3行まとめ

  1. 歩行中の小学生の死者・重傷者を通行目的別に見ると、登校中232人に対して下校中は484人(令和2〜6年の合計)。時間帯も14〜15時台が最も多く、次いで16〜17時台。危ないのは「行き」より「帰り」で、しかも親が家にいないことが多い時間帯です。
  2. 政府の「登下校防犯プラン」は、共働き家庭の増加で保護者の見守りが難しくなった結果、学校から離れた自宅周辺に子どもが1人で歩く「1人区間」という空白が生じている、と分析しています。そのうえで、直接の見守りに参加できない保護者にもできることを名指しで挙げています。
  3. 家庭でできるのは、下校の時間帯に通学路を一緒に歩いて「どこで一人になるか」を目で確かめること、助けを求められる場所と渡り方をその場で決めること、そして気づいた危険を学校や自治体に戻すことです。通学路は点検して直す仕組みがあり、その体制には保護者が含まれています。

この記事でわかること

  • 小学生の登下校中の事故が、いつ・どこで・どんな形で起きているのか
  • 「1人区間」「見守りの空白地帯」という国の分析が、共働き家庭に何を示しているか
  • 通学路の危険箇所を点検・改善する仕組みと、そこに保護者がどう関われるか
  • 休みのうちにできる3つの工夫と、緊急でないときの相談先

「気をつけてね」の先が見えない朝に

始業式の朝、玄関でランドセルを背負った子どもに「気をつけてね」と声をかけて、自分は反対方向の駅に向かいます。子どもが学校に着いたかどうかは分かりません。帰りはもっと分かりません。仕事を終えて帰宅すると、子どもはすでにランドセルを放り出してテレビの前にいます。「ただいま」も「おかえり」も聞いていない一日が、そのまま終わります。

心配していないわけではありません。むしろ、毎朝小さく心配しています。ただ、心配の中身が漠然としているので、言葉にすると「気をつけてね」に丸まってしまいます。何に気をつけるのか、どこで気をつけるのかまでは、親の側も具体的に言えていない。夜のニュースで通学路の事故や声かけ事案を見た日は、急に不安が具体的になりますが、翌朝にはまた「気をつけてね」に戻ります。

ここには、共働き家庭に特有のつらさがあります。専業で家にいる家庭なら、途中まで送ることも、帰る時間に外で待つこともできる。自分にはそれができない。だから、この不安は仕事をしている自分の側の問題なのだ、と受け取ってしまいがちです。旗当番や見守り当番の輪番が回ってくると、休みを取れないことに後ろめたさを感じる方もいます。

この記事の出発点は、そこではありません。政府が平成30年にまとめた「登下校防犯プラン」という文書は、防犯ボランティアの高齢化と並べて、共働き家庭の増加に伴い保護者による見守りが困難となっていることを、対策が必要になった理由として明記しています。つまり、付き添えないことは個々の家庭の落ち度としてではなく、社会の側が引き受けるべき変化として扱われています。そのうえで同じ文書は、直接の見守りに参加できない保護者にも果たせる役割がある、と続けます。まずは数字の側から、どこに手を打つと効くのかを見ていきます。

公的情報の見方 ― 数字が示す「帰り」と「自宅の近く」

手がかりになるのは、内閣府の「令和7年交通安全白書」です。この年の白書は特集として「通学路における交通安全の確保について」を組んでおり、小学生の交通事故を状態別・学齢別・時間帯別に細かく分解しています。まず全体像として、小学生の交通事故による死者・重傷者数は平成27年の1,185人から令和6年の686人へと約42.1%減っています。全年齢層の減少幅(約30.5%)より大きく、長い目で見れば通学路の安全は改善してきました。数字が示しているのは「危険が増えている」ことではなく、「残っている危険がどこに集まっているか」です。

その残り方に特徴があります。令和2年から6年までの5年間の合計で、小学生の死者・重傷者は歩行中が1,875人(55.6%)、自転車乗用中が1,205人(35.8%)で、この二つで約9割を占めます。学齢別に見ると、歩行中は小学1年生446人・2年生453人が特に多く、3年生以降は学年が上がるにつれて減っていきます。逆に自転車乗用中は学年が上がるほど増え、6年生の282人が最多です。小学5年生以降は自転車の割合のほうが大きくなります。低学年は歩いているときに、高学年は自転車に乗っているときに事故に遭いやすい、という切り替わりが数字にはっきり出ています。

