3行まとめ
- 私立大学(学部)の令和7年度入学者の平均は、入学料240,365円・授業料968,069円・施設設備費172,550円で、初年度の学生納付金は合計1,507,647円。
- 文部科学省は令和7年6月に私立大学へ通知を出し、入学辞退の時期に応じた入学料の返還、分割納付、納付期限の後ろ倒しといった負担軽減の考え方を示している。対応する場合は大学がホームページ等で公表するとされる。
- 授業料等の減免と給付型奨学金には進学前の予約採用があり、進学後に申し込む場合も入学金の減免は入学後3か月以内という期限がある。
この記事でわかること
- 入学料が公表データでいくらなのか、授業料と何が違うのか
- 国が示した「入学料の負担軽減」の4つの考え方と、その確認先
- 支援制度の申込時期(予約採用・入学後3か月以内)の押さえどころ
発表を待てない期限が、先に来る
受験期の家計でつまずきやすいのは、金額そのものよりも順番です。実際の受験では、入学するかどうかが決まる前に支払いの判断だけが先にやってきます。先に発表がある学校に合格し、その入学手続きの期限が、あとから発表がある学校の合格発表より前に来る。手続きをしなければ合格は無効になり、手続きをすれば通わない学校へ納めたお金が戻らないことがあります。
この時期には別の支払いも重なります。大学入学共通テストの検定料は、大学入試センターによれば3教科以上を受験する場合18,000円、2教科以下の場合12,000円。ここに各大学の入学検定料が志望校の数だけ積み上がります(入試の仕組みは大学入試の3つの入り方 ― 一般選抜・総合型選抜・学校推薦型選抜の違い)。
発表日と納付期限は大学が決めるもので、家庭の側で動かせません。動かせるのは、その日程をいつ知るかだけです。そして日程は、出願のずっと前から公表されています。
入学料は、公表データでいくらなのか
文部科学省は「私立大学等の入学者に係る学生納付金等調査結果」を隔年で公表しており、令和7年度入学者に係る調査結果は592大学を対象に集計されています。私立大学の学部について、授業料は968,069円(前回調査比0.9%増)、入学料は240,365円(同0.2%減)、施設設備費は172,550円(同4.4%増)。実験実習料を合わせた初年度の学生納付金は1,507,647円(同2.1%増)でした。
押さえておきたいのは、入学料が授業料の一部ではないということです。授業料は在学中に毎年かかりますが、入学料は入学の手続きをする段階で一度だけ求められるお金で、金額は授業料のおよそ4分の1。「初年度に150万円かかる」という理解のまま受験期に入ると、実際には二月の数週間のうちに二十万円台の入学料と、進学先によっては前期分の授業料まで動かすことになります。
これは592大学の平均であって志望校の額ではありません。数字は桁の感覚をつかむために使い、実額は志望校の募集要項で確認する(教育費全体での位置づけは大学進学費用を教育費全体の中でどう位置づけるか)。
国が示した「入学料の負担軽減」の考え方
「発表前に納付期限が来る」という構図は、国も課題として認識しています。文部科学省高等教育局私学部長は令和7年6月26日付で「私立大学における入学料に係る学生の負担軽減等について」という通知を各学校法人等に発出し、その考え方をまとめたページを令和8年3月13日に更新しています。
示されているのは四つの方法です。一つ目は返還で、「入学料の納付後、入学辞退の意思表示の時期によって、入学料の全部または一部を返還することとしたり」と述べています。二つ目は分割で、発表後に一部を納付し、年度内など一定の時期までに残余を納付する方法。三つ目は期限の見直しで、「入学料の納付期限を後ろ倒しすること等により、結果的に入学しなかった大学に納付する入学料が抑制」されると説明されています。四つ目は、経済的に困難な学生への減免・納付時期の複数回設定・納付の猶予です。
重要なのは、これらが大学ごとの判断で行われる点です。資料は、こうした対応をとる場合にはホームページ等で公表することなどによって対応するとしています。全国一律に「入学金は返ってくる」とは言えませんし、「どこも戻らない」と決めつける必要もありません。なおこの通知は私立大学に向けたもので、高校の学費や公的支援は別の仕組みです(高校の学費、公的支援の全体像 ― 就学支援金と奨学給付金)。
支援制度には「入学後3か月」という期限がある
もう一つ知っておきたいのが公的な支援制度です。高等教育の修学支援新制度は、大学・短期大学・高等専門学校・専門学校の授業料と入学金の免除または減額と、返還を要しない給付型奨学金によって支援する仕組みで、入学金が支援の対象に含まれている点が重要です。
