3行まとめ

  • 内閣府の調査では、交際経験のある女性の22.7%、男性の12.0%が交際相手から暴力を受けたことがある。被害を受けた人の39.1%はどこにも相談していない。
  • デートDVは殴る・蹴るだけではない。バカにする、無視する、行動を縛る、お金や性的な行為を強いることも含まれる。
  • 交際に反対するより、「束縛は愛情ではない」という見方を先に共有し、困ったときに話せる関係と相談先を用意しておく。

この記事でわかること

  • 交際相手からの暴力がどのくらい起きているか
  • デートDVにあたる行為と、4つの形
  • 「束縛は愛情」という思い込みの見直し方
  • 子どもが話しやすくなる声かけの例
  • 本人や家族が使える相談先

通知が鳴るたびに返信していた

中学3年の娘が、夕食の途中でもスマホの通知が鳴るとすぐに返信するようになった。「すぐ返さないと怒られるから」と小さな声で言う。相手は同じ塾の1学年上の男子で、付き合い始めて2か月ほど。週末に友達と出かける予定も「彼が嫌がるから」と断ったらしい。母親は「そんな子とは別れなさい」と言いかけて、娘の表情がこわばるのを見て言葉をのみこんだ。

交際そのものは、思春期の子どもにとって自然な経験の一つです。ただ、相手に合わせることが増えて、本人がそれを「好きだから当然」と受け止めているときは、関係の中身に目を向けたい場面です。頭ごなしに反対すると、子どもは次から話さなくなるかもしれません。まずは、どんな関係が対等なのかを親子で言葉にしておくことが助けになります。

交際経験のある女性の5人に1人以上が被害を経験

内閣府男女共同参画局が2023年11〜12月に全国の18〜59歳の男女5,000人を対象に行った「男女間における暴力に関する調査」(有効回収2,950人)では、交際経験がある人の18.0%、女性の22.7%、男性の12.0%が、交際相手から暴力を受けたことがあると答えました。被害は女性に多いものの、男性にも起きています。

同じ調査で、被害を受けた人の18.6%は命の危険を感じた経験があり、39.1%はどこにも相談していませんでした。交際相手と別れた人は49.9%で、残りは別れたいと思っても別れなかった人や、別れようと思わなかった人です。この調査は大人が対象で、10代の実態をそのまま示すものではありません。それでも、交際相手からの暴力は身近に起こり、周りに打ち明けられないまま続きやすいことがうかがえます。

デートDVとは、どんなことですか

恋人同士の間で、暴力を手段にして相手を思いどおりにしようとすることです。文部科学省の「生命(いのち)の安全教育」の中学校向け教材は、DVを結婚している相手など親密な間柄の相手からふるわれる暴力とし、恋人同士の間に起こる暴力を「デートDV」と呼んでいます。

教材が示す形は、身体的暴力、精神的暴力、経済的暴力、性的暴力の4つです。殴る、蹴るといった体への暴力だけでなく、相手をバカにする、無視するといった行為もDVにあたります。内閣府男女共同参画局は配偶者からの暴力について、友人とのつきあいを制限する、電話や手紙を細かくチェックする、嫌がっているのに性的な行為を強要するといった例を挙げています。交際中の中高生に置きかえると、スマホのやりとりを見せるよう求める、友達と会うのを嫌がる、といった形で表れることがあります。

デートDVの4つの形を並べた図。身体的暴力は殴る、蹴るなど体を傷つけること。精神的暴力はバカにする、無視する、交友を制限する、やりとりを細かくチェックすること。経済的暴力はお金を払わせる、貸したお金を返さないなど。性的暴力は嫌がっているのに性的な行為を求める、裸の写真を送らせることなど。
図1:文部科学省「生命(いのち)の安全教育」中学校向け教材の4分類をもとに、内閣府男女共同参画局「暴力の形態」の例を参考に作成。ここに挙げたものは一例です。

教材は、インターネット上で知り合った相手はもちろん、交際相手や友達であっても、下着姿や裸の写真を撮ったり、送ったり、送らせたりしないことも伝えています。スマホを使う年代の交際では、画像のやりとりも話題にしておきたい点です。

「束縛は愛情」という思い込み

同じ教材は、デートDVの背景にある思い込みとして、「相手を独占したり、束縛したりすることが愛情表現」「愛があれば暴力は許される」「男は強引なほうがいい」「女は素直にしたがうもの」を挙げています。冒頭の娘のように、すぐ返信しないと怒られる状態を「愛されている証拠」と受け止めてしまうと、本人は被害だと気づきにくくなります。

