3行まとめ
- 出席停止の期間は、学校が決めているのではなく、学校保健安全法施行規則第19条が感染症の種類ごとに定めている。インフルエンザなら「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」で、この二つの条件を両方満たすまでとされている。
- だから、終わりの日は初日には決まらない。解熱の日が動けば、登校再開の日も動く。日数の数え方は、こども家庭庁のガイドラインが「解熱等の現象がみられた日は期間には算定せず、その翌日を1日目とします」と示している。
- 出席停止は、記録の上では欠席にならない。文部科学省が示す指導要録の様式では、学校保健安全法第19条による出席停止の日数は「出席停止・忌引等の日数」に入り、授業日数から差し引かれるため、「欠席日数」には算入されない。
この記事でわかること
- 出席停止を決めているのは誰で、家庭には何がどう伝えられることになっているのか
- インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症など、主な感染症ごとの期間の基準(条文そのままの文言)
- 「発症した後5日」「解熱した後2日」を、実際のカレンダーでどう数えるのか
- 登校許可証明書や治癒証明書が求められるのかどうか、そして地域によって扱いが違う理由
- 保育園の場合に使われる「登園のめやす」という言葉との違い
- 終わりの日が読めない前提で、共働きの家庭が先に決めておけること
「今日から何日、休みになりますか」と聞けない朝
朝、子どもの体が熱い。体温計を見て、今日は無理だと分かる。ここまでは、どの家庭にも起きることです。共働きの家庭で次に来るのは、ほぼ確実に「どちらが休むか」と「何日分の調整が要るか」という二つの問いです。前者は話し合えば決まりますが、後者は、その場では答えが出ません。
受診して診断名がついても、医療機関から渡されるのは治療の説明であって、学校に行ける日ではないことが多い。学校に連絡すると「出席停止の扱いになります」と言われる。この言葉は、家庭の側からは処分のようにも、手続きのようにも聞こえます。実際には、感染を広げないために学校が行う措置の名前で、子ども個人の行いを評価するものではありません。しかし、そのことも、期間の決まり方も、電話口の短いやりとりでは伝わりきりません。
そして、いちばん困るのが期間です。職場に連絡するときは「今週いっぱい休みます」と言えると助かるのに、初日にはそれが言えない。仕方なく「とりあえず今日と明日」と伝え、翌日また同じ連絡を繰り返すことになります。連絡のたびに気が重くなり、相手の反応を気にする回数が増える。この繰り返しが、共働きの家庭にとっての本当の負担になっていきます。
ここで知っておくと構えが変わるのは、この「決まらなさ」は家庭の準備不足でも、学校の説明不足でもなく、制度の作りに由来しているという点です。次の節から、その作りを条文で確認していきます。仕組みが分かると、少なくとも「なぜ答えが出ないのか」を職場に説明できるようになります。
公的情報の見方 ― 出席停止は、校長が指示するもの
まず、誰が何を決めるのかを、法令の側から順に見ていきます。土台になるのは学校保健安全法(昭和33年法律第56号)です。同法第19条は「校長は、感染症にかかつており、かかつている疑いがあり、又はかかるおそれのある児童生徒等があるときは、政令で定めるところにより、出席を停止させることができる」と定めています。主語は校長です。担任でも、保護者でも、医療機関でもありません。
次に、その進め方を定めているのが学校保健安全法施行令(昭和33年政令第174号)です。同令第6条第1項は、校長が出席を停止させようとするときは「その理由及び期間を明らかにして」、小中学生であれば保護者に、高校生等であれば本人に「これを指示しなければならない」としています。ここは家庭にとって実用的な条文です。理由と期間を明らかにして指示することは、校長の側に課された義務として書かれているため、期間があいまいなまま宙に浮いた状態は、本来の形ではありません。学校に「いつまでの扱いになりますか」と尋ねるのは、遠慮すべきお願いではなく、制度が予定している確認です。
