3行まとめ
- 2025年に東京都内で万引きにより検挙・補導された少年は1,342人。小学生370人、中学生306人、高校生396人で、動機は「対象物自体の所有・消費目的」が大半を占める。
- 警視庁は保護者に、理由を聴く、感情的に怒らずきちんと叱る、一緒にお店へ謝りに行く、の3つを呼びかけている。
- 14歳未満は刑罰を受けないが、警察の調査や児童相談所への通告はありうる。繰り返すときは専門の窓口に無料で相談できる。
この記事でわかること
- 子どもの万引きがどの年齢で、どこで起きているか
- 14歳未満と14歳以上で、法律上の扱いがどう違うか
- わかった日に、家庭で話す順番とお店への謝り方
- 繰り返すときや背景に悩みがありそうなときの相談先
コンビニからの電話
夕方、仕事中の母親の携帯に、近所のコンビニから電話が入った。小学4年の息子がカードゲームのパックを服の中に入れて店を出ようとした、という。迎えに行く車の中で「どうしてそんなことを」と何度も頭の中で繰り返し、店の奥で小さくなっている息子の顔を見た瞬間、大きな声が出そうになった。
わが子が人の物を盗ったと知ったとき、恥ずかしさや怒り、育て方への不安が一度に押し寄せるのは自然なことです。ただ、警視庁の保護者向け資料は、初めて万引きをしたときに対応を誤ると、繰り返したり、より重い犯罪にエスカレートしたりする可能性があると注意しています。叱る前に、何をどの順番でするかを知っておくことが助けになります。
数字で見る子どもの万引き
警視庁の「令和7年中 少年育成活動の概況」によると、2025年に東京都内で万引きにより検挙・補導された少年は1,342人で、前年より89人増えました。少年が検挙・補導された窃盗の61.6%を万引きが占め、万引きで検挙・補導された人全体のうち少年は20.0%です。警視庁は万引きを、自転車盗などと並ぶ「初発型非行」に分類しています。
学校段階別では高校生396人、小学生370人、中学生306人で、小学生だけで全体の27.6%を占めます。動機・原因別では「対象物自体の所有・消費目的」が1,220人と大半で、「遊び、好奇心、スリル」は21人でした。場所はコンビニエンスストアが720人、デパートやスーパーなどの商業施設が488人です。保護者向け資料も、小学生の万引きの多くは「どうしても欲しかった」という理由によるとしています。
| 区分 | 人数 |
|---|---|
| 合計 | 1,342人(前年比89人増) |
| 小学生/中学生/高校生 | 370人/306人/396人 |
| 動機「対象物自体の所有・消費目的」 | 1,220人 |
| 場所「コンビニエンスストア」 | 720人 |
これは警察が検挙・補導した人数で、東京都内のものです。全国の傾向や、店が警察に届けなかった件数はここからはわかりません。
14歳未満なら「罪にならない」のですか
刑罰は受けませんが、法律に触れる行為であることは変わらず、警察の調査や児童相談所への通告がありえます。刑法は窃盗の罪を「十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金」と定め、41条で「十四歳に満たない者の行為は、罰しない」としています。
少年法は、14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした子を、家庭裁判所の審判の対象になりうる少年として挙げています。ただし家庭裁判所が扱うのは、都道府県知事または児童相談所長から送られてきたときに限られます。警察官はこうした子について調査ができ、その調査は子どもの情操の保護に配慮して行うものとされています。14歳以上で罪を犯した少年は、家庭裁判所の審判の対象です。
警視庁の資料によると、警察は家庭に連絡し、状況によって学校への連絡や児童相談所への通告・送致をします。児童相談所は、行為の重大性などによって家庭裁判所へ送ることがあります。同じ資料は、見張りをすることも、万引きした物をもらうことも犯罪だと書いています。
警視庁が保護者に勧める3つの対応
