3行まとめ
- 就学先は、市区町村の教育委員会が保護者と専門家の意見を聴き、話し合ったうえで決める。障害の状態や診断名だけで機械的に決める仕組みではない。
- 小学校段階の学びの場は、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校の4つ。
- 決めた学びの場は固定ではなく、入学後の様子に合わせて見直せる。
この記事でわかること
- 就学相談がいつ、どんな順番で進むか
- 就学先を最終的に誰が、どう決めるか
- 4つの学びの場の違い
- 面談や見学の前に家庭で準備しておくこと
「相談したら特別な学校に決まるの?」
年長の秋、就学時健診を終えた帰りに、園の先生から「一度、教育委員会の就学相談で話してみませんか」と声をかけられた。ことばがゆっくりで、集団の指示が通りにくいことは前から気になっていた。それでも帰り道、母親の頭に浮かんだのは「相談したら、行き先を決められてしまうのでは」という不安だった。
就学相談という言葉は知っていても、中身を知る機会はあまりありません。就学相談は判定の場ではなく、子どもの様子を共有して、合う学びの場を一緒に考えるための話し合いの場です。迷っている段階で相談してよいものです。
就学相談はいつ、何をするのですか
入学前の秋から冬に法令上の手続きが進み、その前に任意の相談や見学の期間があります。文部科学省の「障害のある子供の教育支援の手引」は、法令の手続きが始まる前に、説明会、教育相談、学校見学、体験入学などを、時間的余裕をもって計画的に行うことが極めて重要だとしています。
法令上の流れは次のとおりです。市区町村の教育委員会は10月に入学予定の子の学齢簿を作り、就学時健康診断は原則として入学の4か月前(11月末)までに行います。小学校への就学通知は入学の2か月前(1月末)までに届きます。特別支援学校が適当と判断された場合は、市区町村から都道府県の教育委員会へ入学の3か月前までに通知され、保護者には都道府県から通知が届きます。
| 手続き | 期限 |
|---|---|
| 学齢簿の作成 | 入学の5か月前まで(10月末) |
| 就学時健康診断 | 入学の4か月前まで(11月末)。手続きに支障がなければ3か月前まで |
| 特別支援学校が適当な子の通知(市区町村→都道府県) | 入学の3か月前まで(12月末) |
| 保護者への就学通知 | 入学の2か月前まで(1月末) |
最後に決めるのは誰か
就学先を最終的に決めるのは市区町村の教育委員会です。障害の程度が法令の基準にあたる子については、通知の前に保護者と、教育学・医学・心理学などの専門家の意見を聴くことが法令で定められています。手引は、学びの場の検討全般で専門家の意見を聴くことが必要だとし、本人と保護者の意見を最大限尊重し、十分な説明と合意形成を図ったうえで決めることが適当だとしています。
2013年の学校教育法施行令の改正で、障害の状態だけに着目して画一的に就学先を決める仕組みは改められました。いまは、子どもの教育的ニーズ、学校や地域の状況、保護者や専門家の意見を総合的に勘案して、個別に決めます。手引は、医療機関の診断や療育手帳の有無だけで判断するのは適切ではなく、障害の状態だけで学びの場に当てはめて考えることは厳に避けなければならないとも書いています。
法令の上でも、障害の程度が基準にあたる子がそのまま特別支援学校に振り分けられるわけではありません。教育委員会が、障害の状態に加えて必要な支援の内容や地域の教育体制なども勘案して、特別支援学校が適当と認めた場合に限って、その手続きに進みます。
4つの学びの場の違い
小学校段階の学びの場は4つあります。通常の学級、通常の学級に在籍しながら一部の時間に別の場で特別な指導を受ける通級による指導、少人数の特別支援学級、そして特別支援学校です。通級による指導は、年間35〜280単位時間、週に換算して1〜8単位時間程度が標準とされています。
手引は、通常の学級と通級の組み合わせで十分な教育を提供できるならそちらを選び、通級だけでは特別な指導が十分にできない場合に特別支援学級を選ぶ、という順で考えるよう示しています。教員が確実に配置される特別支援学級が、十分な検討なく選ばれる事例があるという指摘にも触れています。