そして、その期間の中身を決めているのが学校保健安全法施行規則(昭和33年文部省令第18号)です。同令第6条第2項が「出席停止の期間は、感染症の種類等に応じて、文部科学省令で定める基準による」としており、その文部科学省令がこの施行規則にあたります。施行規則第18条が「学校において予防すべき感染症の種類」を第一種・第二種・第三種に分け、第19条が種類ごとの期間の基準を定める、という構造です。
第18条第1項第2号によれば、第二種は「インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く。)、百日咳、麻しん、流行性耳下腺炎、風しん、水痘、咽頭結膜熱、新型コロナウイルス感染症(中略)、結核及び髄膜炎菌性髄膜炎」です。学齢期の家庭が実際に出会いやすいものは、この第二種にほぼ収まっています。こども家庭庁のガイドラインは、第二種を「空気感染又は飛沫感染する感染症で、児童生徒等の罹患が多く、学校において流行を広げる可能性が高い感染症」と説明しています。
そのうえで第19条第2号は、第二種(結核と髄膜炎菌性髄膜炎を除く)について、次の期間としています。読みやすいように条文の文言を並べます。
- インフルエンザ(特定鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く)……「発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日(幼児にあつては、三日)を経過するまで」
- 新型コロナウイルス感染症……「発症した後五日を経過し、かつ、症状が軽快した後一日を経過するまで」
- 百日咳……「特有の咳が消失するまで又は五日間の適正な抗菌性物質製剤による治療が終了するまで」
- 麻しん……「解熱した後三日を経過するまで」
- 流行性耳下腺炎……「耳下腺、顎下腺又は舌下腺の腫脹が発現した後五日を経過し、かつ、全身状態が良好になるまで」
- 風しん……「発しんが消失するまで」
- 水痘……「すべての発しんが痂皮化するまで」
- 咽頭結膜熱……「主要症状が消退した後二日を経過するまで」
この一覧を眺めると、期間の決め方が二通りに分かれていることが見えてきます。ひとつは日数で区切る型(インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、麻しん、咽頭結膜熱など)、もうひとつは症状の消え方で区切る型(風しん、水痘、百日咳など)です。後者は、そもそもカレンダー上の日数を先に読むことができません。「あと何日ですか」と聞かれても答えようがない種類がある、ということです。
さらに、第19条第2号には全体にかかる但し書きがあります。「ただし、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めたときは、この限りでない」。つまり、この日数は上限でも固定値でもなく、医師の判断が入る余地を残した基準として書かれています。家庭の側でカレンダーを数えて出した日と、学校から伝えられる日が食い違うことがあるのは、この但し書きと、次に見る数え方の運用差によるものです。最終的に登校を再開する日は、学校からの指示に従ってください。
あわせて知っておきたいのが、第19条には本人が発症した場合以外の号もあることです。第4号は「第一種若しくは第二種の感染症患者のある家に居住する者又はこれらの感染症にかかつている疑いがある者」について、第5号・第6号は感染症が発生した地域から通学する者や流行地を旅行した者について、それぞれ出席停止の対象になりうると定めています。きょうだいが感染したときに、発症していない子まで登校を控えるよう案内されることがあるのは、こうした規定が背景にあります。判断は学校医の意見等を踏まえて行われるため、家庭で先回りして決めるものではありませんが、「そういう場合もある」と知っていれば、急な連絡に慌てずにすみます。
日数の数え方 ― 終わりの日は、初日には決まらない