対象は基本的に住民税非課税世帯ですが、令和6年度からは世帯年収約600万円(目安)までの多子世帯や私立の理工農系の学部・学科に通う学生が加わり、令和7年度以降は多子世帯の学生について所得制限なく授業料・入学金を国が定める一定額まで減免するとされています。
見落としやすいのは時期です。日本学生支援機構によれば、申込みには進学前の予約採用と進学後の在学採用があり、予約採用は在学している学校を通じて申し込みます。授業料等減免を希望する場合は、給付奨学金に申し込むことが入口です。在学採用は年2回申し込めますが、入学金の減免は入学後3か月以内に申し込んだ人が対象で、3か月以上過ぎると受け付けてもらえないと説明されています(奨学金全体の見取り図は奨学金の仕組みを、進学前に親子で整理する)。
どこに書いてあり、誰に聞けるのか
入学料の額・納付期限・分割納付や返還の有無は、志望校が公表する募集要項と入試のページです。パンフレットの学費一覧には額しか載っていないことがあるため、期限と辞退時の扱いを探すときは募集要項の「入学手続」の項目まで開きます。支援制度の要件と申込時期は、文部科学省のページと日本学生支援機構のサイトが一次情報で、予約採用の手続きは高校の奨学金担当が把握しています。
納めたお金の扱いをめぐって学校との話し合いがうまくいかない場合の相談先が、消費生活センターです。国民生活センターのサイトから都道府県別に窓口を探すことができ、あっせんやADR(裁判外紛争解決手続)の説明も掲載されています。
家庭で試す3つの工夫
- 受験校の「発表日」と「納付期限」を一枚に並べる:合格発表日・入学手続きの期限・入学料の額を紙一枚に横並びで書き出します。どの校とどの校の間に判断が挟まるのかが一目で分かり、会話が「どうしよう」ではなく「この日までに決めればいい」に変わります。数字は募集要項の記載を写してください。
- 「分割・延納・返還・辞退」の4語で募集要項を検索する:PDFを開いて文字検索でこの4語を探します。該当箇所が無ければ、その大学には現時点で公表された措置がないと分かります。入試広報窓口に電話するときも、この4語を手元に置くと質問が具体的になります。
- 支援制度の確認だけは、出願より前に済ませる:予約採用は高校を通じた手続きで、在学採用でも入学金の減免には入学後3か月以内という期限があります。確認は合否と関係なく進められる作業です。
声かけの言い換え例
- 「そんなに何校も受けたら、お金がいくらあっても足りない」→受験校を減らすことが解決策だと伝わり、子どもが希望を口にしづらくなる。
- 「発表日と手続きの期限を先に調べておこう」→費用の話を、削る話ではなく段取りの話として扱える。
- 「押さえで払うお金がもったいないから、そこは受けなくていい」→親の判断が先に出て、子どもが併願の理由を説明する機会を失う。
- 「辞退したときどうなるか、募集要項を一緒に見てみようか」→調べれば分かることとして扱える。
家庭で確認するチェックリスト
- 受験を考えている学校それぞれの、合格発表日と入学手続きの納付期限を書き出した。
- 入学料の額を、平均値ではなく志望校の募集要項の記載で確認した。
- 分割納付・納付期限の延長・辞退時の返還について、志望校の公表内容を調べた。
- 修学支援新制度の対象になりうるかを、高校の担当窓口に確認した。
- 予約採用の申込時期と、入学後3か月以内という入学金減免の期限を家族で共有した。
家庭の工夫だけで抱え込まないために
実際の入学料の額、納付の期限、分割納付や返還の可否は、大学ごと・学部ごとに異なります。文部科学省の資料が示しているのは大学がとりうる方法の考え方であって、すべての大学がそれを実施していることを意味しません。志望校の条件は、その大学が公表する募集要項とウェブサイトで確認してください。
費用の話は、子どもの進路選択そのものに影響します。金額の話をする前に、何を調べれば判断できるのかを一緒に確認する順番にすると、会話が制限の押しつけになりにくくなります(教育費を家族で話す ― お金の不安を子どもに渡さない)。制度は毎年見直されるため、相談先としては高校の進路指導担当と奨学金担当、志望校の入試広報窓口、日本学生支援機構の案内があります。
出典・参考
- 文部科学省「『私立大学における入学料に係る学生の負担軽減等について』(令和7年6月26日付文部科学省高等教育局私学部長通知)の考え方等について(令和8年3月13日更新)」
この出典で確認した記述