文部科学省の特別支援教育資料(令和6年度)では、小学校段階で特別支援学級に在籍する子は281,167人で、全体の4.65%でした。通級による指導を受けた小学生は令和5年度に166,556人(2.71%)です。どの学びの場も、すでに多くの子が利用している選択肢です。
どこを選ぶかで手引が最も本質的な視点として挙げるのは、授業内容が分かり、学習活動に参加している実感や達成感をもちながら、充実した時間を過ごせるかどうかです。障害のある子とない子が可能な限り同じ場で共に学ぶことを目指しつつ、この視点で確かめるよう求めています。
決めたあとも見直せる
手引は、就学先の学校や学びの場は固定的なものではなく、入学後も転学や学びの場の変更ができると保護者に分かりやすく伝えるよう求めています。学校現場でも「一度決めたら変えられない」と誤解されていることがあると、手引自身が指摘しています。
入学前には、それまでの支援の内容や必要な配慮が「個別の教育支援計画」などにまとめられ、保護者の了解を得て入学先に引き継がれます。話し合いで意見がまとまらない場合には、体験入学のあとに改めて検討する方法や、第三者を交えた調整の場も手引に例示されています。
次の3つは、家庭で取り入れやすい工夫です。
家庭で試す3つの工夫
- 面談の前に4行のメモをつくる:できること、困っていること、好きなこと、園で助けてもらっていることを1行ずつ書いて持っていくと、短い面談でも伝え漏れが減ります。
- 見学はふだんの日に、複数の場を:手引は、学校が特別な準備をせず日常をありのまま見てもらうことや、いくつかの学びの場を見学できるようにすることを勧めています。
- 園や療育の記録を共有する:個別の支援計画などがあれば、同じことを何度も説明せずに済みます。共有には保護者の同意が前提です。
声かけの言い換え例
- 「ちゃんとできないと、みんなと同じ教室に行けないよ」→子どもが見学や相談を試験のように感じる。
- 「小学校を見に行こう。楽しそうな場所を教えてね」→子どもの感じ方を手がかりにできる。
- 「体験入学、うまくできた?」→できた・できないの評価になる。
- 「どの時間がいちばん楽しかった?」→その場で過ごした実感を聞ける。
家庭で確認するチェックリスト
- 住んでいる市区町村の就学相談の窓口と申込み方法を調べた。
- 健診や就学通知の時期と、相談の締め切りを確かめた。
- 見学したい学校や学びの場を、2つ以上挙げた。
- 子どもの様子を伝えるメモと、園や療育の記録をそろえた。
- 入学後も学びの場を見直せることを、家族で共有した。
家庭の工夫だけで抱え込まないために
この記事は国の手引と法令の内容を整理したもので、個々のお子さんにどの学びの場が合うかを判断するものではありません。相談の受付時期や窓口の名前、見学の方法は市区町村ごとに異なります。気になった時点で、住んでいる市区町村の教育委員会に問い合わせてください。
教育委員会の判断と保護者の考えが一致しないときのために、手引は、意見を調整する手順や、行政不服審査制度を含む異議申し立ての仕組みを、教育委員会があらかじめ保護者に伝えておくことが望ましいとしています。わからなければ窓口で尋ねてください。医療的ケアが必要な場合、手引は就学先が決まったら速やかに学校・保護者・主治医などが連携して校内の体制づくりを始めることを求めています。
相談先は、教育委員会や教育センターの就学相談のほか、園の先生、保健所、児童発達支援センター、発達障害者支援センターなどです。発達や健康の心配が強いときは、就学相談と並行してかかりつけ医にも相談してください。
よくある質問
- 就学相談を受けると、特別支援学級に決まってしまいますか。
- 決まりません。就学先は、子どもの教育的ニーズや保護者・専門家の意見を総合して、話し合いのうえで市区町村の教育委員会が決めます。本人と保護者の意見は最大限尊重されることになっており、相談を受けたことだけで行き先が決まる仕組みではありません。
- 診断がなくても就学相談はできますか。
- できます。手引は、医療機関の診断や療育手帳の有無だけで判断するのは適切ではないとしています。気になることがある段階で、市区町村の教育委員会の窓口に問い合わせてください。
- 入学後に学びの場を変えることはできますか。
- できます。手引は、就学先は固定的なものではなく、入学後の発達の程度や適応の状況を見ながら、学びの場の変更や転学ができるとしています。学校や教育委員会との継続的な相談を通じて検討します。