教材はまた、性暴力は互いの関係が対等でない場面で起こりやすく、相手に遠慮して自分の意見を言えなくなったときは対等な関係ではないと説明しています。先輩と後輩のような上下関係だけでなく、同級生同士でも起こります。親しい間柄でも、自分がいやだと思ったことはいやと言え、相手がいやがることはしない。教材が示すこの線を、交際を始める前から親子で共有しておくと、子どもが自分の関係を見直すときの物差しになります。

保護者向けの資料で文部科学省は、子どもの被害には大人が早く気づくことが重要で、日ごろから家庭で話しておくことが早期発見と相談につながるとしています。交際の相手を詮索することと、関係の中身について話せる状態を保つことは別のことです。

子どもから交際相手とのことを打ち明けられたときの4つの手順を示した図。1、あなたは悪くないと伝える。2、気持ちを丁寧に聞き、そのまま受け止める。3、相手との連絡や距離のとり方を一緒に考える。4、学校や専門の相談窓口に一緒につなぐ。
図2:文部科学省「生命(いのち)の安全教育」中学校向け教材の「被害にあったら」「友達が被害にあったら」の内容をもとに、家庭向けに編集部が並べ直したものです。

次の3つは、家庭で取り入れやすい工夫です。

家庭で試す3つの工夫

  1. 交際の前に、一般論として話しておく:ドラマやニュースをきっかけに、「好きでも、いやなことはいやと言っていいよね」と、特定の相手を責めない形で話題にします。
  2. 反対ではなく、関係の中身を聞く:「どんな人?」より「一緒にいて楽しい?言いたいことは言える?」と、子ども自身の気持ちに焦点をあてて聞きます。
  3. 話してくれたら、まず責めない:打ち明けられたら「話してくれてありがとう。あなたは悪くない」と伝えてから、必要に応じて相談先を一緒に調べます。

声かけの言い換え例

  • 「中学生で付き合うなんて早すぎる」→子どもは交際を隠すようになる。
  • 「付き合っていても、いやなことはいやと言っていいんだよ」→関係の物差しが伝わる。
  • 「そんなに束縛されるなら、愛されてるんだね」→束縛を愛情と取り違えたままになる。
  • 「すぐ返さないと怒られるのは、しんどくない?」→本人の気持ちに目が向く。
  • 「だから言ったでしょ。あなたにも隙があったんじゃない?」→自分を責めて二度と話さなくなる。
  • 「話してくれてよかった。あなたは悪くないよ」→相談してよかったと思える。
  • 「今すぐ別れなさい。スマホを見せて」→子どもが追い詰められる。
  • 「どうしたいか一緒に考えよう。相談できるところもあるよ」→次の一歩を選べる。

家庭で確認するチェックリスト

  • デートDVという言葉と、4つの形を親子で話した。
  • 「束縛は愛情表現ではない」という見方を共有した。
  • 交際相手や友達とも、裸や下着姿の写真をやりとりしないと話した。
  • 困ったときに家族以外にも話せる大人がいるか、子どもと確かめた。
  • DV相談+や#8008などの相談先を、親が調べて控えた。

家庭の工夫だけで抱え込まないために

この記事は、交際中の子どもとの話し方を整理したもので、個別の関係が暴力にあたるかどうかを判断するものではありません。親が相手に直接連絡したり、無理に別れさせたりすると、かえって子どもが孤立したり、相手の態度が強まったりすることもあります。子どもの気持ちを確かめながら、専門の相談先と一緒に考える選択肢があります。

内閣府の「DV相談+(プラス)」は、配偶者やパートナーからの暴力について電話(0120-279-889、24時間)とチャット(12〜22時)で相談を受けています。「DV相談ナビ」#8008 では最寄りの配偶者暴力相談支援センターにつながります。性的な被害があったときは、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)に相談できます。学校では担任や養護の先生、スクールカウンセラーも相談先です。

今すぐ身の危険があるときは110番に通報します。なお、配偶者暴力防止法が準用されるのは「生活の本拠を共にする交際相手」からの暴力で、同居していない交際は対象外です。番号や受付時間は変わることがあるので、最新は公式ページで確かめてください。