ここが、この記事でいちばん実務的な部分です。条文は「発症した後五日を経過し」と書いていますが、発症した当日を1日目と数えるのか、翌日から数えるのかは、条文自体には書かれていません。この点を明示的に説明している公的資料が、こども家庭庁の「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」です。同ガイドラインは学校保健安全法施行規則第19条の基準を引用したうえで、「出席停止期間の算定では、解熱等の現象がみられた日は期間には算定せず、その翌日を1日目とします」と述べています。
ガイドラインは具体例も挙げています。「解熱した後3日を経過するまで」の場合、解熱を確認した日が月曜日であれば、その日は算定せず、火曜日(1日目)・水曜日(2日目)・木曜日(3日目)の3日間を休み、金曜日から登園可能になる、という数え方です。「発症した後5日」についても同様で、ガイドラインは「発症した日(発熱が始まった日)は含まず、その翌日から1日目と数えます」としています。また、インフルエンザにおける「発症」とは「一般的には『発熱』のことを指します」とし、発熱がないのに診断された場合は「インフルエンザにみられるような何らかの症状がみられた日を『発症』した日と考えて判断します」と補足しています。
そのうえでガイドラインは、インフルエンザについて「この両方の条件を満たす必要があります」とはっきり書いています。ここが、家庭の予定が読めなくなる原因です。二つの条件のうち、発症の日は初日に確定していますが、解熱の日はまだ起きていない。したがって、初日に計算できるのは「どんなに早くてもこの日より前には戻れない」という最短の目安だけで、実際の再開日は解熱が確認された時点で初めて決まります。
数え方を、実際のカレンダーに当てはめてみます。ここでは小学生(幼児以外なので「解熱した後2日」)で、水曜日に発熱して発症した場合を考えます。条件のひとつめ、「発症した後5日」は、水曜日を算定せず、木曜(1日目)・金曜(2日目)・土曜(3日目)・日曜(4日目)・月曜(5日目)と数えて、月曜日の終わりで満たされます。もうひとつの「解熱した後2日」は、解熱がいつかによって動きます。金曜日に解熱したなら、土曜(1日目)・日曜(2日目)と数えて日曜日の終わりで満たされる。二つを重ねると、遅いほうは月曜日ですから、火曜日から登校できるという計算になります。この場合、平日で学校を休むのは水・木・金・月の4日です。
同じ発症日でも、解熱が月曜日までずれ込んだとします。すると「解熱した後2日」は火曜(1日目)・水曜(2日目)と数えて水曜日の終わりで満たされ、再開は木曜日になります。平日で休むのは6日。発症日は同じなのに、休む日数が4日と6日で変わりました。この差を初日に予測することはできません。職場への連絡が二度手間になりやすいのは、段取りが悪いからではなく、基準がこの形をしているからです。
幼児の場合は「解熱した後3日」となるため、同じ経過でもさらに1日後ろにずれます。こども家庭庁のガイドラインも、保育所における登園のめやすとして「発症した後5日経過し、かつ解熱した後3日経過していること(乳幼児の場合)」を挙げています。きょうだいで小学生と園児がいる家庭では、同じ日に発症しても復帰の日が一致しないことがある、ということでもあります。
なぜ、解熱してもすぐには戻れない形になっているのか。厚生労働省の「令和7年度 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A」は、インフルエンザについて「一般的に、インフルエンザ発症前日から発症後3~7日間は鼻やのどからウイルスを排出するといわれています」と説明し、あわせて「解熱後もウイルスを排出するといわれています」と述べています。熱が下がったことと、他の子にうつさない状態になったことは、同じタイミングではない。出席停止の期間が解熱の先まで続くのは、この時間差に対応するためです。ここが腑に落ちると、「もう元気そうなのに休ませるのか」という気持ちの引っかかりが少し軽くなります。
