3行まとめ
- 総務省の事例集は、身内だけに見せるつもりの写真や動画でも拡散して大炎上することがあり、個人が特定されて罪に問われたり損害賠償を請求されたりすることもあるとしている。
- ネットに刻まれた情報は「デジタルタトゥー」と呼ばれるほど半永久的に残る。見つけたら自分は拡散せず、公開・非公開を問わず削除するのが最初の一手。
- 晒された側になったら、法務局などで削除依頼の方法を相談できる。法務省が令和7年に新たに救済手続を始めたネット上の人権侵害は1,569件。
この記事でわかること
- 「友だちだけ」の投稿が広がり、残り続けるということ
- ネット上の人権侵害の件数と、削除の仕組み
- 年齢が上がるほど家庭のルールが減っていく実態
- 投稿の前に立ち止まる工夫と、広がったときの相談先
「グループにしか上げてないから」
放課後、友だちと撮った動画を子どもが見せてくれました。店の前でふざけ合う、他愛のない十数秒です。「グループにしか上げてないから」と子どもは笑います。けれど画面の端に映った店の看板や制服を見て、親は少し落ち着かなくなります。
こうした投稿の多くは、悪意ではなくその場の勢いから生まれます。総務省の事例集も、落ち着いて考えれば判断がつく年齢になっても、そのときのノリや勢いで撮影して公開してしまうケースが後を絶たないと書いています。アルバイト先で不衛生な動画を上げる行為から「バイトテロ」という言葉が生まれたほどだ、とも触れています。足りないのは子どもの分別というより、投稿の前に一呼吸おく仕組みなのかもしれません。
限定公開の投稿でも広がりますか
広がることがあります。見せる相手を限っても、受け取った人が保存したり転送したりすれば、範囲は投稿した人の手を離れます。
総務省「インターネットトラブル事例集(2026年版)」は「悪ふざけなどの不適切な投稿」を取り上げ、身内だけに見せるつもりが拡散し、大炎上することもあると書いています。解説によれば、不適切な投稿を探し出して拡散し、晒し者にして楽しむ人もいます。ネットで広まればあっという間に個人が特定され、罪に問われたり損害賠償請求をされたりすることもある、と注意しています。写真や動画だけではありません。誰かになりすました投稿や、ウソ・フェイク情報の書き込みも、不適切な投稿に含まれています。
同じ事例集の以前の版の詳細ページには、「デジタルタトゥー」と称されるほど、ネットに刻まれた情報は半永久的に残るとあります。つまり、一度広がった投稿は、元を消しても誰かが保存した写しまでは取り戻せないと考えておくほうが安全です。だから話しておきたいのは、投稿した後より、投稿する前のことです。
ネット上の人権侵害は、どのくらい相談されているか
法務省の人権擁護機関は、ネット上の誹謗中傷などの相談を受けると、削除依頼の方法を助言したり、違法性を判断したうえでプロバイダなどに削除を要請したりしています。
| 項目 | 件数・割合 |
|---|---|
| 新規に救済手続を開始 | 1,569件(前年から138件減) |
| うちプライバシー侵害 | 503件 |
| うち識別情報の摘示 | 494件 |
| うち名誉毀損 | 348件 |
| 処理した事件 | 1,572件 |
| 処理のうち削除を「要請」 | 349件(約2割) |
上の3つの事案で全体の85%を占めます。件数は削除要請の単位で数えたもので、書き込みの数ではありません。処理した事件のうち約4割は、被害者に削除を依頼する方法を教えるなどの「援助」でした。削除は、被害を受けた本人が自分で依頼する形も大きな割合を占めているということです。
また総務省によれば、情報流通プラットフォーム対処法により、YouTube、Instagram、TikTok、Xなど大規模なサービスの事業者には、削除対応の迅速化と運用状況の透明化が義務付けられています。
年齢が上がるほど、家のルールは減っていく
こども家庭庁の令和7年度の調査で、ネット利用について家庭のルールを「決めている」と答えた子どもは、小学生(10歳以上)83.8%、中学生74.5%、高校生44.3%でした。保護者の回答は88.4%、81.9%、58.3%で、高校生では親子の認識に14ポイントの差があります。調査は、学校種が上がるほど「決めていない」が増え、親子の認識のギャップも広がる傾向だとしています。
