3行まとめ
- 救急車で運ばれた人の約半数は「軽症」ですが、消防庁は「軽症の中には早期に病院での治療が必要だったものも含まれている」と注記しています。「軽症だったから呼ぶべきでなかった」とは限りません。
- 迷ったときの入口は3つ。♯8000(休日・夜間の子どもの症状を小児科医師・看護師に相談)、♯7119(救急車を呼ぶか迷ったとき)、Q助(症状を選ぶと緊急度の目安が出るアプリ)。
- ただし♯7119は地域によって「概ね15歳以上」が対象で、15歳未満は♯8000へ回されます。地域の番号と受付時間を平時に控えておくことが、そのまま備えになります。
この記事でわかること
- 「救急搬送の半分は軽症」という数字を、親としてどう読めばよいか
- ♯8000・♯7119・Q助・こどもの救急という入口の役割の違い
- 子どもの場合の落とし穴(♯7119の対象年齢・受付時間の地域差)
- 消防庁が挙げる「こどもですぐに119番」の場面
連休の夜に、体温計の数字を見つめる
長い休みの最中は、平日なら立つ「明日の朝いちで小児科へ」という段取りが立ちません。スマホで検索しても、重い病気の可能性を書いたページと、たいてい心配ないと書いたページが並ぶだけです。ここでつまずいているのは医学の知識ではなく、相談していい相手がいることを知らない、あるいは番号が手元にない、というだけのことです。
「これくらいで電話していいのだろうか」という遠慮についても、消防庁は課題として書いています。♯7119の説明ページは、ためらわれる場面を挙げたうえで「しかし、もしかすると、その症状は一刻を争うサインかもしれません」と続け、隠れた重症者を発見することも♯7119の重要な役割だとしています。
「半分は軽症」という数字の、正しい読み方
消防庁「令和7年版救急・救助の現況」によれば、令和6年中に救急自動車で搬送された人は676万9,172人で、昭和38年以降で最多でした。傷病程度別では「軽症(外来診療)」が46.8%を占めます。
ここだけを読むと「半分は呼ぶ必要がなかった」と受け取りたくなりますが、同じ資料には注記が添えられています。「傷病程度は入院加療の必要程度を基準に区分しているため、軽症の中には早期に病院での治療が必要だったものや通院による治療が必要だったものも含まれている」。統計上の「軽症」は入院しなくて済んだという結果を指す言葉であって、「行かなくてよかった」という意味ではありません。
相談の入口は、ひとつではない
「119番か、朝まで様子見か」の二択で考えると、判断はいつまでも決まりません。実際には、その中間に公的な入口がいくつも用意されています。
♯8000(子ども医療電話相談事業)。厚生労働省によれば、休日・夜間の子どもの症状にどう対処したらよいか、受診したほうがよいかなど判断に迷った時に、小児科医師・看護師に電話で相談できるものです。全47都道府県で実施され、番号を押すと住んでいる都道府県の窓口に自動転送されますが、受付時間は都道府県ごとにまったく違います。アドバイスは「様子をみることができます」という形でも返ってくると明記されています。
♯7119(救急安心センター事業)は、救急車を呼んだほうがいいのかと迷った際に、医師・看護師・救急救命士から電話で助言を受けられる仕組みです。緊急性が高ければ119番通報へ転送されます。Q助は消防庁の全国版救急受診アプリで、症状を選ぶと4段階で対応が表示されます。こどもの救急(ONLINE-QQ)は厚生労働省研究班と日本小児科学会が監修するサイトで、生後1か月から6歳までの受診の目安を症状ごとに示しています。
子どもの場合の落とし穴 ― ♯7119の対象年齢
ここまで読むと「迷ったら♯7119でいい」と思えてきますが、子どもについては注意が必要です。消防庁の実施エリア一覧を見ると対象者の欄が地域によって違い、「概ね15歳以上(※15歳未満は♯8000へ)」と明記されている地域が相当数あります。小児科の専門性が要るための役割分担ですが、慌てている親にはかけ直しが一手増えます。実施地域そのものにも差があり、消防庁は現在全国41地域としています。受付時間も地域によって異なります。
ためらわずに119番、とされている場面
消防庁のパンフレット「救急車を上手に使いましょう」(令和7年10月発行)には「こども(15歳以下)」の専用ページがあり、ためらわず救急車を呼んでほしい症状が挙げられています。
- くちびるの色が紫色/顔色が明らかに悪い
- 激しい咳やゼーゼーして呼吸が苦しそう/呼吸が弱い
- 手足が硬直している
- 頭を痛がってけいれんがある/頭を強くぶつけて出血がとまらない・意識がない