そして、この記事にとって最も重要なのが通行目的別の内訳です。歩行中の死者・重傷者を「何をしていたときか」で分けると、小学生は登校中が232人(12.4%)、下校中が484人(25.8%)で、登下校を合わせると716人・38.2%を占めます。歩行中の事故のおよそ4割が登下校中であり、しかもその内訳は下校中が登校中の約2倍です。同じ道を同じ子が歩いているのに、行きと帰りでこれだけ差が出る。理由は白書に明示されていませんが、発生時間帯の数字と重ねると像が浮かびます。歩行中の死者・重傷者を時間帯別に見ると、全年齢層では18〜19時台が最も多いのに対し、小学生では14〜15時台が最も多く、次いで16〜17時台となっています。大人の事故が集中する時間と、子どもの事故が集中する時間はずれているのです。

14時から17時は、多くの共働き家庭にとって、まだ誰も家にいない時間です。朝は集団登校や旗当番、教員の立ち番といった大人の目が集まりやすいのに対し、帰りは学年ごとに時間がばらけ、寄り道や遊びも混ざり、大人の配置も薄くなります。「帰りのほうが危ない」という感覚を持っている親は多いと思いますが、それは印象ではなく統計に表れている偏りです。備えるべき時間帯がはっきりしていることは、実は助けになります。一日中心配し続けるのではなく、下校の1〜2時間に的を絞れるからです。

登下校中の交通事故の特徴を三つのブロックで示した図。一つ目は下校中が登校中の約2倍で、歩行中の小学生の死者・重傷者は登校中232人に対し下校中484人、登下校で全体の38.2パーセントを占めること。二つ目は多いのは14時から17時台で、小学生は14から15時台が最も多く次いで16から17時台であり、全年齢層の18から19時台とずれていること。三つ目は飛び出しが最も多く、法令違反等がなかった子は40.9パーセントで全年齢層の64.9パーセントより低く、飛出し・横断違反・信号無視の順に多いこと。
図1:令和7年交通安全白書の特集から。危ないのは「行き」より「帰り」で、時間帯も大人の事故とずれている(数値はいずれも令和2〜6年の合計)。

もう一段、事故のかたちも見ておきます。歩行中の小学生の事故を歩行者側の法令違反等で分けると、違反等がなかったのは749人・40.9%です。全年齢層では違反なしが64.9%なので、小学生はそれより約24ポイント低く、およそ6割で何らかの法令違反等があったことになります。内訳は飛出しが最も多く、次いで横断違反(横断歩道外の横断、走行車両の直前直後の横断など)、信号無視、路上遊戯の順です。相手方は自動車が91.7%。道路の形でいえば交差点が918人・49.2%を占め、交差点付近と合わせると5割を超えます。

この数字は、子どもを責めるためのものではありません。読み取るべきは、事故の多くが「道を渡る」という一つの動作に集中している、ということです。だから家庭で扱う内容も、交通ルール全般をおさらいすることではなく、渡る場所と渡り方をいくつか具体的に決めることに絞れます。国の側もそこを重点に置いていて、令和8年秋の全国交通安全運動推進要綱(令和8年7月1日・中央交通安全対策会議交通対策本部決定)は、全国重点の一つ目に「歩行者の安全確保と反射材用品の着用促進」を掲げ、推進項目として、横断歩道を渡ること、信号に従うこと、そして運転者に対して手を挙げるなどして横断する意思を明確に伝え、安全を確認してから横断を始め、横断中も周囲の安全を確認することを挙げています。同じ要綱は、歩行中の幼児・児童の事故の特徴として「飛び出しによる死者・重傷者が多い」ことを挙げ、日常生活の中で保護者等から子どもへ教えることを促す取組も推進項目に含めています。