スマホを自分で管理するようになる時期ほど、家の約束は薄れていきます。細かなルールを増やすより、「何を投稿しないか」という一点だけでも親子で言葉にしておくことが、この時期には現実的です。たとえば「友だちの顔と学校が分かるものは本人に聞かずに上げない」「誰かを笑いものにする動画は撮らない」の二つだけでも十分です。親が決めて渡すより、子ども自身に「うちの線」を言ってもらうほうが、外で誘われたときに思い出しやすくなります。
家庭で試す3つの工夫
- 投稿前の問いを家で共有する:先生や知らない大人に見られても困らないか。映っている友だちは載せることに納得しているか。制服や看板など、場所が分かるものが写っていないか。この3つを冷蔵庫に貼るくらいの気軽さで決めておきます。
- 誘われたときの断り方を先に決める:事例集は、やろうという子がいたら友だちどうしでもダメなものはダメと伝えるよう書いています。その場で考えるのは難しいので、「親にチェックされてるから無理」と親のせいにしてよいと伝えておきます。
- 見つけたときの約束をつくる:面白い投稿でも自分は転送しない。友だちの投稿なら削除を勧め、困ったら家の大人に見せる。拡散に加わらないことも、事例集が挙げる大事な一歩です。
見せてくれたときの最初の一言で、次も見せてくれるかが変わります。
声かけの言い換え例
- 「何考えてるの」→責められると次から見せなくなる。「見せてくれてありがとう。知らない人が見たらどう思うかな」。
- 「ネットに上げるの禁止」→隠れて上げるだけになりやすい。「上げる前に、一回だけ家の誰かに見せて」。
- 「消せば済むでしょ」→写しが残ることに触れていない。「消すのは大事。誰かが保存していないかも一緒に考えよう」。
- 「晒されたのは自業自得」→助けを求めにくくなる。「困ったね。消す方法を一緒に調べよう」。
親子で確かめたいこと
- 限定公開やグループ内の投稿も広がることがある、と話したか。
- 映っている友だちに確かめてから載せる習慣があるか。
- 誘われたときの断り方を、子どもが一つ言えるか。
- 人の投稿を面白がって転送しない、と約束しているか。
- 晒されたときの相談先を、子どもも知っているか。
家庭の工夫だけで抱え込まないために
子どもが投稿した側のときは、まず削除させ、そのうえで強く責めすぎないことが大切です。事例集も、削除させたうえで反省を促し、再発を防ぐことを挙げています。叱り方がきつすぎると、次に困ったとき親に言えなくなります。
子どもが晒された側になったときは、一人で抱えず外に相談できます。法務局は削除依頼の方法を助言し、人権侵害と判断した情報はプロバイダなどに削除を要請します。電話はみんなの人権110番(0570-003-110)、いじめなど子どもの人権問題はこどもの人権110番(0120-007-110)、ネットやLINEでの相談もあります。法務省は、自分で削除を依頼するための「インターネット上の誹謗中傷 書き込み削除依頼の手引き」も公開しています。削除依頼の方法が分からないときは、総務省の支援事業である違法・有害情報相談センターにWebフォームで相談できます。
脅されている、身の危険を感じるときは警察の相談窓口へ。友だち関係のいじめが絡むときは、学校にも相談してください。
よくある質問
- 限定公開やグループ内の投稿なら安全ですか。
- 安全とは言えません。総務省の事例集は、身内だけに見せるつもりの写真や動画が拡散し、大炎上することもあるとしています。受け取った人が保存や転送をすれば、公開範囲は投稿した人の手を離れます。事例集が「内輪しか見ない」という考えは甘いと書いているのもそのためです。
- 投稿を消せば、なかったことになりますか。
- そうとは限りません。事例集は「デジタルタトゥー」と称されるほど、ネットに刻まれた情報は半永久的に残るとしています。削除は最初にすべきことで、公開・非公開を問わず消すよう勧められていますが、誰かが保存した写しまでは取り戻せないと考えておくほうが安全です。
- 子どもの動画が勝手に晒されたら、どこに相談できますか。
- 法務局に相談できます。削除依頼の方法を助言し、人権侵害と判断すればプロバイダなどに削除を要請します。みんなの人権110番(0570-003-110)、こどもの人権110番(0120-007-110)があります。削除依頼の方法が分からないときは、違法・有害情報相談センターにWebフォームで相談できます。
- ふざけた投稿で罪に問われることはありますか。