もうひとつ、初日に予測できない理由として潜伏期間があります。こども家庭庁のガイドラインは、インフルエンザの潜伏期間を「1~4日」としています。家庭内で一人が発症した時点で、他の子がすでにうつっている可能性も、これから発症する可能性も残っている。共働きの家庭にとっては、一人分の休みで終わらないことがあるという点のほうが、日数の計算より影響が大きい場合があります。この前提を先に共有しておくかどうかで、二人目が発症したときの家庭内の空気が変わります。
記録の上では「欠席」にならない
もう一つ、家庭で誤解されやすいところを確認しておきます。出席停止で休んだ日は、指導要録の上で欠席として記録されるのか、という点です。
文部科学省が示している〔別紙1〕「小学校及び特別支援学校小学部の指導要録に記載する事項等」には、「出欠の記録」の各項目の定義が書かれています。それによると、「出席停止・忌引等の日数」の欄には「学校教育法第35条による出席停止日数、学校保健安全法第19条による出席停止日数」などを合算して記入することとされています。そして「出席しなければならない日数」は「授業日数から出席停止・忌引等の日数を差し引いた日数」、「欠席日数」は「出席しなければならない日数のうち病気又はその他の事故で児童が欠席した日数」と定義されています。
順に追うと、感染症による出席停止の日数は、まず「出席停止・忌引等の日数」に入り、その分が授業日数から差し引かれます。差し引かれた後の「出席しなければならない日数」が欠席日数を数える母数になるので、出席停止の日は欠席日数には算入されないという関係になります。同じ組み立ては高等学校の様式でも共通で、〔別紙3〕「高等学校及び特別支援学校高等部の指導要録に記載する事項等」でも「出席しなければならない日数」は「授業日数から出席停止・忌引等の日数及び留学中の授業日数を差し引いた日数」と定義されています。
これは、家庭にとって現実的な意味を持つ情報です。感染症で長く休むことになったとき、「休みすぎたことが記録に残るのではないか」という心配から、まだ基準を満たしていない段階で登校させたくなることがあります。制度の設計は、その方向に家庭を追い込まないようにできている、と読むことができます。もっとも、記録上の扱いと、授業に追いつくための手当ては別の話です。長く休んだあとの学習面については、担任や学校に相談したうえで、家庭の側は生活のリズムを戻すところから始めるくらいの順番がよいと思います。
登校許可証明書は、全国共通の決まりではない
「治ったという証明書を持ってきてください」と学校から言われることがあります。一方で、保護者が記入する用紙で足りる学校もあります。この違いに戸惑う家庭は多いのですが、これは学校の対応にばらつきがあるという話ではなく、そもそも全国一律の法令上の義務として定められていないことに由来します。学校保健安全法施行令第6条が求めているのは、校長が理由と期間を明らかにして指示することであって、家庭が証明書を提出することではありません。
こども家庭庁のガイドラインは、この点について保育所を対象にしつつ考え方を示しています。「罹患した子どもが登園を再開する際の取扱いについては、個々の保育所で決めるのではなく、子どもの負担や医療機関の状況も考慮して、市区町村の支援の下、地域の医療機関、地区医師会・都道府県医師会、学校等と協議して決めることが大切になります」。そして、その協議の結果として「意見書(医師が記入)」または「登園届(保護者が記入)」を提出する取扱いが考えられるとしたうえで、「一律に作成・提出が必要となるものではありません」と明記しています。証明書の要否は地域単位で決まる、という構造です。
実際の運用例を一つ見ておきます。東京都調布市は「『登校・登園許可証明書』の取り扱い」というページを公開しており、市内の保育施設等や市立小・中学校について、再登園・再登校の際に書類の提出をお願いする方針を示しています。特徴的なのは、感染症の種類で書式を分けている点です。インフルエンザと新型コロナウイルス感染症は保護者が記入する「登校・登園許可申請書」、それ以外の感染症は医師に記入を依頼する「登校・登園許可証明書」とされています。受診が集中しやすい二つについて、家庭が再受診しなくてすむ形にしている、と読めます。
