3行まとめ
- 救急車で運ばれた人の約半数は「軽症」に分類されますが、消防庁はこの区分について「軽症の中には早期に病院での治療が必要だったものも含まれている」と注記しています。「軽症だったから呼ぶべきでなかった」とは限りません。
- 迷ったときの入口は3つ。♯8000(休日・夜間の子どもの症状を小児科医師・看護師に相談)、♯7119(救急車を呼ぶか迷ったときの相談)、Q助(症状を選ぶと緊急度の目安が出る消防庁のアプリ)です。
- ただし♯7119は地域によって「概ね15歳以上」が対象で、15歳未満は♯8000へ回されることがあります。慌ててから調べるのではなく、住んでいる地域の番号と受付時間を平時に控えておくことがそのまま備えになります。
この記事でわかること
- 「救急搬送の半分は軽症」という数字を、親としてどう読めばよいか
- ♯8000・♯7119・Q助・こどもの救急という4つの入口の役割の違い
- 子どもの場合の落とし穴(♯7119の対象年齢・受付時間の地域差)
- 消防庁が挙げる「こどもですぐに119番」の場面と、通報のときに伝えること
- 慌てている夜に迷わないための、家庭の3ステップと連絡先の残し方
連休の夜に、体温計の数字を見つめる
夏休みやお盆、年末年始のような長い休みの最中は、子どもの体調が崩れたときにいちばん困ります。平日なら「明日の朝いちで小児科に連れていって、そのあと出勤しよう」と段取りが立ちますが、休診日が何日も続くとその見通しが立ちません。しかも共働きの家庭では、休みの日に体調を崩されると、翌週の仕事の予定まで一緒に揺れます。だから頭のなかでは、子どもの心配と、明日以降の調整の心配が同時に走ります。
そうした状態で、親はスマホを開きます。症状の名前を入れて検索し、出てきたページを次々に読む。ところが、読めば読むほど楽にはなりません。重い病気の可能性を書いたページと、たいてい心配ないと書いたページが並んで出てきて、どちらが自分の子に当てはまるのかは、書いてある文字だけでは決まらないからです。結局、「もう少し様子を見よう」と決めて、三十分ごとに寝顔をのぞきに行く夜になります。
この場面でつまずいているのは、多くの場合、医学の知識ではありません。相談していい相手がいることを知らない、あるいは知っていても番号が手元にない、というだけのことです。実際、休日・夜間に子どもの症状で困ったときの窓口は国の事業として整備されていて、電話一本で小児科の医師や看護師につながるようになっています。にもかかわらず、いざその夜になると、番号を調べるところから始めることになる。慌てているときほど検索がうまくいかないのは、誰にでも起きることです。
もうひとつ、親をためらわせるものがあります。「これくらいで電話していいのだろうか」「救急車なんて呼んだら大げさだと思われないだろうか」という遠慮です。消防庁は、この遠慮そのものを課題として書いています。♯7119の説明ページには、「なんとなく様子がおかしいけど、こんな症状で救急車を呼んでいいのだろうか」「夜中にサイレンを鳴らして救急車がきたら近所迷惑になりそう」といった、救急要請がためらわれる場面が具体的に挙げられ、そのうえで「しかし、もしかすると、その症状は一刻を争うサインかもしれません」と続きます。隠れた重症者を発見し、手遅れにならないように一刻も早く救急搬送につなげることも♯7119の重要な役割だ、というのが国側の説明です。つまり、遠慮して黙っていることのほうが想定されたリスクとして扱われています。
この記事は、その遠慮をなくすための道具立てを整えることを目的にしています。平日の朝に発熱した場合の欠席連絡や預け先の段取りは急な発熱・欠席にどう備えるか ― 共働き家庭の初動フローで扱っているので、ここでは「診療時間外に具合が悪くなった夜、どこに相談し、どう動くか」という一点に絞ります。
「半分は軽症」という数字の、正しい読み方