- 激しい下痢や嘔吐で水分が取れず意識がはっきりしない/激しいおなかの痛み/嘔吐が止まらない/便に血がまじった
- けいれんが止まらない/止まっても意識がもどらない
- 意識がない、またはもうろうとしている/乳児の様子がおかしい
- 痛みのひどいやけど/広範囲のやけど/物をのどにつまらせて呼吸が苦しい
- 虫に刺されて全身にじんましんが出て顔色が悪くなった
- 交通事故にあった/水におぼれている/高いところから落ちた
- 生まれて3カ月未満の乳児
この一覧の末尾に、いちばん大事な一行があります。「◎その他、お母さんやお父さんから見て、いつもと違う場合、様子がおかしい場合」。当てはまらなくても、いつもと違うと感じたなら呼んでよいと明記されています。119番通報では、指令員が①救急であること②住所③症状④年齢⑤名前と連絡先の順に尋ねますが、「緊急性が高い場合は、すべてお伺いする前でも救急車が出動します」とも書かれています。
慌てている夜のための、3ステップ
ここまでを、実際に動ける形にまとめます。
①見る。上の場面に当てはまるかを確認します。当てはまらない場合も、意識ははっきりしているか、呼吸は苦しそうでないか、水分はとれているか——この三つは電話相談でもほぼ必ず聞かれます。②相談する。まず♯8000、時間外で♯7119が全年齢対象の地域ならそちら、どちらも使えなければQ助。相談は「決断の先送り」ではなく、緊急性が高ければそのまま救急出動につながる経路です。③動く。翌日の仕事の調整を先に始めると、「休めないから受診は明日」という順序で子どもの処遇が決まってしまいます。
家庭で試す3つの工夫
- ①「夜の連絡先カード」を1枚だけ作る:冷蔵庫の扉と、親それぞれのスマホの写真フォルダに同じものを置きます。かかりつけ小児科の番号と診療時間、♯8000と自分の都道府県の受付時間、♯7119(使える地域なら対象年齢の注記つき)、自治体の休日夜間診療所、中毒110番、119番。番号だけでなく受付時間まで書くのが要点です。
- ②「こどもですぐ119番」の場面を印刷して貼る:迷ったときに上から目で追える形に。病名を当てる表ではなく、通報をためらわなくてよい線を示した表です。
- ③Q助を、落ち着いている日に一度だけ触っておく:初めて使うのが緊急時、というのがいちばん困ります。
声かけの言い換え例
「こんなことで救急車なんて呼べないよ」→ 消防庁はためらいによる見逃しを課題としている。「♯7119で聞いてみよう」と相談を挟む形に。
「明日の朝まで我慢できる?」→ 子どもに判断を預けてしまう。「いつから、どこが、どんなふうに痛い?」と一緒に確かめる。
「大げさにしないで」→ 次から言い出しにくくなる。「教えてくれてよかった」と受けとめる。
「お母さん明日仕事だから、今日は寝よう」→ 仕事の都合が先に立つと判断がゆがむ。「まず具合を確かめて、仕事はそのあと」と順番を分ける。
家庭で確認するチェックリスト
- ♯8000の、自分の都道府県の受付時間を書き出してある。
- 地域で♯7119が使えるか、対象年齢と受付時間を確認してある。
- かかりつけ医と休日夜間診療所の連絡先を、診療時間つきで控えてある。
- 「こどもですぐに119番」の場面を、家族が見られる場所に置いてある。
- 保険証・診察券・おくすり手帳・母子健康手帳の置き場所を全員が言える。
家庭の工夫だけで抱え込まないために
この記事で紹介したのは、公的機関が公表している相談先と通報の考え方であって、症状の判断や診断についての助言ではありません。同じ症状でも、年齢や持病、その日の経過によって必要な対応は変わります。「すぐに119番」に当てはまらないことは、「受診しなくてよい」ことの証明にはなりません。
♯8000の受付時間は都道府県ごとに設定されて見直されることがあり、♯7119は実施地域が段階的に広がっています。実際に使う番号と時間は、お住まいの自治体の公式サイトでご確認ください。
入口をまとめます。休日・夜間の子どもの症状は♯8000、救急車を呼ぶか迷うときは♯7119、画面で目安を確かめたいときはQ助、生後1か月〜6歳はこどもの救急(ONLINE-QQ)。誤飲・誤食が疑われるときは中毒110番(大阪072-727-2499/つくば029-852-9999、たばこ誤飲専用072-726-9922)。上の場面や、明らかにいつもと違うときは119番です。
出典・参考
- 総務省消防庁「救急車を上手に使いましょう ~救急車 必要なのはどんなとき?~」(令和7年10月発行)
この出典で確認した記述