出典・参考
- 文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引」第1・2編(令和3年6月)
この出典で確認した記述
全67ページを取得し、第2編(印刷15〜45ページ)を通読して確認。PDF23(印刷15)第2編第1章「平成25年9月の学校教育法施行令の改正により,就学先となる学校や学びの場の判断・決定に当たっては,障害のある子供の障害の状態のみに着目して画一的に検討を行うのではなく,子供一人一人の教育的ニーズ,学校や地域の状況,保護者や専門家の意見等を総合的に勘案して,個別に判断・決定する仕組みへと改められた」、第2章1(1)「法令に基づいて本格的な就学手続が開始される以前の適切な時期に,就学に関する説明や相談,学校見学,体験入学など…早期の段階から時間的余裕をもって,計画的に実施していくことが…極めて重要である」。PDF24(印刷16)留意点⑥「就学先となる学校や学びの場は固定的なものではなく,実際の就学先決定後も障害の状態等を踏まえ,転学や学びの場の変更が可能であり,柔軟なものであることを分かりやすく伝えること」、PDF25(印刷17)「学校現場においても『一度決めた就学先や学びの場は変えることができない』と誤解されていることがある」。PDF31(印刷23)学校見学「いくつかの就学先となり得る学校や学びの場の見学の機会を設ける」「学校に対し,特別な準備をするのではなく,日常の学校生活をありのままに見てもらうように伝えることが重要」。PDF28〜29(印刷20〜21)面談で「個別の支援計画」等が作成されている場合は活用し「生育歴や家庭環境等の情報を不必要に繰り返し尋ねることなどがないよう」。PDF30〜31(印刷22〜23)既存の計画の活用は「本人及び保護者に対し,その趣旨や目的を十分に説明し,同意を得ることに留意」。PDF33(印刷25)「最終的には市区町村教育委員会が就学先を決定する」。PDF38(印刷30)「医療機関の診断や療育手帳等の有無のみをもって判断することは適切とは言えず,また,障害の状態等だけで学校や学びの場の枠組みに当てはめて考えることは厳に避けなければならない」。PDF39〜40(印刷31〜32)学びの場は通常の学級、通常の学級と通級の組合せ、特別支援学級の三つ(小中学校等)、通級は「年間35単位時間から280単位時間以内の範囲で行うことを標準とし,週当たりに換算すると,1単位時間から8単位時間程度」、特別支援学級は「少人数の学級編成によるよりきめ細かい指導」、交流及び共同学習。PDF40(印刷32)「通常の学級における指導と通級による指導を組み合わせた指導を行うことで…十分な教育を提供できる場合には,いずれかを選択し,また,通級による指導だけでは特別な指導を十分に行うことが難しい場合には,特別支援学級における少人数の学級編成によるよりきめ細かい指導を選択することとなる」。PDF46(印刷38)「教育的ニーズを踏まえた十分な検討が行われることなく安易に,教員が確実に配置される特別支援学級が選択される事例があるとの指摘がある」。PDF44(印刷36)「授業内容が分かり学習活動に参加している実感・達成感をもちながら,充実した時間を過ごしつつ,生きる力を身に付けていけるかどうかが最も本質的な視点」「本人及び保護者の意見を最大限尊重しつつ…十分な説明と合意形成を図った上で,最終的に市区町村教育委員会において決定することが適当」。PDF44〜45(印刷36〜37)特別支援学校在籍の子が居住地の学校に副次的な籍を置く取組。PDF45〜46(印刷37〜38)合意形成に至らない場合、都道府県の教育支援委員会等に第三者的な有識者を加えた調整の場、「行政不服審査制度も含めた就学に関する異議申し立ての制度やプロセスについても情報提供を行っておくことが望ましい」、「一定期間の体験入学の後に,再び…検討の場をもつこと」。PDF48(印刷40)医療的ケアが必要な子は就学先決定後速やかに体制整備を開始。PDF49〜50(印刷41〜42)入学前に「個別の教育支援計画等として整理する」「就学先の学校に引き継ぐ」「本人及び保護者の了解を得た上で,着実に就学先に引き継がれていく」。PDF50(印刷42)第4章「就学時に,小学校段階6年間,中学校段階3年間の学校や学びの場が固定されてしまうわけではない」。