時期の話も添えておきます。同じ要綱は、歩行中の児童の死者・重傷者は登下校中の割合が全体の約4割を占めると述べたうえで、令和8年秋の全国交通安全運動を9月21日から30日までの10日間として設定しています。白書の発生月別のデータでも、小学生の歩行中の死者・重傷者は1学期の5月・6月と、2学期の10月・12月に多くなっており、特に小学1年生は4月の27人に対して6月は40人、10月は61人で最多です。学校生活に慣れ、大人の付き添いが減った頃に数字が上がる、という読み方ができます。二学期の入口である今は、まさにその手前にあたります。

あわせて、道路側のルールも変わります。要綱は、道路交通法施行令の一部を改正する政令(令和6年政令第248号)により、令和8年9月1日から、中央線等がない生活道路の法定速度が時速30キロメートルに引き下げられることを挙げ、国民に対する十分な広報が必要だと述べています。通学路の多くはこうした生活道路です。車を運転する立場でもある親にとっては、自分の運転にも直接関わる変更で、「生活道路は人が優先」という考え方を家庭の中で共有しておく機会になります。

「1人区間」と見守りの空白地帯

交通の数字が「帰りの時間帯」を指しているのに対し、防犯の側から同じ時間帯を指している資料があります。平成30年6月22日に「登下校時の子供の安全確保に関する関係閣僚会議」が決定した「登下校防犯プラン」です。新潟市で下校途中の児童が犠牲になった事件を受けてまとめられたもので、警察庁・文部科学省を中心に関係省庁が推進する枠組みになっています。

プランはまず、犯罪情勢の読み方を示します。道路上における身体犯の被害件数全体は過去5年で減少しているにもかかわらず、被害者が13歳未満の子どもである事案に限ると、ほぼ横ばいで推移している。そしてこうした子どもの被害は、登下校時、特に15時から18時の下校時間帯に集中している傾向にある、と書かれています。交通事故の集中する14〜17時台と、ほぼ重なる時間帯です。行きと帰りのどちらに手を打つかと問われたら、答えは帰りだ、と二つの資料が別々の角度から示していることになります。

続けてプランは、なぜ対策の強化が急務なのかを説明します。地域の安全に貢献してきた既存の防犯ボランティアが高齢化し担い手が不足していること。加えて、共働き家庭の増加に伴い、保護者による見守りが困難となっているうえ、放課後児童クラブや放課後子供教室で放課後を過ごす子どもが増え、下校・帰宅の在り方が多様化していること。その結果、従来の見守り活動に限界が生じ、「地域の目」が減少し、学校から距離のある自宅周辺で子どもが1人で歩く「1人区間」などにおいて「見守りの空白地帯」が生じている――というのが、この文書の現状認識です。

この二つの言葉は、家庭にとって実用的です。通学路全体を「危ないか安全か」で見ると、判断のしようがありません。けれど「1人区間」という切り口なら、自分の家の子に固有の答えが出ます。学校を出た直後は同じ方向の子と一緒でも、途中で一人ずつ抜けていき、最後の数百メートルは自分の子だけになる。その最後の区間がどこから始まるのかは、地図を見ているだけでは分かりません。実際に歩いてみると、たいてい親の想像とは違う場所から始まっています。

そして、プランが挙げる5つの柱のうち5番目「子供の危険回避に関する対策の促進」には、次の一文が置かれています。保護者が、直接的な見守り活動への参加が困難な場合であっても、自宅周辺の「1人区間」の状況や「子供110番の家」の所在地等を子供と確認すること、子供が把握した不審者情報等を聞き出すこと等、家庭においてこそ効果的に果たせる役割を踏まえた防犯の取組を推進する。見守り当番に出られない家庭を想定したうえで、その家庭にしかできないことがある、と国の対策文書が書いている。ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。

こども家庭庁の「登下校の安全Q&A」も、保護者ができることとして、自宅周辺でこどもが1人で歩くことになる「1人区間」を把握すること、危険を感じた時に助けを求めることができる「子供110番の家」や店舗等の場所をこどもと一緒に確認すること、こどもから聞いた不審者に関する情報等を警察や学校に共有することを挙げています。三つとも、平日の日中に家にいなくてもできることです。休みの日に一度歩けば済むもの、夕食の会話でできるもの、電話やメールでできるもの。付き添えないことと、備えられないことは別だ、というのが両資料に共通する立て方です。