まず、救急医療をめぐってよく目にする数字を確認します。消防庁が令和8年1月20日に公表した「令和7年版 救急・救助の現況」によれば、令和6年中に救急自動車で搬送された人は676万9,172人で、これは統計を取り始めた昭和38年以降で最多でした。搬送人員を傷病程度別に見ると、「軽症(外来診療)」が317万1,350人で46.8%、「中等症(入院診療)」が301万7,912人で44.6%、「重症(長期入院)」が49万1,471人で7.3%となっています。消防庁のパンフレット「救急車を上手に使いましょう」も、発行のねらいのなかで「救急車で搬送された人の約半数が入院を必要としない軽症という現状もあります」と書いています。
ここだけを読むと、「半分は呼ぶ必要がなかったのだ」という結論に飛びつきたくなります。実際、そう受け取って、次に自分の子が具合を悪くしたときに通報をためらう親は少なくないはずです。しかし、同じ資料には見落とされがちな注記が添えられています。傷病程度の定義を説明した箇所にはこうあります。「傷病程度は入院加療の必要程度を基準に区分しているため、軽症の中には早期に病院での治療が必要だったものや通院による治療が必要だったものも含まれている」。
ここが決定的です。統計上の「軽症」は、「入院しなくて済んだ」という結果を指す言葉であって、「行かなくてよかった」という意味ではありません。早く手当てを受けたから入院に至らなかったケースも、通院での治療が必要だったケースも、すべて軽症に数えられます。つまり、この46.8%という数字は、通報の是非を判定するための数字ではないのです。親が読むべきなのは、「呼びすぎだ」という叱責ではなく、「結果が軽症でも、その時点での判断が間違いだったとは限らない」という但し書きのほうです。
もうひとつ、時間の数字も見ておきます。同じ資料によれば、令和6年中の現場到着所要時間(119番通報を受けてから現場に到着するまで)の平均は約9.8分、病院収容所要時間(通報から医師に引き継ぐまで)の平均は約44.6分で、新型コロナ禍前の令和元年と比べるとそれぞれ約1.1分、約5.1分延びています。救急車はすぐ来て、すぐ病院に着くもの、という感覚は少しずつ実態とずれてきています。だからこそ、緊急性が高いときには早く判断することに意味があり、緊急性が高くないときには別の入口を使うことにも意味がある、という話になります。
子どもの搬送規模も押さえておきましょう。年齢区分別に見ると、「乳幼児」(生後28日以上満7歳未満)が27万5,562人で全体の4.1%、「少年」(満7歳以上満18歳未満)が22万6,932人で3.4%です。高齢者が63.3%を占める全体像のなかでは小さな割合ですが、実数では合わせて50万人を超えます。珍しい出来事ではない、ということです。
相談の入口は、ひとつではない
「119番か、朝まで様子見か」という二択で考えると、判断はいつまでも決まりません。実際には、その中間に公的な入口がいくつも用意されています。順番に確認します。
♯8000(子ども医療電話相談事業)。厚生労働省の説明によれば、これは「保護者の方が、休日・夜間の子どもの症状にどのように対処したらよいのか、病院を受診した方がよいのかなど判断に迷った時に、小児科医師・看護師に電話で相談できるもの」です。全国統一の短縮番号「♯8000」を押すと、住んでいる都道府県の相談窓口に自動転送され、症状に応じた対処の仕方や受診する病院等のアドバイスが受けられます。同省のサイトには相談の例として、「子どもが頭をぶつけた。泣いている。受診したほうがいいか」「咳がコンコン、ゴホゴホと続いてる。眠れないようで心配」「何度も吐く。食欲もなく心配」「もしかするとタバコを舐めたかも」といった、まさに夜に起きがちな場面が並んでいます。アドバイスは「すぐに病院を受診しよう」だけでなく「様子をみることができます」という形でも返ってくる、と明記されています。受診しないという結論も、専門家の言葉として受け取れる――これは、一人で決めきれない夜にとって大きな違いです。
