3行まとめ

  • 海外の高校で学ぶ1年間の履修は、校長の判断で36単位まで在籍校の単位として認められることがある。3年で卒業できるかは、在籍校に先に確かめる。
  • 国の「トビタテ!留学JAPAN」は高校生向けの返済不要の奨学金。2027年度に留学を始める人の募集がすでに始まり、在籍校を通じて応募する。
  • 留学エージェントには日本の公的な認定・登録制度がない。複数を比べ、契約内容を確かめてから選ぶ。

この記事でわかること

  • 高校生の留学がどのくらい行われているか
  • 1年留学しても3年で卒業できるのか
  • トビタテの支給額、家計の基準、応募の時期
  • エージェント選びと、3か月以上の滞在で必要な在留届

「留学したい」と言われた夜

夕食のあと、高校1年の子が学校で配られたチラシを出してきて、「来年、留学してみたい」と言う。親の頭には、いくらかかるのか、部活や大学受験はどうなるのか、一人で大丈夫なのかが一度に浮かびます。思わず「お金はどうするの」と返してしまい、話がそこで止まることもあるでしょう。

迷う気持ちは、子どもの側にもあります。文部科学省が高校生45万人余りに聞いた調査では、「留学したい」は34.8%でした。したいと思わない理由で多いのは「言葉の壁がある」46.3%、「海外の治安が不安」33.5%で、「経済的に厳しい」も30.4%ありました。費用の心配は親だけのものではなく、子どももすでに抱えていることが多いのです。

高校生の留学は、どのくらい行われているのか

文部科学省の令和5年度の調査では、3か月以上の留学をした高校生は延べ3,174人でした。行き先はカナダ、アメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、イギリスの順です。3か月未満の研修旅行に参加した高校生は延べ31,711人で、短期のほうがずっと多いことがわかります。どちらもコロナ禍の前(平成29年度)の水準にはまだ戻っていません。

短期と長期では、準備にかかる時間が違います。文部科学省の「トビタテ!留学JAPAN」の準備ガイドは、在籍したまま1年間海外の高校に通う留学の準備期間の目安を2年〜1年半、夏休みなどを使う短期の研修を半年〜3か月としています。1年の留学を考えるなら、高校入学の前後から話し始めても早すぎないということです。

1年留学しても、3年で卒業できますか

できる場合があります。ただし、決めるのは在籍している高校です。学校教育法施行規則は、外国の高校での履修を日本の高校の履修とみなし、単位の修得を認定できると定めています。上限は2010年4月から36単位です。

この規定は「認定することができる」という書き方で、自動的に認められるわけではありません。準備ガイドも、1年間の履修は学校長の判断で在籍校の履修とみなされると説明し、3年で卒業したい場合は在籍校に確かめてから準備を進めるよう勧めています。先の調査でも、留学したいと思わない理由に「留年や休学をしたくない」を挙げた高校生が17.5%いました。単位・学年の扱いは、行き先を決める前に担任や進路の先生に聞くのが順番です。

あわせて、現地の高校のカリキュラムは日本の大学受験の準備に沿わないことが多い、とも書かれています。帰国後の受験の計画も、出発前に親子で一度話しておくと安心です。

1年の高校留学の準備の流れを示した図。1は出発の2年から1年半前に、在籍校に単位と卒業の扱いを確かめる。2は秋に、トビタテなどの奨学金の募集要項を読み、校内の応募締切を確かめる。3はエージェントやプログラムを複数比べ、契約内容を確かめる。4は出発前に、在留届の提出と保険への加入を済ませる。
図1:1年の高校留学の準備の流れ。文部科学省「トビタテ!留学JAPAN 高校生の留学準備ガイド」「2027年度(第12期)派遣留学生募集要項【高校生等対象】」、外務省「オンライン在留届(ORRネット)」をもとに作成しました。

返済不要の奨学金「トビタテ」の中身と時期

文部科学省と日本学生支援機構(JASSO)が民間企業などの寄付で行う「トビタテ!留学JAPAN新・日本代表プログラム」には、高校生等向けのコースがあります。生徒が自分で立てた探究活動を含む留学計画を支援するもので、留学期間は14日以上1年以内です。2026年10月に公開された2027年度(第12期)の募集要項によると、支給額は次のとおりです。

トビタテ!留学JAPAN【高校生等対象】の支給額(2027年度・第12期募集要項より)
項目留学先金額
奨学金(月額)北米・シンガポール・欧州・中近東(家計基準内)16万円
アジア・大洋州・中南米・アフリカなど(家計基準内)12万円
地域を問わず(家計基準外)6万円
留学準備金アジア地域15万円+増額6万円
その他の地域25万円+増額10万円