発行のねらいに「救急車で搬送された人の約半数が入院を必要としない軽症という現状もあります」と記されていること、「こども(15歳以下)」のページに、くちびるの色が紫色・顔色が明らかに悪い・激しい咳やゼーゼーして呼吸が苦しそう・呼吸が弱い・手足が硬直している・頭を痛がってけいれんがある・頭を強くぶつけて出血がとまらない/意識がない/けいれんがある・激しい下痢や嘔吐で水分が取れず食欲がなく意識がはっきりしない・激しいおなかの痛みで苦しがる・嘔吐が止まらない・便に血がまじった・けいれんが止まらない・けいれんが止まっても意識がもどらない・意識がない(返事がない)またはおかしい(もうろうとしている)・乳児の様子がおかしい・痛みのひどいやけど・広範囲のやけど・物をのどにつまらせて呼吸が苦しい/意識がない・虫に刺されて全身にじんましんが出て顔色が悪くなった・交通事故にあった(強い衝撃を受けた)・水におぼれている・高いところから落ちた・生まれて3カ月未満の乳児、が挙げられ、末尾に「◎ その他、お母さんやお父さんから見て、いつもと違う場合、様子がおかしい場合」と記されていること、判断に迷った時の案内として「子ども医療電話相談(主に休日・夜間)は♯8000、119番通報の相談は♯7119をご利用いただけます」と記されていること、119番通報時の聞き取りが「救急であることを伝える/救急車に来てほしい住所を伝える/具合の悪い方の症状を伝える/具合の悪い方の年齢を伝える/あなたのお名前と連絡先を伝える」の順であり「緊急性が高い場合は、すべてお伺いする前でも救急車が出動します」「あわてず、ゆっくりと答えてください」と記されていること、用意しておくと便利な物として保険証や診察券・お金・靴・普段飲んでいる薬(おくすり手帳)・マイナンバーカード、乳幼児の場合は母子健康手帳・紙おむつ・ほ乳瓶・タオルが挙げられていること、持病やかかりつけの病院は日頃からメモにまとめておくと便利とされていることの根拠。 - 総務省消防庁「『令和7年版 救急・救助の現況』の公表」(令和8年1月20日)
この出典で確認した記述
令和6年中の救急自動車による搬送人員が676万9,172人で昭和38年以降で最多であること、傷病程度別で「軽症(外来診療)」が317万1,350人(46.8%)、「中等症(入院診療)」が301万7,912人(44.6%)、「重症(長期入院)」が49万1,471人(7.3%)であること、傷病程度の定義に「傷病程度は入院加療の必要程度を基準に区分しているため、軽症の中には早期に病院での治療が必要だったものや通院による治療が必要だったものも含まれている」と注記されていること、年齢区分別で「乳幼児」(生後28日以上満7歳未満)が27万5,562人(4.1%)、「少年」(満7歳以上満18歳未満)が22万6,932人(3.4%)、「高齢者」が63.3%であること、現場到着所要時間の平均が約9.8分・病院収容所要時間の平均が約44.6分で令和元年と比べそれぞれ約1.1分・約5.1分延伸していることの根拠。 - 総務省消防庁「救急安心センター事業(♯7119)ってナニ?」
この出典で確認した記述
♯7119が「救急車を呼んだほうがいいのか」「今すぐ病院に行ったほうがいいのか」など判断に迷った際の相談窓口であり医師・看護師・救急救命士から電話でアドバイスを受けられる仕組みであること、相談を受けて緊急性を判断し緊急性が高い場合は迅速な救急出動につなぎ、高くない場合は受診可能な医療機関や受診のタイミングを助言すること、「どこの病院に行ったらいいか」という相談にも医療機関を紹介すること、導入自治体の利用者アンケートで約9割が「役に立った」と感じていること、救急要請がためらわれる場面として「なんとなく様子がおかしいけど、こんな症状で救急車を呼んでいいのだろうか」「夜中にサイレンを鳴らして救急車がきたら近所迷惑になりそう」が挙げられ「隠れた重症者を発見し、手遅れにならないように一刻も早く救急搬送につなげることも♯7119の重要な役割」と記されていること、深夜に息子が発熱した利用者に「緊急性は高くないから、様子を見ながら、朝になったら小児科に行きましょう」と助言し近くの小児科を紹介した事例が掲載されていること、現在全国41地域で実施されていること、実施エリア一覧に対象者として「全年齢」または「概ね15歳以上(※15歳未満は♯8000へ)」と記載され利用時間が地域ごとに異なること、「上記以外にも、♯7119以外の番号で救急電話相談等を行っている地域があります」と注記されていることの根拠。 - 総務省消防庁「全国版救急受診アプリ(愛称「Q助」)」
この出典で確認した記述