「子供110番の家・車」についても、プランは位置づけを明確にしています。危険に遭遇した子どもの一時的な保護や警察への通報等を行うボランティアであり、教育委員会・学校において通学に係る指導等を通じて連携を一層推進し活用を強化する、とされています。さらに、防犯教育の充実の項では「子供110番の家」への駆け込み訓練や、実施主体と顔の見える関係を築くことが挙げられています。ステッカーの場所を知っているだけでなく、実際にそこまで走って入ってみる経験が想定されている、ということです。

もう一つ、プランの5番目の柱の書き出しには、家庭が読んでおくとよい前提があります。登下校時の防犯対策については「子供を極力1人にしないという観点から、安全な登下校方策を策定し実施することが重要」であり、「小学校低学年の子供に多くの役割を期待することは現実的ではない」としたうえで、それでも発達の段階に応じて危険予測・回避能力を身に付けさせる防犯教育は欠かせない、と書かれています。子どもに注意力を求めることと、そもそも一人にしない工夫をすることは、置き換え可能ではない。低学年のうちは特に、教えることより一人になる時間を短くする工夫のほうが先だ、と読めます。

ちなみに、地域の見守りの担い手を広げるための考え方として、プランは「ながら見守り」を推進しています。ウォーキング、ジョギング、買物、犬の散歩、花の水やりといった日常の活動を行う際に、防犯の視点を持って見守りを行うというものです。これは在宅時間の長い人だけのものではありません。在宅勤務の日に下校時刻に合わせてゴミ出しに出る、休みの日の買物を14時台にする、といった形なら共働きの家庭でも無理なく重なります。プランやQ&Aは、見守りボランティアへ感謝を伝えることも活動を続けるうえで重要だとしています。当番に出られない代わりにできることとして、覚えておいて損はありません。

通学路は、点検して直す対象になっている

三つ目に押さえておきたいのは、通学路の危険が「気をつけるしかないもの」ではなく、点検して直す対象として制度化されている、という点です。ここを知らないと、危ない場所に気づいても家庭の中の注意喚起で終わってしまいます。

白書の特集によれば、通学路の点検は平成24年4月に京都府亀岡市で登校中の児童等の列に自動車が突入し3人が死亡・7人が重軽傷を負う事故が起きるなど、登下校中の事故が相次いだことを受けて始まりました。同年5月末から全国約2万の公立小学校等の通学路を対象に、教育委員会・学校、道路管理者、警察が連携し、保護者や地域住民等の協力を得て緊急合同点検が行われ、対策が必要な箇所として7万4,483か所が洗い出されています。

この取組はその後、継続的な仕組みとして整えられました。平成25年12月に文部科学省・国土交通省・警察庁が基本的な進め方を取りまとめ、地域ごとに「通学路交通安全プログラム」に基づく推進体制を作ることになっています。ここで注目したいのは体制の構成です。推進体制には教育委員会・学校、PTA、警察、道路管理者を含めることが基本とされ、合同点検の体制についても「教育委員会・学校、保護者、警察、道路管理者を含む体制とすることを基本とする」と明記されています。点検・対策の実施・効果の把握・改善というPDCAサイクルを繰り返すこと、そして抽出した対策必要箇所について対策箇所図と対策一覧表を作成し公表することも定められています。

言い換えれば、保護者は点検される側でも、注意される側でもなく、点検する体制の構成員として最初から想定されています。「あの交差点は、車が曲がってくるのに歩道がない」「あの塀のせいで、渡る前に左が見えない」といった気づきは、家庭の中で共有して終わらせるより、学校やPTAを通じて点検の場に持ち込むほうが筋が通っています。すぐに工事が始まるとは限りませんが、白書には、令和3年6月に千葉県八街市で下校中の児童の列にトラックが衝突した事故を受けた緊急対策のもとで、全国で7万6,404か所の対策必要箇所が抽出され、注意喚起看板の設置といった暫定的な対策を含めて令和5年度末までに全ての箇所で安全対策が講じられた、と記録されています。動く仕組みではある、ということです。

