3行まとめ
- インフルエンザの異常行動は、薬を飲んでいなくても、薬の種類に関係なく報告されている。重いものは発熱から2日以内、目覚めた直後に多い。
- 厚生労働省は、少なくとも発熱から2日間は、玄関と全ての窓の施錠、ベランダに面していない部屋で寝かせるなどの対策を求めている。
- 付き添う人と日を先に決める。子の看護等休暇は小学3年生の修了まで。それより上の子の分は、家族と職場で別に段取りする。
この記事でわかること
- インフルエンザのときに起こりうる異常行動の例
- 見守りが「発熱から2日間」とされる理由
- 転落を防ぐための部屋と鍵の準備
- 付き添いの段取りと、子の看護等休暇の範囲
薬を飲ませて、仕事に戻れるか
朝から39度の熱を出した中学1年生の息子を連れて、昼前に小児科へ行きました。検査の結果はインフルエンザ。薬を受け取り、帰りの車の中で考えたのは、午後の会議と明日の予定のことでした。中学生なら一人で寝ていられるし、薬も自分で飲める。そう思っていたところ、薬局で渡された紙に「少なくとも2日間は一人にしないでください」と書かれているのが目に入りました。
中学生でも、と意外に感じるかもしれません。熱が高い数日のあいだは、年齢にかかわらず、ふだんとは違うことが起こりうるからです。
異常行動は、薬を飲んでいなくても起こる?
結論から言うと、起こります。厚生労働省の令和8年度のQ&Aは、抗インフルエンザウイルス薬を飲んだ後に、急に走り出す、部屋から飛び出そうとする、ウロウロするといった異常行動が報告されていると説明しています。その結果、極めてまれですが、転落などによる死亡例も報告されています。
薬との因果関係は不明とされています。これまでの調査からは、薬を飲んでいない場合にも同じような異常行動が現れること、薬の種類に関係なく現れることが報告されています。そのため、薬を飲んだかどうか、どの薬かにかかわらず、インフルエンザにかかったときは異常行動に注意が必要だというのが、厚生労働省の考え方です。
Q&Aは異常行動の例として、突然立ち上がって部屋から出ようとする、興奮して窓を開けてベランダに出て飛び降りようとする、家から出て外を歩いていて話しかけても反応しない、人に襲われる感覚を覚えて外に飛び出す、変なことを言い出して泣きながら部屋の中を動き回る、といった様子を挙げています。
発熱から2日間、目覚めた直後に多い
Q&Aは、転落などの事故につながるおそれのある重い異常行動について、就学以降の小児・未成年者の男性で報告が多いこと、発熱から2日以内に現れることが多いことが知られていると述べています。
国の安全対策調査会がまとめた報告書には、医療機関から集めた重い異常行動の報告が載っています。2009/2010シーズンから2016/2017シーズンの合計で、10歳代が361例と最も多く、5〜9歳が290例、4歳以下が85例、20歳以上が35例でした。男性は560例、女性は211例です。報告書は、発熱から2日目までに発症することが多いことに加え、睡眠から目覚めた直後が多いという傾向も挙げています。見守る人が特に気にかけたいのは、昼寝や夜中に目を覚ましたときです。
部屋と鍵の準備
厚生労働省は、自宅で療養する場合、薬の有無や種類によらず、少なくとも発熱から2日間は、保護者などが転落などの事故を防ぐ対策をとるよう求めています。対策の例は次の4つです。玄関と全ての部屋の窓を確実に施錠する(内鍵や補助錠があれば使う)、ベランダに面していない部屋で寝かせる、窓に格子のある部屋があればそこで寝かせる、一戸建てならできる限り1階で寝かせる。
どれも、熱が出てから慌てて考えるより、家族が元気なうちに「わが家ならこの部屋」と決めておく方が進めやすい準備です。集合住宅で全ての部屋がベランダに面している場合は、窓の補助錠を使い、寝ている部屋の近くに大人がいられるようにするなど、できることを組み合わせます。
誰が付き添うかを、先に決めておく
発熱から2日間は、大人の誰かが家にいる体制が必要になります。仕事を休むときに使える制度として、育児・介護休業法の子の看護等休暇があります。厚生労働省の解説では、小学校3年生修了までの子を育てる従業員は、1年度に5日まで(子が2人以上なら10日まで)、1日または時間単位で取得できます。急なことが多いため、当日の電話など口頭での申し出でも取得を認めることが必要とされています。
一方で、重い異常行動の報告が多いのは10歳代です。小学4年生以上の子は看護等休暇の対象外なので、年次有給休暇や在宅勤務、家族や祖父母との交代で2日間をつなぐ段取りを考えておく必要があります。登校できるまでの日数は学校保健安全法施行規則が「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」と定めていて、見守りの2日間はその前半にあたります。
流行が本格化する前に、家族で一度だけ話しておくと、当日の判断が速くなります。
家庭で試す3つの工夫