- 内容によってはあります。総務省の事例集は、不適切な投稿がネットで広まると個人が特定され、罪に問われたり損害賠償請求をされたりすることもあるとしています。法務省は、ネット上の誹謗中傷が社会問題となったことを契機に、令和4年に侮辱罪の法定刑が引き上げられたと説明しています。
出典・参考
- 総務省「インターネットトラブル事例集(2026年版)」18 悪ふざけなどの不適切な投稿
この出典で確認した記述
事例集トップ(https://www.soumu.go.jp/use_the_internet_wisely/trouble/)に「インターネットトラブル事例集 2026年版」とあり、一覧の「18.悪ふざけなどの不適切な投稿」がこのページにリンクしている。ページ本文に、学習のポイントとして「そもそもやってはいけない危険行為や迷惑行為 冗談や軽い気持ちで投稿・拡散しないこと」、考えてみようとして「身内だけに見せるつもりが拡散し、大炎上することもある不適切な写真や動画。」、A「やろうという子がいたら 友だちどうしでも、ダメなものはダメ。その友達と自分のこともよく考えて。」、B「投稿を見つけたら まずは自分が拡散しないこと。そして、公開でも非公開でもその投稿を削除させましょう。」、C「なりすましや、ウソ・フェイク情報の書き込みも不適切な投稿なので、拡散してはダメです。」との記載。もっと詳しくとして「落ち着いて考えれば、やっていいことかどうか判断がつく年齢になっても、そのときのノリや勢いで撮影し、公開してしまうケースが後を絶ちません。アルバイト先で不衛生な動画をアップする人の行為から、『バイトテロ』という言葉が誕生したほど」「それらを探し出し、拡散させて晒し者にして楽しむ人もいます。ネットで広まればあっという間に個人が特定され、罪に問われたり損害賠償請求をされたりすることもあります。」との記載(リード・情景・「限定公開の投稿でも広がりますか」節・工夫2と3・図1・図2の手順1と2・FAQ第1問と第4問の根拠)。 - 総務省「インターネットトラブル事例集」テーマ4【詳細版】悪ふざけなどの不適切な投稿
この出典で確認した記述
事例集の以前の版(テーマ4 情報発信編「〜被害者にも加害者にもならないために〜」)の詳細ページ。A「ルール・モラル違反は厳禁!この事例の行動は危険だし、『内輪しか見ない』という考えも甘い。自分の将来も考えて、誘いにはのらず、ダメなものはダメ!と注意して止めましょう。」、B「まずは自分が拡散しないこと。そして、ネットで広まれば取り返しがつかない大ごとになると気づかせ、公開・非公開を問わず削除させましょう。反省を促し再発を防ぐことも大切です。」、ワンポイントアドバイスとして「『デジタルタトゥー』と称されるほど、ネットに刻まれた情報は半永久的に残ります。未来の自分を苦しめることのないよう、正しい利用を!」との記載(3行まとめ第2項・「限定公開の投稿でも広がりますか」節のデジタルタトゥーの記述・「気をつけたいこと」節の反省と再発防止・FAQ第1問の「内輪しか見ない」・FAQ第2問の根拠)。「元を消しても誰かが保存した写しまでは取り戻せないと考えておく」は、この「半永久的に残る」を家庭の心構えとして編集部が言い換えたもの。 - 法務省人権擁護局「令和7年における『人権侵犯事件』の状況について(概要)」(令和8年3月24日)
この出典で確認した記述
別添「インターネット上の人権侵害情報に関する人権侵犯事件について」(PDF12ページ目・資料1頁)に「インターネット上の誹謗中傷等の被害を受けた方等からの相談を受けた場合には、相談者の意向に応じて、当該誹謗中傷等の書き込みの削除依頼の方法等を助言したり、あるいは、人権擁護機関において違法性を判断した上で、プロバイダ事業者等に対して書き込みの削除要請をするなどしている。」との記載。同2頁(PDF14ページ目)に「令和7年において、新規に救済手続を開始したインターネット上の人権侵害情報に関する人権侵犯事件の数は、1,569 件で、前年から138 件減少した。このうち、プライバシー侵害事案が503 件、識別情報の摘示事案が494件、名誉毀損事案が348 件となっており、これらの事案で全体の85%を占めている。なお、人権侵犯事件数はプロバイダ事業者等への削除要請件数ベースで集計しており、人権侵害情報の書き込み数ではない」「令和7年において、処理したインターネット上の人権侵害情報に関する人権侵犯事件の数は、1,572 件となり、前年から338 件減少した。