ハード面の効果も数字で示されています。生活道路の速度を抑える「ゾーン30」は平成23年から整備が進み、令和6年度末までに4,410地区が整備されました。令和4年度末までに整備された4,288地区について整備前年度と整備翌年度を比べると、交通死亡事故・重傷事故の件数は28.7%の減少、そのうち対歩行者・自転車の事故は26.2%の減少となっています。子どもの注意力に頼らずに危険そのものを減らす方法があり、実際に減っている。家庭でできることの話をする前に、この前提を置いておきたいと思います。家庭の工夫は、道路や地域の対策の代わりではなく、その上に重ねる薄い一枚です。

家庭で試す3つの工夫

ここまでを、長い休みの終わりにできる形へ落とし込みます。どれも平日の日中に家にいることを前提としていません。

家庭でできる3ステップの図。ステップ1は歩く。下校の時間帯に通学路を子どもと一緒に歩き、どこから一人になるかを目で確かめる。ステップ2は決める。助けを求められる場所を指さして決め、渡る場所と渡り方をその場で一つずつ確かめる。ステップ3は伝える。気づいた危険は学校やPTAへ戻し、不審な出来事は警察や学校に共有する。という流れを示している。
図2:休みのうちにできる3ステップ。「歩く・決める・伝える」の順に進めると、付き添えない時間帯の備えが具体的になる。

家庭で試す3つの工夫

  • ① 下校の時間帯に、通学路を一緒に歩いて「1人区間」を決める:朝ではなく、14時から16時ごろに歩くのがポイントです。日差しの向き、路上駐車の位置、車の量、人通りは、朝と午後でまったく違います。歩きながら「ここまでは誰と一緒?」「ここからは一人?」と確かめていくと、どこから「1人区間」が始まるのかが具体的な地点として分かります。多くの場合、それは学校の近くではなく自宅の手前です。低学年のうちは、その区間だけでも一緒に歩ける日を作る、学童からの帰り道を誰かと重ねる、といった形で「一人の時間を短くする」工夫のほうが、注意を促すより効きます。登下校防犯プランも、子どもを極力1人にしないという観点から安全な登下校方策を実施することが重要であり、低学年に多くの役割を期待することは現実的ではない、と述べています。
  • ② 「助けを求める場所」と「渡り方」を、地図ではなく現場で決める:歩きながら、「子供110番の家」のステッカーがある家、開いている店、交番の位置を、指さして一つずつ確かめます。こども家庭庁の資料も、危険を感じた時に助けを求めることができる「子供110番の家」や店舗等の場所を、こどもと一緒に確認することを保護者ができることとして挙げています。可能なら、実際にそこまで走って入ってみる駆け込み訓練までやっておくと、いざというときに足が動きます。あわせて、渡る場所を2〜3か所に絞って決めます。事故は交差点とその付近で5割を超え、原因は飛出しと横断違反が上位です。全国交通安全運動の推進項目にならって、「一度止まる・手を挙げるなどして渡る意思を伝える・運転している人が止まったのを見てから渡り始める・渡っている間も周りを見る」の4つだけを、その場で実演して決めておきます。数を増やさないほうが残ります。
  • ③ 気づいた危険を、家庭の中で終わらせずに戻す:歩いてみると、たいてい1つや2つ、気になる場所が見つかります。見通しの悪い角、歩道のない直線、通り抜けの車が多い道。それを「あそこは危ないから気をつけて」で終わらせず、連絡帳や保護者会、PTAの役員、自治体の担当課へ一言戻します。通学路の合同点検は、教育委員会・学校、保護者、警察、道路管理者を含む体制で行うことが基本とされていて、保護者は最初から構成員に数えられています。不審な人に声をかけられた、後をついてこられたといった出来事についても、こども家庭庁は、こどもから聞いた情報を警察や学校に共有することを保護者の役割として挙げています。自分の子が無事だった話ほど「大げさかもしれない」と黙りがちですが、その情報が次の見守りの配置を変えることがあります。