この事業は全47都道府県で実施されています(厚生労働省の実施状況一覧は令和8年5月22日現在のもの)。ただし受付時間は都道府県ごとにまったく違います。一覧を見ると、24時間365日で受け付けている県もあれば、平日は夕方六時や七時から翌朝八時まで、休日は朝八時から翌朝八時まで、といった形で時間帯が区切られている県もあります。「♯8000は24時間いつでも」と思い込んでいると、いざかけたときにつながらず、そこから調べ直すことになります。自分の都道府県の時間帯を一度確認しておく価値があるのは、この点です。厚生労働省は、相談を受ける小児科医師・看護師等を対象とした「♯8000対応者研修」を毎年実施しているとも説明しています。
♯7119(救急安心センター事業)。消防庁によれば、これは「住民が急な病気やケガをしたときに、『救急車を呼んだほうがいいのか』、『今すぐ病院に行ったほうがいいのか』など判断に迷った際の相談窓口として、医師・看護師・救急救命士から電話でアドバイスを受けることができる仕組み」です。電話を受けた側は症状を聞き取って緊急性を判断し、緊急性が高ければ119番通報への転送やかけ直しの要請を行い、緊急性が高くない場合は受診可能な医療機関や受診のタイミングについて助言します。「体調が悪いけど、どこの病院に行ったらいいか」という相談にも、医療機関を紹介する形で応じるとされています。消防庁は、導入した自治体が実施した利用者アンケートで約9割の利用者が「役に立った」と感じていると紹介しています。
消防庁が掲載している利用者の声のなかには、こんな例もあります。深夜に息子が急に発熱し、引っ越してきたばかりで深夜に開いている病院も分からず♯7119に電話したところ、「緊急性は高くないから、様子を見ながら、朝になったら小児科に行きましょう」とアドバイスを受け、近くの小児科を紹介してもらえた、というものです。相談の結果が「いま動かなくていい」であっても、それを専門家が言ってくれることに価値がある、という構図がここにも出ています。
Q助(全国版救急受診アプリ)。電話をかけるほどではない、あるいはまず自分で確かめたい、というときに使えるのがこれです。消防庁が大阪大学医学部附属病院の協力を得て作成したもので、該当する症状を画面上で選んでいくと、緊急度に応じた対応が表示されます。表示は4段階で、「今すぐ救急車を呼びましょう」「できるだけ早めに医療機関を受診しましょう」「緊急ではありませんが医療機関を受診しましょう」「引き続き、注意して様子をみてください」です。スマートフォン版では、最も緊急度が高いと判定された場合はそのまま119番通報ができ、自分で受診する場合には医療機関の検索や受診手段(タクシーや患者等搬送事業者)の検索も行えます。アプリは無料で公開されており、WEB版もあります。
こどもの救急(ONLINE-QQ)。厚生労働省研究班と公益社団法人日本小児科学会が監修しているウェブサイトで、生後1か月から6歳までの子どもを対象に、夜間や休日などの診療時間外に病院を受診するかどうかの判断の目安を示しています。発熱、けいれん、吐き気、せき、腹痛、発疹、下痢、泣きやまない、頭を打った、薬を飲んだ、やけど、といった症状ごとに項目が分かれていて、当てはまるものを選んでいく形式です。サイト自身が、受診するかどうかの最終的な判断は家族が行うものだと明示しています。低年齢の子どもがいる家庭では、♯8000と併せて覚えておくと選択肢が広がります。
子どもの場合の落とし穴 ― ♯7119の対象年齢
ここまで読むと「迷ったら♯7119でいいのか」と思えてきますが、子どもについてはひとつ注意が必要です。消防庁が公表している♯7119の実施エリア一覧を見ると、対象者の欄が地域によって違います。「全年齢」と書かれている地域もあれば、「概ね15歳以上(※15歳未満は♯8000へ)」と明記されている地域も相当数あります。つまり、住んでいる場所によっては、子どもの症状で♯7119にかけても、♯8000へ案内されることになります。
これは制度の欠陥ではなく、役割分担です。子どもの症状は小児科の専門性が要るため、子ども向けの相談は♯8000側に集約している、という設計です。ただし、慌てている親にとっては、かけ直しが一手増えることを意味します。だから「うちの地域では、子どもの場合どちらが先か」を平時に確認しておくことに実務的な意味があります。確認は難しくありません。消防庁のページに実施エリアの一覧表があり、センター名・利用地域・対象者・番号・利用時間が並んでいます。