家計の基準は、JASSOの貸与奨学金「第二種奨学金(予約採用)」と同じものを使い、判定は在籍校が行います。基準を超える家庭も応募でき、支援予定人数の1割程度を上限に採用されます。募集要項は、奨学金は留学の費用すべてを支援するものではないと明記しています。また、124日以下の留学では奨学金は帰国後に一括で支給されるため、出発前の支払いは、いったん家庭で立て替える前提で考えておく必要があります。

応募は在籍校を通じて行います。学校から機構への申請期限は2027年1月21日で、生徒から学校への締切はそれより前に学校が決めます。面接は3月、採否の通知は4月下旬の予定です。

手配を頼む業者と、渡航前の届け出

留学先の学校探しや手続きは、留学エージェントに頼む家庭が多いでしょう。準備ガイドは、エージェントには日本の公的な認定・登録制度がなく、選択や契約は自己責任だと書いています。そのうえで、自分でも情報を調べ、複数を比べてから利用するよう勧めています。国や学校によっては、18歳未満の留学で保護者が同行しない場合、現地の後見人(ガーディアン)を決めることが義務になっていることもあり、個人で手配が必要な場合が多いとされています。

3か月以上海外に滞在するときは、旅券法第16条により、現地の大使館・総領事館への在留届の提出が義務付けられています。在留届は現地に着く90日前から、外務省のオンライン在留届で出せます。短期の研修なら、外務省の「たびレジ」に登録すると、旅先の大使館や総領事館から安全情報を受け取れ、日本の家族のメールも一緒に登録できます。

短期の研修と、3か月以上の留学を比べた図。上は3か月未満の短期研修で、令和5年度は延べ31,711人、準備期間の目安は半年から3か月、外務省のたびレジに登録する。下は3か月以上の留学で、令和5年度は延べ3,174人、1年間の留学の準備期間の目安は2年から1年半、単位の扱いを在籍校に確かめ、在留届の提出が義務になる。
図2:短期の研修と、3か月以上の留学の違い。文部科学省「令和5年度高等学校等における国際交流等の状況について」「高校生の留学準備ガイド」、外務省「オンライン在留届(ORRネット)」「たびレジ」をもとに作成しました。

話し合いを止めずに進めるために、家庭でできることを三つ挙げます。

家庭で試す3つの工夫

  1. 「何をしに行きたいか」を一文で書いてもらう:行き先や期間より先に目的を聞きます。トビタテも探究活動を含む計画を求めているので、この一文が応募の準備にもつながります。
  2. 学校に聞くことを三つに絞って担任に相談する:単位の扱い、3年で卒業できるか、奨学金の校内締切。メモにして面談に持っていくと、聞き漏れを防げます。
  3. 費用を「出発前に払うもの」と「あとで戻るもの」に分けて書き出す:学費、渡航費、保険、滞在費を並べ、奨学金で戻る時期も書き込むと、立て替えの額が見えます。

声かけの言い換え例

  • 「お金はどうするの?」→「行って何をしたいか、まず聞かせて。お金はそのあと一緒に調べよう」
  • 「受験に遅れたらどうするの」→「帰ってからの受験の計画も、先生に一緒に聞いてみようか」
  • 「どうせ英語もできないのに」→「言葉の準備は何から始めたい?」
  • 「業者に全部任せればいいよ」→「何社か話を聞いて、契約書は一緒に読もう」

チェックリスト

  • 留学の目的を、本人の言葉で聞いた。
  • 在籍校に、単位と卒業時期の扱いを確かめた。
  • 奨学金の募集要項と、校内の応募締切を確かめた。
  • エージェントやプログラムを複数比べ、契約内容と解約の条件を読んだ。
  • 在留届やたびレジ、保険など、出発前の手続きを書き出した。

家庭の工夫だけで抱え込まないために

この記事は、高校生の留学に関わる公的な仕組みを整理したもので、留学するかどうか、どの国や業者を選ぶかを判断・推奨するものではありません。奨学金の支給額や家計の基準、応募の時期は年度ごとに変わります。必ず最新の募集要項を確かめてください。