声かけの言い換え

声かけの言い換え例

「気をつけてね」→ 何にどこで気をつけるかが入っていないため、行動が変わりにくい。「今日の帰り、どこから一人になる?」と聞くと、子ども自身が区間を意識できる。

「知らない人にはついて行かないでね」→ 子どもにとって「知らない人」の線引きは難しい。「怖いと思ったら、あの店かステッカーの家に入っていいよ」と、逃げ込む先を場所で示すほうが動ける。

「車が来てないかちゃんと見なさい」→ 見る対象が広すぎる。「一回止まって、手を挙げて、車が止まったのを見てから渡ろう」と動作に分けると、その場で練習できる。

「なんでそんな遠回りして帰ったの」→ 責める形になると、次から経路を言わなくなる。「今日は誰と、どこ通って帰った?」と道順を聞く習慣にしておくと、変化に気づきやすい。

家庭で確認するチェックリスト

二学期が始まる前に確認したいこと

  • 下校の時間帯(14〜16時ごろ)に、通学路を子どもと一緒に歩いてみた。
  • 「どこから一人になるか」を、地点として親子で共有できている。
  • 助けを求められる場所(子供110番の家・開いている店・交番)を、指さして確認した。
  • 渡る場所を絞り、「止まる・手を挙げる・止まったのを見てから渡る・渡りながらも見る」を実際にやってみた。
  • 気になった箇所や不審な出来事を、学校・PTA・自治体・警察のどこに伝えるかを決めてある。

気をつけたいこと・相談先

家庭の工夫だけで抱え込まないために

この記事は、国の白書や対策文書の考え方を家庭向けに置き直した一般的な整理であり、特定の道路や地域の危険度を判定するものではありません。通学路の状況は地域ごとに大きく異なり、指定通学路や集団登校の有無、学童からの帰り方も学校によって違います。実際の判断は、学校が示している通学路や登下校のきまりを土台にしてください。

子どもの注意力に寄りかからないこと。登下校防犯プランは、小学校低学年の子どもに多くの役割を期待することは現実的ではない、と明記したうえで、子どもを極力1人にしないという観点から安全な登下校方策を実施することの重要性を述べています。家庭で教えることには意味がありますが、それは大人側の見守りや道路の対策を置き換えるものではありません。うまくできなかったことを子どもの不注意として扱わないことが、次に起きたことを話してもらえる土台になります。

危険な場所に気づいたとき。まずは学校(担任・教頭など)や教育委員会、PTAへ伝えます。通学路の合同点検は、教育委員会・学校、保護者、警察、道路管理者を含む体制で行うことが基本とされており、地域ごとの推進体制と基本的方針、対策必要箇所の一覧は公表することとされています。お住まいの自治体のサイトで「通学路交通安全プログラム」を探すと、地域の点検結果や対策の状況が確認できることがあります。信号や横断歩道、速度規制に関することは警察、歩道やガードレール、路面の表示に関することは道路管理者(国・都道府県・市区町村)が担当します。どこに言えばよいか分からないときは、学校か自治体の担当課に一度伝えれば、関係先につないでもらえます。

不審な出来事があったとき。身の危険が迫っている、今まさに不審な人がいるといった緊急の場合は110番です。事件や事故には至っていないけれど不安がある、声をかけられた、後をつけられた気がする、といった相談には、全国共通の短縮ダイヤル「#9110」(警察相談専用電話)があります。警察庁の案内によれば、電話をかけると発信地を管轄する各都道府県警察本部等の総合窓口に直接つながり、携帯電話からも利用できます(ダイヤル回線と一部のIP電話からは利用できないため、各警察本部の一般の番号を使います)。土日祝日および夜間は当直や音声案内等で対応しており、各警察署でも各種相談に応じています。学校にも同時に伝えておくと、不審者情報として学校から地域や他の家庭へ共有される仕組みにつながります。

なお、ここで挙げた統計・制度・窓口の内容は、各資料の公表時点のものです。交通ルールや対策の枠組みは改正されることがあり、生活道路の法定速度のように施行日が定められている変更もあります。最新の情報は、内閣府・警察庁・こども家庭庁・文部科学省および各自治体の公式サイトでご確認ください。

