3行まとめ

  • ネット上の悪口は、名誉毀損罪や侮辱罪、損害賠償請求の対象になりうる。総務省は、再投稿しただけでも責任を問われる可能性があるとしている。
  • 国の基本方針では、学校は書いた側の子からも事実を聞き、保護者に連絡して協力を求める。家庭は学校と連携する立場になる。
  • 家庭では、叱る前に何を書いたかを確かめ、謝罪と削除を学校と相談しながら進め、書いた背景にも目を向ける。

この記事でわかること

  • ネットを使ったいじめと人権侵害の件数
  • 悪口の書き込みや再投稿で問われうる責任
  • 書いた側の子と保護者に、学校が行うこと
  • 謝罪・削除・背景の確認を、家庭で進める順番

「うちの子が書いた側」と知った日

夕方、担任の先生から電話があります。クラスのグループチャットに、同級生をからかう言葉が続けて書き込まれ、その中にお子さんの投稿もあった、という内容です。帰ってきた子に聞くと「みんな書いてた」「冗談のつもりだった」「自分は一回だけ」。親としては、相手の子への申し訳なさと、わが子を守りたい気持ちが一度に押し寄せます。

思わず「なんてことをしたの」と声を荒らげたくなる場面です。ただ、責める言葉が先に立つと、子どもは何をどこに書いたのかを話しにくくなります。この記事では、書いた側になったときに家庭がどう動けばよいかを、公的資料に沿って順に見ていきます。

ネットのいじめは、どれくらい起きているか

文部科学省の調査では、2024年度に学校が認知したいじめのうち、パソコンや携帯電話等を使ったものは27,365件でした。前年度の24,678件から増え、いじめ全体に占める割合は3.6%です。学校が把握できた数なので、外から見えにくいやりとりは含まれていない可能性があります。

法務省の人権擁護機関が2025年に新たに救済手続を始めた人権侵犯事件のうち、インターネット上の人権侵害情報に関するものは1,569件で、高い水準が続いているとされています。内訳には、プライバシー侵害503件、名誉毀損348件などが含まれます。この件数は削除要請の単位で数えたもので、書き込みの数ではありません。

どちらの数字も、ネット上の悪口や晒しが特別な出来事ではないことを示しています。わが子が書いた側になることも、どの家庭にも起こりうると考えておくほうが、落ち着いて動けます。

軽い気持ちの書き込みでも、責任を問われますか

問われる可能性があります。国の基本方針は、ネット上のいじめが名誉毀損罪や侮辱罪、損害賠償請求の対象になりうると明記しています。

文部科学大臣が定めた「いじめの防止等のための基本的な方針」は、ネット上のいじめについて、外から見えにくく匿名性が高いため行動に移しやすい一方で、一度拡散した画像や動画を消すことは極めて困難だと指摘しています。一つの行為が、被害を受けた子だけでなく、学校や家庭、地域にまで大きな被害を与える可能性があるとも書かれています。

総務省のインターネットトラブル事例集は、相手を傷つける言葉や言い回しは、批判ではなく誹謗中傷だと整理しています。そのうえで、名乗らなくても誰が書いたかわかる仕組みがあること、自分で書かずに再投稿しただけでも、損害賠償や刑事上の責任を問われる可能性があることを示しています。法務省の資料では、権利を侵害された人はプロバイダなどに投稿者の氏名や住所などの開示を請求できるとされ、侮辱罪の法定刑は2022年7月から引き上げられました。

批判と誹謗中傷の違いの図。上は誹謗中傷として、相手を傷つける言葉や言い回し、人格を否定し攻撃する、他人の悪口をそのまま再投稿する、を挙げる。下は意見として伝える場合として、出来事や考えに対して述べる、相手を傷つける言い回しを使わない、カッとなったら投稿せず時間をおく、を挙げる。
図1:総務省「インターネットトラブル事例集」事例20の「考えてみよう」「もっと詳しく」をもとに編集部が作成。