費用についても記載があります。同ページは「証明書等の文書料は原則として医療機関が徴収すべきもの」としたうえで、調布市医師会所属の医療機関に限り、指定様式を使用する場合は文書料の徴収を控えてもらうよう配慮を得ていると説明し、あわせて医療機関によっては徴収することがあると付記しています。証明書に費用がかかるかどうかも、地域と医療機関によって変わるということです。この記事は特定の自治体の運用を勧めるものではありません。ここで確認したいのは、「うちの学校はなぜ証明書が要るのか」と考えるより、通っている学校・園の案内を先に見るほうが早い、という一点です。
家庭で用意しておけることは、そう多くありません。学校や園から配られている感染症関係の書式が、紙で来ているのか、学校の連絡アプリやウェブサイトからダウンロードする形なのかを、体調が悪くなる前に一度確認しておく。それだけで、受診の日に「様式を持っていくかどうか」で迷わずにすみます。
保育園は「登園のめやす」という別の言葉を使う
きょうだいで小学校と保育園に分かれている家庭では、言葉の違いにも戸惑います。学校では「出席停止」、保育園では「登園のめやす」と言われることが多いのですが、これも運用の揺れではなく、根拠の違いによるものです。
こども家庭庁のガイドラインは、「保育所は児童福祉施設ではありますが、子どもの健康診断及び保健的対応については学校保健安全法に準拠して行われています」と述べ、学校保健安全法に規定された感染症対策が「保育所における感染症対策を実施する上で参考になるもの」だとしています。つまり保育所は、学校保健安全法が直接適用される施設ではなく、その基準に準じて登園のめやすをあらかじめ確認しておく、という立て付けです。同ガイドラインは「学校保健安全法施行規則に規定する出席停止の期間の基準に準じて、あらかじめ登園のめやすを確認しておく必要があります」と書いています。
結果として、日数はおおむね同じになりますが、幼児の基準が使われる点が違います。インフルエンザの登園のめやすは「発症した後5日経過し、かつ解熱した後3日経過していること(乳幼児の場合)」で、学校の小学生(解熱後2日)より1日長い。新型コロナウイルス感染症については「発症した後5日を経過し、かつ、症状が軽快した後1日を経過すること」で、無症状の場合は「検体採取日を0日目として、5日を経過すること」とされています。なお「症状軽快」については、ガイドラインが「解熱剤を使用せずに解熱し、かつ、呼吸器症状(咳や息苦しさ等)が改善傾向にある状態を指します」と定義しています。
ガイドラインはまた、登園を再開する際に確認することとして、「①子どもの健康(全身)状態が保育所での集団生活に適応できる状態まで回復していること」「②保育所内での感染症の集団発生や流行につながらないこと」の二つを挙げています。日数を満たすことと、その子が集団生活に戻れる状態であることは、別々に確認される、という考え方です。園から「日数は満たしていますが、様子を見ましょうか」と言われることがあるのは、この②の視点によるものだと考えると理解しやすくなります。
共働きの家庭にとっての実務的な結論は、きょうだいの復帰日を同じ日だと思って予定を組まないことです。同じ日に発症しても、学校と園で1日ずれることがある。ずれることを前提に、遅いほうに合わせて調整の相談をしておくほうが、あとから予定を組み直す回数が減ります。
家庭で試す3つの工夫
ここからは、体調を崩す前の落ち着いている日にできることに絞ります。感染症そのものを家庭の工夫で防ぎきることはできませんが、「終わりが読めない数日間」を回すための下準備は、事前にしかできません。今日の夜に15分あればできる大きさで並べます。
家庭で試す3つの工夫
