3行まとめ
- 国の抽出調査(令和4年度)で、4年生の通過率が60%以上だった県は34。平成24年度の20から増えたが、報告書は13県を「課題があると考えられる」としている。
- 北海道99.1%・沖縄95.3%と地図の端の県は高く、低い側は佐賀48.4%・島根52.3%など。課題とされた13県のうち10県が近畿・中国・四国・九州に集まっている。
- 3年生の方位では東西が南北より低く、地図記号では田・畑が神社や消防署より低い。どれも、家庭で地図帳を「引く」場面を作ると確かめやすいところです。
この記事でわかること
- 4年生の47都道府県について、国の調査が示している結果
- 答えやすい県と、止まりやすい県の違い
- 3年生の方位と地図記号で、つまずきやすいところ
- 学習指導要領が、地図帳をどう使うことを求めているか
- 家庭で地図帳を「引く」ための3つの工夫
一覧表を読み上げる夜
都道府県は4年生の社会で習います。テストが近づくと、一覧表を上から読み上げたり、白地図に県名を書き込ませたりする家庭は多いと思います。親も付き合いやすい形です。
ただ、一覧表で覚えた名前は、地図の上の場所と結びついていないことがあります。「岡山」は言えても、地図のどこを指せばいいか分からない。止まっているのは、名前ではなく位置のほうです。
国の調査で見る、4年生の47都道府県
文部科学省と国立教育政策研究所は、学習指導要領がどこまで実現しているかを確かめる調査を行っています。令和4年度の小学校の調査は、全国から無作為に抽出した1,170校で、延べ12万人あまりの児童が参加しました。社会では4年生に、47都道府県の名称と位置を1県ずつ尋ねています。
報告書によると、47問のうち「相当数の児童ができている」とされたのは7問(前回3問)、「課題があると考えられる」とされたのは13問(前回27問)でした。通過率が60%以上の県は、平成18年度の調査の12、平成24年度の20から、令和4年度は34まで増えています。改善は続いているものの、報告書は引き続き課題が見られるとまとめています。なお平成18年度は6年生、残る2回は4年生が対象です。
端の県は答えられ、間の県で止まる
県ごとの数字を並べると、傾向がはっきりします。高いのは北海道99.1%、沖縄95.3%、青森93.6%。千葉84.8%、新潟83.3%も8割を超えています。地図の端にある県や、形に特徴のある県です。
低い側は佐賀48.4%、島根52.3%、岡山52.6%、愛媛53.7%。課題とされた13県のうち10県は近畿・中国・四国・九州にあり、似た大きさの県が隣り合って並ぶ地域です。報告書は理由までは書いていませんが、名前は知っていても、隣の県との位置関係で取り違えやすい場所と読むことはできます。
一方、自分の住む県の位置を尋ねた問題は92.7%で、相当数の児童ができているとされました。たどり始める起点の県は、多くの子がすでに持っています。
3年生の方位と地図記号でも
地図を読む土台は3年生で習います。四方位を尋ねた問題では、南北が70.9%に対して東西が50.9%。別の問題でも南北81.2%、東西69.5%で、報告書は「南北の知識に比べ、東西の知識が身に付いていない」と指摘しています。
地図記号では、神社90.7%、警察署86.8%、消防署83.4%と建物が高い一方、田は69.5%、畑は63.3%でした。国土地理院によると、田の記号は稲を刈り取ったあとの形、畑の記号は植物の二葉の形からできています。由来を知ると、見分ける手がかりになります。
3年生に「地図帳で調べることが好きですか」と尋ねた質問では、好き・どちらかといえば好きが合わせて64.3%。一方で「あまりやったことがないのでわからない」も13.0%ありました。
地図帳は3年生から「使う」ものになった
平成29年告示の学習指導要領で、地図帳の使用は3年生から目標に示されました。解説によると、3年生では方位と主な地図記号を地図帳を参照して扱い、八方位は4年生の修了までに身に付けます。4年生では自分たちの県の様子を調べる中で、47都道府県の名称と位置を理解することが求められています。
