3行まとめ
- 子どもがオンラインで知らない人とつながる場面は、ゲームのボイスチャットやSNSのDMを通じて日常的に起きています。相手が誰かは画面越しには確かめられません。
- 警察庁の統計では、SNS(オンラインゲームを含む)で面識のない相手と知り合って被害に遭った子どもは高い水準で推移し、小学生の被害はこの10年で最も多くなっています。
- 大切なのは全面禁止ではなく、個人情報と写真を守る約束、あやしいと感じたときの止め方、困ったら怒らずに聞く姿勢を、家庭であらかじめ用意しておくことです。
この記事でわかること
- 子どもが「知らない人」とつながる、オンラインの主な入口
- 公的データが示す被害の実態と、家庭で見落としがちなリスク
- 禁止ではなく守りとして備える、家庭のルールと声かけの作り方
「フレンドと話してるだけ」の向こう側
リビングから子ども部屋をのぞくと、ヘッドセットをつけた子が画面に向かって楽しそうに笑っています。「誰と話しているの?」と聞くと、「フレンド。ゲームで一緒のチームの人」という答え。名前を尋ねても、返ってくるのはハンドルネームだけ。学校の友達なのか、まったく知らない大人なのかは、親にもよくわからない——こうした場面は、いまや多くの家庭で日常的に起きています。
オンラインゲームやSNSは、同じ趣味の人とつながれる楽しい場所です。内気な子が、画面越しだからこそ気軽に話せて、居場所を見つけることもあります。その価値そのものを否定する必要はありません。けれど、対面と決定的に違うのは、相手の年齢も、性別も、本当の意図も、こちらからは確かめようがないという点です。「小学生の女の子」と名乗っていても実際は大人かもしれませんし、最初はやさしく話を合わせてくれた相手が、時間をかけて信頼させたうえで、こちらの情報を引き出そうとしていることもあります。
だからこそ必要なのは、「知らない人とは関わるな」と入口をふさぐことよりも、つながること自体は前提としたうえで、どこに線を引くかを子どもと共有しておくことです。まずは、子どもがどんな入口から知らない人とつながっているのかを具体的に見ていきましょう。オンラインでのトラブルを子どもが打ち明けやすい家庭のつくり方は、ネットで困ったとき、子どもが親に言える家庭のつくり方でも詳しく扱っています。
知らない人とつながる4つの入口
「知らない人とのつながり」と聞くと、多くの親は出会い系のような特別なサービスを思い浮かべがちです。けれど実際には、子どもが日々使っているごく普通のアプリの中に、その入口があります。総務省の「インターネットトラブル事例集」で紹介されている事例をたどると、大きく次の四つの入口が見えてきます。
一つ目は、オンラインゲームのフレンド機能とボイスチャットです。同じチームで遊ぶうちに親しくなり、声で会話をする関係に発展します。楽しい交流ですが、総務省の事例集は、ゲーム中の会話をきっかけに、自分の住所や学校の名前などが、ボイスチャットを通じて特定されてしまうことがあると注意を促しています。二つ目は、SNSのDMやコメント欄です。好きな作品やゲームの投稿に「いいね」やコメントが付き、そこからやり取りが始まります。三つ目は、悩みの相談を入口にしたつながりです。学校や家庭の悩みをSNSに書いたところ、親身に相談に乗ってくれる相手が現れる——事例集では、そうして知り合った相手に「守ってあげる」などと誘われ、家出や誘い出しにつながった事例が紹介されています。四つ目は、ゲームやアカウントの「得」をエサにした接触です。レアアイテムをあげる、代わりにログインしてあげると持ちかけ、IDやパスワードを聞き出そうとするものです。
四つに共通するのは、いずれも最初は「楽しい交流」「親切な相手」の顔をしている、という点です。あからさまに怪しい人が近づいてくるわけではありません。時間をかけて信頼を築き、そのうえで少しずつ個人情報や写真を引き出したり、会う約束に持ち込もうとしたりする——この段階を踏むやり方だからこそ、子どもは「この人は大丈夫」と感じてしまい、警戒が働きにくくなります。だから家庭での備えは、「怪しい人を見分ける」ことよりも、「相手が誰であっても渡さない情報・しない約束を、あらかじめ決めておく」ことに重心を置くのが現実的です。
公的データで見る、被害の実態
この場面にどれくらい備えが必要なのか、公的なデータで確かめてみましょう。まず前提として、いまの子どものネット利用は例外的なものではありません。こども家庭庁の「令和6年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」(令和7年3月公表)によれば、10歳から17歳の青少年の98.2%がインターネットを利用しており、小学生(10歳以上)でも97.2%、中学生で98.1%、高校生で99.4%にのぼります。利用する機器はスマートフォンが75.4%を占めます。ネットにつながることが当たり前になった以上、知らない人とつながる可能性も、すべての家庭にとって身近な話だということです。