出典・参考

  • 内閣府「令和7年交通安全白書」特集 通学路における交通安全の確保について 第1章第1節 状態別にみた小学生の交通事故の状況
    小学生の交通事故による死者・重傷者数が平成27年の1,185人から令和6年の686人へ約42.1%減少(全年齢層は約30.5%減)したこと、令和2〜6年の合計で小学生は歩行中1,875人(55.6%)・自転車乗用中1,205人(35.8%)であること、学齢別では歩行中が小学1年生446人・2年生453人で特に多く自転車乗用中は6年生282人が最多であること、歩行中の通行目的別で登校中232人(12.4%)・下校中484人(25.8%)・合計716人(38.2%)であること、発生時間帯別で小学生は14〜15時台が最多・次いで16〜17時台(全年齢層は18〜19時台が最多)であること、発生月別で小学1年生は4月27人・6月40人・10月61人であること、歩行者の法令違反等別で違反なしが749人(40.9%、全年齢層は64.9%)で約6割に法令違反等があり飛出し・横断違反・信号無視・路上遊戯の順に多いことの根拠。https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/r07kou_haku/zenbun/genkyo/feature/feature_1_1.html(確認日 2026-08-16)。
  • 内閣府「令和7年交通安全白書」特集 第1章第2節 事故の類型にみた小学生の交通事故の状況
    歩行中の死者・重傷者を道路形状別に見ると小学生は交差点が918人(49.2%)で交差点付近と合わせると5割を超えること、相手当事者別では小学生の歩行中の死亡事故・重傷事故のうち自動車が1,679件(91.7%)であること、「ゾーン30」が平成23年から整備され令和6年度末までに4,410地区が整備されたこと、令和4年度末までに整備した4,288地区の整備前後比較で交通死亡事故・重傷事故件数が28.7%減少し対歩行者・自転車の事故は26.2%減少したことの根拠。https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/r07kou_haku/zenbun/genkyo/feature/feature_1_2.html(確認日 2026-08-16)。
  • 内閣府「令和7年交通安全白書」特集 第2章 通学路における交通安全の確保に向けた取組(第1節 通学路点検の始まり/第2節 緊急対策への取組)
    平成24年4月の京都府亀岡市の事故等を受けて全国約2万の公立小学校等の通学路で緊急合同点検が行われ対策必要箇所7万4,483か所が抽出されたこと、平成25年12月に文部科学省・国土交通省・警察庁が基本的な進め方を取りまとめ「通学路交通安全プログラム」に基づく推進体制(教育委員会・学校、PTA、警察、道路管理者を基本とする構成)を地域ごとに構築することとしたこと、合同点検の体制は「教育委員会・学校、保護者、警察、道路管理者を含む体制とすることを基本とする」とされていること、PDCAサイクルの実施方針および対策箇所図・対策一覧表の公表が定められていること、令和3年6月の千葉県八街市の事故を受けた緊急対策のもとで全国7万6,404か所の対策必要箇所が抽出され暫定的な安全対策を含めて令和5年度末までに全箇所で安全対策が講じられたことの根拠。https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/r07kou_haku/zenbun/genkyo/feature/feature_2_1.htmlhttps://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/r07kou_haku/zenbun/genkyo/feature/feature_2_2.html(確認日 2026-08-16)。
  • 「登下校防犯プラン」(平成30年6月22日 登下校時の子供の安全確保に関する関係閣僚会議)
    道路上における身体犯の被害件数全体は過去5年で減少しているのに13歳未満の子供に限定するとほぼ横ばいであり子供の被害は登下校時・特に15時から18時の下校時間帯に集中していること、防犯ボランティアの高齢化に加え「共働き家庭の増加に伴い、保護者による見守りが困難となっている」こと・放課後児童クラブ等で過ごす子供が増え下校帰宅の在り方が多様化していること、その結果「地域の目」が減少し学校から距離のある自宅周辺で子供が1人で歩く「1人区間」等において「見守りの空白地帯」が生じているという現状認識、5つの柱の構成、「子供を極力1人にしないという観点から、安全な登下校方策を策定し実施することが重要」「小学校低学年の子供に多くの役割を期待することは現実