3行まとめ

  • 大きな音を長く聞くと、耳の奥で音を伝える有毛細胞が少しずつ傷つく。失った聴覚は戻らないため、予防が中心になる。
  • WHOの目安は、80dBなら1週間に40時間まで、90dBなら4時間まで。厚生労働省は、子どもは75dB以下という目安を紹介している。
  • 音量は最大の60%以下、1時間に1回は耳を休める、家ではスピーカーで聞く。こうした約束を親子で決めておく。

この記事でわかること

  • ヘッドホン(イヤホン)難聴が起こるしくみ
  • 音の大きさと、1週間に安全に聞ける時間の目安
  • 子どものイヤホン使用について、WHOが勧めていること
  • 家庭で決めたい約束と、声かけの言い換え
  • 聞こえが気になったときの相談先

「音、大きくない?」が届かない

小学5年の娘は、タブレットで英語の動画を見るときも、ゲームをするときもイヤホンをしている。隣に座ると、音楽がうっすら漏れて聞こえる。「音、大きくない?」と声をかけても返事がなく、肩をたたくとイヤホンを外して「なに?」と言う。夕食のときにテレビの音量を上げたがるのも、少し気になり始めた。でも、どのくらいの音量なら問題で、どこからが心配しすぎなのか、親にも基準がない。

イヤホンは周りに音が広がらないので、静かな家や電車の中では便利な道具です。一方で、どのくらいの大きさで聞いているかは、本人にも周りにも見えにくくなります。見えにくいからこそ、感覚ではなく目安を親子で共有しておくことが最初の一歩になります。

ヘッドホン難聴は、気づかないうちに進む

厚生労働省によると、ヘッドホンやイヤホンを使って大きな音量で音楽などを聞き続けると、音の振動を脳へ伝える役割をしている有毛細胞が少しずつ壊れ、「ヘッドホン(イヤホン)難聴」を起こすことがあります。高い音から徐々に聞こえにくくなり、じわじわ進むため、自分では気づかない場合が多いとされます。そして、有毛細胞が壊れてしまうと、失った聴覚を戻すことはできません。治すことより、傷つけない使い方をすることが中心になるのはこのためです。

これは一部の人だけの話ではありません。WHO(世界保健機関)は2019年、12〜35歳のほぼ半数にあたる約11億人が、個人用の音響機器で聞く音楽を含む大きな音に長く、過度にさらされることで、難聴のリスクを抱えていると発表しました。2026年3月のファクトシートでも、10億人を超える若い人が、安全でない聞き方によって、避けられるはずの永続的な難聴のリスクにあるとしています。

子どものイヤホンは、どのくらいの音量までなら大丈夫ですか

音の大きさと聞く時間の組み合わせで考えます。WHOの目安は80dBで1週間に40時間までで、子どもにはもう少し小さい音が勧められています。

WHOのQ&Aは、音が大きいほど、また聞く時間が長いほど難聴のリスクは高くなるとし、1週間に安全に聞ける時間を表で示しています。80dBなら40時間、85dBなら12時間30分、90dBなら4時間、100dBなら20分です。わずかに音を上げただけで、安全に聞ける時間は大きく減ります。WHOは80dBの例に玄関のチャイム、100dBの例にヘアドライヤーを挙げています。厚生労働省のWEBマガジンは、WHOの推奨する限度として、大人は80dB以下、子どもは75dB以下で、1週間に最大40時間と紹介しています。

音の大きさと1週間に安全に聞ける時間を示した図。80デシベルは40時間まで、例は玄関のチャイム、子どもは75デシベル以下が目安。85デシベルは12時間30分まで、例は交通量の多い道の車内。90デシベルは4時間まで、例は大声での会話。100デシベルは20分まで、例はヘアドライヤー。
図1:WHO「Deafness and hearing loss: Safe listening」の表と、厚生労働省WEBマガジンの紹介をもとに作成。

とはいえ、イヤホンの中の音が何dBかは、家庭ではほとんど分かりません。そこでWHOは、端末の音量を最大の60%以下にすることを実用的な目安に挙げています。スマートフォンの健康管理の機能やアプリで、イヤホンで聞いている音の大きさを記録できる場合もあります。周りの音については、腕を伸ばした距離にいる人と話すのに声を張る必要があれば、その場の音は大きすぎるとしています。

子どもについて、WHOが勧めていること

WHOのQ&Aには、オンライン授業などで一日中機器を使う子どもについての項目があります。それ自体が直ちに危険というわけではないとしたうえで、できるだけ内蔵や外付けのスピーカーで聞く、イヤホンやヘッドホンを使うなら保護者が音量を制限できる機能のあるものを選ぶ、音量を最大の60%以下に保つよう教える、授業のない時間は静かな場所で耳を休ませる、といったことを勧めています。