単位や卒業時期、休学の扱いは学校によって違います。担任や進路指導の先生に早めに相談してください。奨学金の家計基準の判定も在籍校が行います。

エージェントとの契約で、説明と内容が違う、解約料が高いなどの困りごとがあれば、消費者ホットライン188で、身近な消費生活センターや相談窓口を案内してもらえます。

よくある質問

高校で1年留学すると、卒業が1年遅れますか。
遅れない場合があります。学校教育法施行規則により、外国の高校での履修は36単位を上限に在籍校の単位として認定できます。ただし認定するかどうかは学校長の判断です。3年で卒業したい場合は、留学先を決める前に在籍校に確かめてください。
トビタテ!留学JAPANは、高校生も応募できますか。
できます。高校生等対象のコースがあり、留学期間は14日以上1年以内です。2027年度(第12期)の募集要項では、家計基準内なら奨学金が月額16万円または12万円、基準外は6万円で、別に留学準備金があります。返済は不要です。応募は在籍校を通じて行います。
トビタテの応募の締切はいつですか。
2027年度(第12期)は、在籍校から機構への申請期限が2027年1月21日です。生徒から学校への締切はそれより前に学校が決めるので、早めに担任に確かめてください。面接審査は3月、採否の通知は4月下旬の予定です。
留学エージェントは、どう選べばよいですか。
文部科学省の準備ガイドは、エージェントには日本の公的な認定・登録制度がなく、選択や契約は自己責任だとしています。自分でも留学先の情報を調べ、複数のエージェントを比べ、契約内容を確かめてから利用することが勧められています。

