が「令和7年4月14日(月曜日)~17日(木曜日)」に実施されたこと、「小学校第6学年及び中学校第3学年の全児童生徒を対象とした悉皆方式」であること、教科に関する調査が国語、算数・数学、理科であること、結果が7月14日・7月31日・9月30日の3段階で公表されたことが記されていること。あわせて、国立教育政策研究所「令和8年度 全国学力・学習状況調査 報告書・調査結果資料」(https://www.nier.go.jp/26chousakekkahoukoku/)に掲載されている教科別報告書が小学校の国語・算数、中学校の国語・数学・英語であり、理科が含まれないことを確認した。本記事の「理科が加わるのは数年に一度」「小学校理科の最新の結果は令和7年度のもの」という記述と、調査の実施日・対象は、この2点に基づく。
この記事について
本記事は家庭での工夫を整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や治療の判断に代わるものではありません。研究知見や公的資料は「一つの考え方」として紹介しており、家庭ごとに合う・合わないがあります。お子さんの状態が気になる場合は、専門機関や学校にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。