3行まとめ
- 高卒の採用日程は、高校・経済団体・文部科学省・厚生労働省の申し合わせで決まっている。令和9年3月卒なら、7月1日に企業が学校へ求人を出し、9月5日に学校から応募書類を出し、9月16日に選考と内定が始まる。
- 高卒向けの求人は、一般のハローワークインターネットサービスでは公開されない。求人票を見られるのは学校の就職担当を通してで、家庭が自分で検索することはできない。
- 令和8年3月卒の就職率は97.9%と高い一方、就職後3年以内に離職した高卒者は37.9%。決まることと続くことは、別の数字として見ておく。
この記事でわかること
- 高卒就職の日程を、誰がどう決めているのか
- なぜ家庭では高卒求人を検索できないのか
- 「はじめは一人一社」と、複数応募ができるようになる時期
- 就職率97.9%と、3年以内離職率37.9%の読み方
- 求人票のどの欄を、家庭で一緒に見ておくか
「働く」と言われて、親が最初に困ること
高校2年の終わりか3年の春、進路希望調査の紙が家に回ってきます。「進学」「就職」「未定」に丸をつけるだけの紙なのに、子どもが「就職」に丸をつけた瞬間、親の側に情報がないことに気づきます。自分の受験のときの記憶は使えません。就職には模試も志望校一覧もなく、代わりに何があるのかが見えないからです。
調べようとして検索しても、出てくるのは企業の採用ページか、大学生向けの就職情報サイトばかりです。実際には、高校からの就職には全国共通の時刻表があります。それを知らないままだと、「もう選考が始まっている」と気づいた時点で、話し合う時間はほとんど残っていません。
7月に求人が出て、9月16日に選考が始まる
高卒の採用日程は、企業が自由に決めているわけではありません。全国高等学校長協会、主要経済団体(日本経済団体連合会・日本商工会議所・全国中小企業団体中央会)、文部科学省、厚生労働省が「高等学校就職問題検討会議」を開き、毎年その年の期日を申し合わせています。学業を優先させ、生徒が早すぎる競争に巻き込まれないようにするための仕組みです。
令和9年3月に卒業する生徒の場合、ハローワークが企業から求人申込書を受け付け始めるのが6月1日。企業が学校へ求人を申し込み、学校訪問を始められるのが7月1日。学校から企業へ生徒の応募書類を提出できるのが9月5日(沖縄県は8月30日)。企業の選考開始と採用内定開始が9月16日です。
家庭の時間感覚に置き直すと、求人票が学校にそろってから応募先を決めるまでが、実質ひと月半しかないことになります。夏休みは「まだ先の話」ではなく、いちばん考える時間がある期間です。
高卒の求人は、家庭では検索できない
親が最初につまずくのが、求人の探し方です。高卒向けの求人は「高卒就職情報WEB提供サービス」というサイトに集められていますが、このサイトの検索とダウンロードは高等学校の就職担当者向けで、利用にはハローワークが発行した利用者IDとパスワードが必要です。生徒や保護者が直接検索することはできません。一般のハローワークインターネットサービスにも、高卒求人は載りません。
つまり求人票にたどり着く道は、学校の進路指導室を通る一本しかないということです。家庭にできるのは自分で探すことではなく、子どもが持ち帰った求人票を一緒に読むことになります。
同じサイトには「求人票(高卒)の見方のポイント」「会社選びのポイント」という資料も置かれています。求人票には、仕事の内容や賃金だけでなく、就業時間、休日、就業場所、加入保険といった欄が並びます。子どもは「やりたい仕事かどうか」で見ますが、通勤や休みの現実味を確かめるのは、生活を知っている親のほうが向いています。
はじめは一人一社、複数応募は秋から
もう一つ、進学と大きく違うのが応募のしかたです。高卒就職では、応募の初期は一人が一社にしか応募しない扱いが長く続いてきました。これは法律ではなく、都道府県ごとの申し合わせで運用されています。
東京都の例では、学校からの推薦は9月5日以降、企業の選考活動は9月16日以降、複数応募が可能になるのは10月1日以降で「一人2社」までと案内されています。解禁の時期は地域によって違います。最初の1社を選ぶ重さが、進学の併願とはまったく違うということです。
