3行まとめ
- プールカードが聞く体温・朝食・睡眠・体調は、文部科学省の手引が挙げる「健康カードの主な項目例」とほぼ同じ。水に入る前の体の状態を見るための紙。
- 水泳に注意が必要な子の扱いは、医師等の診断結果を最優先とし、学校医と連携して決めるとされている。家庭だけで線を引く仕組みにはなっていない。
- 学校の水泳中の重大事故は5年間で十数件。一方、中学生以下の水難は夏季休業に入った直後に増え、場所は海と川、行為は「水遊び」が最も多い。
この記事でわかること
- プールカードの項目が、体の何を見ているのか
- 見学させたいときに、誰がどう決めることになっているか
- 学校が水泳の安全をどう確保しているか
- 中学生以下の水の事故が、いつ・どこで起きているか
- 川や海に出かける前に、家庭で決めておくこと
朝、サインをする手が止まる
プールの季節が始まると、朝の支度に一つ手順が増えます。体温を測り、カードに書き、入れるか入れないかに丸をつけて印を押す。平熱より少し高いだけの日、昨夜よく眠れなかった日、鼻水が出ている日。基準が分からないまま、とりあえず丸をつけたことがある人は少なくないと思います。
このカードは、学校が家庭に責任を分けるための紙ではなく、水に入る前に体の状態を見る安全管理の一部です。何を見ているのかが分かると、迷った日に書くことも決めやすくなります。
プールカードは、何を確かめているのか
文部科学省の「水泳指導の手引(三訂版)」は、水泳の前に使う「健康カード」の主な項目例として、体温、朝食の有無、睡眠時間、排便・下痢の有無、現在の体調、保護者の確認を挙げています。学校ごとに書式は違っても、聞かれていることはほぼ同じはずです。
体温以外の項目が並ぶのは、水に入ること自体が体に負担をかけるからです。手引は現在の体調として、腹痛、頭痛、せき、鼻水、吐き気、めまい、胸の痛み、足のむくみ、手足の痛みを挙げています。朝食を抜いた日や睡眠が足りない日は、熱がなくても調子が整っていないことがある。カードは、そこを家庭にしか分からない情報として尋ねています。
手引は、健康観察を家庭からの情報だけに頼る形にもしていません。担任が日常的に健康観察を行い、異常が認められる場合は養護教諭や学校医と連絡をとって水泳の可否を含めて対応するとされています。家庭が書いた一枚で全部が決まるわけではありません。
では、持病や体質があって水泳に注意が必要な子はどうなるのか。手引は、注意が必要な子や禁止する子については医師等の診断結果を最優先とし、関係者の総合的な判断によって決めると書いています。指導にあたっては学校医等と連携し、保護者や本人と十分話し合う必要があるとも明記されています。心臓病や腎臓病、呼吸器疾患、急性中耳炎・急性外耳炎、病気や手術の直後などが、注意を要する例として挙がっています。
これは「家庭が自分で判断するためのリスト」ではありません。当てはまるかもしれないと思ったときにすることは、主治医と学校に伝えて相談の場を作ることです。手引は、定期健康診断で見つかった病気のうち、水泳で悪化すると思われるものや他の子に感染させる恐れのあるものは事前に治療を受けさせるなどが大切だとしています。健診の結果が返る時期とプールの時期が近いのは偶然ではありません。「受診のおすすめ」が手元に残っているなら、学校健診のあとの通院をどう作るかもあわせて読んでみてください。
学校のプールは、どう守られているのか
学校側の備えは、思っているより細かく決まっています。手引は、監視者の位置をプール全体を見わたすことができ、角の部分などが死角にならないところとし、必要に応じて指導者のほかに教諭、養護教諭、保護者等で監視係を設けることも考慮するとしています。笛やメガフォン、救急用具を用意しておくこと、監視員は水着を着用していることまで書かれています。水の深さも一律ではなく、対象学年・体格・泳力に応じて無理のない水位を設定し、浅い場所を選んだりプールフロアを使ったりする工夫が挙げられています。
今年の通知も同じところを押さえています。スポーツ庁が令和8年4月28日に出した通知の別紙は、学校外のプールを使う場合は水深や形状も含めて複数の指導者で事前に十分確認すること、特に小学校では水に十分慣れていない子や足がつかない子もいることから、体格や泳力に応じた安全対策と十分な監視を確保することを求めています。飛び込みは、小・中学校と高等学校の入学年次の授業では行わず、水中からのスタートを指導するとされています。
では実際の事故はどれくらい起きているのか。同じ通知の別添によると、災害共済給付で水泳・水泳指導中の事故に死亡見舞金が支給されたのは令和3年度から令和7年度までの5年間で4件、障害見舞金は11件でした。全国の学校数を思えば、学校のプールはかなり厳重に守られている場所です。家庭が身構えるべきなのは、むしろ授業が終わったあとの水辺のほうでした。
子どもの水の事故は、いつ・どこで起きている?