実施地域そのものにも差があります。消防庁は「現在、全国41地域で実施しています」としており、パンフレット「救急車を上手に使いましょう」(令和7年10月発行)にも、♯7119が使える都道府県・地域名が列挙されています。裏を返せば、まだ♯7119が導入されていない地域もあるということです。消防庁は全国展開を進めているとしていますが、現時点では「うちの地域では使えるのか」を確認するところから始める必要があります。なお同ページには、「上記以外にも、♯7119以外の番号で救急電話相談等を行っている地域があります」という但し書きもあります。自治体独自の番号が用意されている場合は、そちらが実質的な入口になります。
受付時間も一様ではありません。全日24時間の地域が多い一方、「全日午後6時~翌午前8時」「月~金:午後4時~翌午前10時、土日祝:午前10時~翌午前10時」といった形で時間が区切られている地域もあります。♯8000と♯7119、どちらについても、番号だけでなく受付時間まで控えておかないと備えとして完成しない、ということです。
ここまでを整理すると、子どもの場合の優先順位はおおむねこうなります。まず、症状そのものが後述の「すぐに119番」に当てはまるなら、迷わず119番。当てはまらないが判断に迷うときは、♯8000(受付時間内であれば)。♯8000の時間外で、♯7119が全年齢対象の地域であればそちら。電話の前に自分で確かめたいときや、電話がつながらないときはQ助。この順番を一枚の紙に書いておくだけで、夜の混乱はかなり減ります。
ためらわずに119番、とされている場面
消防庁のパンフレット「救急車を上手に使いましょう ~救急車 必要なのはどんなとき?~」(令和7年10月発行)には、年齢層別に「ためらわず救急車を呼んでほしい症状」がまとめられています。そのなかに「こども(15歳以下)」の専用ページがあり、体の部位ごとに具体的な場面が挙げられています。要約せずに、公表されているとおりに並べます。
顔について挙げられているのは、くちびるの色が紫色、顔色が明らかに悪い。胸については、激しい咳やゼーゼーして呼吸が苦しそう、呼吸が弱い。手・足は、手足が硬直している。頭は、頭を痛がってけいれんがある、頭を強くぶつけて出血がとまらない・意識がない・けいれんがある。おなかは、激しい下痢や嘔吐で水分が取れず食欲がなく意識がはっきりしない、激しいおなかの痛みで苦しがる、嘔吐が止まらない、便に血がまじった。けいれんについては、けいれんが止まらない、けいれんが止まっても意識がもどらない。意識の障害としては、意識がない(返事がない)またはおかしい(もうろうとしている)、乳児の様子がおかしい。やけどは、痛みのひどいやけど、広範囲のやけど。飲み込みは、物をのどにつまらせて呼吸が苦しい・意識がない。じんましんについては、虫に刺されて全身にじんましんが出て顔色が悪くなった。事故については、交通事故にあった(強い衝撃を受けた)、水におぼれている、高いところから落ちた。そして「生まれて3カ月未満の乳児」が、それ自体ひとつの項目として挙げられています。
この一覧の末尾に、家庭にとっていちばん大事な一行があります。「◎ その他、お母さんやお父さんから見て、いつもと違う場合、様子がおかしい場合」。項目に当てはまらなくても、いつもと違うと感じたなら呼んでよい、と明記されているということです。親の観察は、リストの外側を補う情報として公的に位置づけられています。逆に言えば、「リストのどれにも当てはまらないから我慢する」という読み方は、この資料の意図から外れます。
同じページの下部には、判断に迷ったときの案内も添えられています。「子ども医療電話相談(主に休日・夜間)は♯8000、119番通報の相談は♯7119をご利用いただけます」。119番と相談窓口は対立するものではなく、並んだ選択肢として提示されています。