警視庁と東京万引き防止官民合同会議の保護者向けリーフレットは、万引きがわかったときの対応として3つを挙げています。1つ目は理由を聴くことです。欲しかったという理由の陰に、家庭での放任や不和、勉強の遅れ、いじめや仲間はずれといった悩みを抱えている場合があるとして、背景も含めてよく話を聴くよう求めています。
2つ目はきちんと叱ることです。欲しくても万引きしてはならないこと、お金がなければ我慢することを保護者から伝えます。このとき、感情的に「怒る」のではなく、毅然とした態度で「叱る」ことが大切だとしています。3つ目はお店に一緒に謝りに行くことです。保護者が身をもって謝る姿を見せることで、子どもは自分のしたことの重さに気づく、というのがその理由です。
同じリーフレットは、万引きのサインとして、見慣れないゲームソフトやマンガ、カードを持っている、買い与えた覚えのないお菓子の袋が捨ててある、学校や友達のことを話さなくなった、などを挙げています。14時から17時の間に多く、多くはコンビニで起きているとも書かれています。日ごろの関わりについては、ねだる子どもに我慢をさせているか、良いことと悪いことの区別を教えているか、子どもの目を見て話を聴いているか、といった保護者への問いかけも載っています。万引きがわかった日だけでなく、ふだんの会話の中で「欲しい」気持ちとの付き合い方を話しておくことが、次を防ぐ土台になります。
次の3つは、わかった日に家庭で取り入れやすい工夫です。
家庭で試す3つの工夫
- 話す前に親が一呼吸おく:お店では謝罪と事実の確認を優先し、詳しい話は家に帰って落ち着いてからにします。人前で問い詰めると、子どもは本当のことを話しにくくなります。
- 「なぜ」より「何があったの」から聴く:いつ、どこで、何を、誰かと一緒だったかを順に聴き、そのあとで欲しかった気持ちや困っていることを尋ねます。
- 謝りに行く前に、言うことを一緒に考える:何をしたか、どう思っているかを子ども自身の言葉で言えるよう準備します。代金の支払いや返品はお店の指示に従います。
声かけの言い換え例
- 「なんでそんなことしたの!」→「何があったのか、最初から教えて」
- 「恥ずかしくて外を歩けない」→「お店の人に悪いことをしたね。一緒に謝りに行こう」
- 「もう二度と信用しない」→「次に欲しくなったら、まず相談してほしい」
- 「警察に連れて行ってもらうよ」→「人の物を盗るのは法律で禁じられていることなんだよ」
家庭で確認するチェックリスト
- いつ、どこで、何を、誰と、を子どもから聴いた。
- 欲しかった理由と、困っていることがないかを尋ねた。
- 怒鳴らずに、してはいけない理由を伝えた。
- 子どもと一緒にお店へ謝りに行った。
- 繰り返したときに相談する窓口を調べた。
家庭の工夫だけで抱え込まないために
この記事は公的な統計と資料、法律の条文を整理したもので、個々のケースで警察や児童相談所がどう対応するかを判断するものではありません。統計は東京都内のもので、扱いは地域や事案によって異なります。
何度も繰り返す、家のお金の持ち出しなどほかの問題行動もある、友達に命令されているように見える、といったときは家庭だけで抱え込まないでください。各都道府県警察は少年相談窓口を開いていて、東京都では警視庁のヤング・テレホン・コーナー(03-3580-4970、24時間受付)が受け付けています。法務省の法務少年支援センターは全国52か所にあり、子どもの問題行動について心理の専門家に無料で相談できます(相談専用ダイヤル0570-085-085、平日9時〜12時・13時〜16時30分、要予約)。学校の担任やスクールカウンセラーに伝えることも選択肢です。本人もやめたいのにやめられない様子が続くときは、医療機関に相談することも考えてください。
よくある質問
- 小学生が万引きをしたら、警察に捕まりますか。
- 14歳未満は刑法で罰せられませんが、警察が事情を調べたり、家庭に連絡したりすることはあります。状況によっては学校への連絡や児童相談所への通告もあり、児童相談所が行為の重大性などから家庭裁判所へ送ることもあります。
- 商品を返して代金を払えば済みますか。