- ① 「感染症のときの一枚」を作って、目につく場所に貼る:体調を崩した朝に探すことになるものを、先に一か所へ集めます。書くのは、学校と園それぞれの欠席連絡の方法(電話番号か、連絡アプリの名前か)、感染症のときに提出する書式の入手先(配布物か、学校のウェブサイトか)、かかりつけ医の診療時間と休診日、それに勤務先へ連絡するときの手順です。ここに、施行規則第19条の主な期間の基準を1行ずつ添えておくと、電話をかける前に「最短でいつか」を自分で見積もれます。冷蔵庫の扉でも、家族の共有メモでも構いません。大事なのは、熱を出した子のそばを離れずに見られる場所にあることです。
- ② 職場には「最短の日」と「余裕を見た日」の二つを伝える:初日の連絡で終わりの日を一つだけ答えようとすると、あとで訂正することになります。代わりに、二つの日付を伝える形にします。「基準は発症からの日数と解熱からの日数を両方満たすまでなので、最短で◯日、解熱が遅れると◯日ごろまで動く可能性があります」。この言い方は、こちらの都合ではなく国が定めた基準の説明なので、伝えるほうも受け取るほうも角が立ちにくい。学校からの指示が出た時点で確定した日を伝え直す、という二段構えにしておくと、連絡の回数そのものは減らせなくても、毎回ゼロから説明する負担はなくなります。
- ③ 交代の順番と「二人目」の場合を、先に話しておく:決めておくのは三つです。初日はどちらが休むか。二日目以降をどう交代するか。そして、きょうだいの二人目が発症したときにどうするか。潜伏期間が1~4日とされている以上、一人分の休みで終わらない可能性は最初から見込んでおくほうが現実的です。このとき、勤務先で使える制度を確認しておくと選択肢が増えます(詳しくは子どもの用事で仕事を休むとき ― 共働き家庭が使える両立支援制度を参照してください)。話し合いの目的は公平な分担表を作ることではなく、熱が出た朝に交渉しなくてすむ状態を作ることです。
声かけの言い換え
この数日間は、家の中の言葉がとげとげしくなりやすい時期でもあります。子どもに向けた言葉と、大人どうしの言葉、それぞれについて場面を並べます。
声かけの言い換え例
「熱が下がったんだから、もう行けるでしょう」→ 解熱と登校再開を同じものとして扱う言い方。厚生労働省のQ&Aは解熱後もウイルスを排出するとしており、基準も解熱の先まで続く形になっている。
「熱は下がったね。ここからあと2日は、うつさないために休む決まりなんだって」→ 休む理由を体調ではなく基準の側に置く言い方。子どもの「もう元気なのに」という不満の向き先が、親から決まりへ移る。
「また休むの? 仕事どうしよう……」→ 事実としては家庭の困りごとだが、子どもは自分が原因だと受け取りやすい。次に体調が悪くても言い出しにくくなる。
「学校を休む日は決まりで決まっているから、大人の予定はこっちで調整するね」→ 調整の責任を大人の側に置く言い方。子どもに罪悪感を持たせずに、家庭が動いていることは伝わる。
「何日休むのか、学校もはっきり言ってくれない」→ 学校への不満として言葉にすると、確認そのものがしにくくなる。実際には、解熱前は誰にも確定できない。
「解熱が確認できたら、登校できる日を学校に確認しよう」→ 確認するタイミングを決める言い方。施行令は校長が理由と期間を明らかにして指示すると定めており、確認は制度が予定している行動にあたる。
「今日は私が休んだんだから、明日はそっちね」→ その場の交渉になり、疲れているときほど点数の付け合いになりやすい。
「前に決めた順番だと、明日はそっちの番だけど、動かせそう?」→ 事前に決めた順番を土台にしたうえで、当日の事情を聞く言い方。交渉の出発点が毎回ゼロに戻らない。
チェックリスト
家庭で確認したいチェックリスト
- 学校・園それぞれの欠席連絡の方法と、感染症のときに使う書式の入手先を確認してある。
- 出席停止の期間が「発症してから」と「解熱してから」の二つの条件で決まることを、家族で共有した。
- 出席停止の日は指導要録の「欠席日数」には算入されないことを知っている。
- 初日に「どちらが休むか」と「二日目以降の交代」を、あらかじめ話し合ってある。
- 登校・登園を再開する日は、家庭の計算ではなく学校・園からの指示で確定させると決めている。
気をつけたいこと・相談先
家庭の工夫だけで抱え込まないために