通知が令和7年6月26日付で文部科学省高等教育局私学部長から発出されたこと、負担軽減の方法として「入学料の納付後、入学辞退の意思表示の時期によって、入学料の全部または一部を返還することとしたり」時期に応じて返還額に差を設けられること、「合格者の決定発表後に、入学料の一部を納付することとし、年度内など一定の時期までに残余の額を納付する」分割の方法、「入学料の納付期限を後ろ倒しすること等により、結果的に入学しなかった大学に納付する入学料が抑制」されること、経済的に困難な学生について入学料を減免したり納付時期を複数回設定したり納付を猶予したりすることが考えられること、大学がこうした対応をとる場合は「ホームページ等においてその旨を公表することなどによって対応」するとされていることの根拠。 - 文部科学省「私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」
この出典で確認した記述
調査対象が592大学であること、私立大学(学部)の授業料が968,069円(対前回調査比0.9%増)、入学料が240,365円(同0.2%減)、施設設備費が172,550円(同4.4%増)であること、初年度の学生納付金の合計が1,507,647円(同2.1%増)であること、前回調査が令和5年度入学者に係るものであることの根拠。本文中の「入学料は授業料のおよそ4分の1にあたる」との記述は、同調査の授業料と入学料の金額から編集部が算出した比較。 - 文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
この出典で確認した記述
支援内容が「大学、短期大学、高等専門学校、専門学校の授業料・入学金の免除または減額と、返還を要しない給付型奨学金」であること、基本的な対象が住民税非課税世帯であること、令和6年度から「世帯年収約600万(目安)までの世帯のうち、子供3人以上を扶養する多子世帯や私立理工農系の学部・学科に通う学生」に対象が拡充されたこと、「多子世帯の学生については、所得制限なく、大学等の授業料・入学金を国が定める一定額まで減免することとしております」との記載の根拠。 - 文部科学省「大学生等の皆さんへ - 学びたい気持ちを応援します 高等教育の修学支援新制度」
この出典で確認した記述
在学採用について「申請時期は、年2回、毎年の春と秋に、在学中の学校を通じて日本学生支援機構(「JASSO」)へ申し込むことができます」との記載、「入学金の減免は、入学後3か月以内に申し込んだ人が対象です」および「入学金の減免の申請は、入学から3か月以上過ぎてしまうと受付けてもらえません」との記載、給付型奨学金が毎月本人の口座に振り込まれ授業料等減免は学校から減免額や減免方法等が通知されることの根拠。 - 独立行政法人日本学生支援機構「進学前に申し込む(予約採用)」および「給付奨学金(返済不要)」
この出典で確認した記述
予約採用の給付奨学金・貸与奨学金の申込みが「在学している・卒業した学校を通じて申込みます」とされること、高等学校卒業程度認定試験合格者(合格見込者を含む)の予約採用は機構への直接申込みとなること、「授業料等減免の申込希望者(多子世帯への授業料等減免も同様)は、給付奨学金に申込みをしてください」との記載、高等教育の修学支援新制度が「返還を要しない給付型奨学金と授業料・入学金の免除または減額」により構成され「授業料・入学金の免除・減額は確認大学等が、給付型奨学金の支給は日本学生支援機構が行います」とされること、申込みに進学前(予約採用)と進学後(在学採用)があることの根拠。 - 独立行政法人大学入試センター「大学入学共通テストの仕組み等」
この出典で確認した記述
検定料が3教科以上受験の場合18,000円、2教科以下受験の場合12,000円であること、成績の閲覧を希望する場合は出願時に検定料と併せて300円を支払うこと、出願が「原則として共通テスト出願サイトから行うこととし、高等学校等に在学している者も含め、全ての志願者が個人でパソコンやスマートフォン等を利用して行う」とされていることの根拠。 - 独立行政法人国民生活センター「消費生活相談」
この出典で確認した記述
全国の消費生活センターの窓口を都道府県別に探せること、土日祝日でも消費生活相談を受け付けている窓口の案内があること、消費生活センターを経由して利用できるADR(裁判外紛争解決手続)およびあっせんの仕組みが説明されていることの根拠。
この記事について
本記事は家庭での話し合いを整理した一般的な情報であり、特定の学校の合否・優劣・進学先を判断・推奨するものではありません。個別の家計・投資の助言や、特定の金融商品の推奨も行いません。費用・選抜・支援制度は年度や地域によって変わるため、公式情報をご確認ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。