この一覧を家庭で使うときに、注意しておきたいことがあります。これは診断の道具ではありません。ここに書かれた症状があるかどうかで病名を推測したり、当てはまらないから大丈夫だと結論したりするための表ではなく、「この場面なら通報をためらわないでよい」という線引きを国が示したものです。使い方としては、冷蔵庫に貼っておいて、迷ったときに「当てはまるものがあるか」を上から見ていく――当てはまれば119番、当てはまらなくても不安なら電話相談、という二段構えにするのが現実的です。
電話の前に、手元にあると助かるもの
相談先が決まっていても、電話口で答えられないと話が進みません。消防庁のパンフレットは、通報したあとの流れと、伝える内容を具体的に示しています。119番通報をすると、指令員が救急車の出動に必要なことを順番に尋ねるとされ、その順序は、①救急であることを伝える ②救急車に来てほしい住所を伝える ③具合の悪い方の症状を伝える ④具合の悪い方の年齢を伝える ⑤あなたのお名前と連絡先を伝える、の5つです。住所は必ず市町村名から伝えること、分からないときは近くの大きな建物や交差点など目印になるものを伝えること、症状は「誰が、どのようにして、どうなった」と簡潔に伝え、分かる範囲で意識と呼吸の有無を伝えること、と説明されています。そして「緊急性が高い場合は、すべてお伺いする前でも救急車が出動します」「あわてず、ゆっくりと答えてください」とも書かれています。全部を完璧に答えられなければ呼べない、という仕組みではありません。
救急車が来たときに伝えることとしては、事故や具合が悪くなった状況、救急隊が到着するまでの変化、行った応急手当の内容、具合の悪い方の情報(持病、かかりつけの病院やクリニック、普段飲んでいる薬、医師の指示等)が挙げられています。同パンフレットには「持病、かかりつけの病院やクリニックなどは、日頃からメモにまとめておくと便利です」という注記が添えられています。夜中に記憶をたどって答えるより、紙を読み上げるほうが速いのは間違いありません。
用意しておくと便利な物としては、マイナンバーカード、保険証や診察券、お金、靴、普段飲んでいる薬(おくすり手帳)が挙げられ、乳幼児の場合はこれに加えて母子健康手帳、紙おむつ、ほ乳瓶、タオルが示されています。これらを普段からひとまとめにしておく必要はありませんが、「どこにあるか」を家族全員が言えるようにしておくだけでも違います。
電話相談のときも、答えることはおおむね同じです。いつから、どんな症状が、どのくらい続いているか。熱は何度か。水分はとれているか。ぐったりしているか、いつもと同じくらい動けるか。持病や飲んでいる薬はあるか。これらを話す準備をしておくと、相談の精度が上がります。特に共働きの家庭では、夜に子どもを見ている親と、日中の様子を知っている親が別ということもあります。「今日一日どうだったか」を家族のあいだで共有しておくこと自体が、夜の相談の材料になります。
誤飲・誤食が疑われる場面についても、専用の窓口があります。こども家庭庁は「もしものために」というページで、公益財団法人 日本中毒情報センターの中毒110番(大阪 072-727-2499/つくば 029-852-9999)と、たばこ誤飲専用の自動音声応答電話(072-726-9922)を案内しています。同センターは、化学物質や動植物の毒などによって起こる急性中毒について、実際に事故が発生している場合に限定して情報提供を行っており、一般の方からの相談は無料と説明しています(医療機関からの問い合わせは有料)。受付時間は公式サイトで確認してください。子どもは思いがけないものを口に入れます。この番号も、ほかの相談先と一緒に控えておく対象です。
慌てている夜のための、3ステップ
ここまでの内容を、実際に動ける形にまとめます。方針はひとつ、その夜に考えることを減らすことです。判断の材料も、連絡先も、あらかじめ紙の上に置いておきます。