- 「療養の部屋」を先に決める:ベランダに面していない部屋、一戸建てなら1階の部屋を、元気なうちに家族で決めておきます。補助錠がある窓は、その使い方も確かめておきます。
- 2日間の付き添い表を作る:午前・午後・夜に分けて、誰が家にいるかを書き出します。在宅勤務でも、子どもが目を覚ましたときに気づける距離にいられるかを考えます。
- 上の子の分も決めておく:看護等休暇の対象外になる小学4年生以上の子は、年休や家族の交代で誰が付き添うかを、職場の予定と合わせて決めておきます。
子ども本人、特に年齢の高い子には、なぜ一人にしないのかを短く伝えておくと受け入れやすくなります。
声かけの言い換え例
- 「もう中学生だから一人で大丈夫でしょ」→危険が伝わらない。「熱が高いうちは、誰でも寝ぼけたようになることがあるから、2日間は近くにいるね」。
- 「勝手に出歩かないでよ」→責められたように聞こえる。「起きたら、まず声をかけてね」。
- 「窓を開けちゃだめ」→理由がわからない。「熱があるときは、鍵をかけた部屋で休もうね」。
- 「なんで変なこと言うの」→不安が増す。「大丈夫、ここにいるよ。一緒に横になろうか」。
流行の前に確かめたいこと
- 療養のときに寝かせる部屋を決めているか。
- 玄関と全ての窓に鍵をかけられ、補助錠の使い方を家族が知っているか。
- 発熱から2日間、誰がどの時間帯に家にいるかを決めたか。
- 勤務先の子の看護等休暇の取り方と、対象年齢を確かめたか。
- 夜間や休日に具合が悪くなったときの相談先を控えているか。
家庭の工夫だけで抱え込まないために
この記事は厚生労働省の公表資料を整理したもので、治療や薬の選び方を判断するものではありません。薬を飲むかどうか、どの薬を使うかは、診察した医師や薬剤師と相談して決めてください。異常行動はまれなことで、必要以上に怖がることはありませんが、発熱から2日間の見守りと施錠は、どの家庭でもできる備えです。
厚生労働省は、高熱が続く、呼吸が苦しい、意識の状態がおかしいなど具合が悪いときは、早めに医療機関を受診するよう呼びかけています。話しかけても反応しない、様子がいつもと明らかに違うといったときは、ためらわずに医療機関に相談し、急を要するときは119番を使ってください。夜間や休日の相談先は夜間・休日の記事で、出席停止の日数の数え方は感染症で学校を休むときの記事で整理しています。
職場で子の看護等休暇の取り方がわからないときは、勤務先の人事担当に就業規則を確かめる方法があります。
よくある質問
- インフルエンザの異常行動は、薬のせいですか。
- 因果関係は不明とされています。厚生労働省は、薬を飲んでいない場合にも、薬の種類に関係なく同じような異常行動が報告されていることから、薬の有無や種類にかかわらず注意が必要だとしています。
- 何日間、子どもを一人にしないようにすればよいですか。
- 厚生労働省は、少なくとも発熱から2日間は、転落などの事故を防ぐ対策をとるよう求めています。重い異常行動は発熱から2日以内に現れることが多いとされています。
- 中学生や高校生でも見守りは必要ですか。
- 必要とされています。重い異常行動の報告は就学以降の小児・未成年者の男性に多く、安全対策調査会の報告書でも10歳代の報告が最も多くなっていました。
- 子の看護等休暇は何年生まで使えますか。
- 小学校3年生修了までの子が対象です。1年度に5日まで(子が2人以上なら10日まで)、1日または時間単位で取得でき、当日の口頭での申し出でも取得を認めることが必要とされています。
出典・参考
- 厚生労働省「令和8年度冬季 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A」(令和8年9月30日版)
この出典で確認した記述
Q9「抗インフルエンザウイルス薬の服用後に異常行動(例:急に走り出す、部屋から飛び出そうとする、ウロウロするなど)が報告されています。また、これらの異常行動の結果、極めてまれですが、転落等による死亡事例も報告されています」「抗インフルエンザウイルス薬の服用と異常行動との因果関係は不明ですが、これまでの調査結果などからは、インフルエンザにかかった時には、抗インフルエンザウイルス薬を服用していない場合でも、同様の異常行動が現れること、服用した抗インフルエンザウイルス薬の種類に関係なく、異常行動が現れること、が報告されています」。Q10「インフルエンザにかかり、自宅で療養する場合は、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無や種類によらず、少なくとも発熱から2日間は、保護者等は転落等の事故に対する防止対策を講じてください」「転落等の事故に至るおそれのある重度の異常行動については、就学以降の小児・未成年者の男性で報告が多いこと、発熱から2日以内に発現することが多いことが知られています」。