出典・参考

  • 文部科学省「令和5年度高等学校等における国際交流等の状況について」(2025年3月28日公表、PDF)
    https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/koukousei/20250331-mext_kyokoku_01.pdf(確認日 2026-10-07)。
    この出典で確認した記述
    PDF1ページ「① 高校生の外国への研修旅行(3 か月未満)・31,711 人 [令和 3 年度:1,217 人、平成 29 年度 42,793 人]」「② 高校生の留学(3 か月以上)・3,174 人 [令和 3 年度:1,901 人、平成 29 年度 4,076 人]・行先多い順にカナダ、アメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、イギリス」。PDF5ページ(資料の2ページの次の「2 高校生の留学(3 か月以上)について」)「外国の高等学校等に留学した高校生は 3,174 人」、注に「留学生徒数は延べ数」。PDF22ページ(印刷ページ20)「(参考)高校生の留学に対する意識について ※令和6年度実績」「生徒 457,936 人を対象に留学に対する意識調査を行った。『留学したい』生徒は 34.8%」、留学したいと思わない理由(複数回答)「言葉の壁がある 46.3%」「海外の治安が不安 33.5%」「経済的に厳しい 30.4%」「留年や休学をしたくない 17.5%」。本文の情景節の意識調査、「どのくらい行われているのか」の第1段落、図2の人数の根拠。
  • 文部科学省「学校教育法施行規則の一部を改正する省令について(高等学校等における外国留学時認定可能単位数の拡大)」
    https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/1292020.htm(確認日 2026-10-07)。
    この出典で確認した記述
    「学校教育法施行規則…第93条第2項により、30単位を上限として、外国の高等学校における履修を日本の高等学校における履修とみなし、単位の修得を認定することができるとされてきたところです」「施行規則を改正し、当該認定することができる単位数の上限を30単位から36単位に拡大する」「平成22年3月24日に公布され、平成22年4月1日から施行」。本文「1年留学しても、3年で卒業できますか」の第1・第2段落、よくある質問1の根拠。
  • 文部科学省・日本学生支援機構「官民協働海外留学支援制度~トビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラム~【高校生等対象】2027年度(第12期)派遣留学生募集要項」(2026年10月、PDF)
    https://tobitate-mext.jasso.go.jp/newprogram/assets/pdf/2027_12th_hs_applicant_guidelines.pdf(確認日 2026-10-07)。
    この出典で確認した記述
    印刷ページ=PDFページ−2。印刷1ページ「生徒等が自ら立案・作成した『探究活動(※1)』を含む留学(以下『留学計画』という。)を支援します」、本制度は「グローバル人材育成コミュニティに参画する民間企業や個人からの支援や協力によって実施され」る。印刷8ページ【奨学金 月額表】「地域区分① 北米、シンガポール、欧州、中近東…160,000 円」「地域区分② アジア(シンガポールを除く)、大洋州、中南米、アフリカ及び上記地域区分①の除外国 120,000 円」「(家計基準外)60,000 円」、「なお、留学計画の実行にかかる全ての費用(実費)を支援するものではありません」、家計基準は「機構が実施する国内の貸与奨学金『第二種奨学金(予約採用)』に掲げる家計基準」。印刷10ページ【留学準備金 支給金額表】「アジア地域 150,000 円」「その他の地域 250,000 円」「円安や物価高騰を鑑み、上記の支給金額に加えて『アジア地域』は 60,000 円、『その他の地域』は 100,000 円を増額して支給します」、奨学金の支給方法「【ロング以外(留学期間 124 日以下)】…【時期】留学終了後…【金額】奨学金支給総額を一括支給」。印刷13ページの要件「家計基準を超える場合であっても応募することができます。支援予定人数全体の 1 割程度を上限」、「家計基準の判定は、必ず在籍高校等が行ってください」、留学計画の要件「留学先国・地域における留学期間が 14 日以上 1 年(365 日)以内の計画」。印刷20ページ「10.スケジュール」第一日程「在籍高校等から機構への応募申請期限 2027 年1月 21 日(木)」、「応募者から在籍高校等への応募申請提出期間 在籍高校等(又は入学予定の高校等)が指定する期間」、面接審査3月、「採否結果通知 2027 年 4 月下旬予定」。本文「トビタテ」の節と表、よくある質問2・3の根拠。最新の募集状況は https://tobitate-mext.jasso.go.jp/newprogram/hs/ で確認できる。
  • 文部科学省「トビタテ!留学JAPAN 高校生の留学準備ガイド」
    https://tobitate-mext.jasso.go.jp/hs/planguide/(確認日 2026-10-07)。
    この出典で確認した記述
    海外の中学・高校への進学の項に「エージェントには日本の公的な認定・登録制度がなく、選択や契約はすべて自己責任ですので、自分でも留学先の情報をよく調べ、複数のエージェントを比較検討した上で利用することが大切です」「国や学校によっては、18歳未満の学生の留学で現地に保護者が同行するのでない場合、後見人(ガーディアン、カストディアンなどと呼ばれる)を指定することが義務付けられていることがあります」「後見人は、個人で手配しなければならない場合が多い」。日本の高校在籍中の1年留学の項に「1年間の留学中の履修が、学校長の判断により日本の在籍校の履修とみなされ、最大36単位まで修得することができます」「1年の留学を含めても、3年間で高校を卒業したい場合は、在籍している日本の高校に確認してから留学準備を進めましょう」「現地の高校のカリキュラムは、日本の大学受験に必要な準備には沿わないことが多い」「準備に必要な期間の目安 2年~1年半」。長期休暇を使う研修の項に「期間は数日から1か月程度」「準備に必要な期間の目安 半年~3か月」。留学準備のステップに「エージェントの選択・契約においては、必ず比較検討の上、会社・団体を選び、契約内容も吟味しましょう」「【 8 】保険の加入」。本文「どのくらい行われているのか」の第2段落、「3年で卒業できますか」、エージェントの段落、図1・図2、よくある質問4の根拠。
  • 外務省「オンライン在留届(ORRネット)」
    https://www.ezairyu.mofa.go.jp/RRnet/index.html(確認日 2026-10-07)。
    この出典で確認した記述
    「在留届の提出は、海外に3か月以上滞在する方が対象です」「旅券法第16条の規定により、海外に住所又は一時滞在先を定めて3か月以上滞在する日本人は、在留届を提出することが義務付けられています」、対象の例に「海外留学する」。「現地の事件や事故の情報、注意が必要な日時・イベントに関する安全情報…が、大使館・総領事館からメールで配信されます」「※日本から海外に転出される方は、現地到着の90日前から在留届が提出できます」。本文「手配を頼む業者と、渡航前の届け出」の第2段落、図1・図2の根拠。
  • 外務省「たびレジ(海外旅行登録)」
    https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/index.html(確認日 2026-10-07)。
    この出典で確認した記述
    「『たびレジ』は、海外安全情報の無料配信や緊急事態の際の安否確認・支援を通じて、あなたの安全・安心な海外旅行に役立ちます」「出発前から旅行終了まで 旅先の大使館や総領事館から、安全情報を受け取れる」「日本の家族などのメールも一緒に登録できる」「登録すれば家族も安全情報を受け取れる」。本文「手配を頼む業者と、渡航前の届け出」の第2段落、図2の根拠。
  • 消費者庁「消費者ホットライン」
    https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/(確認日 2026-10-07)。
    この出典で確認した記述
    「困ったときは、一人で悩まずに、『消費者ホットライン』188にご相談ください。地方公共団体が設置している身近な消費生活センターや消費生活相談窓口をご案内します」「相談窓口につながった時点から、通話料金のご負担が発生します。(相談は無料です)」。気をつけたいこと節の相談先の根拠。

この記事について

本記事は家庭での話し合いを整理した一般的な情報であり、特定の学校の合否・優劣・進学先を判断・推奨するものではありません。個別の家計・投資の助言や、特定の金融商品の推奨も行いません。費用・選抜・支援制度は年度や地域によって変わるため、公式情報をご確認ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。

筆者コメント