よくある質問

デートDVとは何ですか。
恋人同士の間で起こる暴力のことです。文部科学省の中学校向け教材は、身体的、精神的、経済的、性的の4つの形を挙げています。殴る・蹴るだけでなく、相手をバカにする、無視するといった行為もDVにあたるとしています。
子どもの交際に反対したほうがいいですか。
頭ごなしに反対すると、子どもが交際を隠し、困ったときに話せなくなるおそれがあります。文部科学省は、日ごろから家庭で話しておくことが早期発見と相談につながるとしています。交際の是非より、対等な関係かどうかを一緒に考える話し方が一つの方法です。
デートDVかもしれないとき、どこに相談できますか。
内閣府の「DV相談+」は電話(0120-279-889)を24時間受け付け、チャット相談もあります。#8008 では最寄りの配偶者暴力相談支援センターにつながります。性的な被害は#8891、今すぐ危険があるときは110番です。

出典・参考

  • 内閣府男女共同参画局「男女間における暴力に関する調査報告書<概要版>」(2024年3月)
    https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/boryoku/siryo/pdf/bo124-2.pdf(確認日 2026-10-28)。
    この出典で確認した記述
    全22ページ(専門調査会資料1-2)。PDF5ページ(印刷1)「Ⅰ 調査の概要」に「令和5年度には…全国18 歳以上59 歳以下の男女5,000 人を対象に、無作為抽出によるアンケート調査を実施した」「調査時期 令和5年11 月~12 月」「有効回収数(率) 2,950 人(59.0%)」。PDF10ページ(印刷6)「Ⅲ 交際相手からの暴力の被害経験」に「交際経験がある人の18.0%、性別でみると女性の22.7%、男性の12.0%は交際相手から被害を受けたことがある」(n=総数2,112人・女性1,189人・男性923人)。PDF11ページ(印刷7)に「被害を受けた人の18.6%、性別でみると女性の23.3%、男性の7.2%は命の危険を感じた経験がある」「被害を受けた人の39.1%は、どこにも相談していない」「被害を受けた人の49.9%、性別でみると女性の53.3%、男性の41.4%が交際相手と別れている」(n=381人)。別れなかった人の内訳として「別れたい(別れよう)と思ったが、別れなかった」21.3%など。調査対象が18〜59歳であり、10代前半の実態を示すものではない点を本文に明記した。本文の「5人に1人以上」節、3行まとめ1つ目、description はこれによる。
  • 文部科学省「生命(いのち)の安全教育」教材(中学校)
    https://www.mext.go.jp/content/20210416-mxt_kyousei02-000014005_33.pdf(確認日 2026-10-28)。
    この出典で確認した記述
    全23ページのスライド教材(掲載ページ https://www.mext.go.jp/a_menu/danjo/anzen/index2.html の「教材・手引き」)。PDF6ページ「相手が恋人や家族、顔見知りだったとしても、あなたが望まない性的な行為はすべて性暴力です」「性別にかかわらず被害にあいます。悪いのは加害者です」。PDF7ページ「性暴力の例【デートDV】」に「DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、結婚している相手など親密な間柄の相手からふるわれる暴力のことです。恋人同士の間に起こる暴力のことを『デートDV』と言います」「暴力を手段として、相手を思いどおりにしたり、一方的に言うことを聞かせようとします」「殴る、蹴るといった体に対する暴力だけでなく、相手をバカにしたり無視をするといった行為もDVです」、分類として「精神的暴力」「身体的暴力」「経済的暴力」「性的暴力」、「こんな思い込みをしていませんか?」として「相手を独占したり、束縛したりすることが愛情表現」「愛があれば暴力は許される」「男は強引なほうがいい」「女は素直にしたがうもの」、「親しい間柄でも自分と相手の気持ちを大切にしましょう」「自分がいやだと思ったことはいやと言える」「相手がいやがることはしない」。PDF8ページ「交際相手や友達であっても下着姿や裸の写真を撮ったり、撮らせたり、送ったり、送らせたりしない」。PDF10ページ「性暴力は、お互いの関係が対等でない場面で起こりやすくなります」「先輩・後輩など、相手と上下関係がある場合だけではなく、同級生同士でも相手と対等な関係ではなくなることがあります」「相手に遠慮して自分の意見を言えなくなってしまったときは、対等な関係ではないと言えます」。PDF12ページ「相手からの連絡に返信しない」「信頼できる大人に相談する(担任の先生、養護の先生、スクールカウンセラー、保護者など)」「あなたは決して悪くありません」。PDF13ページ(友達が被害にあったら)「あなたは悪くないということを伝える」「気持ちを丁寧に聞き、そのまま受け止める」「信頼できる大人への相談をすすめる」。図1の4分類と経済的暴力の例示(お金を払わせる・返さない)は教材の分類名に編集部が例を添えたもの。本文の「デートDVとは」節・「束縛は愛情」節1〜2段落目、図1・図2、工夫3つ目、気をつけたいこと2段落目(学校の相談先)、よくある質問1つ目はこれによる。
