3行まとめ
- 令和6年度の学校保健統計で、裸眼視力1.0未満の子どもの割合は小学校で36.84%、中学校で60.61%、高等学校で71.06%。学校段階が進むほど高くなっています。
- 文部科学省の近視実態調査では、学校以外での電子機器の利用が一律に視力低下や近視の新規発症に関連が大きいとはいえなかった一方、屋外で過ごす時間が長い群のほうが視力低下との関連が小さいことが示唆されました。焦点は「長時間の近業」と「外に出る時間」にあります。
- 家庭でできることは二つ。屋外の時間を増やすことと、近くを見る作業のときに30cm以上離す・30分に1回は20秒以上目を休めるを含む5つの点に気をつけること。
この記事でわかること
- 裸眼視力1.0未満の割合が、いま実際にどのくらいなのか
- 近視実態調査が示した「屋外時間」と「近業」の関係の読み方
- 公的資料が挙げる、近くを見る作業のときの5つの目安
- 見えにくさのサインと、眼科に相談するタイミング
視力の紙を見た日に、思い浮かぶこと
視力の欄がAではなかった、というだけで、ほとんどの人が同じところに行き着きます。「タブレットとゲームのせいだろうか」。そこから先の会話が難しいのは、この心当たりがそのまま禁止の話につながってしまうからです。減らした時間が何に置き換わるのかを決めないまま取り上げると、子どもは別の近くを見る作業——本、ノート、マンガ——に移るだけ、ということも起こります。
公的情報の見方 ― 統計と近視実態調査が示すもの
まず全体の位置を確かめます。文部科学省の学校保健統計調査の令和6年度確定値によれば、裸眼視力1.0未満の者の割合は、小学校で36.84%、中学校で60.61%、高等学校で71.06%。「学校段階が進むにつれて高くなっており、小学校で3割を超えて、中学校で6割程度、高等学校で7割程度となっている」と整理されています。
裸眼視力1.0未満の子どもがすべて近視というわけではありませんが、そのうち約8〜9割は近視だと指摘されています。公的資料は、子どもの近視のほとんどが軸性近視——眼球が前後方向に長くなった状態——であり、一度伸びてしまった眼軸長を元に戻すことはできないと言われていると説明します。だから「近視は予防や早期発見がとても重要」とされています。近視の多くは小学校3〜4年生頃に発症し、最近は低年齢化が進んでいるとも述べられています。
要因については、遺伝要因と環境要因の両方が関係するものの、近年の増加は環境による影響が大きいと考えられている、と整理されています。近視実態調査でも片方の親が近視である場合は関連が大きいことが示唆されましたが、資料はすぐに注意書きを添えています。親が近視であったとしても、その子供が必ずしも近視になるとは限らず、適切な環境で生活することが大切であり、親が近視であることで差別やいじめ等が生じることのないよう注意が必要である。
外で過ごす時間という手がかり
ここからが、家庭にとって実際に使える部分です。近視実態調査は、調査開始年度に裸眼視力Aだった子が最終年度にB・C・Dになったことを「視力低下」と定義し、生活習慣との関連を分析しました。そこで一貫して差が見えたのが屋外で過ごす時間です。休日に屋外にいる時間が1日平均120分以上の場合、30分未満と比べて視力低下との関連が小さいことが示唆され、授業や休み時間以外の屋外時間、学校の短い休み時間についても同じ方向の結果でした。いずれも学年以外の因子は考慮されていないという断り書きがついていますが、三つの角度から見て方向はそろっています。
資料は目安として、休み時間は積極的に屋外で過ごすこと、授業や休み時間以外では1日1時間半、休日は1日2時間を挙げています。届かないと感じるかもしれませんが、「よくある質問」に助けになる一文があります。1日2時間に満たなくとも、なるべく多くの時間を屋外で過ごした方が、近視抑制の観点からは望ましい。そして直射日光の当たらない建物の影や木陰でも、近視予防に必要な光の明るさ(1,000〜3,000ルクス以上)を確保することができるとされ、日差しの強い場所では熱中症や紫外線への配慮が必要なため木陰などで過ごすとよい、と書かれています。
近くを見る作業で気をつける5つのこと
では画面のほうは。近視実態調査は、学校以外での電子機器の利用について「一律に視力低下や近視の新規発症に関連が大きいとはいえませんでした」と述べています。ただし「画面はいくら見てもよい」という結論ではありません。同じ資料は、勉強や読書の時間も踏まえたうえで、予防には「長時間の近業に気を付ける」ことが重要だと結論づけています。問題にされているのは媒体の種類ではなく、近い距離を長く見続けるという姿勢そのものです。
注意点として資料が挙げるのは5つです。対象から30cm以上、目を離す。30分に1回は、20秒以上目を休める。背筋を伸ばし、姿勢を良くする。部屋を十分に明るくする。機器の輝度を適切に調節する。目を休めるためのルールの有無を尋ねた調査では、半数から7割以上の児童生徒が「ルールは決めていない・決めたが守られていない」と答えていました。使用時間のルールはあっても、休憩のルールはない家庭が多数派だということです。使用時間のルールは親が終わらせる形になりやすく交渉が生まれますが、休憩のルールは続けるために挟むものなので、子ども側にも守る理由があります。