解説が挙げる活動の例は、地図上で自分たちの県の位置を言い表すことや、47都道府県の位置を地図帳で確かめ、名称を白地図に書き表すことです。一覧表を覚えるより先に、地図の上で確かめる順番になっています。
47都道府県が4年生の内容として明記されたのは、この改訂からです。平成10年改訂では「各学年において」次第に都道府県の構成が分かるようにするとされ、平成20年改訂で3・4年生の内容に位置付けられました。地図帳を使う学習は4年生で終わらず、5年生では地球儀も加わり、世界の主な国の名称と位置へ進みます。同じ調査では、ロシアやアメリカ合衆国に比べ、イギリスやブラジルに課題が見られました。県の位置を地図で確かめる習慣は、その先の学習の足場にもなります。
家庭で試す3つの工夫
- 出てきた地名を、その場で地図帳で引く:天気予報やニュース、旅行、お土産の産地。話題に出た地名を、その日のうちに一緒に探します。覚えさせるためではなく、地図帳を開くことに慣れるための時間です。
- 自分の県から、隣へ広げる:一覧表の順ではなく、自分の県を起点に「隣はどこ?」「その隣は?」と地図の上でたどります。止まりやすい県は、似た大きさの県が並ぶ地域に集まっていました。隣とセットで確かめると、取り違えに気づけます。
- 方位と記号は、家の外で確かめる:朝、日が出てくる方が東です。窓から確かめると、東西が体に入ります。散歩で田や畑を見かけたら、国土地理院の地図記号一覧で由来を一緒に見てみます。
声かけの言い換え例
- 「まだ覚えてないの?」→「どこまで分かる? 隣の県から一緒に探そう」。止まった場所が分かり、次に確かめる県が決まる。
- 「全部書けるまで終わらないよ」→「今日は四国の4県だけにしよう」。範囲が小さいと、隣どうしの位置関係に目が向く。
- 「地図帳は見ないで覚えなさい」→「分からなかったら、地図帳で引いてみよう」。引くこと自体が、位置を確かめる練習になる。
- 「東と西、また逆になってる」→「朝、日が出てくるのはどっちだった?」。暮らしの手がかりと方位が結びつく。
家庭で確認するチェックリスト
- 地図帳や日本地図を、家の中ですぐ開ける。
- ニュースや天気予報で出た地名を、ときどき一緒に探している。
- 都道府県を一覧表の順ではなく、隣とのつながりで確かめている。
- 東西南北を、窓の外や日の出で確かめたことがある。
- 覚えられない県があっても、責める材料にしていない。
家庭の工夫だけで抱え込まないために
ここで挙げた数字は、全国から抽出した学校の児童の集計です。自分の子どもの到達度をそのまま表すものでも、家庭ごとの目標値でもありません。単元を習う時期やテストの形は、教科書や学校によって異なります。学校からの案内と食い違うときは、目の前の学校の説明が優先します。
地図帳は学校で使う教科書です。家に持ち帰るかどうかは学校によって扱いが違うので、手元にないときは市販の日本地図や国土地理院のウェブ地図でも足ります。地図帳への書き込みも、担任の先生の指示に合わせてください。
覚えることに教科をまたいで苦労が続く、読むこと・書くことにつまずく日が重なるといったときは、家庭の工夫だけの問題ではないことがあります。担任の先生や学校に相談する選択肢があります。支援の仕組みは勉強のつまずきを家庭だけで抱えないために ― 学校の相談窓口と支援の仕組みで整理しています。
出典・参考
- 国立教育政策研究所「令和4年度学習指導要領実施状況調査 教科等別分析と改善点(小学校 社会)」
この出典で確認した記述