増えるのは夏休みに入った直後です。スポーツ庁の通知は、児童生徒の水難事故が特に学校の夏季休業に入った直後に多発する傾向にあるとして、水泳の事故防止の心得を学校で指導し、PTAなどを通じて家庭にも周知するよう求めています。プール開きの6月に家庭で話しておく意味は、ここにあります。
場所と行為は、警察庁の統計が示しています。令和8年夏期(7〜8月の2か月間)の水難で、中学生以下の水難者は101人、うち死者・行方不明者は11人でした(速報値)。その11人を場所別に見ると海が7人、河川が4人。行為別で最も多いのは水泳ではなく水遊びで6人です。
| 区分 | 人数 |
|---|---|
| 水難者 | 101人 |
| うち死者・行方不明者 | 11人 |
| 死者・行方不明者のうち 海 | 7人 |
| 死者・行方不明者のうち 河川 | 4人 |
| 死者・行方不明者の行為別で最多 水遊び | 6人 |
「泳ぎに行く日」より「水辺で遊んだ日」に起きている、という読み方ができます。水着も持たず、足を浸けるだけのつもりで川原に降りた日が、いちばん備えの薄い日になります。
警察庁は防止対策として、危険箇所を事前に把握して近づかないこと、上流で雨が降っているなど増水のおそれが高いときは川に入らないこと、体調が悪いときは水に入らないことを挙げています。ライフジャケットについては「大人も子供も必ず」着用し、体のサイズに合った物を選んで正しく着用するとされています。サイズの条件が付くのは、合わないものでは浮力が足りないためです。
家庭で試す3つの工夫
- プールカードを前の晩に書く:体温以外の欄(朝食・睡眠・体調)は、前の晩に子どもと一緒に埋められます。朝は体温を書いて印を押すだけにしておくと、書き忘れも迷いも減ります。
- 「入れない日」の伝え方を決めておく:見学の日は理由を一言添えて連絡帳に書くと、学校側も経過をつかめます。持病があるなら、主治医に聞いたことを伝える窓口(担任か養護教諭か)を年度の初めに確かめておきます。
- 夏に行く水辺を、6月のうちに調べておく:帰省先の川、キャンプ場、海水浴場。行き先が決まっているなら、遊泳区域と監視員の有無、ライフジャケットを借りられるかを先に調べます。当日に調べると、たいてい「まあ大丈夫だろう」になります。
水の怖さは、脅かして伝えても身につきません。やることを具体的に渡すほうが残ります。
声かけの言い換え例
- 「川は危ないから行っちゃだめ」→何がどう危ないか伝わらない。「上で雨が降ると急に水が増えるんだって。行く前に天気を一緒に見よう」。
- 「ちょっとくらい熱があっても入れるでしょ」→体の負担が見えなくなる。「今日は寝るのが遅かったから、見学にして明日入ろうか」。
- 「ライフジャケットなんて大げさ」→備えを子どもが軽く見る。「大人も着けるんだって。サイズが合ってないと浮かないらしいよ」。
- 「気をつけてね」→何に気をつけるか分からない。「足がつかないところには行かない。これだけ守ってね」。
プール開きの前に確かめたいこと
- プールカードの各欄が何を聞いているか、子どもと一度読み合わせたか。
- 健康診断の結果で、水泳の前に相談しておくことが残っていないか。
- 見学にする日の連絡の仕方と、学校の窓口を知っているか。
- 夏に行く水辺の遊泳区域・監視員の有無を調べたか。
- 子どもの体に合うライフジャケットを用意できるか(借りられるかを含めて)。
家庭の工夫だけで抱え込まないために
この記事は文部科学省・スポーツ庁・警察庁の公表資料を整理したもので、水泳に参加してよいかどうかを判断するものではありません。手引が挙げる疾病の例は、家庭が自分で線を引くためのリストではありません。心配なことがあるときは、主治医と学校(担任・養護教諭)に相談する選択肢があります。
学校の水泳の進め方そのもの(水位、監視の人数、授業の回数)は、学校と設置者が決めることです。気になる点は、不安のまま過ごすより学校に尋ねるほうが早いことが多いと思います。急を要するときは119番、海上での事故は118番という番号があります。学校の管理下でけがをしたときの給付は災害共済給付の記事で整理しています。
よくある質問
- プールカードに体温のほかに朝食や睡眠の欄があるのはなぜですか。
- 水に入る前の体の状態を見るためです。文部科学省の手引は、健康カードの主な項目例として体温、朝食の有無、睡眠時間、排便・下痢の有無、現在の体調、保護者の確認を挙げています。熱がなくても調子が整っていない日があるため、家庭にしか分からない情報を尋ねる形になっています。