家庭で試す3つの工夫
- ①「何分見たか」ではなく「30分に1回、20秒」を家のルールにする:使用時間の上限を決めるルールは、守れたかどうかの判定が親子の対立点になりがちです。かわりに休憩のほうをルールにします。20秒は、窓の外を見る、遠い壁の時計を見る、それだけで足ります。学習用の端末でも同じにするのが要点で、宿題は例外、としないほうが子どもも納得します。
- ②「30cm」を測って、机と椅子のほうを直す:距離は口で言い続けるより、一度だけ測って見せるほうが早く終わります。注意しても近づいてしまうときは、椅子が高すぎて足が浮いている、部屋が暗くて顔を近づけているなど、姿勢のほうに原因があることが多いものです。声かけを増やす前に、座る場所と明かりを見直すほうが、結果として距離が伸びます。
- ③屋外の時間を「予定」ではなく「経路」に埋め込む:買い物の一区間を歩く、送り迎えを一つ手前で降りる、待ち時間を外のベンチで過ごす。日陰でも近視予防に必要な明るさは確保できるとされているので、真夏でも木陰を選べば成立します。
声かけの言い換え例
「ゲームばっかりしてるから目が悪くなるんだよ」→ 原因を一つに決める言い方。調査では電子機器の利用が一律に関連が大きいとはいえず、焦点は長時間の近業と屋外時間にある。
「30分たったら、20秒だけ遠くを見よう」→ やめさせる指示ではなく、続けるための手順として渡す。公的資料の目安そのままなので理由も説明できる。
「そんなに近づいて見ないの」→ 距離だけを注意しても、姿勢や明るさが原因なら戻ってしまう。
「ちょっと椅子の高さ直そうか。あと電気つけよう」→ 直す対象を人から環境に移す。
今週のうちに確認したいこと
- 健康診断の視力の結果を確認し、A以外の判定だった場合に眼科を受診したかを確かめた。
- 宿題・読書・ゲームのどれについても、30分に1回・20秒以上目を休める合図を用意した。
- 子どもがよく使う場所で、目と画面(本)の距離が30cm以上あるかを一度測ってみた。
- その場所の明るさと椅子の高さを見直し、暗いまま・足が浮いたままになっていないか確かめた。
- この一週間で屋外に出た日を数え、増やせそうな移動や待ち時間を一つ決めた。
家庭の工夫だけで抱え込まないために
この記事の整理は、文部科学省の統計と啓発資料の考え方を家庭向けに置き直した一般的なものであり、お子さんの目の状態を評価したり、近視かどうかを判断したりするものではありません。公的資料自身が、視力低下や近視を指摘された場合は早めに眼科を受診するよう促しており、家庭の工夫は受診の代わりにはなりません。
受診を考えたいサイン。文部科学省の子ども向け啓発資料は、黒板の字が見えにくい、ぼやけて見えたりかさなって見えたりする、目を細めないと遠くの文字が読みにくい——といったことがあったら家の人に伝えてほしい、と呼びかけています。家庭の側からは、画面に近づいて見るようになった、顔を傾ける、目をこすることが増えた、といった変化も手がかりです。A以外の判定が伝えられたときは、様子を見るのではなく、眼科で確かめるのが基本の流れです。
公的資料は、近視の度が強いほど将来の目の病気との関連が大きいことが分かってきていると説明する一方、示されているオッズ比について「オッズ比は何倍病気になりやすいということを意味するものではありません」と明記しています。なお屋外活動を増やすときも、熱中症や紫外線への配慮は欠かせません。
出典・参考
- 文部科学省「令和6年度学校保健統計(学校保健統計調査の結果)確定値」(令和7年2月12日公表)
この出典で確認した記述
裸眼視力1.0未満の者の割合が幼稚園26.53%・小学校36.84%・中学校60.61%・高等学校71.06%であること、「裸眼視力1.0未満の者の割合は、学校段階が進むにつれて高くなっており、小学校で3割を超えて、中学校で6割程度、高等学校で7割程度となっている」との記述、調査が学校保健安全法により実施される健康診断の結果に基づくこと、令和6年度は健康状態について全幼児・児童・生徒の25.4%(3,190,771人)を抽出し令和6年4月1日から6月30日の間に実施されたこと、令和2年度から令和5年度の調査結果は新型コロナウイルス感染症の影響により測定時期を異にしたデータが含まれるため今回の調査結果と比較することはできないこと、および今後の施策の対応方針として「子供の目の健康を守るための啓発資料の普及・周知」「保健教育のモデル授業の動画の作成」「屋外での体験活動等の促進等の視力低下予防に資すると考えられる取組」が挙げられていることの根拠。 - 文部科学省「児童生徒の近視実態調査」内「近視について解説した資料」(令和6年7月31日公表)