ここで大切なのは、責任の話を子どもを脅す材料にしないことです。子ども自身が、自分の書いた言葉の重さを理解する手がかりとして使います。

書いた側の子と親に、学校は何をするか

基本方針では、学校はいじめたとされる子からも事実関係を聞き、いじめが確認されたら、複数の教職員で組織的にやめさせ、再発を防ぐ措置をとるとしています。事実を聞き取ったら速やかに保護者に連絡し、事実への理解と納得を得たうえで協力を求め、保護者に継続的な助言を行うとされています。

指導では、いじめが人格を傷つける行為であることを理解させ、自分の行為の責任を自覚させます。同時に、その子が抱える問題などいじめの背景にも目を向け、安心・安全や健全な人格の発達に配慮するとしています。基本方針は、問題を乗り越えた状態を、謝罪だけでなく、被害を受けた子の回復や関係の修復を経て、集団が新しい活動に踏み出すことと説明しています。

「みんな書いてた」という言い分にも、基本方針は触れています。はやしたてるなど同調していた子にも、それがいじめに加担する行為であることを理解させるとしています。一回だけ、周りに合わせただけ、という場合も、自分の分として向き合う必要があります。

ネット上の不適切な書き込みは、被害の拡大を避けるため直ちに削除する措置をとるとされています。家庭だけで相手の家に連絡したり、書き込みを消して終わりにしたりせず、学校と足並みをそろえることが、相手の子のためにもわが子のためにもなります。

書いた側になったときの家庭の4ステップの図。1は叱る前に、何をどこに書いたかを一緒に確かめる。2は学校に事実を伝え、対応の進め方を相談する。3は謝罪と削除を、学校と足並みをそろえて進める。4は書いた背景を一緒に振り返り、次の約束を決める。
図2:文部科学省「いじめの防止等のための基本的な方針」の、いじめた児童生徒への指導と保護者への助言、ネット上のいじめへの対応をもとに、家庭の動きを編集部が整理したもの。

一度に全部できなくても大丈夫です。順番を意識するだけでも、話がこじれにくくなります。

家庭で試す3つの工夫

  1. 叱る前に、画面を一緒に見る:何を、いつ、どのグループやサービスに書いたか、再投稿したかを子どもと一緒に確かめます。親が把握しておくと、学校に正確に伝えられます。
  2. 謝罪と削除は、学校と相談して進める:自分の投稿は消すよう促しつつ、相手への謝罪の時期や方法は学校と相談します。家庭どうしで直接やりとりを始める前に、先生に間に入ってもらうと行き違いが減ります。
  3. 書いた理由を、責めずに聞く:周りに合わせた、腹が立っていた、自分も何か言われていた。背景がわかると、次にどうするかを一緒に決めやすくなります。

同じ「よくないこと」を伝えるにも、言い方で子どもの受け止め方は変わります。

声かけの言い換え例

  • 「なんでそんなことしたの!」→「何を書いたのか、一緒に画面を見せてくれる?」
  • 「みんなやってたなんて言い訳」→「周りがどうだったかも聞かせて。そのうえで、自分の分を考えよう」
  • 「スマホは没収!」→「相手の子がどんな気持ちだったか、まず一緒に考えよう」
  • 「もう二度と書くな」→「カッとなったら、送る前にいったん閉じる練習をしよう」

家庭で確かめたいこと

  • 何を、いつ、どこに書いたか(再投稿を含む)を親が把握しているか。
  • 学校に事実を伝え、今後の進め方を相談しているか。
  • 自分の投稿の削除と、相手への謝罪の方法を学校と話しているか。
  • 書いた背景(同調、怒り、自分も嫌な思いをしていた等)を聞けているか。
  • 次にカッとなったときの約束を、親子で決めているか。

家庭の工夫だけで抱え込まないために

書いた側の家庭は、相手への申し訳なさから「家で厳しく叱ったので終わりにしたい」と考えがちです。けれども、相手の子の回復や関係の修復は、家庭だけでは進められません。まず学校に相談し、学校の対応の流れの中で謝罪や削除を進めてください。基本方針では、子どもの生命・身体・財産に重大な被害が生じるおそれがあるときは、学校が警察に通報し援助を求めるとされています。