- 持病がある子を水泳に参加させてよいかは、親が決めるのですか。
- 親だけで決めるものとはされていません。手引は、注意を要する子や禁止する子については医師等の診断結果を最優先とし、関係者の総合的な判断で決めると書いています。学校医等と連携し、保護者や本人と十分話し合う必要があるとも明記されています。
- 学校のプールでの事故は、どれくらい起きていますか。
- スポーツ庁の通知の別添によると、災害共済給付で水泳・水泳指導中の事故に死亡見舞金が支給されたのは令和3年度から令和7年度の5年間で4件、障害見舞金は11件でした。一方で通知は、児童生徒の水難事故が夏季休業に入った直後に多発する傾向にあるとしています。
- 川や海に行くとき、何を一番に用意すればよいですか。
- ライフジャケットです。警察庁は、釣りや水遊び等で水辺に行くときは大人も子どもも着用するとし、体のサイズに合った物を選んで正しく着用することを条件に挙げています。あわせて、子ども一人では水遊びをさせず、保護する責任のある人が子どもから離れないこととしています。
出典・参考
- 文部科学省「学校体育実技指導資料 第4集 水泳指導の手引(三訂版)」第4章 水泳指導と安全(平成26年3月)
この出典で確認した記述
PDF p.125「【健康カードの主な項目例】○ 体温 ○ 朝食の有無 ○ 睡眠時間 ○ 排便・下痢の有無 ○ 現在の体調(腹痛・頭痛・せき・鼻水・吐き気・めまい胸の痛み・足のむくみ・手足の痛み) ○ 保護者の確認」。同頁「学級担任や教科担任は、日常的に児童生徒の健康観察を行い、健康状態を把握しています。健康カードや家庭連絡帳などでの保護者から連絡、本人の訴えや周囲の児童生徒の指摘又は授業中の様子などにより異常が認められる場合には、養護教諭や学校医等と連絡をとり、水泳実施の可否を含め適切な対応をする必要があります」「児童生徒相互による健康観察は、指導が展開されていく過程はいうまでもなく、事前においても重要な意味をもっています」。p.124「定期健康診断で発見された病気のうち、水泳を行うことによって悪化すると思われるもの及び他の児童生徒に感染させる恐れのあるものについては、事前に治療等を受けさせたり、不可の際の指導内容を検討しておくことが大切です」。p.126「2 注意を要する児童生徒への対応 水泳を実施するのに注意が必要な児童生徒、あるいは、禁止させる児童生徒については、医師等の診断結果を最優先とし、関係者の総合的な判断によって決定するとともに、その取扱い方を明確にしておくことが大切です」「また、指導に当たっては、学校医等との連携を図るとともに、保護者や本人と十分話し合う必要があります」。同頁の列挙「(1)心臓病、腎臓病の者(特に専門医の判断を要する。)(2)呼吸器疾患の者(気管支炎、肋膜炎、肺結核性疾患など。ただし、喘息は除く。)(3)その他急性中耳炎、急性外耳炎の者(4)病気直後、手術直後の者(5)過去に意識障害を起こしたことのある者(6)アトピー性皮膚炎の者(7)その他、プールを介して他人に感染させる恐れのある疾病にり患している者」。同頁「3 監視」「(1)監視者の位置 監視者の位置は、プール全体を見わたすことができ、プールの角部分などが死角にならないようなところとします。また、必要に応じて指導者の他に教諭、養護教諭及び保護者等で監視係を設けることも考慮する」「○ 監視に必要な物品、例えば笛、メガフォン、救急用具等を用意しておくこと。○ 監視員は水着を着用していること」。「2 適切な水位設定の考え方 各学校で学習効果が上がり、事故回避につながるよう、対象学年・体格・泳力・学習内容などに応じた無理のない水位を設定する必要があります」「泳力差や体格差のある児童生徒が、効果的・効率的な水泳学習をするために、プールの形状を考慮して浅い場所を選んだり、プールフロアを利用したりして適切な水位設定を行うなどの工夫をすること」(リード・3行まとめ・本文「プールカードは、何を確かめているのか」「学校のプールは、どう守られているのか」・FAQ第1〜2問の根拠)。 - スポーツ庁「水泳等事故の防止について(通知)」(8ス庁第224号・令和8年4月28日)別紙「学校における児童生徒に対する水泳指導等について」
この出典で確認した記述