ゲームについても、音量を最大の60%以下にし、できればスピーカーを使い、1時間ごとに10分休むことを挙げています。厚生労働省のページも、1時間に1回、10分程度は耳を休めることや、周りの騒音を抑えるノイズキャンセリング機能を使って音量を上げすぎないことを紹介しています。電車の中のように周りがうるさい場所ほど、音量を上げたくなるからです。

機器の側にも備えがあります。WHOと国際電気通信連合(ITU)が2019年に出した国際標準は、聞いた音の量を記録する機能や、保護者が音量を制限できる機能などを機器に備えるよう勧めています。ここでは特定の製品をすすめませんが、いま使っている端末の設定画面で、音量の上限や記録の機能があるかを親子で確かめることはできます。

イヤホンの使い方を家庭で決める4つのステップの図。1は聞く場面を決める、家ではスピーカー、移動中はイヤホンなど。2は音量の上限を決める、最大の60%以下を目安に端末で設定する。3は休む時間を決める、1時間に1回、10分ほど耳を休める。4はサインを親子で共有する、耳鳴りが続く、聞き返しが増えたら伝える。
図2:WHOと厚生労働省の資料が挙げる予防策をもとに、家庭で決める順番に並べたものです。

次の3つは、家庭で取り入れやすい工夫です。

家庭で試す3つの工夫

  1. 音量の上限を一緒に設定する:端末の音量表示で、最大の60%を超えない位置を親子で確かめます。上限を設定できる端末なら、子どもと一緒に操作すると、守る理由も伝わります。
  2. 家ではスピーカー、外ではイヤホンと分ける:家で動画や学習をするときは、なるべくスピーカーで聞きます。家族にも音が聞こえるので、大きさに気づきやすくなります。
  3. 耳を休める合図を決める:動画1本ごと、ゲームの1区切りごとにイヤホンを外す、タイマーを使うなど、1時間に1回は休む合図を決めておきます。

声かけの言い換え例

  • 「耳が悪くなるから、イヤホンは禁止!」→理由が伝わらず、隠れて使うようになりやすい。
  • 「音を少し下げて、ここまでにしようか。上限を一緒に決めよう」→守る範囲が具体的に分かる。
  • 「何回呼んでも聞こえてないでしょ」→責められたと感じる。
  • 「呼んでも気づかないくらいだと、音が大きいかもしれないね」→音量に目が向く。
  • 「ずっと付けっぱなしじゃない」→どうすればよいかが分からない。
  • 「1本見終わったら、いったん外して耳を休めよう」→休むタイミングが分かる。
  • 「耳鳴りくらい、すぐ治るよ」→不調を言い出しにくくなる。
  • 「耳鳴りが続いたら、すぐ教えてね」→サインを伝えやすくなる。

家庭で確認するチェックリスト

  • 端末の音量が最大の60%以下になっているか、親子で確かめた。
  • 音量の上限や、聞いた音の記録の機能があるか、設定画面を見た。
  • 家でスピーカーを使う場面と、イヤホンを使う場面を決めた。
  • 1時間に1回、耳を休める合図を決めた。
  • 耳鳴りや聞こえにくさがあったら伝えるよう、子どもと約束した。

家庭の工夫だけで抱え込まないために

この記事は、イヤホンやヘッドホンを使うときの一般的な目安を整理したもので、聞こえの状態を判断するものではありません。WHOは、耳鳴りが続く、鳥の声や電話の呼び出し音のような高い音が聞き取りにくい、電話の声が分かりにくい、にぎやかな場所で会話についていけない、といった様子を難聴のサインに挙げ、聞こえを調べてもらうよう勧めています。大きな音のあとの耳鳴りはしばらくして消えることも多い一方、続く場合は医師に相談することが大切だとしています。気になる様子があれば、イヤホンの使用を控え、耳鼻咽喉科に相談する選択肢があります。

学校の健康診断にも聴力検査があります。学校保健安全法施行規則は、聴力をオージオメータで左右別に調べると定めていますが、小学4年・6年、中学2年、高校2年では省略できるとしており、その年は検査がないこともあります。結果の通知を確かめ、気になることがあれば養護教諭や学校医に相談できます。

WHOは、極めて大きな音なら一度だけでも内耳が傷つくことがあると説明しています。ライブやイベントでは、スピーカーから離れる、耳栓を使うといった備えも話しておきます。