相手の家庭から直接連絡があった、投稿者の情報の開示や損害賠償の話が出た、といった場合は、家庭だけで返事をせず、学校に伝えるとともに法律の専門家への相談を検討してください。ネット上の人権問題は、法務省の「みんなの人権110番」(0570-003-110)で相談でき、子ども本人は「こどもの人権110番」(0120-007-110)に電話できます。叱られたことで子どもが強く落ち込んでいる、家庭で話を聞くのが難しいと感じるときも、学校の先生やスクールカウンセラーに相談してください。

よくある質問

子どもが悪口を再投稿しただけでも、責任を問われますか。
問われる可能性があります。総務省のインターネットトラブル事例集は、単に再投稿しただけでも、損害賠償請求や、名誉毀損罪・侮辱罪といった民事上・刑事上の責任を問われる可能性があるとしています。名乗らずに書いても、誰が書いたかわかる仕組みがあることも示されています。
子どもの書き込みは、すぐ消せば済みますか。
消すことは必要ですが、それだけでは終わりません。国の基本方針は、ネット上の不適切な書き込みは被害の拡大を避けるため直ちに削除するとしつつ、一度拡散した情報を消すのは極めて困難だと指摘しています。何を書いたかを学校に伝え、謝罪や関係の修復を学校と一緒に進めてください。
学校から連絡が来たら、親は何をすればいいですか。
まず事実を確かめ、学校と連携して対応します。基本方針では、学校はいじめたとされる子からも事実を聞き、保護者に連絡して理解と協力を求め、継続的に助言するとされています。家庭では叱る前に何を書いたかを一緒に確かめ、学校に正確に伝えることから始めます。