① 見る。まず、消防庁の「こども(15歳以下)ですぐに119番」の場面に当てはまるかどうかを確認します。当てはまれば、そこで判断は終わりです。ためらう理由はありません。当てはまらない場合でも、意識ははっきりしているか、呼吸は苦しそうでないか、水分はとれているか、という三つは見ておきます。この三つは、電話相談でもほぼ必ず聞かれる項目です。そして繰り返しになりますが、リストに当てはまらなくても「お母さんやお父さんから見て、いつもと違う」なら、それ自体が呼んでよい理由として資料に書かれています。
② 相談する。119番に当たらないが不安、という帯にいるときが、電話相談の出番です。子どもの症状であれば、まず♯8000。受付時間外であれば、♯7119が全年齢対象の地域ならそちらへ。どちらも使えない時間帯なら、Q助で緊急度の目安を確かめ、自治体の夜間・休日診療の案内を見ます。ここで大事なのは、相談することを「決断の先送り」だと思わないことです。消防庁の説明にあるとおり、電話相談は緊急性が高いと判断されればそのまま救急出動につながる経路でもあります。相談は、動かない選択ではありません。
③ 動く。助言をもとに、受診するのか、朝まで様子を見るのかを決めます。受診すると決めたら、保険証・診察券・おくすり手帳・母子健康手帳(低年齢の場合)を持って出ます。ここで意識したいのは順番です。翌日の仕事をどう調整するかは、受診の判断を決めたあとに考える。先に仕事の心配を始めると、「休めないから受診は明日にしよう」という順序で子どもの処遇が決まってしまいます。休みを取る手続きは、あとから追いつけます。勤務先で使える制度は子どもの用事で仕事を休むとき ― 共働き家庭が使える両立支援制度にまとめてあるので、平時のうちに一度読んでおくと、この順番を守りやすくなります。
家庭で試す3つの工夫
家庭で試す3つの工夫
- ① 「夜の連絡先カード」を1枚だけ作る:冷蔵庫の扉と、親それぞれのスマホの写真フォルダに同じものを置きます。書くのは、かかりつけ小児科の名前と電話番号・診療時間、♯8000と自分の都道府県の受付時間、♯7119(使える地域なら/対象年齢の注記つき)、自治体の休日夜間診療所、中毒110番、そして119番。番号だけでなく受付時間まで書くのが要点です。受付時間が抜けていると、夜中にかけてつながらず、そこから調べ直すことになります。
- ② 消防庁の「こどもですぐ119番」の場面を、印刷して貼る:くちびるの色、呼吸の苦しさ、けいれん、意識、水分がとれない状態、事故――迷ったときに上から目で追える形にしておきます。これは病名を当てる表ではなく、通報をためらわなくてよい線を示した表です。末尾の「その他、いつもと違う場合、様子がおかしい場合」まで含めて貼っておくと、リストに縛られずに済みます。
- ③ Q助を、落ち着いている日に一度だけ触っておく:初めて使うのが緊急時、というのがいちばん困ります。休みの日に一度開いて、症状を選ぶ画面の流れを見ておくだけで十分です。スマートフォン版なら、最も緊急度が高い判定のときにそのまま119番通報でき、自分で受診する場合は医療機関や受診手段の検索もできることを、実際の画面で確認しておきます。
声かけの言い換え
声かけの言い換え例
「こんなことで救急車なんて呼べないよ」→ 消防庁は、ためらいによって重症が見逃されることを課題として挙げている。「呼ぶかどうか、♯7119で聞いてみよう」と、相談を挟む形に置き換える。
「明日の朝まで我慢できる?」→ 子どもに判断を預けてしまう。「いつから、どこが、どんなふうに痛い?」と、相談で聞かれることを一緒に確かめる。
「大げさにしないで」→ 次から言い出しにくくなる。「教えてくれてよかった。いま一緒に確かめよう」と、伝えたこと自体を受けとめる。
「お母さん明日仕事だから、今日は寝よう」→ 仕事の都合が先に立つと受診の判断がゆがむ。「まず具合を確かめて、仕事のことはそのあと考えるね」と順番を分ける。
確認するチェックリスト
家庭で確認するチェックリスト
- ♯8000について、自分の都道府県の受付時間を確認し、書き出してある。
- 住んでいる地域で♯7119が使えるか、使える場合の対象年齢と受付時間を確認してある。