よくある質問

子どものイヤホンの音量は、どのくらいが目安ですか。
WHOは、端末の音量を最大の60%以下にすることを勧めています。音の大きさでは、80dBで1週間に40時間までが目安で、厚生労働省は子どもについて75dB以下という目安を紹介しています。音が大きくなるほど、安全に聞ける時間は短くなります。
ヘッドホン難聴は治りますか。
厚生労働省は、音を脳へ伝える有毛細胞が壊れてしまうと、失った聴覚を戻すことはできないとしています。少しずつ進んで気づきにくいため、音量と時間に気をつけ、耳を休ませる予防が中心になります。
イヤホンとスピーカーでは、どちらがいいですか。
WHOは、オンライン授業などで長い時間機器を使う子どもについて、できるだけ内蔵や外付けのスピーカーで聞くことを勧めています。イヤホンを使う場合は、音量を最大の60%以下にし、保護者が音量を制限できる機能のあるものを選ぶとしています。

出典・参考

  • WHO「Deafness and hearing loss: Safe listening」(Q&A)
    https://www.who.int/news-room/questions-and-answers/item/deafness-and-hearing-loss-safe-listening(確認日 2026-10-24)。
    この出典で確認した記述
    「The volume of sounds, the duration of listening, and frequency of exposure to loud sounds all have an impact on hearing. The higher the level of sound and longer the duration, the greater the risk of hearing loss. For example, you can safely listen to a sound level of 80dB for up to 40 hours a week. If the sound level is 90dB, the safe listening time reduces to four hours per week.」「Keep the volume down. This can be done by setting your device's volume level to no more than 60% of maximum.」。「How long can I listen to music?」の表(Time for safe listening per week)に「80dB 40 hours Doorbell」「85dB 12h 30 mins Heavy traffic (inside car)」「90dB 4 hours Shouted conversation」「100dB 20 mins Hair dryer」。「If you don't have an app, check if you have to raise your voice to be heard by someone standing at an arm's length from you. If yes, the sound volume is too high.」「Yes, even a one-time exposure to extremely loud sound can damage your inner ear cells and cause hearing loss.」。難聴のサインとして「Persistent ringing in the ears (tinnitus).」「Difficulty in hearing high-pitched sounds (birds singing, doorbells, telephones, alarm clocks).」「Difficulty understanding speech, especially over the telephone.」「Difficulty following conversations in noisy environments」「you should get your hearing checked」。耳鳴りについて「Many people experience tinnitus after listening to loud music which disappears after a while.」「In case of persistent tinnitus it is important to seek medical advice.」。ゲームについて「Keep the volume below 60% of maximum on your devices.」「Prefer built-in or external speakers to ear/headphones, where possible.」「Take a break for ten minutes every hour」。「My child has online classes all day. Is this dangerous for their hearing?」に「While this isn't necessarily dangerous for your child's hearing」「encourage the use of built-in or external speakers for listening; avoid headphones where possible」「where headphones are used, prefer those with safe listening features like parental loudness control」「teach your child to keep the volume below 60% of maximum on the device」「encourage them to take breaks away from the computer or device, in a quiet space to allow their ears to rest」。ライブ等で「stay away from loudspeakers/amplifiers」「wear earplugs」。本文の「どのくらいの音量まで」節、図1、「WHOが勧めていること」節1〜2段落目、気をつけたいこと1・3段落目、よくある質問1・3つ目はこれによる。
  • WHO「Deafness and hearing loss」ファクトシート(2026年3月3日)
    https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/deafness-and-hearing-loss(確認日 2026-10-24)。
    この出典で確認した記述
    日付「3 March 2026」。Key factsに「Over 1 billion young adults are at risk of permanent, avoidable hearing loss due to unsafe listening practices.」「Around 95.1 million children aged 5-19 years live with hearing loss worldwide.」。難聴の原因のうち生涯を通じた要因として「loud noise/loud sounds exposure」。予防策として「safe listening strategies for the reduction of exposure to loud sounds in recreational settings」。本文の「気づかないうちに進む」節2段落目はこれによる。