出典・参考

  • 文部科学省「いじめの防止等のための基本的な方針」(平成25年10月11日文部科学大臣決定・平成29年3月14日最終改定)
    https://www.mext.go.jp/content/20240329-mext_jidou02-000034502_006.pdf(確認日 2026-10-19)。
    この出典で確認した記述
    本文12〜13ページ(PDF16〜17ページ)に「インターネット上のいじめは,外部から見えにくい・匿名性が高いなどの性質を有するため児童生徒が行動に移しやすい一方で,一度インターネット上で拡散してしまったいじめに係る画像,動画等の情報を消去することは極めて困難であること,一つの行為がいじめの被害者にとどまらず学校,家庭及び地域社会に多大な被害を与える可能性があることなど,深刻な影響を及ぼすものである。また,インターネット上のいじめは,刑法上の名誉毀損罪や侮辱罪,民事上の損害賠償請求の対象となり得る」。別添2(PDF55〜57ページ)の「④いじめた児童生徒への指導又はその保護者への助言」に「いじめたとされる児童生徒からも事実関係の聴取を行い,いじめがあったことが確認された場合,学校は,複数の教職員が連携し…組織的に,いじめをやめさせ,その再発を防止する措置をとる」「事実関係を聴取したら,迅速に保護者に連絡し,事実に対する保護者の理解や納得を得た上,学校と保護者が連携して以後の対応を適切に行えるよう保護者の協力を求めるとともに,保護者に対する継続的な助言を行う」「いじめは人格を傷つけ,生命,身体又は財産を脅かす行為であることを理解させ,自らの行為の責任を自覚させる。なお,いじめた児童生徒が抱える問題など,いじめの背景にも目を向け,当該児童生徒の安心・安全,健全な人格の発達に配慮する」。「⑤いじめが起きた集団への働きかけ」に「はやしたてるなど同調していた児童生徒に対しては,それらの行為はいじめに加担する行為であることを理解させる」、「加害児童生徒による被害児童生徒に対する謝罪だけではなく,被害児童生徒の回復,加害児童生徒が抱えるストレス等の問題の除去,被害児童生徒と加害児童生徒をはじめとする他の児童生徒との関係の修復を経て…新たな活動に踏み出すことをもって達成される」。「⑥インターネット上のいじめへの対応」に「インターネット上の不適切な書き込み等については,被害の拡大を避けるため,直ちに削除する措置をとる」「児童生徒の生命,身体又は財産に重大な被害が生じるおそれがあるときは,直ちに所轄警察署に通報し,適切に援助を求める」との記載(3行まとめ第1・第2項・「責任」節・「学校は何をするか」節・図2・「気をつけたいこと」節・FAQ第2・第3問の根拠)。
  • 文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」(令和7年10月29日・令和8年1月16日一部修正)
    https://www.mext.go.jp/content/20260116-mxt_jidou02-100002753_1_3.pdf(確認日 2026-10-19)。
    この出典で確認した記述
    PDF7ページ目のいじめの主な特徴に「⑥いじめの態様のうちパソコンや携帯電話等を使ったいじめは27,365件(前年度24,678件) 総認知件数に占める割合は3.6%(前年度3.4%)」との記載(「どれくらい起きているか」節第1段落の根拠)。
  • 法務省人権擁護局「令和7年における『人権侵犯事件』の状況について(概要)」(令和8年3月24日)
    https://www.moj.go.jp/content/001458953.pdf(確認日 2026-10-19)。
    この出典で確認した記述
    PDF2ページ目に「③インターネット上の人権侵害情報について、新規に救済手続を開始した人権侵犯事件の数は、1,569件であり、高水準で推移している」。資料1(PDF12ページ目)に「新規に救済手続を開始したインターネット上の人権侵害情報に関する人権侵犯事件の数は、1,569件で、前年から138件減少した。このうち、プライバシー侵害事案が503件、識別情報の摘示事案が494件、名誉毀損事案が348件となっており、これらの事案で全体の85%を占めている」「人権侵犯事件数はプロバイダ事業者等への削除要請件数ベースで集計しており、人権侵害情報の書き込み数ではない」との記載(「どれくらい起きているか」節第2段落の根拠)。
  • 総務省「インターネットトラブル事例集(2026年版)」事例20「有名人の悪口を投稿する人はいるけれど」
    https://www.soumu.go.jp/use_the_internet_wisely/trouble/case/case20.html(確認日 2026-10-19)。
    この出典で確認した記述
    「考えてみよう」に「A 誹謗(ひぼう)中傷≠批判意見 相手を傷つける言葉や言い回しは、批判ではなく誹謗中傷」として、投稿も再投稿もしてはいけないとする記述「B …名乗らなくても、それが誰かがわかる仕組みがあります。投稿する内容には責任をもって」「C カッとなっても立ち止まって 怒りにまかせた投稿は炎上したり訴えられたりすることも・・・。勢いで投稿しない習慣を身につけましょう」。「もっと詳しく」に「たくさんの悪口が集まれば、集団攻撃となり人を酷く傷つけます。たとえ相手がどんな人であっても、単に再投稿しただけであっても、民事上・刑事上(損害賠償請求、名誉毀損罪や侮辱罪による懲役刑や罰金刑など)の責任を問われる可能性があります」との記載(3行まとめ第1項・「責任」節第3段落・図1・声かけ第4組・FAQ第1問の根拠)。
  • 法務省「インターネット上の人権侵害をなくしましょう」
    https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken88.html(確認日 2026-10-19)。
    この出典で確認した記述
    「被害に遭われた方は、プロバイダ、サーバの管理・運営者など…に対し、発信者の情報の開示を請求したり、人権侵害情報の削除を依頼することができます」、プロバイダ責任制限法の説明に「権利侵害の情報の発信者(掲示板やSNSなどに書き込んだ人)の氏名、メールアドレス、住所などの情報の開示を請求することができます(第5条第1項)」。「侮辱罪の法定刑の引上げ」に「令和4年6月13日、侮辱罪(刑法第231条)の法定刑を『拘留又は科料』から『1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料』に引き上げることを含む『刑法等の一部を改正する法律』(令和4年法律第67号)が成立し、侮辱罪の法定刑の引上げに係る規定は、同年7月7日に施行されました」。相談窓口として「みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル)電話:0570-003-110」「こどもの人権110番(フリーダイヤル)電話:0120-007-110」との記載(「責任」節第3段落・「気をつけたいこと」節の相談先の根拠)。

この記事について

本記事は家庭での工夫を整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や治療の判断に代わるものではありません。特定の機器・アプリ・設定・サービスを推奨するものでもありません。お子さんの状態が気になる場合は、専門機関や学校にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。

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