- かかりつけ医と自治体の休日夜間診療所の連絡先を、診療時間つきで控えてある。
- 消防庁の「こども(15歳以下)ですぐに119番」の場面を、家族が見られる場所に置いてある。
- 保険証・診察券・おくすり手帳・母子健康手帳の置き場所を、家族全員が言える。
気をつけたいこと・相談先
家庭の工夫だけで抱え込まないために
この記事で紹介したのは、公的機関が公表している相談先と通報の考え方であって、症状の判断や診断、治療についての助言ではありません。同じ症状でも、子どもの年齢や持病、その日の経過によって必要な対応は変わります。ここに挙げた「すぐに119番」の場面は、消防庁が通報をためらわないでほしい状況として示したものであり、当てはまらないことが「受診しなくてよい」ことの証明にはなりません。当てはまるものがなくても、いつもと違うと感じたときは、その感覚を根拠に相談してかまいません。それは資料自身が「その他、お母さんやお父さんから見て、いつもと違う場合、様子がおかしい場合」として書いていることです。
相談先の情報は変わります。♯8000の受付時間は都道府県ごとに設定されており見直されることがあり、♯7119は実施地域が段階的に広がっています。この記事の記載は確認日時点で公表されていた内容にもとづくものなので、実際に使う番号と時間は、お住まいの都道府県・市区町村の公式サイトで確認してください。地域によっては、♯7119以外の独自の番号で救急電話相談を行っている場合もあります。
まとめとして、家庭が持っておくとよい入口を並べておきます。休日・夜間の子どもの症状で判断に迷うときは♯8000(受付時間は都道府県ごとに異なる)。救急車を呼ぶかどうか迷うときは♯7119(実施地域と対象年齢に地域差あり)。画面で緊急度の目安を確かめたいときは消防庁の全国版救急受診アプリ「Q助」。生後1か月から6歳までの子どもについては、日本小児科学会が監修する「こどもの救急(ONLINE-QQ)」。誤飲・誤食が疑われるときは中毒110番(大阪 072-727-2499/つくば 029-852-9999、たばこ誤飲専用の自動音声 072-726-9922)。そして、上に挙げた場面に当てはまるときや、様子が明らかにいつもと違うときは119番です。夜に子どもを一人にする時間がある家庭では、留守番を始める前に親子で確認することで、連絡手段そのものの整え方も確認しておいてください。
出典・参考
- 総務省消防庁「救急車を上手に使いましょう ~救急車 必要なのはどんなとき?~」(令和7年10月発行)
- 総務省消防庁「『令和7年版 救急・救助の現況』の公表」(令和8年1月20日)
- 総務省消防庁「救急安心センター事業(♯7119)ってナニ?」
- 総務省消防庁「全国版救急受診アプリ(愛称「Q助」)」
- 厚生労働省「上手な医療のかかり方 ― 子どもの症状は♯8000」
- 厚生労働省「子ども医療電話相談事業(♯8000)について」(実施状況は令和8年5月22日現在)
- こども家庭庁「もしものために」(こどもの事故防止・応急手当)
- 公益社団法人 日本小児科学会 監修「こどもの救急(ONLINE-QQ)」(厚生労働省研究班)
- 公益財団法人 日本中毒情報センター「中毒110番・電話サービス(一般専用)」
この記事について
本記事は、夜間や休日など診療時間外に子どもの体調が急に崩れた場面を想定し、総務省消防庁・厚生労働省・こども家庭庁・日本小児科学会・日本中毒情報センターが公表している一般的な情報を、家庭向けに整理したものです。医学的な診断・治療の判断や、個別の症状についての助言を行うものではありません。症状の現れ方は年齢や持病、その日の経過によって異なります。記載内容は確認日時点で公表されていた資料にもとづきます。♯8000の受付時間は都道府県ごとに設定され見直されることがあり、♯7119は実施地域が段階的に拡大しているため、実際に使う番号・対象年齢・受付時間は、お住まいの都道府県および市区町村の公式サイトで最新の情報をご確認ください。緊急を要すると感じたときは、この記事を読み返すより先に119番へ通報してください。