防止対策の例「玄関や全ての部屋の窓の施錠を確実に行う(内鍵、補助錠がある場合はその活用を含む)」「ベランダに面していない部屋で寝かせる」「窓に格子のある部屋で寝かせる(窓に格子がある部屋がある場合)」「できる限り1階で寝かせる(一戸建てにお住まいの場合)」。異常行動の例「突然立ち上がって部屋から出ようとする」「興奮して窓を開けてベランダに出て、飛び降りようとする」「自宅から出て外を歩いていて、話しかけても反応しない」「人に襲われる感覚を覚え、外に飛び出す」「変なことを言い出し、泣きながら部屋の中を動き回る」。Q15「高熱が続く、呼吸が苦しい、意識状態がおかしいなど具合が悪ければ早めに医療機関を受診しましょう」「治療開始から少なくとも2日間は小児・未成年者を一人にさせないなどの配慮が必要です」。Q18 学校保健安全法施行規則の出席停止期間の記載あり(リード・3行まとめ・本文「異常行動は、薬を飲んでいなくても起こる?」「発熱から2日間、目覚めた直後に多い」「部屋と鍵の準備」・気をつけたいこと・図1・図2・FAQ第1〜3問の根拠)。 - 薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会 安全対策調査会「タミフルと異常行動等の関連に係る報告書」(厚生労働省掲載資料1-7-2)
この出典で確認した記述
PDF13頁(岡部班疫学調査)「抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無や種類によらず全報告を年齢、性別等で集計をおこなった。その結果、これまでの知見と同様、・10 代での報告が最も多い、・女性に比べて男性で報告が多い、・異常行動の発症までの日数は、発熱から2日目までの間であることが多い、・異常行動を発症するタイミングは、睡眠から覚醒した直後が多い、といった傾向が認められた」。表4-1「年齢層別での報告例数(2009/2010 シーズン~2016/2017 シーズン)」-4歳85、5-9歳290、10歳代361、20歳以上35。表4-2「性別での報告例数」男性560、女性211。脚注22で重度の異常な行動を「突然走り出す、高いところから飛びおりる、自傷を伴う暴れ回り等の、誰も監視していなければ生命を脅かしうる能動的行動」と定義。PDF2頁 平成29年11月の安全対策調査会を受け「玄関及び全ての窓の施錠を確実に行うこと(内鍵、補助錠がある場合はその活用を含む。)、ベランダに面していない部屋で療養を行わせること、等の追加例の周知が行われた」(本文「発熱から2日間、目覚めた直後に多い」・図1・FAQ第3問の根拠)。 - 厚生労働省 両立支援のひろば「Q10 従業員が子どものための看護等休暇の取得を希望する場合」
この出典で確認した記述
「小学校第3学年修了までの子を養育する従業員は、事業主に申し出ることにより、1年度に5日まで(その養育する小学校第3学年修了までの子が2人以上の場合は10日まで)、子の看護等休暇を1日又は時間単位で取得できます。子の看護等休暇は、①怪我をしたり病気にかかった子の世話をするときや、②予防接種や健康診断を受けさせるときのほか、③感染症に伴う学級閉鎖等になった子の世話をするとき、④子の入園、卒園又は入学式に参加するときに利用できます」「令和6年の法改正により…名称も「子の看護等休暇」に変わりました(令和7年4月1日施行)」「子の看護等休暇の利用については緊急を要することが多いことから、当日の電話等の口頭の申出でも取得を認め、書面の提出等を求める場合は事後となっても差し支えないこととすることが必要です」(3行まとめ・本文「誰が付き添うかを、先に決めておく」・FAQ第4問の根拠)。 - 学校保健安全法施行規則(昭和33年文部省令第18号)第19条(e-Gov法令検索)
この出典で確認した記述
e-Gov 法令API(law_data/333M50000080018)で条文を取得して確認。第19条第2号「第二種の感染症(結核及び髄膜炎菌性髄膜炎を除く。)にかかつた者については、次の期間。ただし、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めたときは、この限りでない。イ インフルエンザ(特定鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)にあつては、発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日(幼児にあつては、三日)を経過するまで」(本文「誰が付き添うかを、先に決めておく」の根拠)。
この記事について
本記事は家庭での準備を整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や、制度の可否を判断するものではありません。研究知見や公的資料は「一つの考え方」として紹介しており、家庭や地域ごとに合う・合わないがあります。気になる場合は、専門機関・学校・自治体にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。