ここで紹介したのは「一つの考え方」であり、すべての家庭にそのまま当てはまるものではありません。この記事は法令と公的資料の読み方を整理したもので、症状の見立てや受診の要否を判断するものではありません。診断や治療、登校を再開してよい状態かどうかの判断は、診察にあたった医師の領域です。体調について気になることがあるときは、かかりつけ医や地域の医療機関にご相談ください。夜間や休日に迷ったときの相談先については、夜間・休日に子どもの具合が悪くなったら ― 相談先を先に決めておくで整理しています。
制度の面でも、家庭が単独で結論を出す必要はありません。第19条の但し書きにあるとおり、期間には医師の判断が入る余地があり、実際の出席停止の指示は校長が行います。数え方の運用や、証明書・登園届の要否は、市区町村や学校・園によって異なります。判断に迷ったときの入り口は、学校であれば養護教諭(保健室)と学級担任、園であれば担任と看護師・園長です。書式や費用の扱いについては、市区町村の教育委員会や保育担当課が案内していることもあります。「聞いてよいことなのか」と迷う内容ではなく、確認されることを前提に運用されている領域だと考えて差し支えありません。
もう一つ、家庭の空気について書いておきます。休みが続くと、子ども自身が「自分のせいで親が困っている」と感じ始めることがあります。感染症は、生活習慣の乱れでも、本人の不注意でもありません。潜伏期間が1~4日とされているように、気づいたときにはすでに感染しているのが普通です。休む理由を子どもの側ではなく基準の側に置く言い方を、この記事の言い換え例でいくつか挙げたのは、そのためです。そして、仕事の調整がつかないこと自体は、家庭の努力不足ではなく、勤務先の制度や職場の状況と関わる問題です。抱え込まず、使える制度と相談先の両方を確認してください。なお、本記事に記載した法令・基準・自治体の運用に関する情報は各資料の公表時点のものであり、改正・更新されることがあります。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。
出典・参考
- e-Gov法令検索「学校保健安全法施行規則」(昭和三十三年文部省令第十八号)第十八条・第十九条
- e-Gov法令検索「学校保健安全法」(昭和三十三年法律第五十六号)第十九条・第二十条
- e-Gov法令検索「学校保健安全法施行令」(昭和三十三年政令第百七十四号)第六条・第七条
- こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」2018(平成30)年3月(2023(令和5)年5月一部改訂、2023(令和5)年7月一部修正)
- 文部科学省〔別紙1〕「小学校及び特別支援学校小学部の指導要録に記載する事項等」/〔別紙3〕「高等学校及び特別支援学校高等部の指導要録に記載する事項等」
- 厚生労働省「令和7年度 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A」
- 調布市「『登校・登園許可証明書』の取り扱い」(掲載日 2023年5月15日/更新日 2026年1月8日)
- 文部科学省「一般的な感染症対策」/公益財団法人日本学校保健会「学校において予防すべき感染症の解説〈令和5年度改訂〉」
この記事について
本記事は、感染症により学校・園を休むときの出席停止の扱いについて、学校保健安全法および同法施行令・施行規則の条文、こども家庭庁のガイドライン、文部科学省が示す指導要録の様式、厚生労働省のQ&A、自治体の公開情報をもとに、一般的な情報として整理したものです。症状の見立て、受診の要否、登校・登園を再開してよい状態かどうかを判断するものではありません。診断および治療に関する判断は、診察にあたった医師が行うものです。出席停止の指示は校長が行い、期間には学校医その他の医師の判断が入る場合があります。また、日数の数え方の運用、証明書・登園届の要否や費用の扱いは、市区町村や学校・園によって異なります。記載した法令・基準・運用に関する情報は各資料の公表時点のものであり、改正・更新されることがありますので、実際の対応にあたっては学校・園からの案内と各公式サイトの最新情報をご確認ください。