そのうえで、警察庁の統計を見てみます。警察庁「令和7年における少年非行及び子供の性被害の状況について」(令和8年2月公表)によると、SNSをきっかけに面識のない相手と知り合って被害に遭った子ども(SNSに起因する事犯の被害児童)は、令和7年に1,566人でした。前年の1,486人から増え、依然として高い水準で推移していると報告されています。ここで見落とせないのが、この統計でいう「SNS」の定義です。警察庁は注記で、この統計のSNSには通信ゲーム(オンラインゲーム)を含むと明記しています。つまり、ゲームで知り合った相手による被害も、この数字の中に含まれているということです。「SNSはやらせていないから大丈夫」と思っていても、オンラインゲームの交流は同じ地続きのリスクを持っている、と読み取れます。
とりわけ注意したいのが、年齢層ごとの傾向です。警察庁によれば、被害に遭った子どものうち小学生は令和7年に167人で、前年の136人から約2割増え、この10年で最も多くなりました。10年前の平成28年は43人でしたから、約4倍に増えた計算です。被害はけっして中高生だけの問題ではなく、より年齢の低い子どもにも広がっていることがわかります。被害のきっかけは、いずれも「面識のない被疑者と知り合った」ことにあると整理されており、これはこの記事のテーマそのものです。
もう一つ、家庭の備えに直結する数字があります。警察庁のサイバー警察局がまとめた資料によると、SNSに起因する事犯で被害に遭った子どものうち、フィルタリングの利用状況が判明している子の約9割は、フィルタリングを利用していませんでした(令和7年)。フィルタリングを入れれば被害がなくなるわけではありませんが、被害に遭った子の多くが未設定だったという事実は、技術的な守りが接触の入口を減らす一定の役割を果たすことを示しています。実際、警察庁は保護者への呼びかけとして、フィルタリングの設定、ペアレンタルコントロール機能の活用、そして家庭内のルールづくりの三つをセットで挙げています。技術の守りと家庭の対話は、どちらか一方では足りず、両輪で働くという考え方です。フィルタリングの始め方は、子どものスマホのフィルタリング、始め方と親子の約束にまとめています。
被害の形として、近年とくに増えているのが「自画撮り被害」です。警察庁の説明によれば、これは児童がSNS等を通じて知り合った面識のない相手に、脅されたり言葉巧みにだまされたりして、自分の裸などの写真を撮影して送らされる被害を指します。警察庁は「オンラインゲームの中で知り合った者から誘い出され、重要犯罪に巻き込まれる事案まで発生している」と注意を呼びかけ、子ども自身へのメッセージとして「他人に個人情報を流さない」「下着姿や裸の写真は撮らない、送らない」、そして「画像は一度流出すると回収が困難」であることを伝えています。数字の重さに身構えてしまいますが、裏を返せば、家庭で守るべきポイントは「個人情報と写真」という、かなりはっきりした形に絞られている、ということでもあります。
禁止ではなく「守り」として備える3ステップ
データを踏まえたうえで、家庭でできる備えを考えます。ここでも出発点は「知らない人とは関わらせない」という全面禁止ではありません。禁止だけで押さえ込むと、子どもは隠れて続け、困ったときにこそ相談できなくなります。目指したいのは、つながること自体は認めながら、渡さないもの・しない約束・困ったときの逃げ道を、あらかじめ一緒に決めておくことです。次の3ステップで、無理なく土台をつくれます。
①つながる前に「線」を決める。相手が誰であっても渡さないものを、先に親子で言葉にしておきます。本名、住所、学校名、通っている場所や時間、そして顔や体が写った写真です。総務省の事例集も警察庁も、これらの個人情報や写真が被害の入口になると繰り返し伝えています。あわせて、「ネットで知り合った人と実際に会う約束はしない」「会いたいと言われたら必ず家の人に話す」という一線も決めておきます。②会話中の「止まるサイン」を共有する。やり取りの最中に、これが出たら立ち止まる、という合図を子どもと決めます。個人情報を聞かれたとき、写真を求められたとき、「二人だけの秘密にしよう」「親には言わないで」と言われたとき、別のアプリやDMに移ろうと誘われたとき——これらは、相手の意図があやしい可能性を示すサインです。「そう言われたら、返事をする前にいったんやめて、家の人に見せていいよ」と伝えておきます。③困ったら「怒らずに聞く」と約束する。どれだけ備えても、線を越えそうになることはあります。そのときに子どもが最初に相談できる相手が家庭であるために、「何があっても、まず聞くから」「あなたを責めないから」と、あらかじめ伝えておきます。この安心があるかどうかで、子どもが早い段階で打ち明けられるかが大きく変わります。
この3ステップは、一度話して終わりにするより、ゲームやSNSを始めるタイミング、新しいアプリを入れるとき、進級のときなど、折にふれて短く確認し直すのが効果的です。長い説教にする必要はありません。「あの約束、まだ大丈夫?」と一言かけるだけでも、線は保たれます。SNSを始める前の準備は、SNSデビュー前の親子チェックリストもあわせて参考になります。
家庭で試す3つの工夫