「③ 従来、課題とされている事項の実現状況、課題等」の「47 都道府県の名称と位置【第4学年内容(1)ア(ア)イ(ア)】」に、「47 都道府県の名称と位置については、該当する 47 問のうち、相当数の児童ができているものが7問(前回3問)、課題があると考えられるものが 13 問(前回 27 問)である」「第6学年を対象とした特定の課題に関する調査(平成 18 年度)や前回の学習指導要領実施状況調査の結果と比べると、通過率 60%以上の都道府県が増加する(※平成 18 年度:12 問、平成 24 年度:20 問、令和4年度:34 問)など改善傾向にあるが、引き続き課題が見られる」とあること。同じ頁の県別の表(令和4年度・第4学年対象)に北海道(99.1)、青森県(93.6)、岩手県(81.7)、秋田県(80.2)、新潟県(83.3)、千葉県(84.8)、沖縄県(95.3)、東京都(77.2)、鹿児島県(72.9)などが並び、60未満の13県として群馬県(58.7)、福井県(58.4)、奈良県(56.4)、岐阜県(55.6)、京都府(57.7)、島根県(52.3)、岡山県(52.6)、愛媛県(53.7)、香川県(59.2)、徳島県(59.1)、大分県(55.3)、佐賀県(48.4)、熊本県(58.2)が示されていること(13県の件数は本文の「課題があると考えられるもの13問」と一致。うち奈良・京都・島根・岡山・愛媛・香川・徳島・大分・佐賀・熊本の10府県が近畿・中国・四国・九州。この地域分けは編集部による整理で、報告書は県ごとの差の理由を記していない)。同表の前回(平成24年度・第4学年対象)と平成18年度(第6学年対象)の欄も確認した。「自分たちの住む県の地理的位置については、該当する2問[4A7(1)、4B7(1)]について、相当数の児童ができている」とあり、巻末の問題別集計で4A7(1)「自分の県の地理的位置を理解している」の通過率が92.7であること。「方位や主な地図記号【第3学年内容(1)内容の取扱い(1)イ】」に「四方位の理解については、南北の知識に比べ、東西の知識が身に付いていない」「消防署、警察署、博物館、神社については相当数の児童ができているが、田・畑などの土地利用に関わる知識については、一定程度の児童ができているにとどまっている」とあり、問題別集計で3A1(1)①南北70.9、②東西50.9、3B1(1)ア東西69.5、イ南北81.2、3A1(2)ア消防署83.4、イ神社90.7、ウ田69.5、3B1(2)ア警察署86.8、イ博物館87.2、ウ畑63.3であること。児童質問紙調査【3年生】「地図帳で調べることが好きですか。」が、好き37.0、どちらかといえば好き27.3、どちらかといえば好きではない14.4、好きではない8.3、あまりやったことがないのでわからない13.0(%)で、「『あまりやったことがないのでわからない』と回答した割合が1割を超えている」と記されていること(本文の64.3%は上位2つの合計)。47都道府県の扱いの経緯として「平成 10 年改訂の『小学校学習指導要領社会』の「各学年にわたる内容の取扱い」において、「各学年において、地図や統計資料などを効果的に活用し、次第に都道府県の構成について分かるようにすること」と示された。平成 20 年改訂の『小学校学習指導要領社会』において、新たに第3学年及び第4学年の内容(6)アに位置付けられた。さらに、平成 29 年改訂の『小学校学習指導要領社会』において、第4学年の内容(1)ア(ア)、イ(ア)に位置付けられた」とあること。「世界の主な国の名称と位置、領土の範囲【第5学年内容(1)ア(ア)イ(ア)内容の取扱い(1)】」に「ロシア、アメリカ合衆国については相当数の児童ができているが、イギリス、ブラジルについては課題が見られるなど、国ごとに理解のばらつきが見られる」とあること。調査の概要と各資料の一覧は同研究所の「令和4年度 小学校学習指導要領実施状況調査」(https://www.nier.go.jp/kaihatsu/shido_r04/)で確認した。 - 文部科学省「令和4年度 小学校学習指導要領実施状況調査について(ペーパーテスト調査等)」(令和6年7月10日、有識者検討会 第13回 資料2-2)
この出典で確認した記述