- 警視庁の保護者向け資料は、商品の返却や弁償だけで済む問題ではないとしています。万引きは窃盗罪にあたり、警察はお店にすべての万引きを届け出るよう求めています。お店の指示に従ったうえで、家庭では理由を聴き、叱り、一緒に謝ることが勧められています。
- 友達に頼まれて見張りをしただけでも問題ですか。
- 問題になります。警視庁の資料は、見張りも、万引きした物をもらうのも犯罪だと明記しています。友達に命令されていたようなら、いじめや仲間はずれの悩みが背景にないかも聴いてください。
出典・参考
- 警視庁生活安全部少年育成課「令和7年中 少年育成活動の概況」
この出典で確認した記述
全82ページのPDFを取得し、用語解説・主な特徴・第22〜27表を確認(東京都内の統計)。PDF3ページ用語解説「初発型非行 万引き、オートバイ盗、自転車盗及び占有離脱物横領をいう」、「触法少年 刑罰法令に触れる行為をした14歳未満の者をいう(少年法第3条第1項第2号)」。PDF8ページ(印刷3)主な特徴「(4) 万引き 検挙・補導人員は1,342人で、前年比89人(7.1%)増加した。学職別では、高校生が396人で最多、次いで小学生が370人、中学生が306人であった」。PDF33ページ(印刷28)第22表「手口別では、万引きが1,342人で最も多く、窃盗犯全体の61.6%を占める」。PDF37ページ(印刷32)第24表「万引き犯全体に占める少年の割合は20.0%」、第25表「万引き少年全体に占める学職別の割合は、高校生が29.5%を占め、次いで小学生が27.6%」。PDF38ページ(印刷33)第26表「対象物自体の所有・消費目的が1,220人で最も多い」(表中:遊び・好奇心・スリル21、その他の利欲52、一時的盗用15、生活困窮17、遊興費充当5、その他12)、第27表「コンビニエンスストアが720人で最も多く、次いで商業施設が488人」(注:商業施設はデパート、ショッピングモール、スーパーマーケット等)。本文の「数字で見る」節、表、3行まとめ1つ目はこれによる。 - 警視庁・東京万引き防止官民合同会議 リーフレット「『たかが万引き』と思っていませんか?」
この出典で確認した記述
全4ページを取得して確認。1ページ「商品の返却や弁償だけで済む問題ではありません。万引きは窃盗罪(刑法第235条),10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です」、相談先「ヤング・テレホン・コーナー(警視庁少年育成課少年相談係)☎03ー3580ー4970(24時間受付)」。2ページ サインとして「学校や友達のことを、あまり話さなくなった」「見慣れないゲームソフトやマンガ、カードなどを持っている」「買い与えた覚えのないお菓子の袋が捨ててある」、「14時から17時の間に多く発生しています」「多くはコンビニで発生しています」「万引きしたものをもらうのも犯罪です」「見張りも犯罪です」。3ページ 保護者への問いかけ「ねだる子供に我慢をさせていますか」「良いこと、悪いことの区別をしっかり教えていますか」「子供の目を見て、きちんと話を聴いてあげていますか」ほか、「警察は家庭(保護者)に連絡し、状況により学校への連絡や、児童相談所への通告・送致をすることがあります」「警察はお店に対して、全ての万引きを届け出るようにお願いしています」「通告・送致を受けた児童相談所は、行為の重大性等により家庭裁判所へ事件を送致することがあります」。4ページ「理由を聴く」(「小学生の万引きの多くは『どうしても欲しかった』という理由によるものですが、原因は他にもあるかもしれません」「家庭(放任、不和、過干渉等)、学校(学習の遅れ等)、友人関係(いじめ、仲間はずれ等)に悩みを抱えている場合があります」)、「きちんと叱る」(「欲しいからといって万引きしてはならないこと、お金がなければ我慢することを保護者からしっかりと指導しましょう。この際、感情的に『怒る』のではなく、毅然とした態度でしっかりと『叱る』ことが大切です」)、「万引きしたお店に一緒に謝りに行く」(「保護者が身をもって謝罪する姿を見せることで、子供は自分がしてしまったことの重大さに気づきます」)、「初めて万引きをしてしまったときに対応を誤ると、何度も繰り返したり、重大な犯罪にエスカレートしたりする可能性があります」。発行年の記載はないが、拘禁刑の表記から2025年6月の刑法改正施行後の版。本文の情景節、「法律」節3段落目、「3つの対応」節、図1・図2、よくある質問はこれによる。 - 刑法(明治40年法律第45号)第41条・第235条(e-Gov法令検索)
