3行まとめ

  • 「死にたい」は心の危機を知らせるサインとして受け止める。叱ったり話をそらしたりせず、心配していると言葉で伝え、つらさの背景を尋ねて聴く。
  • 自殺について尋ねたことで、死にたい気持ちが強まったという研究結果は見つかっていない。問い詰めず、心配から率直に聞いてよい。
  • 親ひとりで抱えず、学校や相談窓口とつながる。命の危険が差し迫っているときは、ためらわず119番や110番に連絡する。

この記事でわかること

  • 言われた直後の受け止め方(TALKの原則)
  • 「死にたいの?」と尋ねることへの研究の見方
  • 言葉以外に気づきたい変化と、自傷への向き合い方
  • 避けたい返し方とその言い換え
  • 保護者も夜間・休日に相談できる窓口

「消えたい」とつぶやいた夜

中学2年の娘が、部活の話の途中で「もう全部いやだ。消えたい」と言って自分の部屋に戻った。母親は「何言ってるの」と言いかけて、言葉をのみこんだ。翌朝はいつもどおり登校していったが、あれは冗談だったのか、聞き返したほうがよかったのか、ずっと頭から離れない。

「死にたい」「消えたい」という言葉を聞いた親が、聞かなかったことにしたくなるのは自然な反応です。ただ、その言葉は、子どもが今のつらさを誰かに知らせようとした結果かもしれません。冗談に聞こえても聞き流さず、改めて向き合うことが最初の一歩になります。

小中高生の自殺は過去最多が続いている

厚生労働省と警察庁の「令和7年中における自殺の状況」(2026年3月公表)によると、2025年の小中高生の自殺者数は538人で、前年から9人増え、統計のある1980年以降で最も多くなりました。内訳は小学生10人、中学生172人、高校生356人です。全体の自殺者数が19,188人と前年より減ったなかで、子どもは増えています。

数字を挙げたのは不安をあおるためではなく、どの家庭にも関わりうることとして知っておくためです。文部科学省の生徒指導提要は、子どもの自殺の特徴を、死を求める気持ちと生きたいと願う気持ちのあいだで激しく揺れ動く「両価性」にあるとしています。「死にたい」という言葉は、揺れている心の叫びとして受け止める、という見方です。

「死にたい」と言われたら、まず何をすればいいですか

話をそらさずに「心配している」と言葉で伝え、つらさの背景を尋ねて、最後まで聴くことです。生徒指導提要(改訂版、2022年)は、自殺の危険に気づいたときの対応の参考として「TALKの原則」を紹介しています。Tell(心配していることを言葉に出して伝える)、Ask(「死にたい」と思うほどつらい気持ちの背景にあるものについて尋ねる)、Listen(絶望的な気持ちを傾聴する)、Keep safe(安全を確保する。一人で抱え込まず、連携して適切な援助を行う)の4つです。教職員向けの資料ですが、家庭でも手がかりになります。

とくに大切なのが Listen です。提要は、話をそらしたり、叱責や助言などをしたりせずに、訴えに真剣に耳を傾けることを求めています。「そんなこと言わないで」「みんなつらいんだから」と返したくなりますが、それでは子どもは話すのをやめてしまいます。提要は、子どもを言いくるめたりコントロールしたりしようと思うのは大人の側の欲だと自覚することも必要だとしています。

TALKの原則を4つの手順で示した図。1、Tell。心配していることを言葉に出して伝える。2、Ask。死にたいと思うほどつらい気持ちの背景を尋ねる。3、Listen。話をそらさず、叱らず、助言を急がずに聴く。4、Keep safe。安全を確保し、一人で抱え込まず学校や窓口とつながる。
図1:生徒指導提要の「TALKの原則」をもとに、家庭向けに言葉を整理したものです。

「死にたいと思っているの?」と聞いてもいいのか

英国キングス・カレッジ・ロンドンの研究者による2014年のレビューは、自殺について尋ねると自殺念慮(死にたいと考えること)が引き起こされるかを調べた、2001〜2013年の13本の論文を検討しました。大人と思春期の子ども、一般の人と危険の高い人のどの研究でも、尋ねられたことで自殺念慮が統計的に有意に増えたという結果はありませんでした。著者らは、自殺について認め、話すことは、むしろ自殺念慮を減らす可能性があるとしています。

ただし、これは研究や臨床の場での質問をまとめたもので、家庭の会話を直接調べたものではありません。聞くときは問い詰める調子を避け、「消えたいと思うくらい、つらいことがあるの?」と、心配しているから尋ねていることが伝わる言い方にします。