相談先(保健所、児童相談所、発達障害者支援センター、児童発達支援センター等)はPDF26(印刷18)、教育センター等の常設の相談はPDF27(印刷19)。PDF28(印刷20)「方向を指し示すというよりも,保護者の伴走者として対応し」(筆者コメント)。PDF42(印刷34)「市区町村教育委員会は,就学先となる学校や学びの場の検討に当たり,教育学,医学,心理学等の専門家の意見を聴取することが必要」「就学先を決定するのは,教育支援委員会等ではなく,あくまでも市区町村教育委員会」。本文の大半、図1・図2、気をつけたいこと、よくある質問はこれによる。 - 学校教育法施行令(昭和28年政令第340号)第2条・第5条・第11条・第18条の2
この出典で確認した記述
e-Gov 法令API(施行日2026-04-01時点の版)で全文を取得して確認。第2条「市町村の教育委員会は、毎学年の初めから五月前までに…満六歳に達する者について、あらかじめ…学齢簿を作成しなければならない」。第5条「…その保護者に対し、翌学年の初めから二月前までに、小学校、中学校又は義務教育学校の入学期日を通知しなければならない」(「最後に決めるのは誰か」節3段落目の根拠。認定特別支援学校就学者は、視覚障害者等のうち、障害の状態、教育上必要な支援の内容、地域における教育の体制の整備の状況その他の事情を勘案して特別支援学校に就学させることが適当であると認める者と定義)。第11条「認定特別支援学校就学者について、都道府県の教育委員会に対し、翌学年の初めから三月前までに、その氏名及び特別支援学校に就学させるべき旨を通知しなければならない」。第18条の2「市町村の教育委員会は、児童生徒等のうち視覚障害者等(第22条の3の表に規定する程度の障害のある者)について、第五条…又は第十一条第一項…の通知をしようとするときは、その保護者及び教育学、医学、心理学その他の障害のある児童生徒等の就学に関する専門的知識を有する者の意見を聴くものとする」。表の期限と「最後に決めるのは誰か」節1段落目はこれによる。 - 学校保健安全法施行令(昭和33年政令第174号)第1条
この出典で確認した記述
e-Gov 法令API(施行日2026-04-01時点の版)で全文を取得して確認。第1条「就学時の健康診断は、学校教育法施行令…第二条の規定により学齢簿が作成された後翌学年の初めから四月前(同令第五条、第七条、第十一条、第十四条、第十五条及び第十八条の二に規定する就学に関する手続の実施に支障がない場合にあつては、三月前)までの間に行うものとする」。手引PDF34(印刷26)も「毎年の11月30日までに実施することが市区町村教育委員会に義務付けられている」と記載。表の就学時健康診断の行と図1の3段目はこれによる。 - 文部科学省「特別支援教育資料(令和6年度)」第一部 データ編
この出典で確認した記述
全33ページを取得し、PDF4ページ(印刷4)の表をページ画像でも確認。「(3)特別支援学校在籍者数、特別支援学級在籍者数(国・公・私立計)」の「小学校・特別支援学校小学部」列:総数6,047,545人、特別支援学級281,167人(4.65%)、特別支援学校53,052人(0.88%)。出典は学校基本調査、小学校には義務教育学校前期課程を含む。「(4)通級による指導を受けている児童生徒数(国・公・私立計)(令和6年3月31日現在)」の小学校列:総数6,151,398人、通級による指導166,556人(2.71%)、注記「通級による指導を受けている児童生徒数の令和6年度分については、『特別支援教育資料(令和7年度)』に掲載予定」。本文「4つの学びの場の違い」節2段落目はこれによる(通級は令和5年度の通年の値として記載)。資料の掲載ページは https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1406456_00013.htm 。
この記事について
本記事は家庭での工夫を整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や治療の判断に代わるものではありません。研究知見や公的資料は「一つの考え方」として紹介しており、家庭ごとに合う・合わないがあります。お子さんの状態が気になる場合は、専門機関や学校にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。