Q助が住民自らが行う緊急度判定を支援し利用できる医療機関や受診手段の情報を提供するアプリであること、症状及び症候を画面上で選択していくと緊急度に応じた必要な対応として「今すぐ救急車を呼びましょう」「できるだけ早めに医療機関を受診しましょう」「緊急ではありませんが医療機関を受診しましょう」「引き続き、注意して様子をみてください」が表示されること、スマートフォン版では最も緊急度の高い場合そのまま119番通報ができ、自力で受診する場合には医療機関の検索や受診手段の検索が行えること、大阪大学医学部附属病院の協力を得て作成されWEB版も提供されていることの根拠。 - 厚生労働省「上手な医療のかかり方 ― 子どもの症状は♯8000」
この出典で確認した記述
♯8000が「保護者の方が、休日・夜間の子どもの症状にどのように対処したらよいのか、病院を受診した方がよいのかなど判断に迷った時に、小児科医師・看護師に電話で相談できるもの」であること、全国統一の短縮番号を押すと住んでいる都道府県の相談窓口に自動転送され症状に応じた対処の仕方や受診する病院等のアドバイスを受けられること、アドバイスが「すぐに病院を受診しよう」や「様子をみることができます」という形で返されること、相談例として頭をぶつけた・咳が続いて眠れない・何度も吐く・たばこを舐めたかもしれない等が挙げられていること、各都道府県別の実施時間が厚生労働省ホームページに掲載されており確認が必要であること、「♯8000対応者研修」が毎年実施されていることの根拠。 - 厚生労働省「子ども医療電話相談事業(♯8000)について」(実施状況は令和8年5月22日現在)
この出典で確認した記述
♯8000が全47都道府県で実施されていること、実施時間帯が都道府県ごとに異なり24時間365日の県から平日は夕方18時・19時から翌朝8時まで、休日は朝8時から翌朝8時までといった形で区切られている県まで幅があること、都道府県ごとに固定の電話番号が併記されていること、携帯電話やダイヤル回線からの利用可否が都道府県ごとに示されていることの根拠。 - こども家庭庁「もしものために」(こどもの事故防止・応急手当)
この出典で確認した記述
こども医療電話相談(♯8000)が「休日・夜間のこどもの症状にどう対処したらよいのか、病院の診療を受けたほうがいいのかなど判断に迷った時に、小児科医師・看護師への電話による相談ができる」ものとして案内され、各都道府県によって相談日時が異なりダイヤル回線・IP電話の場合は各都道府県の連絡先を確認する必要があるとされていること、日本中毒情報センターの中毒110番として大阪 072-727-2499・つくば 029-852-9999・たばこ誤飲専用 072-726-9922 が案内されていること、消費者ホットライン188 が併記されていること、心肺蘇生法・AED・やけど・異物誤飲などの応急手当の情報が掲載されていることの根拠。 - 公益社団法人 日本小児科学会 監修「こどもの救急(ONLINE-QQ)」(厚生労働省研究班)
この出典で確認した記述
対象が生後1か月から6歳までの子どもであること、夜間や休日などの診療時間外に病院を受診するかどうかの判断の目安を提供するサイトであること、発熱・けいれん・吐き気・せき・腹痛・発疹・下痢・泣きやまない・頭部外傷・薬物誤飲・やけどなどの症状別に項目が用意されていること、病院を受診するかどうかの最終的な判断は家族が行うものとされていること、こどもの事故と対策のページが設けられていることの根拠。 - 公益財団法人 日本中毒情報センター「中毒110番・電話サービス(一般専用)」
この出典で確認した記述
大阪中毒110番(072-727-2499)・つくば中毒110番(029-852-9999)・たばこ専用電話(自動音声応答 072-726-9922)が案内されていること、一般市民からの相談は情報提供料が無料であること、化学物質や動植物の毒などによって起こる急性中毒について実際に事故が発生している場合に限定して情報提供を行うとされていること、家庭用品・医薬品・農業用品・自然毒・工業用品などが対象として挙げられていること、医療機関からの一般専用電話への問い合わせは有料であることの根拠。
この記事について
本記事は家庭での準備を整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や、制度の可否を判断するものではありません。研究知見や公的資料は「一つの考え方」として紹介しており、家庭や地域ごとに合う・合わないがあります。気になる場合は、専門機関・学校・自治体にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。