別紙1(1)「普段使用しているプールと異なる環境で行われた水泳の授業中に、児童が溺れて死亡した事例などの重大事故事例も発生していることから、学校外のプールを活用する場合や日頃と異なる環境において授業を行う場合には、安全管理に問題が無いか、構造(水深やプールの形状(傾斜式、入水時のステップの有無等))も含めて、複数の指導者等により事前に十分な確認を行う等、対応に万全を期すこと」「特に小学校においては、水に十分に慣れていない児童や水深が深い場所では足がつかない児童もいることから、安全な授業が行われるよう、体格や泳力などに応じた適切な安全対策、授業中の十分な監視及び指導体制の確保と緊急時への備えが行われるようにすること」。同(2)「学習指導要領及び同解説においては、『小・中学校及び高等学校入学年次の授業では、飛び込みによるスタート指導は行わず、水中からのスタートを指導すること』…としており」。同2「児童生徒の水難事故が特に学校の夏季休業に入った直後に多発する傾向にあるので、学校においては、体の調子を確かめてから泳ぐ、プールなどの水泳場での注意事項を守って泳ぐなどといった水泳の事故防止に関する心得を十分指導し、PTAなどを通じて家庭にも指導の趣旨を周知するよう配慮すること」。通知の正式名称・文書番号・日付・発出元はスポーツ庁の掲載ページ https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/hakusho/nc/jsa_00056.html で確認(本文「学校のプールは、どう守られているのか」「子どもの水の事故は、いつ・どこで起きている?」・3行まとめ・FAQ第3問の根拠)。 - スポーツ庁「水泳等事故の防止について(通知)」別添2「水泳事故件数(R7速報値)」(令和8年4月28日)
この出典で確認した記述
「○水泳・水泳指導中の事故等による死亡見舞金の支給件数」の表は、令和3年度から令和7年度までの合計が小学校1件、中学校0件、高等学校3件、総計4件。「○水泳・水泳指導中の事故等による障害見舞金の支給件数」の表は、同期間の合計が小学校1件、中学校6件、高等学校4件、総計11件。注記「独立行政法人日本スポーツ振興センターが実施している災害共済給付制度においてスポーツ事故(水泳・水泳指導中)に係る死亡見舞金・障害見舞金を支給した件数」「※令和7年度は速報値」「※学校種は発生校種」(3行まとめ・本文「学校のプールは、どう守られているのか」・FAQ第3問の根拠)。 - 警察庁生活安全局生活安全企画課「令和8年夏期における水難の概況」(令和8年9月15日)
この出典で確認した記述
p.1「令和8年夏期(7~8月の2か月間をいう。以下同じ。)における水難は ○ 発生件数 436件 ○ 水難者 535人 うち死者・行方不明者 226人 であった(数値は速報値)。このうち、中学生以下は ○ 発生件数 54件 ○ 水難者 101人 うち死者・行方不明者 11人 であった」。p.2「(3) 場所別・行為別(中学生以下)中学生以下の死者・行方不明者11人について、発生した場所別にみると、多い順に、○ 海 7人(前年対比-2人、-22.2%)○ 河川 4人(前年対比-1人、-20.0%)であり、行為別にみると、最も多いのは ○ 水遊び 6人(前年対比±0人)であった」。p.2「○ 危険箇所の把握…危険箇所を事前に把握して、近づかない。また、子供を危険箇所に近づけない」「○ 的確な状況判断 海や川に行く際には、事前に気象情報を把握し、風雨、落雷等の天候不良時や上流で雨が降っているなど、河川の増水のおそれが高いときには、釣りや水泳、中洲や河原でのバーベキューなどを行わない」「また、体調が悪いとき、飲酒したときなどは、海、河川に入らない」「○ ライフジャケットの活用 釣りや水遊び等で水辺に行くときは、大人も子供も必ずライフジャケットを着用(体のサイズに合った物を選び、正しく着用)する」。p.3「○ 保護者等の付添い 子供の水難防止のため、子供一人では水遊び等をさせず、どんな場合でも必ずライフジャケットを着用させ、その者を保護する責任のある者は子供から離れないようにする」(本文「子どもの水の事故は、いつ・どこで起きている?」・表・3行まとめ・FAQ第4問の根拠)。
この記事について
本記事は家庭での準備を整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や、制度の可否を判断するものではありません。研究知見や公的資料は「一つの考え方」として紹介しており、家庭や地域ごとに合う・合わないがあります。気になる場合は、専門機関・学校・自治体にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。