「ペーパーテスト調査等の概要」に「調査実施校:小学校 1,170 校 実施児童数 120,378人(延べ数)」「1教科1問当たり、3,000人程度の調査結果を得ることができるよう、調査対象を無作為抽出した」とあること。「令和4年度 小学校学習指導要領実施状況調査の結果について(社会)」の頁に、「資料から情報を読み取ることは相当数の児童ができているが、社会的事象の特色や意味を考え説明することや、読み取ったことを基に図や文などにまとめることに課題がある」「内容により基礎的な知識及び技能の定着に課題があると考えられるもの」があると記され、指導上の改善点に「地理的環境の学習において基礎的な知識や技能が定着する指導」が挙げられていること。本記事の調査の規模(1,170校・延べ12万人あまり・無作為抽出)は、この資料に基づく。 - 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 社会編」(平成29年7月)
この出典で確認した記述
改訂の要点に「第3学年及び第4学年の目標と内容については,系統的,段階的に再整理する。また,地図帳の使用を第3学年から目標に示す」とあること。第3学年の内容の取扱いの解説に、方位や主な地図記号について「地図帳を参照して理解し活用できるようにすることを求めている」「方位については,四方位と八方位を扱う。その際,児童の実態等を考慮に入れ,最初に四方位を取り上げ,八方位については,ここでの学習も含めて第4学年修了までに身に付けるようにする」とあること。第4学年の内容(1)の解説に「自分たちの県の地理的環境の概要を理解するとともに,47 都道府県の名称と位置を理解できるようにすることである」「実際の指導に当たっては,県の地図や地図帳を十分に活用することが大切である。例えば,地図上で自分たちの県の位置を言い表す活動,県の白地図に地形や産業の分布,交通網,主な都市の位置を書き表す活動,47 都道府県の位置を地図帳で確かめ,その名称を白地図に書き表す活動などが考えられる」とあること。第5学年及び第6学年の目標(1)に「地図帳や地球儀,統計(や年表)などの各種の基礎的資料を通して情報を適切に調べまとめる技能を身に付けるようにする」と示されていること。本記事の学習指導要領と地図帳の扱いに関する記述は、この資料に基づく。 - 国土地理院「地図記号一覧」(地図記号:田/地図記号:畑)
この出典で確認した記述
一覧のページに「電子地形図25000の地図記号一覧になります。記号をクリックすると、地図上の表示例と現地写真および記号の由来などが見られます」とあり、建物の区分に消防署・警察署・博物館・神社などが、植生の区分に田・畑・茶畑・果樹園などが並んでいること。「地図記号:田」(https://www.gsi.go.jp/KIDS/map-sign-tizukigou-2022-ta.htm)に「水稲(すいとう)、蓮(はす)、い草、わさび、せりなどを栽培している土地を表示しています」「稲(いね)を刈り取ったあとの形を記号にしました」、「地図記号:畑」(https://www.gsi.go.jp/KIDS/map-sign-tizukigou-2022-hatake.htm)に「陸稲(りくとう、おかぼ)、野菜、芝、パイナップル、牧草などを栽培している土地を表示しています」「植物の二葉の形を記号にしました」とあること。本記事の田・畑の記号の由来と、工夫3の地図記号一覧は、この資料に基づく。
この記事について
本記事は家庭での工夫を整理した一般的な情報であり、医療・発達・心理の診断や治療の判断に代わるものではありません。研究知見や公的資料は「一つの考え方」として紹介しており、家庭ごとに合う・合わないがあります。お子さんの状態が気になる場合は、専門機関や学校にご相談ください。制度・統計の内容は各資料の公表時点のものであり、更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。