言葉以外のサインと、自傷への向き合い方

生徒指導提要は、自殺直前のサインとして、関心のあった事柄に興味を失う、成績が急に落ちる、不安やイライラが増す、身だしなみを気にしなくなる、不眠や食欲不振などの体の不調を訴える、引きこもりがちになる、自傷行為が深刻化する、別れの用意をする(大切なものを人にあげる)などを挙げています。なかには思春期にはそれほど珍しくない変化も含まれます。大切なのは日常をよく見たうえで、違和感を覚えたら、無駄になるかもしれないことを恐れずに関わることだとされています。

思春期の子は、悩みは誰にも話せないと思い込んで自分の世界に閉じこもることがあります。提要は、大人が「何を考えているのかわからない」と関わりを薄くしてしまう、そうした状態こそが最も危険だと指摘しています。

生徒指導提要が挙げる変化の例を3つに分けた図。気持ちと意欲の変化として、関心のあったことに興味を失う、不安やイライラが増す。生活と体の変化として、不眠や食欲不振、身だしなみを気にしなくなる、成績が急に落ちる。行動の変化として、引きこもりがちになる、自傷が深刻化する、大切なものを人にあげる。
図2:提要の「自殺直前のサイン」から一部を抜き出し、編集部が3つに分けたものです。当てはまるかどうかで判断するためのものではありません。

手首を傷つけるなどの自傷に気づいたときは、まずけがの手当てを優先します。提要は、経緯を強い口調で問いただすと子どもは責められていると感じるため、静かで穏やかに対応すること、無視や冷淡な対応も「注目を引こうとしている」という決めつけも避けることを求めています。自殺の意図がはっきりしている場合は、傷が軽くても軽視せず、病院の受診につなげる必要があるとしています。

次の3つは、ふだんから家庭で取り入れられる工夫です。

家庭で試す3つの工夫

  1. 最初に「話してくれてありがとう」と言う:打ち明けるには勇気がいります。内容への意見より先に、話してくれたこと自体を受け止めます。
  2. 向かい合わずに話せる場面をつくる:車での移動中や寝る前など、目を合わせなくても話せる時間を選び、テレビやスマホを消して聴きます。
  3. 親が相談する先を先に決めておく:担任・養護教諭・スクールカウンセラーの連絡方法と、24時間つながる電話窓口の番号を、親のスマホに登録しておきます。

声かけの言い換え例

  • 「そんなこと言うもんじゃない」→話すこと自体を止めてしまう。
  • 「そう思うくらいつらいんだね。話してくれてありがとう」→気持ちを受け止めたことが伝わる。
  • 「みんな同じように大変なんだよ」→つらさを小さく扱われたと感じる。
  • 「何がいちばんしんどいか、教えてくれる?」→背景を一緒に見られる。
  • 「がんばればなんとかなるよ」→今の苦しさを置き去りにする。
  • 「どうしたらいいか、一緒に考えたい」→ひとりではないと伝わる。
  • 「誰にも言わないから大丈夫」→守れない約束になる。
  • 「あなたを守りたいから、信頼できる人に一緒に相談させてね」→安全を優先する理由が伝わる。

家庭で確認するチェックリスト

  • 叱ったり話をそらしたりせず、最後まで聴いた。
  • 「心配している」と言葉に出して伝えた。
  • 死にたいと思うほどつらいことの背景を尋ねた。
  • 学校か相談窓口に、親から相談した。
  • 眠りや食事、持ち物の整理など、その後の変化を気にかけている。

家庭の工夫だけで抱え込まないために

この記事は、子どもから「死にたい」と言われたときの一般的な受け止め方を整理したもので、危険の程度を判断するものではありません。具体的な方法や日時を口にする、けがをしているなど、命の危険が差し迫っていると感じたら、子どものそばを離れず、ためらわずに119番や110番に連絡してください。

TALKの原則の Keep safe が示すとおり、大人が一人で抱え込まないことが大切です。「誰にも言わないで」と頼まれても、命に関わることは秘密にせず、担任や養護教諭、スクールカウンセラーに相談します。

親自身が相談できる窓口もあります。24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)は、子どもだけでなく保護者も夜間・休日を含めて相談でき、原則としてかけた地域の教育委員会の相談機関につながります。厚生労働省の電話相談ページには、24時間365日つながる「#いのちSOS」(0120-061-338)や、18歳までの子ども専用の「チャイルドライン」(0120-99-7777、毎日16〜21時)も載っています。番号や受付時間は変わることがあるので、最新は公式ページで確かめてください。