  • 文部科学省「生命(いのち)の安全教育について~保護者のみなさんへ~」
    https://www.mext.go.jp/content/20210805-mxt_kyousei02-000014005_2.pdf(確認日 2026-10-28)。
    この出典で確認した記述
    全2ページ。PDF1ページに「子供が受けた性暴力被害は、大人が早期に気づくことが重要です。本教材等を参考に、日頃から家庭内でコミュニケーションをとることで、被害の早期発見・適切な相談につなげていくことが大切です」。段階別の内容として【中学校】「自分と相手を守る『距離感』について」「性暴力とは何か(デートDV、SNSを通じた被害の例示)」「性暴力被害に遭った場合の対応」。「もしもお子さんから被害の相談を受けた場合はこちらにご相談ください。性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター 全国共通番号#8891(はやくワンストップ)」。本文の「束縛は愛情」節3段落目、気をつけたいこと2段落目(#8891)、よくある質問2つ目はこれによる。
  • 内閣府男女共同参画局「暴力の形態」
    https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/dv/02.html(確認日 2026-10-28)。
    この出典で確認した記述
    配偶者からの暴力の形態として「身体的なもの」「精神的なもの」「性的なもの」を挙げ、「これらの様々な形態の暴力は単独で起きることもありますが、多くは何種類かの暴力が重なって起こっています」。精神的なものの例に「大声でどなる」「実家や友人とつきあうのを制限したり、電話や手紙を細かくチェックしたりする」「何を言っても無視して口をきかない」「人の前でバカにしたり、命令するような口調でものを言ったりする」、「生活費を渡さない、もしくは仕事を制限するといった行為は『経済的なもの』と分類される場合もあります」。性的なものの例に「嫌がっているのに性的行為を強要する」。配偶者についての説明であり、本文では交際中の中高生に置きかえた例(スマホのやりとりを見せるよう求める等)を編集部の言い換えとして示した。本文の「デートDVとは」節2段落目と図1はこれによる。
  • 内閣府男女共同参画局「配偶者暴力防止法」
    https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/law/index2.html(確認日 2026-10-28)。
    この出典で確認した記述
    「生活の本拠を共にする交際相手(婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいない者を除きます。)からの暴力について、この法律を準用することとされています。また、生活の本拠を共にする交際をする関係を解消した後も引き続き暴力を受ける場合を含みます」。準用の対象が同居する交際相手に限られることから、本文の気をつけたいこと3段落目で「同居していない交際は対象外」と書いた(同居していない交際でも、DV相談+などの相談先は利用できる)。
  • 内閣府「DV相談+(プラス)」
    https://soudanplus.jp/(確認日 2026-10-28)。
    この出典で確認した記述
    ページ表題「DV相談プラス プラス相談箱|内閣府」。「電話 24 時間受付」「チャット相談 12:00〜22:00」、電話番号は画像の代替テキスト「電話相談は0120-279-889。24時間受付」と tel:0120-279-889 で確認。「あなたが配偶者やパートナーから受けている様々な暴力(DV)について、専門の相談員が一緒に考えます」「『これってDVかな?』…など、どんなご相談もお気軽にご連絡ください」「365日相談対応」「男性の相談にも対応」「なお、『DV相談ナビ』(#8008(はれれば))でも相談を受け付けています。最寄りの配偶者暴⼒相談⽀援センターにつながります」「今すぐ警察官に駆けつけてもらいたいような緊急の場合は、110番に通報してください」。内閣府男女共同参画局「相談機関一覧」(https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/soudankikan.html)にも、DV相談+が電話相談(24時間対応)とチャットで相談できること、#8008 で最寄りの配偶者暴力相談支援センターにつながることが載っている。本文の気をつけたいこと2〜3段落目、チェックリスト5つ目、よくある質問3つ目はこれによる。

この記事について

本記事は家庭での関わりを整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や治療の判断に代わるものではありません。研究知見や公的資料は「一つの考え方」として紹介しており、家庭ごとに合う・合わないがあります。お子さんの状態が気になる場合は、専門機関や学校にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。

筆者コメント