的ではないものの、子供自身にも、発達の段階に応じて、危険予測・回避能力を身に付けさせるための防犯教育を行うことは不可欠」との記述、「保護者が、直接的な見守り活動への参加が困難な場合であっても、自宅周辺の『1人区間』の状況や『子供110番の家』の所在地等を子供と確認すること、子供が把握した不審者情報等を聞き出すこと等、家庭においてこそ効果的に果たせる役割を踏まえた防犯の取組を推進する」との記述、「子供110番の家・車」が危険に遭遇した子供の一時的な保護や警察への通報等を行うボランティアでありその駆け込み訓練や実施主体との顔の見える関係の構築が挙げられていること、ウォーキング・ジョギング・買物・犬の散歩・花の水やり等の日常活動の際に防犯の視点を持つ「ながら見守り」の推進の根拠。https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/bouhan/tougekou/bouhanpuran.pdf(確認日 2026-08-16)。
  • こども家庭庁「登下校の安全Q&A」(登下校防犯ポータルサイト)
    保護者ができることとして、自宅周辺でこどもが1人で歩くことになる「1人区間」を把握すること、危険を感じた時に助けを求めることができる「子供110番の家」や店舗等の場所をこどもと一緒に確認すること、こどもから聞いた不審者に関する情報等を警察や学校に共有することが挙げられていること、個人でできる見守りとしてジョギング・水やり・犬の散歩等をしながら行う「ながら見守り」が挙げられていること、見守りボランティアへ感謝の気持ちを伝えることが活動を継続する上で重要とされていることの根拠。https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/bouhan/Q&Ahttps://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/bouhan/(確認日 2026-08-16)。
  • 内閣府「令和8年秋の全国交通安全運動推進要綱」(令和8年7月1日 中央交通安全対策会議 交通対策本部決定)
    運動期間が令和8年9月21日から30日までの10日間であること、全国重点の一つ目が「〈歩行者〉歩行者の安全確保と反射材用品の着用促進」であること、趣旨に「歩行中児童の死者・重傷者は登下校中の割合が全体の約4割を占める」と記されていること、道路交通法施行令の一部を改正する政令(令和6年政令第248号)により令和8年9月1日から生活道路における法定速度が30キロメートル毎時に引き下げられること、推進項目として「横断歩道を渡ること、信号機のあるところではその信号に従うこと」「運転者に対して横断する意思を手を挙げるなどして明確に伝え、安全を確認してから横断を始めること、横断中も周囲の安全を確認すること」「歩行中幼児・児童の交通事故の特徴(飛び出しによる死者・重傷者が多いなど)等を踏まえた交通安全教育等の推進」「安全に道路を通行することについて、日常生活や教育現場における保護者等から幼児・児童への教育を促す取組の推進」「通学路交通安全プログラム等に基づく点検や対策の推進」が挙げられていることの根拠。https://www8.cao.go.jp/koutu/keihatsu/undou/r08_aki/youkou.html(確認日 2026-08-16)。
  • 警察庁「警察相談専用電話『#9110』」
    電話での相談には全国共通の短縮ダイヤル「#9110」が利用でき、発信地を管轄する各都道府県警察本部等の総合窓口に直接つながること、携帯電話からも利用できるがダイヤル回線および一部のIP電話では利用できないため各警察本部の番号にかける必要があること、土日祝日および夜間は当直または音声案内等により対応していること、各警察署でも各種相談に応じていることの根拠。https://www.npa.go.jp/bureau/soumu/soudan/soudanmadoguti.pdf(確認日 2026-08-16)。

この記事について

本記事は、登下校時の交通安全と防犯について、内閣府「令和7年交通安全白書」、政府の「登下校防犯プラン」、こども家庭庁および警察庁の公開資料をもとに、家庭での備え方を一般的に整理したものです。特定の道路・地域・学校の危険度を判定するものではなく、法律・医療・防犯の専門的な助言に代わるものでもありません。紹介した統計・制度・窓口の情報は各資料の公表時点のものであり、内容や施行時期は更新されることがあるため、最新の情報は各公式サイトでご確認ください。通学路や登下校のきまりについては、お子さんが通う学校の案内を優先してください。危険を感じる場所や不審な出来事があるときは、学校・教育委員会・自治体・警察にご相談ください。

筆者コメント