家庭で押さえておきたいのは、自分の子どもの学校ではどうなっているかを早めに聞いておくことです。校内選考の有無、複数応募が可能になる日付は、学校からの案内が正確な情報になります。三者面談は、その確認をする場としても使えます。
決まる確率と、続く確率は別の数字
数字も見ておきます。文部科学省の調査では、令和8年3月に高校を卒業して就職を希望した生徒の就職率は97.9%でした。学科別では工業99.5%、水産99.4%と続き、普通科が95.7%でいちばん低くなります。都道府県別では福井県99.9%から沖縄県91.7%まで幅があります。厚生労働省がまとめたハローワーク経由の数字でも、求人倍率は4.12倍、就職内定率は98.9%です。
就職先が決まるという意味では、高卒就職は厳しい市場ではありません。問題はその後です。厚生労働省が令和7年10月に公表した調査では、令和4年3月に卒業した新規高卒就職者のうち、就職後3年以内に離職した人は37.9%。大卒の33.8%より高い数字でした。
同じ調査は、事業所の規模別の内訳も示しています。従業員5人未満に就職した高卒者では3年以内離職率が63.2%、100〜499人で36.7%、1,000人以上で26.3%。規模が小さいほど離職率が高い傾向が、はっきり出ています。ただしこれは相関であって、小さい会社が悪いという意味ではありません。家庭で使えるのは「規模を避ける」ではなく、「小さい職場を選ぶなら、入る前に確かめておくことが多い」という読み方のほうです。
家庭で試す3つの工夫
- 求人票を1枚、家で最後まで読む:仕事の内容だけで判断が終わりがちですが、賃金の内訳・就業時間・休日・就業場所・加入保険の欄まで一緒に読みます。分からない言葉が出たら、その場で調べずに書き出して、学校の先生に聞く材料にします。
- 3年後ではなく、1年目の1日を聞く:「将来どうするの」は答えにくい質問です。何時に家を出るのか、通勤はどうするのか、寮はあるのか。自宅から通うか、家を出るか ― 進学先を決める前の住まいの費用で扱った視点は、就職先でもそのまま使えます。
- 決まらなかったときの話を、決まる前にしておく:一社目で決まらないことは珍しくありません。複数応募が可能になる時期があること、学校もハローワークも相談に乗ることを先に共有しておくと、不採用の通知が「終わり」になりません。
声かけの言い換え例
- 「大学に行かないの?」→選んだ進路そのものを否定された、と受け取られる。
- 「その会社にした理由を聞かせて」→本人の基準が言葉になり、親も判断材料を得られる。
- 「そこで本当に大丈夫なの?」→根拠のない不安だけが伝わり、相談してこなくなる。
- 「求人票の休みの欄、一緒に見ていい?」→心配が具体的な確認作業に変わる。
家庭で確認するチェックリスト
- 学校の進路指導の予定(求人票を見る時期・校内選考の有無)を把握している。
- 求人票の賃金・就業時間・休日・就業場所の欄を、一緒に読んだ。
- 複数応募ができるようになる時期を、学校に確認した。
- 応募先の事業所の規模と、通勤の実際を子どもと確かめた。
- 決まらなかったときの相談先を、応募より先に話してある。
家庭の工夫だけで抱え込まないために
ここで挙げた日付は、令和9年3月卒業者について全国で申し合わされたものです。応募・推薦の扱いや複数応募の解禁時期は都道府県ごとに違い、年度によっても変わります。学校からの案内と食い違う場合は、目の前の学校の説明が優先します。
離職率の数字も、進路を評価するために使わないでください。3年以内に辞めることは失敗ではなく、合わない職場から離れる判断が必要な場面もあります。数字は「入る前に確かめられることは確かめておこう」と話すための材料であって、子どもの選択に点数をつけるためのものではありません。
内定後や入社後に、聞いていた労働条件と違う、心身の負担が大きいといったことが起きたときは、家庭だけで抱えずに、学校の進路指導の先生、ハローワーク、都道府県労働局の相談窓口に相談する選択肢があります。進路をめぐって家庭の中で意見が割れるときは、親の期待と、子どもの希望が違うときも合わせて読んでみてください。
出典・参考
- 厚生労働省「令和9年3月新規高等学校等卒業者の就職に係る採用選考期日等を取りまとめました」(令和8年2月16日)
この出典で確認した記述