よくある質問

冗談っぽく「死にたい」と言っていても、本気で受け止めたほうがいいですか。
聞き流さずに向き合うことが勧められています。生徒指導提要は、表面的な言動だけにとらわれず笑顔の奥にある絶望に気づく必要があるとし、違和感があれば無駄になることを恐れずに関わるよう求めています。「さっきの言葉が気になって」と、改めて声をかけます。
「死にたいと思っているの?」と直接聞くと、かえって考えさせてしまいませんか。
2014年の研究レビューでは、尋ねられたことで自殺念慮が統計的に有意に増えた研究はありませんでした。生徒指導提要のTALKの原則にも、つらい気持ちの背景を尋ねる Ask が含まれています。問い詰めず、心配していることが伝わる言い方で聞きます。
夜中で学校に連絡できないときは、どこに相談できますか。
24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)は保護者も夜間・休日に相談できます。厚生労働省の電話相談ページには、24時間365日の「#いのちSOS」(0120-061-338)も載っています。命の危険が差し迫っているときは、119番や110番に連絡します。

出典・参考

  • 文部科学省「生徒指導提要(改訂版)」(2022年12月)第8章 自殺
    https://www.mext.go.jp/content/20230220-mxt_jidou01-000024699-201-1.pdf(確認日 2026-10-18)。
    この出典で確認した記述
    全300ページ。印刷ページ=PDFページ−3。PDF202ページ(印刷199)「8.3.3 自殺の危険の高まった児童生徒の早期発見・早期対応」に「児童生徒の自殺の特徴は、死を求める気持ちと生を願う気持ちとの間で激しく揺れ動く両価性にあると言われます。心の危機の叫びとして発せられる自殺のサインに気付くには、表面的な言動だけにとらわれず、笑顔の奥にある絶望を見抜くことが必要です」、自殺直前のサインとして「これまでに関心のあった事柄に対して興味を失う」「成績が急に落ちる」「不安やイライラが増し、落ち着きがなくなる」「身だしなみを気にしなくなる」「不眠、食欲不振、体重減少など身体の不調を訴える」(出典注[*99]「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」文部科学省(平成21年)p.9を参考に作成)。PDF203ページ(印刷200)に「引きこもりがちになる」「自傷行為が深刻化する」「別れの用意をする(整理整頓、大切なものをあげる)」、「自殺のサインのなかには、児童生徒であればそれほど珍しい変化ではないと思われるものも含まれています。大切なことは、その児童生徒の日常をしっかりと見た上で、何らかの違和感を覚えたときには無駄になるかもしれないことを恐れずに関わることです」「周囲の大人は、『何を考えているのかわからない』と関わりを薄くしてしまいがちですが、そのような心理状態こそが最も危険である」、「(2) 自殺の危険の高まった児童生徒への関わり」に「自殺の危険に気付いたときの対応の参考になるのが、『TALK の原則』です」「その子なりに精一杯生きていることを尊重し、言いくるめたりコントロールしたりすることはできないし、そう思うのは大人の側の欲だと自覚することが必要です」。PDF204ページ(印刷201)「TALK の原則」に「Tell 心配していることを言葉に出して伝える。」「Ask 『死にたい』と思うほどつらい気持ちの背景にあるものについて尋ねる。」「Listen 絶望的な気持ちを傾聴する。話をそらしたり、叱責や助言などをしたりせずに訴えに真剣に耳を傾ける。」「Keep safe 安全を確保する。一人で抱え込まず、連携して適切な援助を行う。」。PDF208〜209ページ(印刷205〜206)「(3) 自殺関連行動としての自傷への対応」に「経緯の確認を急ぐあまり強い口調で問いただすと、児童生徒は責められていると感じてしまうこともあるので、静かで穏やかに対応することが大切です」「明確な自殺の意図があると思われる場合には、たとえ現在の傷が軽いものであっても、軽視すれば直後により致死的な方法を選択する可能性があることに留意する必要があります。この場合には、教職員が見守った上で病院受診を促し」「無視をしたり、冷淡に対応したりすることも避けなければなりません。また、周囲の注目や同情を引こうとしているなどという決めつけも対応を誤る原因になります」。本文の「過去最多」節2段落目、「まず何をすれば」節、「サイン」節、図1・図2、気をつけたいこと2段落目、よくある質問1・2つ目はこれによる。資料は教職員向けで、家庭向けに言葉を言い換えた箇所は本文で編集部の整理と明記した。
  • 厚生労働省自殺対策推進室・警察庁生活安全局生活安全企画課「令和7年中における自殺の状況」(2026年3月27日)
    https://www.mhlw.go.jp/content/001680736.pdf(確認日 2026-10-18)。
    この出典で確認した記述
    全33ページ。PDF4ページ(概要)に「令和7年の自殺者数は19,188人と、前年から1,132人減少した」「学生・生徒等のうち小中高生の自殺者数は前年から9人増加の538人であり、統計のある1980(昭和55)年以降で最多となった」。PDF16ページ「図表3-1 小中高生別自殺者数の年次推移」に令和6年529人・令和7年538人。PDF19ページの小中高生計の表に、令和7年「小中高生計 538」「うち小学生 10」「うち中学生 172」「うち高校生 356」、令和6年「小中高生計 529」。本文の「過去最多」節1段落目はこれによる。こども家庭庁の通知(2026年2月18日)では暫定値532人とされていたが、本文は3月公表の確定値を用いた。
  • Dazzi T, Gribble R, Wessely S, Fear NT. Does asking about suicide and related behaviours induce suicidal ideation? What is the evidence? Psychological Medicine. 2014;44(16):3361–3363.