  • WHO「New WHO-ITU standard aims to prevent hearing loss among 1.1 billion young people」(2019年2月12日)
    https://www.who.int/news/item/12-02-2019-new-who-itu-standard-aims-to-prevent-hearing-loss-among-1.1-billion-young-people(確認日 2026-10-24)。
    この出典で確認した記述
    「Nearly 50% of people aged 12-35 years – or 1.1 billion young people – are at risk of hearing loss due to prolonged and excessive exposure to loud sounds, including music they listen to through personal audio devices.」「the World Health Organization (WHO) and the International Telecommunication Union (ITU) have issued a new international standard for the manufacture and use of these devices, which include smartphones and audio players」。「Safe listening devices and systems: a WHO-ITU standard」が機器に備えるよう勧める機能として「"Sound allowance" function: software that tracks the level and duration of the user's exposure to sound as a percentage used of a reference exposure.」「Volume limiting options: options to limit the volume, including automatic volume reduction and parental volume control.」。本文の「気づかないうちに進む」節2段落目、「WHOが勧めていること」節3段落目はこれによる。
  • 厚生労働省 WEBマガジン「厚生労働」「『聞こえにくさ』感じていませんか? ~耳の日に『聞こえ』について考える~」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/web_magazine/closeup/45.html(確認日 2026-10-24)。
    この出典で確認した記述
    「若い方も注意!~『ヘッドホン(イヤホン)難聴』」の項に「ヘッドホンやイヤホンを使い、大きな音量で長時間、音楽などを聞き続けることにより、音の振動を脳へ伝える役割をしている有毛細胞が徐々に壊れて、いわゆる『ヘッドホン(イヤホン)難聴』を引き起こすことがあり、近年問題視されています」「この難聴は少しずつ進行するため自覚しにくいともいわれますが、有毛細胞が壊れてしまうと、失った聴覚を戻すことはできないため、予防が重要となります」。WHOなどが提唱する予防策として「可能な限り音量を小さくすること(WHOの推奨する限度は、大人は80dB以下、子供は75dB以下で1週間に最大40時間です)」「周囲の騒音をカットできる『ノイズキャンセリング機能』を使用し、音量を上げ過ぎないようにすること」「音量と視聴時間をモニターして長時間の使用を避けること(スマートフォンやアプリで簡単にモニターできるものもあります)」「少なくとも、1時間に1回、10分程度は耳を休めること」。同ページは80dBを「走行中の地下鉄の車内ほど」と例示しているが、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の解説は地下鉄車内を100dB程度としており、例示が資料により異なるため本文では用いず、WHOの表の例示を用いた。本文の「気づかないうちに進む」節1段落目、「どのくらいの音量まで」節、図1、「WHOが勧めていること」節2段落目、3行まとめ、よくある質問1・2つ目はこれによる。
  • 厚生労働省「どんな環境で難聴になるの?」(聞こえにくさ 特設ページ)
    https://www.mhlw.go.jp/nanntyou/noise.html(確認日 2026-10-24)。
    この出典で確認した記述
    「大きな音を長時間、長期間にわたって聞き続けることにより、有毛細胞がダメージを受け、音が聞こえにくくなることがあります」。「ヘッドホン難聴(イヤホン難聴)」として「ヘッドホンやイヤホンを使い、大きな音量で音楽などを聞き続けることにより、音の振動を脳へ伝える役割をしている有毛細胞が徐々に壊れて起こる難聴です。少しずつ進行していくために初期には自覚しにくく、とはいえ失った聴覚は戻りません。大きすぎる音量で聞かない、長時間連続して聞かずに定期的に耳を休ませるなどの予防が重要となります」。「長時間大きな音を聞き続けることで、音を伝える役割をしている有毛細胞がダメージを受け、高い音から徐々に聞こえにくくなっていきます。じわじわと症状が進行していくため、自分では症状に気づかない場合が多いです」。本文の「気づかないうちに進む」節1段落目、よくある質問2つ目はこれによる。
  • 学校保健安全法施行規則(昭和33年文部省令第18号)第3条・第6条(e-Gov法令検索)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/333M50000080018(確認日 2026-10-24)。
    この出典で確認した記述
    e-Gov 法令API(laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/333M50000080018)で条文を取得して確認。第3条第5号「聴力は、オージオメータを用いて検査し、左右各別に聴力障害の有無を明らかにする。」(第7条で児童生徒等の健康診断に準用)。第6条第1項第4号に検査の項目として「視力及び聴力」。第6条第4項「第一項各号に掲げる検査の項目のうち、小学校の第四学年及び第六学年、中学校及び高等学校の第二学年並びに高等専門学校の第二学年及び第四学年においては第四号に掲げるもののうち聴力を、大学においては第三号、第四号、第七号及び第十号に掲げるものを、それぞれ検査の項目から除くことができる。」。本文の気をつけたいこと2段落目はこれによる。

この記事について

本記事は家庭での工夫を整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や治療の判断に代わるものではありません。特定の機器・アプリ・設定・サービスを推奨するものでもありません。お子さんの状態が気になる場合は、専門機関や学校にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。

筆者コメント