この出典で確認した記述
e-Gov法令API(articles)で条文全文を取得。第41条(責任年齢)「十四歳に満たない者の行為は、罰しない。」。第235条(窃盗)「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。」。本文の「法律」節1段落目、よくある質問1つ目はこれによる。 - 少年法(昭和23年法律第168号)第3条・第6条の2(e-Gov法令検索)
この出典で確認した記述
e-Gov法令API(articles)で条文全文を取得。第3条第1項「次に掲げる少年は、これを家庭裁判所の審判に付する。一 罪を犯した少年 二 十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年 三…」、第2項「家庭裁判所は、前項第二号に掲げる少年及び同項第三号に掲げる少年で十四歳に満たない者については、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り、これを審判に付することができる。」。第6条の2第1項「警察官は、…第三条第一項第二号に掲げる少年であると疑うに足りる相当の理由のある者を発見した場合において、必要があるときは、事件について調査をすることができる。」、第2項「前項の調査は、少年の情操の保護に配慮しつつ、事案の真相を明らかにし、もつて少年の健全な育成のための措置に資することを目的として行うものとする。」。本文の「法律」節2段落目はこれによる。 - 法務省「法務少年支援センターの概要」
この出典で確認した記述
ページ全文を取得して確認。「法務少年支援センターは、法務省が所管する少年鑑別所が、地域の非行・犯罪の防止のために活動する際に用いる名称です。非行・犯罪や問題行動等の専門機関として、地域の一般の方や関係機関の依頼に応じ、心理相談等を行っています」「各都道府県の県庁所在地を中心に、全国52か所にあります」、対応職員は法務技官(心理)と法務教官。ご相談窓口欄「相談費用 無料でご利用いただけます」「対象の年齢 年齢制限はありません ※事前のご予約をお願いします」「メールによるご相談 24時間受付」「相談専用ダイヤル(ナビダイヤル)0570-085-085 平日 9時~12時、13時~16時30分」。各センターの所在地・電話は「センターを探す」(https://www.moj.go.jp/KYOUSEI/KANBETU/center.html)に一覧がある。本文の「気をつけたいこと」はこれによる。 - 警察庁「都道府県警察の少年相談窓口」(令和8年8月現在)
この出典で確認した記述
ページ全文を取得して確認。「各都道府県警察では、お子さんのことで悩みを抱えているご家族やいじめ、犯罪等の被害に遭い、悩んでいる子ども自身のために、少年相談窓口を開設しています」「事件・事故の通報等で緊急を要するものは、110番または最寄りの警察署まで電話連絡をお願いします」。47都道府県の窓口名と電話番号の一覧があり、東京都は「ヤング・テレホン・コーナー 03-3580-4970」。本文の「気をつけたいこと」はこれによる。
この記事について
本記事は家庭での関わりを整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や治療の判断に代わるものではありません。研究知見や公的資料は「一つの考え方」として紹介しており、家庭ごとに合う・合わないがあります。お子さんの状態が気になる場合は、専門機関や学校にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。