この出典で確認した記述
視力の判定区分(1.0以上をA、0.9〜0.7をB、0.6〜0.3をC、0.3未満をD)、裸眼視力1.0未満の子供の割合が約40年前と比べて増加傾向にあること、裸眼視力1.0未満のうち約8〜9割が近視であると指摘されていること(宮浦ほか.2022)および令和5年度近視実態調査で判定B・C・Dのうち近視の定義に該当した割合(B:右眼60.0%・左眼58.2%/C:右眼84.8%・左眼83.4%/D:右眼94.5%・左眼94.7%)、近視のほとんどが軸性近視であり「眼球の形が前後方向に長くなって、目の中に入った光線のピントが合う位置が網膜より前になっている状態」であること、「一度伸びてしまった眼軸長を元に戻すことはできないと言われているため、近視は予防や早期発見がとても重要です」「検査で視力低下や近視を指摘された場合は、早めに眼科を受診しましょう」との記述、近視の多くが小学校3〜4年生頃に発症し早い場合は6歳未満で近視になることがあること、近視が遺伝要因と環境要因の両方に関係し近年の増加は環境による影響が大きいと考えられていること、「親が近視であったとしても、その子供が必ずしも近視になるとは限らず、適切な環境で生活することが大切です」「親が近視であることで、差別やいじめ等が生じることのないよう、注意が必要です」との注意書き、屋外時間に関する分析結果(休日の屋外時間120分以上は30分未満と比べオッズ比0.67・95%CI 0.48〜0.94・p=0.021/授業や休み時間以外の屋外時間90分以上120分未満は30分未満と比べオッズ比0.73・95%CI 0.56〜0.95・p=0.020/休み時間に「いつも出る」は「ほとんど出ない」と比べオッズ比0.66・95%CI 0.49〜0.89・p=0.007。いずれも学年以外の因子は考慮されていない旨の注記あり)、屋外の目安(学校の休み時間では積極的に屋外で過ごす/学校の授業や休み時間以外では1日1時間半/休日では1日2時間)、「直射日光の当たらない建物の影や木陰でも、近視予防に必要な光の明るさ(照度として1,000〜3,000ルクス以上)を確保することができます」「1日2時間以下の屋外活動でも近視の進行抑制に効果が得られる可能性が示唆されています」との記述、「学校以外での電子機器の利用について、一律に視力低下や近視の新規発症に関連が大きいとはいえませんでした」および「長時間の近業に気を付ける」ことが重要との結論、近業時の注意5点(対象から30cm以上目を離す/30分に1回は20秒以上目を休める/背筋を伸ばし姿勢を良くする/部屋を十分に明るくする/使用する機器の輝度を適切に調節する)、スマートフォンやゲーム機使用に関する「目を休めるためのルールの有無」で半数〜7割以上の児童生徒が「ルールは決めていない・決めたが守られていない」と回答したこと、「自分の目は自分で守る」という意識を持つことが重要とされていること、および近視度数と眼疾患のオッズ比に付された「オッズ比は何倍病気になりやすいということを意味するものではありません」との注記の根拠。 - 文部科学省「子供の目の健康を守るための啓発資料」(児童生徒向け・児童生徒の近視実態調査)
この出典で確認した記述
「できるだけ外で遊ぼう!」「長い時間、近くを見続けないでね!」という2つの呼びかけ、「本や画面を目から30cm以上離してね」「30分に1回は体を動かそう!」「明るい部屋で 暗いときは明かりをつけてね」「外で過ごすと近視になりにくいと言われているよ!」「熱中症や紫外線などへの対策も忘れずにね!」との記述、および「黒板の字が見えにくい」「ぼやけて見えたり かさなって見えたりする」「目を細めないと遠くの文字が読みにくい」といったことがあったら家の人に伝えてほしいという呼びかけの根拠。 - 文部科学省「端末利用に当たっての児童生徒の健康への配慮等に関する啓発リーフレットについて」/文部科学省 StuDX Style「家庭と連携した児童生徒の健康への配慮」
この出典で確認した記述
児童用「タブレットを使うときの5つのやくそく」・生徒用「タブレットを使うときの5つの約束」・保護者用「1人1台端末の時代となりました-ご家庭で気をつけていただきたいこと」の3種類のリーフレットが公開されていること、および5つの約束が「タブレットを使うときは姿勢よくしよう」「30分に1回はタブレットから目をはなそう」「ねる前はタブレットを使わないようにしよう」「自分の目を大切にしよう」「ルールを守って使おう」であることの根拠。
この記事について
本記事は家庭での工夫を整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や治療の判断に代わるものではありません。特定の機器・アプリ・設定・サービスを推奨するものでもありません。お子さんの状態が気になる場合は、専門機関や学校にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。