当該事件の処理のうち、被害者に対しインターネット上の人権侵害情報の削除を依頼する方法を教示するなどの『援助』は約4割を占めており、人権擁護機関が違法性を判断した上で、プロバイダ等に対し人権侵害情報の削除を求める『要請』を行った件数は349 件で、約2割となっている。」との記載(3行まとめ第3項・「ネット上の人権侵害は、どのくらい相談されているか」節と表の根拠)。同資料「3 その他」に「電話(みんなの人権110 番:0570-003-110)、インターネット(インターネット人権相談受付窓口)、LINEなどでも相談に応じている」との記載があり、末尾の「インターネット上の書き込みなどに関する相談・通報窓口のご案内」に「身の危険を感じている/脅迫されている」ときの窓口として警察または居住地のサイバー犯罪相談窓口が示されている(「気をつけたいこと」節の根拠)。 - 法務省「インターネット上の人権侵害をなくしましょう」
この出典で確認した記述
「ご自身でインターネット上の誹謗中傷について削除依頼をしたい方向けに、削除依頼についてできるだけ専門用語を使わずに解説したデジタルブックです。インターネット上の誹謗中傷書き込み削除依頼の手引きはこちら。」「法務局では、インターネット上の誹謗中傷やプライバシーを侵害する情報の削除依頼の方法について助言を行うなど、相談者ご自身が被害の回復を図るための手助けをします。また、法務局では、相談者の被害申告などに基づいて、インターネット上の情報について、名誉毀損やプライバシー侵害などの人権侵害に該当するかどうか判断し、人権侵害に該当すると認めた情報について、プロバイダなどへの削除の要請を行っています。」との記載。人権相談窓口として「みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル)電話:0570-003-110」「こどもの人権110番(フリーダイヤル)電話:0120-007-110…『いじめ』や虐待などこどもの人権問題に関する専用相談電話です。」「SNS(LINE)人権相談」の記載。参考情報として「令和4年6月13日、侮辱罪(刑法第231条)の法定刑を…引き上げることを含む『刑法等の一部を改正する法律』(令和4年法律第67号)が成立し…同年7月7日に施行されました。」との記載(「気をつけたいこと」節・FAQ第3問と第4問の根拠)。 - 総務省「インターネット上の違法・有害情報に対する対応(情報流通プラットフォーム対処法)」
この出典で確認した記述
「一定の要件を充足する大規模なプラットフォーム事業者を大規模特定電気通信役務提供者として指定し、削除対応の迅速化及び運用状況の透明化に係る措置を義務付けています」との記載と、指定事業者の一覧(Google LLC=YouTube、Meta Platforms, Inc.=Facebook・Instagram・Threads、TikTok Pte. Ltd.=TikTok・TikTok Lite、X Corp.=X ほか)。関係サイトとして「違法・有害情報相談センターは、インターネット上の違法・有害情報に対し適切な対応を促進する目的で、関係者等からの相談を受け付け、対応に関するアドバイスや関連の情報提供等を行なう相談窓口です。(総務省支援事業)」「サイト管理者等への削除依頼の方法等に関する相談を受け付けていますので、削除依頼の方法が分からない場合には、当センターへご相談下さい。」「Webフォームからの相談のみ受け付けております。」との記載(「ネット上の人権侵害は…」節の最終段落・「気をつけたいこと」節・FAQ第3問の根拠)。 - こども家庭庁「令和7年度青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(概要)」(令和8年3月)
この出典で確認した記述
PDF20ページ目(資料19頁)「概要14 インターネット利用に関する家庭のルールの有無」に「学校種が上がるにつれて、『ルールを決めていない』との回答が増え、青少年と青少年の保護者の『ルールの有無に関する認識のギャップ』も拡大傾向。」との記載。図「青少年とその保護者のルールの有無に関する認識の比較(学校種別/令和7年度)」の「ルールを決めている」は、小学生(10歳以上)青少年83.8%・保護者88.4%、中学生青少年74.5%・保護者81.9%、高校生青少年44.3%・保護者58.3%(「年齢が上がるほど、家のルールは減っていく」節の根拠。14ポイントは58.3−44.3の差)。
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