    https://www.cambridge.org/core/journals/psychological-medicine/article/does-asking-about-suicide-and-related-behaviours-induce-suicidal-ideation-what-is-the-evidence/FCAEE9E5BC840D76CF10AEBECD921AC9(確認日 2026-10-18)。
    この出典で確認した記述
    著者の所属は King's College London。抄録に "We conducted a review of the published literature examining whether enquiring about suicide induces suicidal ideation in adults and adolescents, and general and at-risk populations. None found a statistically significant increase in suicidal ideation among participants asked about suicidal thoughts. Our findings suggest acknowledging and talking about suicide may in fact reduce, rather than increase suicidal ideation"。本文に "A review of the recent literature (PsycINFO and Ovid Medline) revealed a total of 13 papers published between 2001 and 2013 that have examined whether asking about suicide induces suicidal ideation. Conducted using samples of both adolescents and adults and in general and at-risk populations, none found a statistically significant increase in suicidal ideation in participants as a result of being asked about their suicidal thoughts." と記載。研究・臨床の場での質問を対象とした短い文献レビュー(系統的レビューではない)で、家庭の会話を調べたものではないことを本文で併記した。本文の「聞いてもいいのか」節、3行まとめ2つ目、よくある質問2つ目はこれによる。DOI: 10.1017/S0033291714001299。
  • 厚生労働省「電話相談」(自殺対策)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_tel.html(確認日 2026-10-18)。
    この出典で確認した記述
    「#いのちSOS(特定非営利活動法人 自殺対策支援センターライフリンク)」「『死にたい』『消えたい』『生きることに疲れた』など、あなたのそんな気持ちを専門の相談員が受け止め」「電話番号 0120-061-338 おもい ささえる(フリーダイヤル・無料)」「実施日時 24時間 365日」。「子ども向け電話相談窓口」に「チャイルドラインは18歳までの子ども専用です。チャット相談あります。」「0120-99-7777(フリーダイヤル・無料)」「毎日ごご4時からごご9時」「*12月29日~1月3日の期間は、相談受付休止」。同ページに「24時間子供SOSダイヤル(文部科学省)」「いじめやその他のこどものSOS全般について、夜間・休日を含めて24時間いつでも相談できます」「0120-0-78310 なやみいおう(フリーダイヤル・無料)」も掲載。ほかに、よりそいホットライン(0120-279-338、24時間)、いのちの電話、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556、通話料有料・受付時間は都道府県で異なる)が載っている。本文の気をつけたいこと3段落目、よくある質問3つ目はこれによる。
  • 文部科学省「『24時間子供SOSダイヤル』について」
    https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1306988.htm(確認日 2026-10-18)。
    この出典で確認した記述
    「悩んでいる子供や保護者等がいつでも相談できるよう教育委員会が夜間・休日を含め24時間対応可能な相談体制を整備しています」「下記のダイヤルに電話すれば、夜間・休日を含めていつでも、原則として電話をかけた所在地の教育委員会の相談機関に接続」と記載(ふりがなは省略)。本ページの番号表記は「0120-078310」、厚生労働省の電話相談ページでは「0120-0-78310」で、本文は後者に合わせた。本文の気をつけたいこと3段落目、よくある質問3つ目の「保護者も相談できる」はこれによる。

この記事について

本記事は家庭での関わりを整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や治療の判断に代わるものではありません。研究知見や公的資料は「一つの考え方」として紹介しており、家庭ごとに合う・合わないがあります。お子さんの状態が気になる場合は、専門機関や学校にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。

筆者コメント