令和9年3月新規高等学校卒業者の採用選考期日として、ハローワークによる求人申込書の受付開始が6月1日、企業による学校への求人申込および学校訪問開始が7月1日、学校から企業への生徒の応募書類提出開始が9月5日(沖縄県は8月30日)、企業による選考開始および採用内定開始が9月16日と取りまとめられていること、およびこれらが「全国高等学校長協会、主要経済団体(一般社団法人日本経済団体連合会、日本商工会議所及び全国中小企業団体中央会)、文部科学省及び厚生労働省において高等学校就職問題検討会議を開催し」取りまとめられたものであることの根拠。本文の「7月に求人が出て、9月16日に選考が始まる」節と図1の日付は、すべてこの期日による。 - 文部科学省「令和8年3月高等学校卒業者の就職状況(令和8年3月末現在)に関する調査について」
この出典で確認した記述
令和8年3月末現在の高等学校卒業者(就職希望者に対する就職者の割合)の就職率が97.9%で前年同期比0.1ポイント減であること、男子98.4%・女子97.0%(女子は前年同期比0.3ポイント減)であること、学科別の就職率が工業99.5%、水産99.4%、看護99.0%、商業98.8%、農業98.6%、福祉98.6%、情報98.2%、家庭98.1%、総合学科97.5%、普通95.7%であること、都道府県別では福井県99.9%が最高、沖縄県91.7%が最低であることの根拠。本文の「決まる確率と、続く確率は別の数字」節の就職率・学科別・都道府県差の記述はこれによる。 - 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します」(令和7年10月24日)
この出典で確認した記述
令和4年3月卒業者について、新規高卒就職者の就職後3年以内の離職率が37.9%(前年度比0.5ポイント低下)、新規大卒就職者が33.8%(同1.1ポイント低下)であること、事業所規模別の高卒3年以内離職率が5人未満63.2%、5〜29人54.6%、30〜99人45.2%、100〜499人36.7%、500〜999人29.9%、1,000人以上26.3%であることの根拠。本文および図2の離職率の数値はこれによる。なおこの統計は離職の理由や因果関係を示すものではない。 - 厚生労働省「令和7年度『高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況』取りまとめ(3月末現在)」
この出典で確認した記述
令和8年3月末現在の高校新卒者について、就職内定率が98.9%(前年同期比0.1ポイント低下)、求人数が498,722人(同0.1%減)、求職者数が121,175人(同0.5%減)、就職内定者数が119,896人(同0.6%減)、求人倍率が4.12倍(同0.02ポイント上昇)であることの根拠。対象は学校やハローワークからの職業紹介を希望した生徒であり、就職者全体ではない。本文の求人倍率4.12倍・内定率98.9%はこれによる。 - 東京労働局「新規学校卒業者の採用について」/厚生労働省「高卒就職情報WEB提供サービス」
この出典で確認した記述
東京労働局のページに、新規高等学校卒業者の推薦開始が9月5日以降、選考活動開始が9月16日以降、複数応募開始が10月1日以降(一人2社)と示されており、応募・推薦方法が都道府県単位の申し合わせで運用されていることの根拠。高卒就職情報WEB提供サービスのトップページに、同サイトが高等学校の就職担当者を対象としたもので、求人の検索・ダウンロードには各安定所が発行する利用者IDとパスワードによるログインが必要であること、生徒・保護者が直接求人情報を検索できないこと、「求人票(高卒)の見方のポイント」「会社選びのポイント」等の資料が掲載されていることが示されていることの根拠。
この記事について
本記事は家庭での話し合いを整理した一般的な情報であり、特定の学校の合否・優劣・進学先を判断・推奨するものではありません。個別の家計・投資の助言や、特定の金融商品の推奨も行いません。費用・選抜・支援制度は年度や地域によって変わるため、公式情報をご確認ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。