家庭で試す3つの工夫
- ① 「誰と遊んでいるの?」を責めずに日常会話にする:プレイ中の相手を問い詰めるのではなく、「今日はどんな人と一緒だった?」「そのフレンド、どこで知り合ったの?」と、興味を持って聞く会話を習慣にします。ふだんから話題にできていると、あやしい相手のことも隠されにくくなります。
- ② 「合言葉」で止まれるようにしておく:個人情報や写真を求められたとき、その場で断りにくい子もいます。「そういうのは家のルールで決まってるから」と言えるよう、家庭のルールを子どもの逃げ道として使える形にしておきます。相手のせいにせず「ルールだから」で断れると、子どもの負担が減ります。
- ③ フレンド申請や公開範囲を一緒に見直す:ゲームやSNSの設定で、知らない人からのフレンド申請やメッセージをどこまで受けるかを、子どもと画面を見ながら確認します。ボイスチャットの相手を制限する設定がある場合もあります。設定は入れて終わりではなく、成長に合わせて一緒に調整していきます。
声かけの言い換え
声かけの言い換え例
「知らない人とは二度と話しちゃダメ」→ 全面禁止は隠れて続ける動機になり、困っても相談できなくなる。
「相手が誰でも、名前や住所や写真は渡さないでね」→ 守るポイントを具体的に絞ると、子どもが実行しやすい。
「そんな人と関わるあなたが悪い」→ 責めると、次からトラブルを打ち明けられなくなる。
「あやしいと思ったら、返事の前に見せて。怒らないから」→ 止まる合図と逃げ道を渡し、早めの相談につながる。
安全のためのチェックリスト
家庭で確認するチェックリスト
- 本名・住所・学校名・写真は「相手が誰でも渡さない」と親子で決めている。
- ネットで知り合った人と実際に会う前には、必ず家の人に話すと約束している。
- 個人情報や写真を求められたら、いったん止まって相談する合図を共有している。
- 子どもが誰とオンラインで遊んでいるか、ふだんの会話で話題にできている。
- 「困ったら怒らずに聞く」と伝え、相談できる関係を土台に置いている。
気をつけたいこと・相談先
「監視」ではなく「相談できる関係」を土台に
ここで紹介したのは、オンラインで知らない人とつながる場面に、家庭で備えるための一般的な考え方です。アプリの設定名や具体的な手順は、ゲーム・SNS・端末のOSによって異なり、更新でも変わります。実際の設定は、お使いのサービスや端末の公式の案内で確認してください。また、どれだけ約束や設定を整えても、リスクが完全にゼロになるわけではありません。相手は時間をかけて信頼させてくるため、大人でも見抜くのは簡単ではないからです。だからこそ、抜け道を全部ふさごうと監視を強めるより、「困ったときに真っ先に家に言える関係」を保つことのほうが、長い目で見た守りになります。約束を破ったことがわかったときも、まず責めるより、話してくれたことをねぎらう——その積み重ねが、次に危ないことがあったときの相談につながります。
もし子どもが、知らない相手から個人情報や写真を求められた、脅された、会おうと誘われた、といった状況になったときは、家庭だけで抱え込まないでください。緊急の危険があるときは110番、そうでない相談は警察相談専用電話「#9110」や、各都道府県警のサイバー犯罪相談窓口を頼れます。ゲームの高額課金など消費生活のトラブルは消費者ホットライン「188」、子ども自身が話しにくいことを相談したいときは、24時間子供SOSダイヤルなどの窓口もあります。本記事は、特定のサービスやアプリの利用を推奨・否定するものではなく、被害の防止を保証するものでもありません。子どもの様子に強い不安があるときは、学校や自治体、専門の相談機関に相談する選択肢があります。
出典・参考
- 警察庁 生活安全局人身安全・少年課「令和7年における少年非行及び子供の性被害の状況について」(令和8年2月公表)
- 警察庁 サイバー警察局「サイバー警察局便り 2026 Vol.7」
- 警察庁「なくそう、子供の性被害。」自画撮り被害のページ
- 総務省「インターネットトラブル事例集」(事例5「ゲームがきっかけとなりトラブルに発展!?」/事例3「SNSで親身になってくれた相談相手に会いたい」)
- こども家庭庁「令和6年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 報告書」(令和7年3月公表)
この記事について
本記事は、子どもがオンラインゲームやSNSで知らない人とつながる場面について、公的機関が公表している一般的な情報を整理したものであり、特定のサービス・端末・アプリの利用を推奨・否定したり、被害の防止を保証したりするものではありません。統計の数値や制度は年度によって変わり、アプリの設定方法もサービスやOS、更新によって異なります。実際の設定や最新の情報は、各公式の案内でご確認ください。ネット上のトラブルや、知らない人とのやり取りで困ったときは、警察相談専用電話「#9110」や各都道府県警のサイバー犯罪相談窓口、消費者ホットライン「188」など、公的な相談先にご相談ください。緊急の危険があるときは110番へ連絡してください。